当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2019年の27時間テレビです。

 2016年までは7月上下旬に放映していた(初期の放映日は、若干前後があります)ものが、おととし・去年と9月上旬の放映になり、今年は更にずれ込んで11月初旬の放映となりました。このままずれ込み続けて1年分放映せずに誤魔化そうとしているんじゃないでしょうか。

 私が「27時間テレビはおもしろくない。おもしろくない理由ははっきりしている。生放送だからである」と書いたからかどうかは知りませんが、2016年まで基本的に生放送でやっていた27時間テレビが、2017年と2018年は収録映像をかき集めた作品になりました。それが今年、再び原則全編生放送に戻りました。

 何度も同じことを言っていますが、もう1回言います。
 生放送は、少なくともバラエティにおいては収録よりも劣った手法です。なるだけやらない方がいいのです。敢えてやるのであれば、「生」でなければならないきちんとした理由が必要です。
 バラエティ番組で生放送であることを利点のように強調して言うことがあります(皆さんも画面の隅にこれ見よがしに「LIVE」という文字が出ているのを見たり、演者が「今回は生放送でお送りしています!」という台詞を言うのを聞いたりしたことがあると思います)が、上記のような生放送の欠点を糊塗して視聴者を誤魔化すための姑息な演出に過ぎません。
 あるいは、「生でこそおもしろいものが作れる」と勘違いしている作り手がいるのやもしれません。確かに、舞台は全部生です。でも舞台は演者と(大勢の)お客さんが同じ空気感を共有しているという強みがあります。作り手が用意した雰囲気も伝わりやすいうえに、周りのお客さんが笑えば他のお客さんもつられて笑ってしまうものです。テレビにはそれがありません。パブリックビューイングでもない限り周りに他のお客さんが大勢いるという状況もないでしょう。だから、舞台と同じようにやっただけでは視聴者は笑ってくれません。もっと純度の高いものを提供する必要があります。バラエティ番組のスタジオにも、お客さんがいるとなど舞台的な構造が用意されている場合があるので、その場合舞台と同じようにやればいいという勘違いが起きてしまいがちなのですが、バラエティ番組の作り手が笑わせる必要があるのはスタジオにいるお客さん(やスタッフ)ではなくて、テレビの向こうの視聴者です。スタジオのお客さんは、極論、笑い声を出してもらう「舞台装置」に過ぎません。極端なことを言えば、スタジオでウケたものでも視聴者に伝わらないのであればカットすべきですし、逆にスタジオが静まり返ったものでも編集でおもしろくできるのであれば(そういう編集をしたうえで)残すべきです。「スタジオでウケたものとOAすべき部分は常に一致する」というような言説を見聞することがありますが、これは舞台とテレビの違いを無視した非常に短絡的な思考です。頭を使うことを放棄しています。スタジオにいないお客さんにもおもしろさを伝えるために作り手が凝らす工夫が「編集」なのです。これを放棄する生放送という手法は、テレビの唯一の武器を捨て去るに等しい愚行です。その先に待っているのは、無条件降伏しかないと思います。
 生放送だと、前述のようにどうしようもない部分をカットすることもできません。テロップやらCGやらBGMやらSEやらナレーションやらといったおもしろさを向上させるための補助的な演出も極めて限定的な形でしか入れられません。だから、どんな演者であろうとおもしろさの密度が下がります。たけしだろうが紳助だろうがダウンタウンだろうが、下がります。この「密度」がほとんど下がらない日本で唯一の芸人が、明石家さんまです。だからこそ、27時間テレビで毎年たくさん出じろがあったわけです。

 だから今年の私は、さんちゃんの出ているコーナーしか見ていません。
 ただ、さんちゃんも「生でも大丈夫」というだけなので、できることなら生放送にしない方がいいです。今年の「お笑い向上委員会」なんかを見ると強くそう思います。
 OAでは通常放送時と変わらず出ている芸人の一発ネタが羅列されていく番組になっていました。ホリケンは割りとおとなしかったですが、太田が前に出てムチャクチャにするという展開が頻繁にありました。さんちゃんやら礼二やらのツッコミでオトせればいいんですが、どうしようもない展開もたくさんありました。スベったことへのツッコミでもオトせないほどどうしようもないやつは、生でなければ編集でカットできるのですが、生だとそれができません。太田やホリケンがムチャクチャやってスベるのを楽しむ番組だということであれば十分な撮れ高はあったと思いますが、それがスタッフの意図したものだとは思えません。太田が前に出るとワチャワチャしてこちらの目も散るので、場が荒れるだけでおもしろくもなんともないのです。このようにさんちゃんがいてもどうしようもないものがある以上、生放送はできるだけやらない方がいいのです。

 それでも、「どんぐりちゃん」と呼びかけられた時の寛平の反応はおもしろかったです。あとトータル一番おもしろかったのは、やたら大人しかったフジモンでした。

 ラブメイト2019の方は、安定したおもしろさでした。最後かなり駆け足になってしまっていたので、27時間ずっとこれでいいと思います。さんちゃんはとにかくしゃべりまくるので、時間を喰って収録が押すのが一つの欠点です。番組が後半の方で用意しているコンテンツに辿りつけないことも多く、そちら目当てで番組を見始めた人には恨まれることもあるようです。でもまあ、そのコンテンツに入ろうと入るまいと、あとで用意したゲストがいようといまいと、さんちゃんのやることはずっと変わりがないので、彼のトークが「本題」だと割り切って見ればいいと思います。そういう風に割り切れない人には邪魔くさく思われるのが、さんちゃんのほぼ唯一の欠点です。

 3日の17時15分頃からやっていた「たけし・さんまの有名アスリートの集まる店」は、桐生祥秀・浜口京子・村上佳菜子をゲストに迎えてのトークコーナーでした。スポーツ選手みたいなしゃべりのプロではない人をさんちゃんを絡ませる場合、天然の人を当てがった方が確実におもしろくなります。ゲストの3人は分かりやすい天然ではなかったので、さんちゃんがヨイショに回ってしまい、さほど笑いにはなっていませんでした。コーナーも約75分間と短く、本格的な山場が来る前に終わってしまいました。もっと尺が欲しかったです。
 最後にやっていたCMコントは、ひょうきん族でやっていたやつです。あのコントと類似のものがテレビで流れるとうちの父が「俺が書いたんだ」と起源を主張するのですが、本当でしょうか。芸風から言うと、さんちゃんを監督役に、たけちゃんを村上がやっていた役にして、何度も飲まされる役回りにはそういうのが似合う別の人(それこそ、岡村とか)を当てがった方がおもしろくなると思います。たけちゃんはしょうもないボケでもおもしろくできるフラの持ち主で、さんちゃんの持ち味は何でも拾えるツッコミにあるからです。たけちゃんがしょうもないNGを出すせいで隣の共演者が何度も飲まされることになるという展開の方が、ハマると思うのです。今回のコントはさんちゃんが事前に用意された台本を守りすぎている感じがしていて、正直あまりハネませんでした。

※一応最後に注意を促しておきますが、私はさんちゃんの出ていないコーナーは見ていないので、おもしろかったかどうかは分かりません。何も言う資格はありません。私が言えることは、「見ていないので分かりません」ということだけです。ただ、ラブメイト2019の冒頭にちょっとだけ出てきたたけしのしゃべりを聞き、生でこの滑舌の悪さがずっと続くと視聴者も不安を覚えるばかりだろうなあとは思いました。

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