当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2016年5月7日放映のENGEIグランドスラムを見た。
 過去の放映回に対するものと同じ内容になるが、一応感想を記す。同じ内容になってしまうのは、この番組に全く進歩がないからである。

 最初にもう一度確認するが、「ENGEIグランドスラム」を名乗るからには、本当におもしろい芸人に本当におもしろいネタをやってもらわないといけない。本当におもしろいネタを作るには、芸人にネタ作りを任せていてはダメである。芸人が作ったネタをいったん番組側のスタッフがチェックして、改善すべきところを改善し、練り上げる作業をやっていかないといけない。これを、「ネタ見せ」と言う。漫画で言うところの編集者がやるべき作業である。この番組は、このネタ見せを、あまり(というかほとんど)やっている形跡がない。
 出てくる芸人が売れっ子だからネタ見せの時間がとれないのだろうか。番組のスタッフが忙しいのだろうか。大御所になった芸人のネタに口を出しにくいのだろうか。いずれにせよ、手を抜くための言い訳にしかなっていない。ENGEIグランドスラムを名乗る番組を作るからには、手を抜いてはいけないところである。

 もう一つ、更に根本的な問題として、ここまでやってネタを練り上げてもネタの垂れ流し番組にしかならない。ネタをやるとなると、視聴者の側も「これからおもしろいものが見られるのだろうな」と期待して、ハードルが上がってしまい、笑いで一番大事な奇襲の妙味が失われてしまう。この奇襲を成し遂げるために必要なのは、視聴者が油断している場面で笑いをぶつけていく作業である。その一つが、フリートークである。
 せっかく司会にもナイナイという芸人がいるのだから、ネタ後などにナイナイと芸人とでフリートークをさせて、そこで笑いを生み出す作業が必要なのではないだろうか。視聴者はネタが終わって「もうおもしろいシーンは終わりだな」と油断しているので、その後のトークでおもしろい流れが出れば存分に奇襲を仕掛けることができる。無論、漫然とトークをさせただけでは笑いが生まれない可能性も高いので、しっかりと事前に台本を組んでおいて、おもしろい流れが出るように仕向けておくのである。これもガチガチにやりすぎるとネタと同じで事前に作った人工の笑いになってしまうので、あくまでアドリブでその話題が出てきたような演技を芸人たちにはしてもらうことになる。普段からめちゃイケのドキュメンタリーコントで鍛えられたナイナイには、お手の物だろう。

 ちなみにナイナイがネタをやるべきかどうかについては、筆者はやらなくてもいいと思っている。過去の放映回に対する感想では「やるべきだ」と何度も書いているが、あれはうちの父がナイナイがネタをやることにこだわっていたために入れさせられた内容であって、筆者の本心ではない。芸人には、ネタがおもしろい芸人と、おもしろくない芸人とがいる。ナイナイのネタを筆者はちゃんと見たことはないが、噂に聞くようなネタはないし、現在も頑なにネタをやろうとしないので、おそらくそんなにおもしろくないのだろう。ネタがおもしろくない芸人に、わざわざおもしろいネタを見せる番組でネタをやってもらわなくてもいい。逆に、ネタがおもしろくないのであれば出演のオファーがあっても断るのが真のプロというものであろう。ナイナイは、めちゃイケのドキュメンタリーコントやフリートークや動きの方がおもしろい芸人なのである。
 そして、裏を返すと、ナイナイ以外にもテレビでやるようなおもしろいネタを持っていないのにわざわざこの番組に出続けている人たちがいる。そういう人たちは、ネタの改善ができないのなら、もうこの番組に出ない方がいいのではないだろうか。その代表格が、オードリーと爆笑問題である。別に2組ともネタ以外で輝ける部分を持っているのだから、ネタはライブで「大ファン」向けにやってさえいればいいのにな、といつも思う。

<各論>
1.オードリー
 何度でも言うが、オードリーの漫才は一種類である。全て「春日がヘタクソ」というボケの繰り返しなのである。
 今回これを打破するためかどうかは知らないが、変化球として若林がボケるくだりを入れてきていた。ただ、まだまだである。

2.サンドウィッチマン
 筆者は過去に見たことがあるラーメン屋のネタである。
 ENGEIグランドスラムを名乗るからには、新ネタを芸人とスタッフが一緒に作り上げていく必要があるのではないかというのは総論に記したとおりである。

3.ジャルジャル
 フィリピン人に扮する福徳がでたらめなフィリピン語を話し、それを後藤が解説していくネタ。
 何度も出てくる「チュッティ」という語の意味が最後に明らかになる緻密な構成はいいのだが、福徳のデタラメな外国語のクオリティが、端的に言えば水準に達していない。礼二に、勝てていないのである。なんか日本人が無理して真似しているなというのが分かってしまうため、いまいち感情移入できない。

4.麒麟
 川島が偏執狂的に怒る観光地の饅頭屋に扮するネタ。
 若干、怖かったのが問題である。多分相対する田村が川島のこのキャラにマジでイラついているのが伝わってきてしまったからだと思うので、もう少し冗談めいた雰囲気を出す必要があるかと思う。

5.あばれる君
 前の麒麟がネタ中に触れた「右スコ」が偶然出てきたが、それに全部持っていかれてしまった印象。つまり、本ネタはそれほど印象に残るものではなかった。

6.ロザン
 うーん、まあ。

7.ロッチ
 ネタ自体はおもしろいのだが、周囲の状況にいちいちオウム返し気味にツッコむコカドがうるさい。そもそも演技力が低いのでマジでツッコんでいる感じが伝わってこず、寒い。演技でツッコんでいるというのが観客に伝わってしまうと、「ああこれは事前に考えたお話で、ボケも台本通りなんだな」というのが分かってしまい、更にハードルが上がってしまうのである。ツッコミは、堤下やサンド伊達のような分かりやすい迫真性を身につけないといけない。それにオウム返しじゃなくて、センスの伝わる言葉選びをしてもらいたい。

8.トレンディエンジェル
 前半の「斎藤さんと一緒」というネタが後半で「高齢者と一緒」と姿を変えて返ってくる構成は流石である。なんかこの感じのまんまベテランになればいいんじゃないだろうか。

9.アンガールズ
 田中演じる変態が主役のコントだが、変態だったらもっとすごいのがネットにたくさんいるため、このネタだと、ネットのアブノーマルで危険な笑いには勝てないだろう。テレビではネットなみに危険な変態は放送できなくなるので、根本的にコンセプトを変えた方がいいと思う。
 あと田中の芝居がヘタなので、全然ヤバい奴を演じ切れていない。アンガールズはもともとヘタクソな芝居が売りのコンビだったのだが、わざとヘタクソにやっているのなら少なくともこのネタでは止めた方がいいと思う。もっとも、ずっとこんな感じなのを見ているとあんな感じでしかできないのだろうが。

10.博多華丸・大吉
 これは、これでいいんじゃないだろうか。

11.バカリズム
 筆者は岡村の言ってたように一休さんの側に感情移入してしまったため、一休さんが可哀想で笑えなかったが、個人差だろう。

12.ますだおかだ
 しょうもないぶつ切り漫才。






 岡田にもっと暴れさせた方が筆者は好きになれると思う。

13.吉本新喜劇ユニット
 筆者は今回の放映では一番おもしろかった。なんというか、基本に忠実である。

14.COWCOW
 ノーコメント。

15.銀シャリ
 橋本のツッコミの迫真性は伝わってくる。あとは特には。

16.陣内智則
 陣内以外の演者を登場させてはいたが、基本はいつものネタよろしくボケを機械にやらせる疑似漫才だった。陣内は演技がヘタなので、いまいちマジでツッコんでいる感じが伝わってこず、寒いのが根本的な問題である。ロッチのコカドと同じ問題である。
 あとオチに陣内のツッコミの台詞が欲しかったが、どうせヘタなのでどっちでもいいか。

17.渡辺直美
 デブとブサイクのフラを持つ本人がLADY GAGAのPVをキレよく再現するというネタ。ずっと一本調子なので、早々に飽きる。というよりこの人のネタがすべてこの感じなので、筆者は見る前から飽きている。

18.チュートリアル
 おもしろいよ。

19.つぶやきシロー




20.バイきんぐ
 西村が演じる変な人が小峠に絡み、小峠がキレながらツッコむといういつものスタイル。このネタでは西村の「変さ」加減は見ている方をイラつかせるレベルに達しており、それが笑いを阻害していた。また、オチはこの西村がうまいことやりこめられており、非常に溜飲の下がるものだったが、スカっとするだけでやはり笑いにはつながっていなかった。

21.矢野・兵動
 兵動一人で事足りるいつものスタイル。今回の矢野は、邪魔くさいというほどではなかった。

22.ジャングルポケット
 非常に、役者の舞台劇のようなコントである。そうなると、問題点は東京03と一緒で、ボケがずっとコントのテーマとして決めたものの一本調子になってしまうということである。あと斉藤の顔芸でカバーしている部分がかなりあるので、東京03ほどテーマが練られていない。

23.ナイツ
 塙の小ボケを積み重ねていくいつものスタイルではなく、変化球だったが、可能性は感じた。ただ髪の毛とか睾丸とかが出てきたうえに、塙兄弟のヤバさも感じられてしまい、若干気持ち悪かった。

24.中川家
 いっつも大したコメントが出てこないが、多分安定してまとまっているからだろう。

25.爆笑問題
 まあ、全く改善は見られない。詳しいことは以前の記事で書いた通りである。
 こうなると、もうこういうネタしか書けないのではないかと断じざるを得ない。それなら、テレビで漫才をやる必要はない。この番組の後に放映されたお笑い向上委員会で見せたような無茶苦茶さが太田の芸の持ち味である。それだけやってくれていれば、よい。

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