当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2016年12月10日放映のめちゃイケを見た。今回は「君の名は。」のパロディで岡村と西野に入れ替わり生活を送ってもらい、2人の間のわだかまりを解いてもらうという企画である。

 筋書きとしては、これまでラジオとSNSでやりあってきた岡村と西野に、それぞれの実際の生活を体験してもらうことで、お互いの「知らない部分」を知ってもらい、互いを攻撃していたかのような発言の背景や真意を知ってもらったうえで、和解するという形である。

 西野は岡村がやっているオールナイトニッポンの現場に入り、岡村がラジオでなぜ西野を「嫌い」と言うようになったかを知る。岡村は西野の普段の仕事模様を垣間見ることで、なぜ「ひな壇に出ない」というような発言をするに至ったかを知る。最後は2人で謝って抱き合う、という分かりやすい終わり方である。謝りあうオッサン2人という構図が若干気持ち悪かったが、誤解から喧嘩をしている人どうしが誤解を解いて和解するのを見るのは決して悪い気分にはならないので、見てはいられた。また、普段岡村のオールナイトニッポンを聞いている身としては、同番組での岡村の発言に出てくるラジオのスタッフさんや御友人の顔を直接見ることができ、それも興味を引かれる点ではあったが、岡村のラジオを聞いていない人にはあまり伝わらないだろう。

 また、「笑い」はあまりなかったというところはやっぱり指摘せざるを得ない。めちゃイケで(頻度が少ないとはいえ)定期的にこの手の「感動」系の企画が挟まるのを見ていると、おそらくスタッフの中にこの手の作品が好きな人がいるのだろうが、視聴者がめちゃイケに期待しているのは笑いである。
 今回おもしろかったのは、西野に扮する岡村に後輩の身分で容赦なくダメ出しする梶原やトータルテンボス、ぐらいである。他方、最後に岡村と西野が直接対面して和解した後にも、濱口や矢部がそれを茶化して視聴者を笑わせようとはしていた。試みとしてはいいのだが、あんだけ真面目にお互いのことを知るように行動させられていた2人が最後茶化される構図には、少し気の毒なものを覚えてしまった(=笑えなかった)というのが正直なところである。ああいうオチにするのであれば、途中でもう少し茶化す感じの演出を入れて見る方を慣らさせておいた方がいいと思う。
 番組の冒頭で2人が作った口噛み酒も最後にダイジェストでほんの数秒リアクションが流れただけだったし、入れ替わり生活中に勝手にお互いの仕事をやったことに対するツッコミも同じく最後にちょろっと出ただけだった。
 笑いは、もうちょっと足した方がいいだろう。

 あと筆者が気になったのは、松本人志と、西野に関する「デマ」を岡村のラジオに投稿したリスナーが最後まで悪者になっていたことである。番組の途中で「岡村は松本に憧れて芸人の世界に入ったのに、松本から著書で悪口を言われてショックを受けていた」という話が出てきていたのだが、岡村は最後のシーンで西野に「俺も自分がなりなくなかった先輩(=後輩の悪口を言う松本)になってしまっていた」と謝って、それきりフォローはなかった。
 ここは、例えば松本を最後に登場させて「俺最後まで悪者やん」みたいなことを言わせれば、フォローにもなるし綺麗にオチた気がするのだが、どうだろうか。
 こういうことを書くと「実現可能性が云々」と反論する人がいるが、別にそこまで実現可能性が低いとは思えない。本当に無理なのであれば、松本の著書の話を出すことすらできないはずである。

 濱口でオトすのであれば、(前述の通りもう少し前々から茶化す感じを入れておいてほしいが)それもいい。ただそれであれば最後の矢部は蛇足になってしまう。西野と岡村が階段で行き合うシーンはおそらく「君の名は。」の何らかのシーンを真似たものだと思われるが、パロディであるということに寄りかかり過ぎて蛇足のシーンを入れてしまっているのではないかと考えざるを得ない。別に「君の名は。」を真似ることは、この回の話題性を上げるとともに、笑いのギミックを増やすための一つの仕掛けに過ぎず(めちゃイケでよくあるパターンである)、今回もパロディであること自体ににさほどの意味はないので、階段のシーンを撮ることに固執する必要は全くない。ここがなければ、口噛み酒のリアクションなどにももう少し尺が割けたのではないだろうか。

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