当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

作評トップ

天穂のサクナヒメ

 PS4版をやりました。
 稲作シミュレータに2Dのメトロイドヴァニア的アクションゲームが組み合わさったゲームです。

 稲作シミュレータとしての作り込みはもう方々で指摘されているので繰り返しませんが、適当にやると本当に適当な結果しか出ません。でき上がってくるお米にも「量」やら「味」やら「香」やらといった複数のパラメータがあり、特定のパラメータを狙って上げるには田んぼとにらめっこして水量や水温をゲーム内時間の1〜2時間ごとに管理する丁寧さが必要です。アクションの方をやっている余裕がなくなるわけです。そこは良くない点だと思う人もいるでしょうが、逆に言うと本作の米は丁寧に面倒を見ればきちんとそれに応えてくれるので、そこにやり甲斐が生まれる土壌があります。換言すれば、本作は稲作にのめり込むだけで充分楽しめるほどの作り込みがされているということです。
 
 他方でアクションの方もちゃんとできています。サクナには、ガードや、他ゲームの「ローリング」や「スウェー」に相当するようなワンボタンでの回避手段はなく、羽衣を伸ばして移動したり敵の裏に回ったりという方法でダメージを避けることになります。羽衣を使ったアクションは,私は海原川背シリーズのラバーリングアクションに似ていると思いました(ただあそこまで繊細で難しくはありません。もっと直感的でとっつきやすいです)。特に本作は、同じくメトロイドヴァニア的な素材集め要素を持つ海腹川背 Fresh!に似ています。
 とはいえ、一度に出現するザコ敵の数は多く、ボス戦でも一部を除いて無限湧きのザコが一緒に登場するため、デビルメイクライやフロムの死にゲーのように敵の攻撃をヒラリヒラリとかわしながらこちらの攻撃を叩き込むゲーム性ではありません。乱戦になることが多いので綺麗にかわしきることはほぼ不可能です。本作では、敵の攻撃をかなり喰らうことを前提としながら、こちらも体力を回復しつつ若干ごり押し気味に進めるのが最適解になっています。現に、サクナは毎日の食事で体力が自然回復する技能をほぼ確実に得ることができます(自然回復が付いているメニューは多く、狙って避けない限りはほぼ確実に獲得できます)。敵の攻撃をある程度受けながらこちらの攻撃を入れ、体力が減って危なくなってきたら逃げ回って自然回復を待つという戦法を、私は何度もとりました。また本作では時間の概念があり、夜になると敵が強くなるのですが、死にゲーのように敵の攻撃を食らわないようにチマチマ立ち回っているとあっという間に夜が来てしまいます。結局、ごり押しが一番早いのです。
 こんなゲーム性になっているため、「登鯉」という広範囲に弾幕を張れる武技(使い勝手を良くするには一定程度この武技を成長させる必要があります)がかなり強いですし、敵を倒すと体力が回復する能力もかなり大事になってきます。武技や特殊能力は色々な種類がありますが、このあたりが突出して使い勝手がいいので、バランスは少々良くありません。

 ボリュームは、ストーリークリアなら15時間〜30時間くらい、トロコンまでやって40時間足らず、というところでしょうか。サクナの基礎ステータスは稲作でしか上がっていきません(武器や防具を強化することは別途可能です)。サクナをカンストまで育てたいと思ったら、トロコン後も何年も稲作を続ける必要があります。逆に言うと、アクションで詰まった場合でも何年もコメを作ってサクナのステータスを上げていけば最終的になんとかなるということなので、苦手な方も心配する必要はありません。
 ストーリーやキャラ造形もかなりしっかりしているので、稲作以外の部分もきちんと仕上がっています。まだの方は是非どうぞ。

※次回作では是非養蚕シミュレータを作って欲しいです。「天蚕のオシラサマ」ってタイトルでどうですか!

作評トップ

管理人/副管理人のみ編集できます