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ボケフリ

 ボケフリとは、筆者の造語ですが、ボケでありながらフリの役割をも同時に果たしているもののことです。
 例を挙げましょう。

 例8


 例9


 いずれの例においても、BC両名の発言は単なるフリであって、ボケフリではありません。PQRSの発言は、ボケです。このうちPQR3名の発言が、ボケと同時にフリの役割をも果たすボケフリになっています。
 PQRSのボケは、だんだんとズレの程度が大きくなっています。Pは、部活動を一応答えてはいますが、ありそうもない部活です。Qは、「ブ」という音が共通した答えを言っているだけで、そもそも部活動を答えてはいません。Rは、Qの答えでは保たれていた語尾「ブ」の類似さえ消え去り、ただの日本語を答えています。Sの答えは日本語かどうかさえ怪しいです。念のため述べておきますが、「河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)」は実在した俳人の名です。
 何度も述べた通り、ボケが作出するズレの程度は適切である必要があります。となれば、部活を聞いているのにRやSのような音の類似さえない答えを出すのは、ズレ過ぎだと考えられます。例9のように、初っ端のボケがいきなり河東碧梧桐だと、面喰らったりひいたりする人の方が多いのではないでしょうか。
 ところが、例8のようにズレとしては適切なPやQのボケをはさむと、RやSの発言も多少面白味が生じてくるのではないでしょうか。これは、PQRの発言が、ボケと同時にフリの役割も果たしているからです。すなわち、ズレの程度が相対的に小さな解答をまずすることによって、「ズレの小さな解答をする」という基準状態が設定され、このせり上がった基準状態と比較することによって、RやSの解答もようやくズレの程度として適切になるのです。



 つまり、ボケフリとは、段階的なズレを設けることによって、程度の大きなズレも笑いに昇華させる技術だということです。加えて言うなれば、例8のような小ボケを繰り返すパターンの笑いでは、第一段階のズレとして適切な答え(PやQのような答え)ばかり繰り返していると、受け手が倦んでしまいます。そこで、このような段階性を設ければ、程度のより大きなズレといった別パターンも導入することができます。この別パターンは「程度の大きなズレ」に限らず、これまで説明してきたメタなズレを色々と入れることができます。もう一度説明するまでもないので、以下の例を見ておいてください。

例10


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