2016年2月6日放映のフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!(めちゃイケ)」、メインは「痔7」という企画だった。
岡村を筆頭とする痔持ち芸人7人を集め、痔について語らせるという内容である。岡村以外のめちゃイケメンバーは、記者という立場でスタジオの後ろに陣取り、痔持ち芸人をイジるガヤ要員である。
痔という素材は、ベタながら非常によい。ただ、今回も料理の仕方が全くなっていない。前回並みに問題がそこかしこにあった。
まずこの「痔7」という企画名は、当然ながらG7のダジャレであり、企画自体も今年開催される伊勢志摩サミットを意識した作りになっていた。が、せっかくのダジャレが全然活かせていない。却って、弊害すら生んでいた。
伊勢志摩サミットのパロディをやるなら、伊勢志摩サミットをバカにして茶化すことになるが、「痔」というテーマでそういう政治的なこともやり始めると収拾がつかなくなる。なので、伊勢志摩サミットのパロディを正面からやることはできないし、やらない方がいい。現に、今回のオンエアも伊勢志摩サミットをバカにして茶化す内容にはなっていなかった。
となるとどうやって笑いをとるかであるが、今回の「痔7」という設定は、「G7のダジャレ」以上の意味で笑いを生むことはなかった。平たく言えば、出落ちである。
先述のように痔持ち芸人は7人出てきたが、それぞれG7首脳をまねることもなく、漫然と画面上に登場しただけである。わずかに加藤が「岡村は立場的には日本なのか」という趣旨の指摘をしたに過ぎない。
オンエアが進むと、「提言」という形で痔持ち芸人がしゃべったりVTRを見せたりするが、サミットのように会議をすることはない。すなわち、「伊勢志摩サミットに寄せる」という演出は全てが中途半端で、上記の出落ち以外に笑いにつながったものは何一つなかったのである。
却って、「痔7」というタイトルにしてしまったために痔持ち芸人を7人集めざるを得なくなり、画が散ってしまった。今回出てきた痔持ち芸人は、濱口が冒頭に指摘したように全体的に小粒であり、アドリブのフリートークができていたのは、岡村と木本だけである。
あとの面子は、自分のパートの台本を守るのが精一杯で、他の出演者と全く有効な絡みができていなかったのである(ヒデはちょくちょくアドリブで入ってきてはいたが、特におもしろくはなかった)。それならば、わざわざ痔7という形にせずに、岡村と木本だけを呼び寄せて、痔のイメージアップを図るという触れ込みでトークをさせるだけで良かった気もする。その2人に記者席から加藤や濱口が茶々を入れて、喧嘩をさせるのである。
痔や、痔にまつわる日常生活の困りごとは、誰がしゃべっても大体同じだろうから、7人も話し手を用意する必要はない(現に、ヒデの話は冒頭の岡村や解説役でスタジオにいた医師の話とほとんど同じだった)。そのうえで、最後の方に痔持ちが嫌がる激辛料理や尻への直接打撃というリアクション芸を入れ込んでやればよい。今回は、他に余計な小粒芸人を集めてしまったせいで、彼らにもトークの順番を回さざるを得なかった。でも彼らの話は、小粒なのであまりおもしろくもない。台本を守ることしかできないので、記者席からガヤを入れてもいい返しができない。だから、いい流れができてもぶっつり切れてしまう。激辛料理や相撲みたいなリアクション芸のくだりも番組の途中の変なタイミングで入っており、全体を通してのコンセプトが見えてこない。痔について語りたいのか、痔持ちをイジり抜きたいのか、何なのかよく分からないのである。
そもそも、激辛料理や相撲のくだりが途中で出てきたことからしても、今回のオンエアは、実際の収録の順番をガチャガチャに入れ換えて編集しているような印象を受けた。そこまでいじくり回す必要があったのは、収録中にあまりハネなかったからだろう。
前回と併せて、いっそうスタッフの劣化を疑わざるを得ない内容である。撮れ高があるかどうかが心配だから、あれもこれもと色々なものを詰め込んで結局よく分からなくなるのだろう。自信がないから、芸人を7人も呼ぶ。自信がないから、伊勢志摩サミットに寄せようとする。自信がないから痔とはあまり関係のないネタやVTRで尺を稼ぐ。そのくせ、「痔7」という出落ちタイトルを考えただけで思考停止に陥ってしまい、肝腎の中身はきちんと考えない。
どうせ、明け方の企画会議でこのようなやりとりがあったのだろう。
「岡村に痔について語らせる企画でいいんじゃない?」
「タイトルは、どうしようか」
「痔だから……、『痔7』でいいだろう(笑)」
「(笑)いいな。『痔7』なら痔持ちをあと6人呼んじゃうか(笑)」
「いいねいいね(笑)」
ただ単に会議のその場でウケをとろうという素人の大学生のノリである。視聴者にとっておもしろいかどうかが、全く考えられていない。それでオンエアまで突っ走ってしまうのだから、プロの風上にも置けない。
めちゃイケは、そんな手抜きを許さない職人の集団だったはずである。
今回も、めちゃイケスタッフの劣化を疑わざるを得ないシーンがあった。前回と同じく個別の編集で全く褒められない点が2つあったのである。
1つは、芸人たちと同じく痔持ちのカガリPが手術を受ける模様を収めたVTRである。シンプルに、カガリPの手術にカメラが入っただけのドキュメンタリーになっており、何一つおもしろくなかった。単なる、尺稼ぎとしか思えなかった。
もう1つは、激辛料理のくだりである。実際に激辛料理を食べる直前になって、「激辛料理はやめて欲しい」という痔持ち芸人の発言が割り込まれるという編集になっており、前回と同じくフリの潜在化ということが全く意識されていなかった。
もう一度分かりやすく言う。「激辛料理はやめて欲しい」という発言は、フリである。事前にこのような発言をしたのに激辛料理を喰わされるからズレが生まれ、ボケになるのである。でも、このフリをボケの直前に不自然な形で入れてしまうと、視聴者は何か起こるのだなと期待してしまい、ハードルを上げてしまう。フリは、もっと自然な流れで入れて視聴者の記憶に潜在化させ、奇襲を仕掛けねばならない。なんで2週続けてこんな素人丸出しの編集をするのだろうか。何か理由があると思いたいが、あり得るのは、実際のフリのシーンは激辛料理を食べるくだりの前にはなく、後から撮ったものだったという可能性である。
この場合、確かにボケの前にフリを持ってくるには、編集で割り込ませるしか方法がなくなるのだが、それはそもそも実際の収録でまずフリのシーンを撮るような台本・進行にしなかったスタッフのポカである。それに、後から撮ったにしたって、フリをもっと自然な形で視聴者に潜在化させるべく、知らぬ顔で置いておくぐらいの編集にしなければならない。どっちにしろ、言い訳にはならない。
岡村を筆頭とする痔持ち芸人7人を集め、痔について語らせるという内容である。岡村以外のめちゃイケメンバーは、記者という立場でスタジオの後ろに陣取り、痔持ち芸人をイジるガヤ要員である。
痔という素材は、ベタながら非常によい。ただ、今回も料理の仕方が全くなっていない。前回並みに問題がそこかしこにあった。
まずこの「痔7」という企画名は、当然ながらG7のダジャレであり、企画自体も今年開催される伊勢志摩サミットを意識した作りになっていた。が、せっかくのダジャレが全然活かせていない。却って、弊害すら生んでいた。
伊勢志摩サミットのパロディをやるなら、伊勢志摩サミットをバカにして茶化すことになるが、「痔」というテーマでそういう政治的なこともやり始めると収拾がつかなくなる。なので、伊勢志摩サミットのパロディを正面からやることはできないし、やらない方がいい。現に、今回のオンエアも伊勢志摩サミットをバカにして茶化す内容にはなっていなかった。
となるとどうやって笑いをとるかであるが、今回の「痔7」という設定は、「G7のダジャレ」以上の意味で笑いを生むことはなかった。平たく言えば、出落ちである。
先述のように痔持ち芸人は7人出てきたが、それぞれG7首脳をまねることもなく、漫然と画面上に登場しただけである。わずかに加藤が「岡村は立場的には日本なのか」という趣旨の指摘をしたに過ぎない。
オンエアが進むと、「提言」という形で痔持ち芸人がしゃべったりVTRを見せたりするが、サミットのように会議をすることはない。すなわち、「伊勢志摩サミットに寄せる」という演出は全てが中途半端で、上記の出落ち以外に笑いにつながったものは何一つなかったのである。
却って、「痔7」というタイトルにしてしまったために痔持ち芸人を7人集めざるを得なくなり、画が散ってしまった。今回出てきた痔持ち芸人は、濱口が冒頭に指摘したように全体的に小粒であり、アドリブのフリートークができていたのは、岡村と木本だけである。
あとの面子は、自分のパートの台本を守るのが精一杯で、他の出演者と全く有効な絡みができていなかったのである(ヒデはちょくちょくアドリブで入ってきてはいたが、特におもしろくはなかった)。それならば、わざわざ痔7という形にせずに、岡村と木本だけを呼び寄せて、痔のイメージアップを図るという触れ込みでトークをさせるだけで良かった気もする。その2人に記者席から加藤や濱口が茶々を入れて、喧嘩をさせるのである。
痔や、痔にまつわる日常生活の困りごとは、誰がしゃべっても大体同じだろうから、7人も話し手を用意する必要はない(現に、ヒデの話は冒頭の岡村や解説役でスタジオにいた医師の話とほとんど同じだった)。そのうえで、最後の方に痔持ちが嫌がる激辛料理や尻への直接打撃というリアクション芸を入れ込んでやればよい。今回は、他に余計な小粒芸人を集めてしまったせいで、彼らにもトークの順番を回さざるを得なかった。でも彼らの話は、小粒なのであまりおもしろくもない。台本を守ることしかできないので、記者席からガヤを入れてもいい返しができない。だから、いい流れができてもぶっつり切れてしまう。激辛料理や相撲みたいなリアクション芸のくだりも番組の途中の変なタイミングで入っており、全体を通してのコンセプトが見えてこない。痔について語りたいのか、痔持ちをイジり抜きたいのか、何なのかよく分からないのである。
そもそも、激辛料理や相撲のくだりが途中で出てきたことからしても、今回のオンエアは、実際の収録の順番をガチャガチャに入れ換えて編集しているような印象を受けた。そこまでいじくり回す必要があったのは、収録中にあまりハネなかったからだろう。
前回と併せて、いっそうスタッフの劣化を疑わざるを得ない内容である。撮れ高があるかどうかが心配だから、あれもこれもと色々なものを詰め込んで結局よく分からなくなるのだろう。自信がないから、芸人を7人も呼ぶ。自信がないから、伊勢志摩サミットに寄せようとする。自信がないから痔とはあまり関係のないネタやVTRで尺を稼ぐ。そのくせ、「痔7」という出落ちタイトルを考えただけで思考停止に陥ってしまい、肝腎の中身はきちんと考えない。
どうせ、明け方の企画会議でこのようなやりとりがあったのだろう。
「岡村に痔について語らせる企画でいいんじゃない?」
「タイトルは、どうしようか」
「痔だから……、『痔7』でいいだろう(笑)」
「(笑)いいな。『痔7』なら痔持ちをあと6人呼んじゃうか(笑)」
「いいねいいね(笑)」
ただ単に会議のその場でウケをとろうという素人の大学生のノリである。視聴者にとっておもしろいかどうかが、全く考えられていない。それでオンエアまで突っ走ってしまうのだから、プロの風上にも置けない。
めちゃイケは、そんな手抜きを許さない職人の集団だったはずである。
今回も、めちゃイケスタッフの劣化を疑わざるを得ないシーンがあった。前回と同じく個別の編集で全く褒められない点が2つあったのである。
1つは、芸人たちと同じく痔持ちのカガリPが手術を受ける模様を収めたVTRである。シンプルに、カガリPの手術にカメラが入っただけのドキュメンタリーになっており、何一つおもしろくなかった。単なる、尺稼ぎとしか思えなかった。
もう1つは、激辛料理のくだりである。実際に激辛料理を食べる直前になって、「激辛料理はやめて欲しい」という痔持ち芸人の発言が割り込まれるという編集になっており、前回と同じくフリの潜在化ということが全く意識されていなかった。
もう一度分かりやすく言う。「激辛料理はやめて欲しい」という発言は、フリである。事前にこのような発言をしたのに激辛料理を喰わされるからズレが生まれ、ボケになるのである。でも、このフリをボケの直前に不自然な形で入れてしまうと、視聴者は何か起こるのだなと期待してしまい、ハードルを上げてしまう。フリは、もっと自然な流れで入れて視聴者の記憶に潜在化させ、奇襲を仕掛けねばならない。なんで2週続けてこんな素人丸出しの編集をするのだろうか。何か理由があると思いたいが、あり得るのは、実際のフリのシーンは激辛料理を食べるくだりの前にはなく、後から撮ったものだったという可能性である。
この場合、確かにボケの前にフリを持ってくるには、編集で割り込ませるしか方法がなくなるのだが、それはそもそも実際の収録でまずフリのシーンを撮るような台本・進行にしなかったスタッフのポカである。それに、後から撮ったにしたって、フリをもっと自然な形で視聴者に潜在化させるべく、知らぬ顔で置いておくぐらいの編集にしなければならない。どっちにしろ、言い訳にはならない。
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