当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2016年10月2日放映のキングオブコント2016を見た。
 番組の総合的な演出については、キングオブコント2015に対して筆者が書いた感想をそのまま流用できるので、そちらを参照いただきたい。全く、去年からの反省が見られない。
 だから、かは分からないが出場者も全体的に小粒化が進んでいるような気さえする。番組がおもしろくないから、番組自体の人気が下がり、優勝や出場にメリットを感じなくなった芸人たちが手を引いて、番組が更につまらなくなるという負のスパイラルに入っている感じがするのである。だとすれば、危険である。

 ネタ自体を見ても、今年はワンフレーズや一種類のボケをずっと押すタイプのコントや、変化球的なコントが多く、コント日本一を決めるというこの番組の趣旨に合っていないような感が強かった(詳しくは後述する各ネタの寸評を参照していただきたい)。かまいたちやジャングルポケットみたいな変化と裏切りを積み重ねるタイプの正統派のコントをもっと見せて欲しかった印象である。
 もしかしたら、出場者の小粒化が進み過ぎてそういう正統派のコントができる実力派が揃わなかったのかもしれない。でも、準決勝で敗退している面子を見るとそうは思えないので、笑いにスレた「プロ」の審査員が変なのを選びすぎているような気もする。だとしたら、やめたほうがいい。

 あと、コントにあまり変化をつけられないのは各出場者のコント時間が短すぎるのも一つの原因だと思うので、もうちょい尺をとってやってもいいと思う。それこそ、冒頭1時間の過去大会の紹介部分や煽りのVTRに使う部分を削り、生放送をやめて採点や審査員コメントの部分をもっと編集すれば、時間は作れる。

<各ネタ寸評>
◎ファーストステージ
1.しずる
 冒頭のシリアスなフリから入るネタばらしがしっかりおもしろいのは良い。
 ただその後ずっと「誰もいない」というボケ一本なのがいただけない。あと、シリアスな設定なので、2人とももっと演技力を身に付けて欲しい(設楽は「演技力がある」と言っていたが、十分だとは思えない。宮迫や岡村を見習って欲しい)。

2.ラブレターズ
 フリのVTRを見ると正統派のコントをやるのかと思ったが、歌に合わせて動くというかなり変化球のコントだった。単独ライブの中で箸休め的にやるのであればいいが、この手の賞レースでやるのはどうかと思うし、これを決勝に上げる審査員もどうかと思う。

3.かもめんたる
 槙尾の女装がすごくサマになっていたが、そこにばっかり目が行ってしまった。
 槙尾が電話で話している遠方の彼氏が自分の念を送り込んでくるという飛んだ設定のコントだが、念に自我が芽生えるというのは話を進めすぎだと思う。変化をつける試みとしては買うが、コントなのだからもう少し穏当なところで遊んでほしい。
 観客からも悲鳴が上がっており、怖かった。

4.かまいたち
 設定は変だが、ちゃんとボケのパターンを変えてきており、実に正統派だった。筆者は、売れて欲しいと思っている。

5.ななまがり
 これも設定がかなり現実離れしているうえに、その現実離れしたギャグのようなもので押してくるコントだった。本人たちは変化をさせているつもりかもしれないが、ナスに代わってネギが出てきたところで現実離れしているという点は変わっておらず、マイナーチェンジの域を出ていなかった。松本も言っていたように、裏切りが足りないのである。
 あと、森下は色々な人を代わる代わる演じていたのだが、きちんと衣装を変えて欲しかった。

6.ジャングルポケット
 正統派なのはいいが、トイレで大を出している途中という舞台設定だったため、どうしても汚らしさが抜けなかった。ただ、個人差だろう。

7.だーりんず
 これも「父さんは童貞なの?」というボケ一本で押すコント。変化が足りない。

8.タイムマシーン3号
 関が小銭をたくさん出すというコントだが、きちんと手品的な技術を練習したんだろうなというのは伝わってきた。ただ、観客からも悲鳴が上がっていた通り、少し「世にも奇妙な物語」じみていて、怖かった。あまりコメディっぽくなかったのである。

9.ジグザグジギー
 これも「ハエを捕まえた箸でそのままご飯を食べる」というボケ一本で押し過ぎである。もっと変化を。

10.ライス
 これも「くれーい」というボケ一本なのだが、力技で押し切った感じである。多分、関町に確かな演技力があるから押し切れたのである。

◎ファイナルステージ
1.かもめんたる
 「冗談どんぶり」1本で押し過ぎである。
 最後に変化をつけようとしていたが、ただ単に説明台詞になってしまっていたのも問題である。内容も怖く、観客からも悲鳴が上がっていた。

2.タイムマシーン3号
 関は、器用貧乏な感じがすごい。自分の芸達者ぶりをネタに入れ込もうとし過ぎて散漫になっている感じがあるので、もっとネタそれ自体を磨く(ボケ一つ一つの質を上げる)方向に労力を使った方がいいのではないだろうか。

3.かまいたち
 あらびき団でやってたネタ。筆者はかなり好きである。
 やっぱり、ちょっと怖いのが問題である。この狂気は、あらびき団にはぴったりはまるのだが、キングオブコントに出すにはもう少しコメディチックな部分を増やした方がいい。

4.ライス
 関町のキレる芝居がうまいのはいいのだが、尿漏れがテーマだったのでジャングルポケットの1本目よろしく少し嫌悪感を抱かせてしまうのが問題か。

5.ジャングルポケット
 医者役のおたけが自然にボケに関わってくるあたり、非常に役者チックである。ただ、一流の役者が持っているような舞台の空気を支配するオーラと間の余裕みたいなものが誰にもなく、芸人みたいにガチャガチャ動くので、あまり台本と演者とがマッチしていない感じがする。

管理人/副管理人のみ編集できます