2018年1月20日放映の「人志松本のすべらない話」を見た。
※過去記事
→2016.7.9すべらない話
→2017.1.7すべらない話
一人で笑いどころを作る必要がある「エピソードトーク」というピン芸の特質は筆者がすでに述べているところであるが、もう一度以下に簡潔にまとめる。
・自分でボケる場合はツッコミという手段が使えないので、フリを意識する必要がある。
・自分が見かけたボケにツッコむタイプの話もあるが、その「ボケ」を自分の語り口で聞き手に想起してもらう必要があるので、実際に聞き手の眼前でボケが繰り出される場合より訴求力や分かりやすさに劣る。そのボケが実際に繰り出されると客を引かせてしまうようなレベルのものでないかぎり、エピソードトークという手段自体の強みは出てこない。そのレベルに達していないボケの場合は、ボケを実際に見た方がおもしろいと思われる。
・ボケの内容がお客さんを引かせてしまうようなレベルにある場合、まずそれよりはズレの程度が低いボケを並べておいて、お客さんを慣らすという手法も多用される。これは筆者が定義するところのボケフリである。
・途中に笑いどころがあればオチがおもしろい必要はないと思う。
さて今回も4段階で個々のエピソードトークを評価してみる。
◎:爆笑
○:声を出して笑った
△:おもしろいとは思ったが声を出しては笑わなかった
×:おもしろくない
ス:スベったことがおもしろかった
出川1「箸の持ち方」:×
和田アキ子のボケを笑う「ツッコミ」タイプの話。自然なフリが利いているが、「スベらない」と銘打ってまで話すほどの話ではないと思うので、もっと短くまとめて、雛壇で箸休め的にちょいっと披露する感じの方がいいだろう。
山内1「下着泥棒」:◎
これも警察官のボケを笑う「ツッコミ」タイプの話である。多分、実際にこんなシチュエーションをお客さんに見せると下着泥棒の気持ち悪さで笑いどころではなくなる可能性があるので、エピソードトークの強みは活きていると思う。
直美1「母」:△
母のボケを笑う「ツッコミ」タイプの話。若干スベっていたのがおもしろくもあった。
宮根1「やしきたかじん」:×
やしきたかじんの傍若無人ぶりを笑う「ツッコミ」タイプの話である。
関東人の筆者にはたかじんの人となりがそんなにピンと来ないので、関西人だったらおもしろいのかも知れない。
いくつかのエピソードの集合体のような話だったが、もしかしたら前半に出てきたエピソードは大オチに向けてたかじんのキャラクターを理解させるためのフリ(ボケフリ)だったのかもしれない。ただそれにしては最後のエピソードが一番濃いわけでもなく、いくつかの話を単純につなげたオムニバス形式のようになっていたので、もうちょい構成を練った方がいいと思う。
秋山1「キタハタくん」:×
ロバートが優勝したキングオブコント2011でネタ中の音響オペレーターを務めていたキタハタくんという作家の話である。エピソードトークの強みも活きていない。実際にキタハタくんがオペレーターをやる様子を見てみたい。
せいや1「彼女」:×
せいやのエキセントリックな彼女の話。
「好きな気持ちがピーンってはじけた」とか「グーってなる」とか「知ってる人から逃げるのは怖い」とかいったせいや本人の表現や感じ方が独特であんまり話に集中できなかった。あと若手ゆえの緊張が原因なのか、全体的に走り気味だったので、もうちょい落ち着いてゆっくりと話して欲しいと思った。
宮川大輔1「夜中の公衆トイレで」:×
結局大輔が聞いた「イーッ」ていう音が声なのかジェルから出てくる音なのかなんなのかが分からないので笑っていいものかどうか面食らう。そのうえ、モヤモヤする。
松本1「宮迫」:△
構造は出川の話と同じ。出川より声は出ているが、それでも△評価にしかならない。
小籔1「オーベルジーヌ」:◎
筆者の中のMVSである。ボケ役はAPさんだが、その人の「電話するだけなんで」という台詞を小籔が繰り返すほどにおもしろくなっていった。
APさんの不可解な行動の原因についてむしろ知的興味が湧いたが、多分問い詰めても納得のいく答えは出てこないようなタイプの人だと思う。
大城1「埋められて…」:◎
不良に友達と一緒に首だけ出した状態で埋められたというウシジマくんのような話である。多分それをそのまま見せるとこちらは引いてしまうので、「話にすることによる間接化」というエピソードトークの強みが存分に出ている。
ただそれでも、筆者は少し怖く感じてしまった。
ジュニア1「はとバスツアー」:×
はとバスのガイドさんが細かい注意事項をたくさん話したというフリと、その後の目的地でいたずらっぽく遊ぶ老夫婦がいたというオチがあんまり対応していないと思った。
春日1「大阪」:×
エピソードトークの利点は出ていない。実際にその場面を見ることができたほうがおもしろくなるとおもうので、小ネタレベルの話である。もっと簡潔にまとめて欲しい。
兵動1「腹芸」:×
同上。
宮根2「お葬式」:×
同上。
ほっしゃん1「長男」:×
オチが読めてしまった。読まれるのを避けるために、「ズッキーニ」や「プライバシー」以外のギャグを煙幕として紹介しておいても良かったやも。
ジュニア2「後輩のフクダ」:×
一緒にエジプト旅行に行ったフクダに散々振り回されたという話。
フクダがかなりムチャクチャな人物なので、ちょっと引いてしまう。エジプト旅行の話に入る前にフクダの小さなムチャクチャエピソードをフリとして出しておいた方が良かったのではないだろうか。
松本2「作家のサダ」:×
松本が付き合いのあるサダという放送作家の貧乏話。前のジュニア2の話と違い、最初にサダのムチャクチャさを小さなエピソードで表現している。それでもそんなにおもしろくないのは、多分話に出てくるサダの言動にそんなに意外性がないからである。エピソードトークの利点があまり活きていないので、実際のサダを見てみたい。サダ本人を「水曜日のダウンタウン」のクロちゃんみたいに泳がせて観察した方がおもしろいと思う。
せいや2「女王様」(MVS):◎
「女優のりょうさんを半分にしたぐらいの細さ」「僕はZIMAを10口くらいで飲むけどその人は3口くらいでグッグッグーって飲む」などといった独特の表現がやはり気になったが、女王様の「圧倒的」や「凡」という口癖(というより、最早ギャグ)にやられた。
大城2「番長キクチの呼び出し」:◎
ジュニアが大城の内蔵逆位について「何万人に一人」と盛って言ったのに対し、当の大城がすぐさま「一万人に一人」と訂正し、それが他の出演者からはそのままスルーされたところがおもしろかった。
それはともかく、これも大城が不良のせいで散々な目に遭った話であり、一本目と同じくエピソードトークの利点が存分に活きた話だった。
※過去記事
→2016.7.9すべらない話
→2017.1.7すべらない話
一人で笑いどころを作る必要がある「エピソードトーク」というピン芸の特質は筆者がすでに述べているところであるが、もう一度以下に簡潔にまとめる。
・自分でボケる場合はツッコミという手段が使えないので、フリを意識する必要がある。
・自分が見かけたボケにツッコむタイプの話もあるが、その「ボケ」を自分の語り口で聞き手に想起してもらう必要があるので、実際に聞き手の眼前でボケが繰り出される場合より訴求力や分かりやすさに劣る。そのボケが実際に繰り出されると客を引かせてしまうようなレベルのものでないかぎり、エピソードトークという手段自体の強みは出てこない。そのレベルに達していないボケの場合は、ボケを実際に見た方がおもしろいと思われる。
・ボケの内容がお客さんを引かせてしまうようなレベルにある場合、まずそれよりはズレの程度が低いボケを並べておいて、お客さんを慣らすという手法も多用される。これは筆者が定義するところのボケフリである。
・途中に笑いどころがあればオチがおもしろい必要はないと思う。
さて今回も4段階で個々のエピソードトークを評価してみる。
◎:爆笑
○:声を出して笑った
△:おもしろいとは思ったが声を出しては笑わなかった
×:おもしろくない
ス:スベったことがおもしろかった
出川1「箸の持ち方」:×
和田アキ子のボケを笑う「ツッコミ」タイプの話。自然なフリが利いているが、「スベらない」と銘打ってまで話すほどの話ではないと思うので、もっと短くまとめて、雛壇で箸休め的にちょいっと披露する感じの方がいいだろう。
山内1「下着泥棒」:◎
これも警察官のボケを笑う「ツッコミ」タイプの話である。多分、実際にこんなシチュエーションをお客さんに見せると下着泥棒の気持ち悪さで笑いどころではなくなる可能性があるので、エピソードトークの強みは活きていると思う。
直美1「母」:△
母のボケを笑う「ツッコミ」タイプの話。若干スベっていたのがおもしろくもあった。
宮根1「やしきたかじん」:×
やしきたかじんの傍若無人ぶりを笑う「ツッコミ」タイプの話である。
関東人の筆者にはたかじんの人となりがそんなにピンと来ないので、関西人だったらおもしろいのかも知れない。
いくつかのエピソードの集合体のような話だったが、もしかしたら前半に出てきたエピソードは大オチに向けてたかじんのキャラクターを理解させるためのフリ(ボケフリ)だったのかもしれない。ただそれにしては最後のエピソードが一番濃いわけでもなく、いくつかの話を単純につなげたオムニバス形式のようになっていたので、もうちょい構成を練った方がいいと思う。
秋山1「キタハタくん」:×
ロバートが優勝したキングオブコント2011でネタ中の音響オペレーターを務めていたキタハタくんという作家の話である。エピソードトークの強みも活きていない。実際にキタハタくんがオペレーターをやる様子を見てみたい。
せいや1「彼女」:×
せいやのエキセントリックな彼女の話。
「好きな気持ちがピーンってはじけた」とか「グーってなる」とか「知ってる人から逃げるのは怖い」とかいったせいや本人の表現や感じ方が独特であんまり話に集中できなかった。あと若手ゆえの緊張が原因なのか、全体的に走り気味だったので、もうちょい落ち着いてゆっくりと話して欲しいと思った。
宮川大輔1「夜中の公衆トイレで」:×
結局大輔が聞いた「イーッ」ていう音が声なのかジェルから出てくる音なのかなんなのかが分からないので笑っていいものかどうか面食らう。そのうえ、モヤモヤする。
松本1「宮迫」:△
構造は出川の話と同じ。出川より声は出ているが、それでも△評価にしかならない。
小籔1「オーベルジーヌ」:◎
筆者の中のMVSである。ボケ役はAPさんだが、その人の「電話するだけなんで」という台詞を小籔が繰り返すほどにおもしろくなっていった。
APさんの不可解な行動の原因についてむしろ知的興味が湧いたが、多分問い詰めても納得のいく答えは出てこないようなタイプの人だと思う。
大城1「埋められて…」:◎
不良に友達と一緒に首だけ出した状態で埋められたというウシジマくんのような話である。多分それをそのまま見せるとこちらは引いてしまうので、「話にすることによる間接化」というエピソードトークの強みが存分に出ている。
ただそれでも、筆者は少し怖く感じてしまった。
ジュニア1「はとバスツアー」:×
はとバスのガイドさんが細かい注意事項をたくさん話したというフリと、その後の目的地でいたずらっぽく遊ぶ老夫婦がいたというオチがあんまり対応していないと思った。
春日1「大阪」:×
エピソードトークの利点は出ていない。実際にその場面を見ることができたほうがおもしろくなるとおもうので、小ネタレベルの話である。もっと簡潔にまとめて欲しい。
兵動1「腹芸」:×
同上。
宮根2「お葬式」:×
同上。
ほっしゃん1「長男」:×
オチが読めてしまった。読まれるのを避けるために、「ズッキーニ」や「プライバシー」以外のギャグを煙幕として紹介しておいても良かったやも。
ジュニア2「後輩のフクダ」:×
一緒にエジプト旅行に行ったフクダに散々振り回されたという話。
フクダがかなりムチャクチャな人物なので、ちょっと引いてしまう。エジプト旅行の話に入る前にフクダの小さなムチャクチャエピソードをフリとして出しておいた方が良かったのではないだろうか。
松本2「作家のサダ」:×
松本が付き合いのあるサダという放送作家の貧乏話。前のジュニア2の話と違い、最初にサダのムチャクチャさを小さなエピソードで表現している。それでもそんなにおもしろくないのは、多分話に出てくるサダの言動にそんなに意外性がないからである。エピソードトークの利点があまり活きていないので、実際のサダを見てみたい。サダ本人を「水曜日のダウンタウン」のクロちゃんみたいに泳がせて観察した方がおもしろいと思う。
せいや2「女王様」(MVS):◎
「女優のりょうさんを半分にしたぐらいの細さ」「僕はZIMAを10口くらいで飲むけどその人は3口くらいでグッグッグーって飲む」などといった独特の表現がやはり気になったが、女王様の「圧倒的」や「凡」という口癖(というより、最早ギャグ)にやられた。
大城2「番長キクチの呼び出し」:◎
ジュニアが大城の内蔵逆位について「何万人に一人」と盛って言ったのに対し、当の大城がすぐさま「一万人に一人」と訂正し、それが他の出演者からはそのままスルーされたところがおもしろかった。
それはともかく、これも大城が不良のせいで散々な目に遭った話であり、一本目と同じくエピソードトークの利点が存分に活きた話だった。
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