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逆転裁判5

 このゲームの舞台における裁判制度は、現代日本のそれとは違います。
 それは、頭では分かっていますが、日本の裁判制度(というより、これに対する誤解や曲解)を元にして劇中の裁判制度が組み立てられているため、この業界の人間はどうしてもそこが目について、このシリーズを楽しめないということがよく言われます。
 例は枚挙に暇がありません。裁判長はあんな木槌みたいな奴は持ってないとか、弁護人が無罪を証明する必要はなく、検察官の有罪の立証が奏功していないという心証さえ裁判所に抱かせれば無罪判決は出るとか、証人の話におかしいところがあれば「異議あり」と言うのではなく、単にそのことを質問すればいいとか。
 最後のをちょっと説明しますと、現実の刑事裁判の法廷で「異議あり」というのは、基本的に法廷の運びに何らかの違法や不相当があった場合であって、一番よく見るのは、相手方が誘導尋問をした場合です。逆転裁判では、証人の話におかしいところがあったときに「異議あり」と叫びますが、現実の法廷では、そういうときはただ証人に質問をします。証人が「その日現場に行ってない」と言っているのに、現場に証人のDNA型と一致する毛髪が落ちていたみたいな場合、ただ「現場にはあなたのDNA型と一致する毛髪が落ちていましたが、これはどういうことですか」などと尋問をするのです。ここで答えに詰まれば証言が怪しくなってくるし、ちゃんとした証人なら「それはその日の前日に落ちた物です」とか答えてきます。そういう話です。
 でもまあ、逆転裁判の世界は、逆転裁判の世界のルールに基づいて運営される法廷だから、それはそういうもんだと割り切れば、お話自体は一流のミステリーなんだから、楽しめるだろうと思っていたし、実際楽しめていました。でも、実際に修習を通して現実の法廷を知ってしまうと、やっぱり色々と目に付くようになってしまいました。
 今作を例にとれば、1話にしていきなり途中から起訴されていない傷害事件の審理が始まります。現実の法廷ではそんなことあり得ません。うーん、知識を得ることが良いことばかりとは限らないということでしょう。
 幸いだったのは、本作のストーリーが、逆転裁判1や2のそれほどおもしろいものではなかったこと。現実の法廷に関する自分の知識を消し去ってまでもう1回追体験したいと思うようなものではなかったこと。まあ、4と比較すればこぎれいにまとまってはいるんですが。
 とはいえ、筆者は4も(ついでに言えばスパロボKも)実際にプレイした当時はそこまでおかしいお話だとは思わなかったほど鈍感なので、それほどストーリーには興味がないのかもしれません。でも1や2はおもしろかったけどなあ。なあ。

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