当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2016年3月12日放映のフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!!(めちゃイケ)」は、前週の三中再オーディション企画の続きのような内容だった。
 前半は、前週の生放送直後に「めちゃめちゃタメしてるッ!」というネット番組で、生でネット配信された不合格残念会のおもしろいところを地上波用に抽出したダイジェスト版と、その後の先輩芸人たちへのお礼参りの様子である。
 後半は、三中を主役に据えたドキュメンタリーコントである。
 コントの設定は、以下のようなものである。めちゃイケメンバーやスタッフに怒っている三中が、メンバーを学校のプールサイドへと呼び出す。三中が言いたいことのあるメンバーを一人ずつ前に出させ、怒りの元になっているエピソードを話して笑いをとったあと、プールに落とす。この繰り返しである。昔のめちゃイケでは、よくあった設定のコントである。過去の放映回で今回の三中のように「怒る」役回りをでよくやっていたのは、岡村と、あと中嶋Pだった。
 ここに書いた通りこれはあくまでコントであり、台本があるのだが、めちゃイケはこれを三中が本気で怒ってメンバーを呼び出しているかのような体で撮る。コントではなく、ドキュメンタリーのように撮るのである。だから、ドキュメンタリーコントなのである。
 ドキュメンタリーに見せかけるためにもう一つ大事なことは、台本をあまりガチガチにし過ぎないことである。今回のものだと、三中がメンバーを呼び出す順番と、呼び出したメンバーに話すエピソード自体は事前に決めてあったであろうが、怒っている三中にメンバーが入れるガヤ、前に出るメンバーを三中が指名した時のフリの台詞(「カガリには怒ったらアカンやろ」みたいなやつ)、三中が話すエピソードに各メンバーがどう反論するか、プールに落とされた後の感想コメント、などにはほとんど台本はなく、演者のアドリブに任されていると思われる。すなわち、三中に呼び出されてプールにやってきたメンバーは普段通りのリアクションをしているだけなのである。だから、ウソの芝居であるコントではなくて、三中が本当に怒ってメンバーを呼び出しているように見えるのである。
 こうなると、このコントを成立させるために最も重要なのは当然ながら三中である。事前に台本が作ってある部分については台詞を頭に叩き入れるのは言うに及ばず、アドリブでガヤを入れてくるメンバーに対して、怒っている芝居を維持しながらアドリブで対応しなければならない。そのアドリブで、笑いもとっていなかければならない。
 例えば、「何を怒ってるんだ?」というガヤを入れられたら、キレて一際大きな声を出し、静かにするように言うというのは一つの対応のしかたである。「お前が怒るのはおかしいだろ」というツッコミのガヤを入れられたら、やっぱりキレて理不尽な理屈を並べ出すと笑いにつながるだろう。あまりにうるさいメンバーは、当初の台本を無視してプールに落とすというのも一つの手である。三中は、1vs16の構図で飛んでくるガヤを全てさばきながら、多勢に負けずに笑いをとっていなければならないのである。
 で、肝腎の三中のパフォーマンスだが、まだまだなっていないというのが正直なところである。昔同じような設定のコントで三中の役回りをやっていた岡村にはおろか、ヘタすると素人の中嶋Pにも負けている。
 まず、怒っている芝居にあまり迫真性がない。声は、もっと大きくていいし、もっと厚みが欲しい。芝居をしている感じが抜けておらず、三中の口から出る怒りの台詞が上滑りしていた。表情も中途半端である。もっとメンバーにガンをくれてやった方がそれっぽくなる。立ち上がって近くで睨みつけてもいい。口は半開きがいいだろう。浜田のような軽い暴力もありである。物を投げてもいい。ガヤを入れるメンバーに対しても、怒鳴ったりして制さないといけない。ガヤを泳がせ過ぎなのである。泳がせ過ぎであるため、静寂の瞬間もそれほどはなかった。静寂の瞬間があると、「三中が怒っている空気」が出るため、例えばガヤをしばらく無視して間をとり、メンバーが静まるのを待つのも一つの手である。ひとりひとりを呼び出す場面でも、ですます調でしゃべってはいけないし、「加藤さん」とさん付けで呼んでしまっては怒りが伝わらないだろう。加藤から「ウシジマくんに出てくる奴みたいだ」というガヤを入れられて吹いてしまう瞬間もあったが、そうなったら誤魔化すために立ち上がって怒鳴るぐらいのことをやれば笑いがとれるはずである。また岡村の反論に対しては、口喧嘩をせずにすぐにプールに落としてしまったが、そこで負けてはダメである。
 岡村や加藤なら、ここで書いたことが全てできる。演技力が高いから、本当に怒っているように見えるのである。
 ただ、見ていられないほどひどくもなかったので、これから稽古を積めば何とかなるとは思う。三中も何回も練習をしただろうが、周りのメンバーもこれをコントとして成り立たせるために普段よりガヤを控え目にしたからこそ、見ていられたという側面もあると思う。ただそれは単純に「ガヤに対して怒っている側がキレて喧嘩になる」という笑いの絶対量が減ることを意味するので、できるならばやらない方がいい対処法である。
 あと、相方の臼杵は芸人として三中の横にいるのに何もしなさすぎである。唯一口で三中の味方をできる人間だったのだから、自分も怒っている芝居をして三中をサポートしないといけない。臼杵の怒りの芝居に迫真性があれば、「他人のことなのにムチャクチャ怒っている」という点がズレになり、笑いにもつながっていく。
 翻ってみるに、前半の先輩芸人へのお礼参りのシーンでも、臼杵は突っ立っているだけで何もしていなかった。柴田にツッコませるに任せて相方なのにツッコまない臼杵。三中が大地と一緒にパンツ一丁になっているのに隣で見ているだけの臼杵。この何もしなさ加減をツッコめていたのはエガちゃんだけだったのが、この点が筆者の疑いを強くする。何もしないのは、芸人に対して本気じゃないからではないだろうか。本気じゃないのは、三中とコンビを組むのが番組側の仕込みだからじゃないだろうか。柴田やダイノジやめちゃイケメンバーがこの点をツッコまないのは、番組に気を使い過ぎてその点を視聴者に気付かせたくなかったからじゃないだろうか。

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