当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2016年6月23日放映の「とんねるずのみなさんのおかげでした」を見た。2時間半スペシャルであり、中身は「全落オーガスタ」だった。

 「全落」は、過去に何度もやっている企画であり、筆者も幾度となく話題にしていると思うが、出演者を落とし穴のドッキリに引っ掛けるという非常に古典的な企画である。流石に「フジテレビ」の「みなさん」なので、金はたくさんかけられており、落とし穴のギミックにも色々な工夫が凝らされていて、視聴者を飽きさせまいという努力は感じられる。
 椅子に座るとその椅子がジェットコースターのように動きだして池に放り出されるとか、桟橋状の通路の先端でパフォーマンスをしていると後ろから撞木のような仕掛けに突き落とされるとか、モニターを見ていると大きな人形に蹴られ、後ろの池に放り込まれるとか、そういった感じである。

 ただいくら細かいギミックに工夫を凝らそうとも、笑いの大元になる「ズレ」が「突如落とし穴に落とされる」というもの一本であるため、飽きが早い。ギミックの工夫は、マイナーチェンジにしかならない。そのうえ同じような落とし穴を1回の放映で10人前後の芸能人に仕掛けるのだから、あっという間に飽きてしまう。ましてこの企画は今回で実に12回目なのである。

 ここに変化を加えるのは芸人・とんねるずの役目だろう。
 散々書いているが、とんねるずの持ち味は、軽々と一線を超えることである。本来の落とし穴のターゲットがいるのに、他の芸人を落とすとか、芸人ですらないスタッフを落とすとか、あるいは仕掛け人でしかないキレイどころ(女優など)を落とすとかいった傍若無人は、とんねるず以外の芸人では「笑い」の範疇で成立させることが難しい。あるいは落としたターゲットを敢えて無視して「(オンエアでは)ダイジェストだな」などと発言するといったパターンもあり得る。これらも、ズレではあるが、「本来落としてはいけない人を落としている」「本来注目すべきターゲットの扱いがぞんざいになっている」といったズレであり、「落とし穴」という本道のズレとは種類が異なるのである。
 ただとんねるずのこういう一線越えの笑いもパターン化されており、何度も繰り返され過ぎていて最早ズレでもなんでもなくなっている。とんねるずが出てきた時点で、「それぐらいのことはやるんだろうな」と予想がついてしまうのである。しかも前述のように、今回の「全落」は12回目なのである。

 そして今回のオンエアで出てきた落とし穴も、全体的に過去に登場したギミックの焼き直しであり、とんねるずの一線越えもそこまで見られなかった。吉村・あばれる君・ゴルゴ松本に対する扱いのひどさはとんねるずらしかったが、この番組では見飽きた光景である。
おもしろかったのは、進行役の矢作があとで使う落とし穴に引っかかってしまった瞬間と、池に落とされたいっくんが陸に上がろうとして 力負けしてしまった瞬間である。いずれも天然ボケであり、確実に新鮮なズレがあった。逆に言うと、この番組のこの企画で「人工」に用意された笑い所は、全て展開の予想できる「使い古された」パターンであり、ズレにも何にもなっていなかった。

 せっかくこれだけのお金と人を使えるのだから、もっといろいろな試みをしてほしいのだが。

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