2019年3月30日放映のENGEIグランドスラムです。
何度も言っていますが「ネタ」は笑いを生み出す手法としては優れたものではありません。テレビはもっとおもしろいことができるので、すべきです。
だいぶ減ってきたとはいえまだ無思慮にネタを垂れ流すだけの番組がテレビから駆逐されないのは、なぜでしょうか。私が考えた理由は以下のようなものです。
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多分、全部の理由が複合的に混ざり合っています。さほどおもしろくないことを承知で好きな人向けにネタ番組をやるのであれば、わざわざ止めるようなことではないと思います。「好きな人向けに作る」という発想でターゲットをしぼっているテレビ番組は、いくらでも例がありますからね。相撲中継は相撲好きしかみないでしょうし、釣り番組も釣り好きしか見ないでしょう。数字がとれるのであればスポンサーがつくのでテレビ局が儲かります。テレビ局はあくまで株式会社という営利企業なので、金儲けが本業ですから、それを止めることはできません。別に突き放したくてそういうことを言っているわけではありません。本心からそう思っています。
ただどうにもこのENGEIグランドスラムという番組は、そういう発想で作られている気がしないのです。ネタというナマクラでネタ好き以外の人にも笑ってもらおうという（極めて傲慢な）発想が背後に見え隠れてしています。冒頭に述べたようにその発想それ自体が間違っているので、早めに諦めた方がいいと思います。スタッフの中にネタが好きな人がいるかもしれないですが、度を越せば自分の個人的な好き嫌いの押し付けになりますよ。
他方で今回のENGEIグランドスラムは、単なるネタの垂れ流し番組に堕さないように色々と工夫をしている様子はうかがえました。「リズムネタ博物館」「ENGEIプレミアムラウンジ」「ENGEI歌謡祭」といった本ネタの合間合間に挟まれるミニコーナーでおもしろいことをしようとしていたのです。冒頭の火薬田ドンも同じ意図に基づくものでしょう。試みとしては買いますが、劇的な効果はありませんでした。あと、ネタ好きの人は本ネタだけ見ていたいでしょうから、諸刃の剣かと思います。
1.NON STYLE
いつものスタイルの漫才でした。
去年のTHE MANZAIの感想に書いた通りですが、恐らく素の石田はこんなにひょうきんではありません。だから、漫才で披露されているボケは人工モノだということがどうしても気になってしまいます。
石田みたいに演技力がない人がテレビで売れ続けるには、テレビで出す自分と素の自分をできるだけ近付けることが重要です。テレビで出すものが自分の素に近ければ近いほど演じるストレスは低くなってサステナビリティが上がるからです。
ただこの戦法をとるには、当然ながら「素の自分」がある程度おもしろい必要があります。太田とか東野とか春日とかチュート徳井といった例は分かりやすいですが、つまるところ、テレビで売れている芸人はみんな大なり小なり変人なんです。
石田みたいなマジメな人だと素を出されてもおもしろくないので、結局どうにもなりません。テレビに出るには多少の無理をしてでも演技を続けるしかありません。
2.ジャルジャル
このジャルジャルというコンビが、「演技力がない」＋「素だとおもしろくないふつうの人」という二重苦を併せ持った代表格です。こういう人たちはネタでしかおもしろさを出せないので、劇場や営業で生きていくのが一番です。その方がネタが好きなお客さんと触れ合えるんですから良くないですか？
何度も言っていますが「ネタ」というのは笑いを生み出す手法としてはそんなに優れたものではありません。テレビではもっとおもしろいことが色々とできます。ただそれをやるために必要な手駒は「素がおもしろい（天然の）人」か「ものすごく演技力のある人」のどちらかなのです。どちらもないジャルジャルにお呼びはかかりません。
ネタがそれほど優れた手法ではないにしても、好きな人は営業が商業的に成り立つ規模でいるので、その人たち向けにネタをやっていれば稼ぐことはできます。テレビの作り手にもネタが好きな人が一定数いるからこそ、未だにこの手のネタ番組も絶滅していないんでしょう。ジャルジャルはどこを目指しているんですか？ テレビでネタをしたいんですか？ 笑いもネタも好きじゃない人には多分響きませんよ。今のテレビがやっている「もっとおもしろい手法」にかなわないですから。
今回のネタはまあ……おもしろいんじゃないですか？
もうちょっとちゃんと論評します。
歌手デビューのオーディションを受けに来た役の後藤が、未公開のオリジナルソングをその場で歌い始めるのですが、（未公開の楽曲なのに）プロデューサー役の福徳が先回りしてその歌を歌ってしまう、という設定のネタです。当然事前に合わせていないとこんなことはできないので、マジメな下準備が強く見え隠れしてしまいます。そこが一番の問題です。マジメな下準備をしているということは、（天然ボケにはかなわない）人工ボケだということが強烈に臭い立つということにほかならないのです。
めちゃイケだったら、福徳を追い詰めるためにアドリブでこの挑戦をさせていたと思います。そっちの方がおもしろそうじゃないですか。そういうことですよそういうこと。
福徳の歌唱力はもっとあった方が説得力が出ます。うますぎるとお客さんがそっちを気にし始めるのでバランスが大事ですが。
3.和牛
2人とも漫才での演技力は申し分ないですね。テレビの他の局面でこれをコンスタントに出し続けられるのであれば、テレビでも売れます。
私は、水田の神経質キャラが出る漫才が一番好きだと言っていますが、それは水田の素に近いからなんです。素だということは、水田が普段からああいう変人だということになるので、天然ボケになるのです。同じ変人でも人工モノより現実に存在する天然モノの方がおもしろいのは自明の理でしょう。
4.ロバート
秋山は、演技力もあるし変人でもあるタイプです。あと、たまにバズるネタを作れます。それを、複数作れます（おそらく背後には、バズらなかった屍が山と積まれていますが）。体モノマネとか「都か区か」とかですね。バズるネタを作れると、演技力がなくても、変人でなくても、テレビに出ることができます。しかし、演技力もないふつうの人の場合はそのネタが飽きられた時点でポイされてしまいます。それを、一発屋と言います。何がバズるかは本当に分からないので、とりあえず数を撃つことが重要です。
今回披露されたのは「逆カラオケ」というネタでした。機械からボーカル部分が流れ、客がメロディ部分を口で言うという設定です。発想は秋山ならではですが、最後に出てきた馬場演じるマスターの衣装が何もかも逆だった（ワイシャツやベストを後ろ前で着ていました）のは、さすがに狙いすぎで冷めました。だって、逆カラオケが好きだからといって何もかも逆にするのが好きだっていうのは流石に短絡的じゃないですか？ 同好の士の秋山は普通の恰好だったし。
5.フットボールアワー
岩尾は変人なのですが、ネタで出てくる変人とは種類が違います。だから売れきれてないんですね。
他方で後藤はどんな場面でもきちんとツッコミ役ができます。きちんと演じられているか素でそういうキャラなのかのどっちかです。おそらく、演じているんだとは思いますが。
6.ロッチ
2人とも演技力がありません。中岡はあの容姿のためにリアクションで出てくる素がある程度おもしろいので、その手の仕事があります。
中岡が「めちゃくちゃ頑張らないと透視ができない超能力者」を演じるネタです。この人が連続で透視をする際に「倒れるかもしれない」とか「死ぬかもしれない」とか言うのですが、透視中の「頑張っている」演技にそれほど迫真性がないのでこのセリフも活きてきません。もっと脂汗がダラダラ垂れるぐらいの踏ん張りを見せて欲しいものです。あと多分、中岡の容姿で本当にこういう人がいたらおもしろがったテレビ局がそれなりに使ってくれると思うので、コカドの「パッと当てないとテレビでは使ってもらえない」「多分人気は出ない」といったツッコミに共感できません。
7.サンドウィッチマン
→こちらへどうぞ。
ネタをやっていないサンドウィッチマンをテレビで見たことがないので、なんで今売れているのかは正直よく分かりませんが、求められている演技力を身につけたんでしょうか。それでもM-1優勝から10年かかってようやく芽が出たので、もともとのサンドウィッチマンはネタで人気が出ただけのコンビだったということです。
8.水谷千重子（友近）＆大黒摩季 【ENGEI歌謡祭枠】
ただの歌番組になっていました。笑いのコンテンツではなかったです。
9.TT兄弟（チョコレートプラネット）＆T-BOLAN 【ENGEI歌謡祭枠】
歌詞のところどころが「ティー」に改変されていたのが笑いどころなのでしょうが、歌詞の字幕が先に表示されていたので改変があるのが分かってしまっていました。「オチの先バラシ」という、一番やってはいけないとされていることです。最初は改変前の歌詞を表示しておいて、歌が実際にその部分に差し掛かったら字幕が急に変わる、みたいな工夫が必要でしょう。ニコニコ動画に投稿されている替え歌動画もやっていることですよ。
とはいっても、本気のミュージシャンをコラボさせるとどうしても笑いではない歌番組としての要素が強めになってしまうので、どういう反応をしていいか困ります。
10.遠藤章造＆武田真治 【ENGEI歌謡祭枠】
尾崎豊のI LOVE YOUを歌っていました。2004年の27時間テレビの深夜帯のコーナーで遠藤が披露していたネタです。
1回見ればいいやつですね。武田真治と組ませたことでおもしろくなっていたわけでもありませんでした。
11.スピードワゴン
2人の素に近い部分のキャラクターが出ていたいい漫才だと思います。小沢のカッコつけキャラや「あまーい」や「ハンバーグ」といったこれまでにバズったギャグがてんこ盛りになっていました。
12.かまいたち
あらびき団に出ていた頃のちょっと危険なかまいたちが戻ってきたようなネタで、好感が持てました。冒頭の濱家の設定説明のセリフが説明的すぎたのが気になりましたが。
13.ナイツ
「AKB48」っぽい名前をこれだけ見つけられるのは確かな大喜利力の賜物だと思います。塙と土屋の素のキャラはあんまり分からないので、テレビでは使いどころが難しいんですが。
14.アンガールズ
2人の見た目の気持ち悪さという「素」は出るネタですね。
舞台上に掲げられていた「ENGEIグランドスラム 広島県熊野町出張LIVE」という横断幕がシュールで気になりました。番組側の演出ではないとは思いたいんですが、出張LIVEの全ての会場にあったので番組側の演出かもしれません。目が散るのでなかった方が良かったと思います。
15.陣内智則
機械にボケをやらせて陣内がツッコむいつものスタイルです。
1回触れたボケが時間差でまた出てくるなど重層的な構造も豊富で、大喜利力は申し分ありません。それだけに、陣内がひたすら大根なのがトコトン気になります。冒頭のヘタクソな説明台詞からこっちのHPはガリガリと削られ、ネタ中のツッコミも寒々しく空回りするばかりで、ネタで展開されるボケを本気でおかしいと思っている人だというのが伝わってきません。「自分で考えたボケに自分でツッコんでいる痛々しい人なんだ」という背後の真実が見え隠れします。というか、もうまる見えです。エンタの頃から成長していません。あれでウケてしまったからあのスタイルに安住してしまい、それ以上演技力を磨かなくなってしまったのではないかと想像すると腹さえ立ってきます。
それと、途中で英語詞が出てくるんですけど、"I can touching Frog"は間違ってますよ。スタッフはこういうところをきちんとチェックすべきだと思います。
16.アンジャッシュ
いつものすれ違いコントです。どっか別の機会でもやっていたネタだと思います。
緻密で複雑な展開は事前に台本を考えているからこそできることなので、足し算のネタに終始している他のコンビは見習ってほしいですが、この2人も演技力がエンタの頃からあんまり進歩してないですねえ。
17.千鳥
舞台上にアンガールズと同じような横断幕（厳密に言うとこの会場だけ横断幕ではなくて紙を1枚1枚貼り付けていました）がありましたが、千鳥はこれをきちんとイジってくれたのでなんとかなりました。アンガールズとの実力差が如実に出たようでちょっと悲しくなりました。
ネタはよくやっているやつでした。「クセがすごい」というフレーズが出てくる代表作でしたね。リラックスしてふざけている感じが出せるので安心して見ていられます。このコンビならではですね。
18.上杉みち（ロバート秋山）＆May J. 【ENGEI歌謡祭枠】
奥行きのある舞台を使って、遠近法で秋山を小さく見せるところだけがおもしろい出オチのネタでした。出オチの後はひたすらしゃべる秋山がMay J.の歌声に終始カブっていたので、おもしろくはなかったし、歌としても聞いていられませんでした。
19.米津ハゲん師（トレンディエンジェル斉藤）＆五十嵐結也 【ENGEI歌謡祭枠】
サビの盛り上がりとともに斉藤のカツラをとるクダリだけがおもしろいので、そこだけでいいですね。その前の部分はフリにしかならないので、フリとしては長すぎです。もっと圧縮すべきです。斉藤の歌唱力も実に中途半端です。
20.変人（原口あきまさ・ホリ・ミラクルひかる・山本高広） 【ENGEI歌謡祭枠】
やっぱ、モノマネって落とし穴がないとオチないですね。
21.タカアンドトシ
横断幕をイジらなかった……。
どっかで見たことがあります。その時と同じ感想だと思いますが、「待ってたよ」をもっとしつこくやって欲しいですね。
22.バカリズム
このおじさんが何でのぼる君に約束を持ちかけていたのかが気になりました。そこを考えて欲しいですね。
23.ますだおかだ
岡田のプライベートをイジりきったのは良かったと思います。
24.パンクブーブー
黒瀬が太ったねえ。
ネタはよくやっているやつでした。
25.バイきんぐ
小峠も西村も芝居が進歩しないですよねえ。今の状態に安住しちゃっている感じがします。あと、サンドウィッチマンと一緒で大喜利力も大したことないと思います。こちらに今回のネタを大喜利形式にしてみたものを作ってみたので、ご参照ください。
26.霜降り明星
M-1で見せたスタイルですね。
おそらくネタを考えているのが粗品なので、彼がR-1で見せたフリップ芸と同じく、重層的な構造がありません。あとやっぱり、お調子者がふざけている感じが出てしまうのがどうしても気になるのですが、好みの問題です。
27.ハナコ
ほぼ岡部のピン芸だったのでせっかくいる秋山と菊田をもっと活かしてください。「これだったらルシファー吉岡にもできるぞ」って高橋維新に言われちゃいますよ。
28.ゆりやんレトリィバァ
One Directionの"What Do You Mean?"に合わせて「意味が分からない状況大喜利」の回答を次々と披露していくネタです。音と大喜利の組み合わせは本人が得意とするところでしょう。
これもいつものことですが、大喜利の答えとしては意味が分からなすぎるものが多いので、クオリティは高くないと思います。
29.かが屋
設定は、新しいと思います。「母親へのサプライズを練習する息子とその友人」というかなりトリッキーなものです。しかし、中身のボケはスマホの画像回転にほぼ頼っていたので、それだけのネタに見えてしまいました。2人の素のキャラクターも実力も全然見えてきませんでした。
サラリと言われた「ジ・お母さんじゃない？」は今回のOAで一番おもしろかったです。
30.宮下草薙
草薙の極端なマイナス思考に宮下がツッコミを入れていくネタです。構造は吉田のマイナス思考から喧嘩が始まるブラマヨのネタに近いと思います。そうなるとどうしてもブラマヨと比べてしまいますが、ブラマヨほど派手な喧嘩はできていません。
草薙がネタで見せているキャラクターは素の彼に近いと思います。これをテレビで出し続けられるのであれば露出がもっと増えるということですね。
31.EXIT
チャラ男どうしの漫才です。その割にサザエさんを題材に「戻りガツオ」とか「ふえるワカメ」とか古典的な小噺みたいなボケを連発してきたのでその意外性がおもしろかったです。ただ（アメトーークの兼近を見た時も思いましたが）漫才でのキャラを作りすぎで普通にしゃべることすらできていないので、このまんまだとテレビに出続けることはできません。テレビに出続けたいのであればどこかで方向転換が必要ですが、それをしたらしたで不自然だと思われちゃうのが怖い世界なんですねえ。
32.インパルス
「板倉ワールド」と言えば聞こえはいいですが、ボケのテイストがずっと一緒だったので、ハマるかハマらないかが勝負になってしまいます。
私はハマりませんでした。
33.とろサーモン
変なことを早口でまくし立てる久保田の芸は一級品です。
34.プラス・マイナス
2人とも芸があって自由に暴れてふざけている感じがしたので非常に良かったです。
35.レギュラー（リズムネタ博物館得票数1位）
久しぶりに見るとリズムとあるあるネタに全く合いそうもない珍妙な動きに妙に心揺さぶられます。バズったのも納得の出来です。まあ、何回か見ると飽きてしまうからこその現状ではあるんですけどね。2人の素のキャラクターが全く伝わらないネタだからこそ、テレビにはしがみつけないんですね。
どうせなら「ハイ！ハイ！ハイハイハイ！」の動きも見たかったです。
36.東京03
長めのフリがあったので、いつもみたいに角田が妙に芝居がかった言動でマジメ系クズの小市民を演じるコントになるのかと思いきや、急に飯塚がツッコミのアドリブ大喜利コントのようになってしまいました。
良かったですねえ。ここまで露骨だと「高橋維新に褒められたくてわざわざこういうテイストにしたんじゃないか」と疑ってしまいますねえ。えっへっへ。あれを、もっと長いことやって、アドリブのクダリをどんどん入れて欲しいです。ボケ役は、最低もう1人欲しいですけど。
37.中川家
多分、たくさんある引き出しを順番に開けているだけのネタです。どっちがどういう順番で開けようと対応ができるんでしょうね。だからこそ、漫才形式ではなくてひな壇でやってもらう方がおもしろいと思うのです。
38.爆笑問題
足し算ですよねえ。
<総評>
冒頭でも述べましたが、もう1回言います。ネタ（とネタ番組）の存在意義は�ゞ睫戮鵜�芸人の実力の訓練の題材�７歐佑亮体呂慮�極めの題材という3つしかありません。M-1は別にいいんです。頑張れば、この3つの存在意義しかないことを自覚して品評会に徹しているとギリギリ理解できます。でもこの番組は言い訳ができません。ネタという貧弱な手法で最高峰の笑いが提供できるという間違った発想が根本にあることがプンプンと伝わってきます。
芸人の皆様は、ネタしかできないからといって悲観することはありません。ネタですら、誰にでもできることではありません。少なくとも私にはできません。そして、ハイクオリティなネタができれば�ゞ睫戮韻虜猯舛砲覆襪里如△箸討眩農欧蕕靴い海箸世隼廚い泙后Ｇ阿里燭瓩妨世辰討�きますが、皮肉ではないですよ。
何しろ、テレビみたいに小道具や大道具や編集機材がなくても、自分たちの身一つで笑いがとれるのはそれはそれですごいことです。だって、例えば船が難破して漂着した無人島で笑いをとるには、小道具も大道具も編集機材も使えないですからね。そういう極限状況でも体一つで笑いがとれるのは、それはそれで尊重すべきことですが、我々は別に船が難破して無人島に流されたわけではないので、現状でそこにこだわるのは間違いだと思います。わざわざ笑いの手段を制約して自分で自分の首を絞めてどうするんですか。そんなの、敢えてキツい減量をしたうえで下の階級のボクサーを倒しにいくのと一緒です。テレビは、それで満足してはいけません。
何度も言っていますが「ネタ」は笑いを生み出す手法としては優れたものではありません。テレビはもっとおもしろいことができるので、すべきです。
だいぶ減ってきたとはいえまだ無思慮にネタを垂れ流すだけの番組がテレビから駆逐されないのは、なぜでしょうか。私が考えた理由は以下のようなものです。
�〕イ譴深衙，任呂覆い砲靴討癲▲優燭�好きな人は一定数いるので数字がとれる（結果、お金が儲かる）。
�∈遒蠎蠅縫優拭覆箸い�手法）が好きな人がいる
�７歿住�務所が「やれ」とうるさい（芸能事務所は、ネタ番組を通して所属の芸人を売り出したい）
多分、全部の理由が複合的に混ざり合っています。さほどおもしろくないことを承知で好きな人向けにネタ番組をやるのであれば、わざわざ止めるようなことではないと思います。「好きな人向けに作る」という発想でターゲットをしぼっているテレビ番組は、いくらでも例がありますからね。相撲中継は相撲好きしかみないでしょうし、釣り番組も釣り好きしか見ないでしょう。数字がとれるのであればスポンサーがつくのでテレビ局が儲かります。テレビ局はあくまで株式会社という営利企業なので、金儲けが本業ですから、それを止めることはできません。別に突き放したくてそういうことを言っているわけではありません。本心からそう思っています。
ただどうにもこのENGEIグランドスラムという番組は、そういう発想で作られている気がしないのです。ネタというナマクラでネタ好き以外の人にも笑ってもらおうという（極めて傲慢な）発想が背後に見え隠れてしています。冒頭に述べたようにその発想それ自体が間違っているので、早めに諦めた方がいいと思います。スタッフの中にネタが好きな人がいるかもしれないですが、度を越せば自分の個人的な好き嫌いの押し付けになりますよ。
他方で今回のENGEIグランドスラムは、単なるネタの垂れ流し番組に堕さないように色々と工夫をしている様子はうかがえました。「リズムネタ博物館」「ENGEIプレミアムラウンジ」「ENGEI歌謡祭」といった本ネタの合間合間に挟まれるミニコーナーでおもしろいことをしようとしていたのです。冒頭の火薬田ドンも同じ意図に基づくものでしょう。試みとしては買いますが、劇的な効果はありませんでした。あと、ネタ好きの人は本ネタだけ見ていたいでしょうから、諸刃の剣かと思います。
1.NON STYLE
いつものスタイルの漫才でした。
去年のTHE MANZAIの感想に書いた通りですが、恐らく素の石田はこんなにひょうきんではありません。だから、漫才で披露されているボケは人工モノだということがどうしても気になってしまいます。
石田みたいに演技力がない人がテレビで売れ続けるには、テレビで出す自分と素の自分をできるだけ近付けることが重要です。テレビで出すものが自分の素に近ければ近いほど演じるストレスは低くなってサステナビリティが上がるからです。
ただこの戦法をとるには、当然ながら「素の自分」がある程度おもしろい必要があります。太田とか東野とか春日とかチュート徳井といった例は分かりやすいですが、つまるところ、テレビで売れている芸人はみんな大なり小なり変人なんです。
石田みたいなマジメな人だと素を出されてもおもしろくないので、結局どうにもなりません。テレビに出るには多少の無理をしてでも演技を続けるしかありません。
2.ジャルジャル
このジャルジャルというコンビが、「演技力がない」＋「素だとおもしろくないふつうの人」という二重苦を併せ持った代表格です。こういう人たちはネタでしかおもしろさを出せないので、劇場や営業で生きていくのが一番です。その方がネタが好きなお客さんと触れ合えるんですから良くないですか？
何度も言っていますが「ネタ」というのは笑いを生み出す手法としてはそんなに優れたものではありません。テレビではもっとおもしろいことが色々とできます。ただそれをやるために必要な手駒は「素がおもしろい（天然の）人」か「ものすごく演技力のある人」のどちらかなのです。どちらもないジャルジャルにお呼びはかかりません。
ネタがそれほど優れた手法ではないにしても、好きな人は営業が商業的に成り立つ規模でいるので、その人たち向けにネタをやっていれば稼ぐことはできます。テレビの作り手にもネタが好きな人が一定数いるからこそ、未だにこの手のネタ番組も絶滅していないんでしょう。ジャルジャルはどこを目指しているんですか？ テレビでネタをしたいんですか？ 笑いもネタも好きじゃない人には多分響きませんよ。今のテレビがやっている「もっとおもしろい手法」にかなわないですから。
今回のネタはまあ……おもしろいんじゃないですか？
もうちょっとちゃんと論評します。
歌手デビューのオーディションを受けに来た役の後藤が、未公開のオリジナルソングをその場で歌い始めるのですが、（未公開の楽曲なのに）プロデューサー役の福徳が先回りしてその歌を歌ってしまう、という設定のネタです。当然事前に合わせていないとこんなことはできないので、マジメな下準備が強く見え隠れしてしまいます。そこが一番の問題です。マジメな下準備をしているということは、（天然ボケにはかなわない）人工ボケだということが強烈に臭い立つということにほかならないのです。
めちゃイケだったら、福徳を追い詰めるためにアドリブでこの挑戦をさせていたと思います。そっちの方がおもしろそうじゃないですか。そういうことですよそういうこと。
福徳の歌唱力はもっとあった方が説得力が出ます。うますぎるとお客さんがそっちを気にし始めるのでバランスが大事ですが。
3.和牛
2人とも漫才での演技力は申し分ないですね。テレビの他の局面でこれをコンスタントに出し続けられるのであれば、テレビでも売れます。
私は、水田の神経質キャラが出る漫才が一番好きだと言っていますが、それは水田の素に近いからなんです。素だということは、水田が普段からああいう変人だということになるので、天然ボケになるのです。同じ変人でも人工モノより現実に存在する天然モノの方がおもしろいのは自明の理でしょう。
4.ロバート
秋山は、演技力もあるし変人でもあるタイプです。あと、たまにバズるネタを作れます。それを、複数作れます（おそらく背後には、バズらなかった屍が山と積まれていますが）。体モノマネとか「都か区か」とかですね。バズるネタを作れると、演技力がなくても、変人でなくても、テレビに出ることができます。しかし、演技力もないふつうの人の場合はそのネタが飽きられた時点でポイされてしまいます。それを、一発屋と言います。何がバズるかは本当に分からないので、とりあえず数を撃つことが重要です。
今回披露されたのは「逆カラオケ」というネタでした。機械からボーカル部分が流れ、客がメロディ部分を口で言うという設定です。発想は秋山ならではですが、最後に出てきた馬場演じるマスターの衣装が何もかも逆だった（ワイシャツやベストを後ろ前で着ていました）のは、さすがに狙いすぎで冷めました。だって、逆カラオケが好きだからといって何もかも逆にするのが好きだっていうのは流石に短絡的じゃないですか？ 同好の士の秋山は普通の恰好だったし。
5.フットボールアワー
岩尾は変人なのですが、ネタで出てくる変人とは種類が違います。だから売れきれてないんですね。
他方で後藤はどんな場面でもきちんとツッコミ役ができます。きちんと演じられているか素でそういうキャラなのかのどっちかです。おそらく、演じているんだとは思いますが。
6.ロッチ
2人とも演技力がありません。中岡はあの容姿のためにリアクションで出てくる素がある程度おもしろいので、その手の仕事があります。
中岡が「めちゃくちゃ頑張らないと透視ができない超能力者」を演じるネタです。この人が連続で透視をする際に「倒れるかもしれない」とか「死ぬかもしれない」とか言うのですが、透視中の「頑張っている」演技にそれほど迫真性がないのでこのセリフも活きてきません。もっと脂汗がダラダラ垂れるぐらいの踏ん張りを見せて欲しいものです。あと多分、中岡の容姿で本当にこういう人がいたらおもしろがったテレビ局がそれなりに使ってくれると思うので、コカドの「パッと当てないとテレビでは使ってもらえない」「多分人気は出ない」といったツッコミに共感できません。
7.サンドウィッチマン
→こちらへどうぞ。
ネタをやっていないサンドウィッチマンをテレビで見たことがないので、なんで今売れているのかは正直よく分かりませんが、求められている演技力を身につけたんでしょうか。それでもM-1優勝から10年かかってようやく芽が出たので、もともとのサンドウィッチマンはネタで人気が出ただけのコンビだったということです。
8.水谷千重子（友近）＆大黒摩季 【ENGEI歌謡祭枠】
ただの歌番組になっていました。笑いのコンテンツではなかったです。
9.TT兄弟（チョコレートプラネット）＆T-BOLAN 【ENGEI歌謡祭枠】
歌詞のところどころが「ティー」に改変されていたのが笑いどころなのでしょうが、歌詞の字幕が先に表示されていたので改変があるのが分かってしまっていました。「オチの先バラシ」という、一番やってはいけないとされていることです。最初は改変前の歌詞を表示しておいて、歌が実際にその部分に差し掛かったら字幕が急に変わる、みたいな工夫が必要でしょう。ニコニコ動画に投稿されている替え歌動画もやっていることですよ。
とはいっても、本気のミュージシャンをコラボさせるとどうしても笑いではない歌番組としての要素が強めになってしまうので、どういう反応をしていいか困ります。
10.遠藤章造＆武田真治 【ENGEI歌謡祭枠】
尾崎豊のI LOVE YOUを歌っていました。2004年の27時間テレビの深夜帯のコーナーで遠藤が披露していたネタです。
1回見ればいいやつですね。武田真治と組ませたことでおもしろくなっていたわけでもありませんでした。
11.スピードワゴン
2人の素に近い部分のキャラクターが出ていたいい漫才だと思います。小沢のカッコつけキャラや「あまーい」や「ハンバーグ」といったこれまでにバズったギャグがてんこ盛りになっていました。
12.かまいたち
あらびき団に出ていた頃のちょっと危険なかまいたちが戻ってきたようなネタで、好感が持てました。冒頭の濱家の設定説明のセリフが説明的すぎたのが気になりましたが。
13.ナイツ
「AKB48」っぽい名前をこれだけ見つけられるのは確かな大喜利力の賜物だと思います。塙と土屋の素のキャラはあんまり分からないので、テレビでは使いどころが難しいんですが。
14.アンガールズ
2人の見た目の気持ち悪さという「素」は出るネタですね。
舞台上に掲げられていた「ENGEIグランドスラム 広島県熊野町出張LIVE」という横断幕がシュールで気になりました。番組側の演出ではないとは思いたいんですが、出張LIVEの全ての会場にあったので番組側の演出かもしれません。目が散るのでなかった方が良かったと思います。
15.陣内智則
機械にボケをやらせて陣内がツッコむいつものスタイルです。
1回触れたボケが時間差でまた出てくるなど重層的な構造も豊富で、大喜利力は申し分ありません。それだけに、陣内がひたすら大根なのがトコトン気になります。冒頭のヘタクソな説明台詞からこっちのHPはガリガリと削られ、ネタ中のツッコミも寒々しく空回りするばかりで、ネタで展開されるボケを本気でおかしいと思っている人だというのが伝わってきません。「自分で考えたボケに自分でツッコんでいる痛々しい人なんだ」という背後の真実が見え隠れします。というか、もうまる見えです。エンタの頃から成長していません。あれでウケてしまったからあのスタイルに安住してしまい、それ以上演技力を磨かなくなってしまったのではないかと想像すると腹さえ立ってきます。
それと、途中で英語詞が出てくるんですけど、"I can touching Frog"は間違ってますよ。スタッフはこういうところをきちんとチェックすべきだと思います。
16.アンジャッシュ
いつものすれ違いコントです。どっか別の機会でもやっていたネタだと思います。
緻密で複雑な展開は事前に台本を考えているからこそできることなので、足し算のネタに終始している他のコンビは見習ってほしいですが、この2人も演技力がエンタの頃からあんまり進歩してないですねえ。
17.千鳥
舞台上にアンガールズと同じような横断幕（厳密に言うとこの会場だけ横断幕ではなくて紙を1枚1枚貼り付けていました）がありましたが、千鳥はこれをきちんとイジってくれたのでなんとかなりました。アンガールズとの実力差が如実に出たようでちょっと悲しくなりました。
ネタはよくやっているやつでした。「クセがすごい」というフレーズが出てくる代表作でしたね。リラックスしてふざけている感じが出せるので安心して見ていられます。このコンビならではですね。
18.上杉みち（ロバート秋山）＆May J. 【ENGEI歌謡祭枠】
奥行きのある舞台を使って、遠近法で秋山を小さく見せるところだけがおもしろい出オチのネタでした。出オチの後はひたすらしゃべる秋山がMay J.の歌声に終始カブっていたので、おもしろくはなかったし、歌としても聞いていられませんでした。
19.米津ハゲん師（トレンディエンジェル斉藤）＆五十嵐結也 【ENGEI歌謡祭枠】
サビの盛り上がりとともに斉藤のカツラをとるクダリだけがおもしろいので、そこだけでいいですね。その前の部分はフリにしかならないので、フリとしては長すぎです。もっと圧縮すべきです。斉藤の歌唱力も実に中途半端です。
20.変人（原口あきまさ・ホリ・ミラクルひかる・山本高広） 【ENGEI歌謡祭枠】
やっぱ、モノマネって落とし穴がないとオチないですね。
21.タカアンドトシ
横断幕をイジらなかった……。
どっかで見たことがあります。その時と同じ感想だと思いますが、「待ってたよ」をもっとしつこくやって欲しいですね。
22.バカリズム
このおじさんが何でのぼる君に約束を持ちかけていたのかが気になりました。そこを考えて欲しいですね。
23.ますだおかだ
岡田のプライベートをイジりきったのは良かったと思います。
24.パンクブーブー
黒瀬が太ったねえ。
ネタはよくやっているやつでした。
25.バイきんぐ
小峠も西村も芝居が進歩しないですよねえ。今の状態に安住しちゃっている感じがします。あと、サンドウィッチマンと一緒で大喜利力も大したことないと思います。こちらに今回のネタを大喜利形式にしてみたものを作ってみたので、ご参照ください。
26.霜降り明星
M-1で見せたスタイルですね。
おそらくネタを考えているのが粗品なので、彼がR-1で見せたフリップ芸と同じく、重層的な構造がありません。あとやっぱり、お調子者がふざけている感じが出てしまうのがどうしても気になるのですが、好みの問題です。
27.ハナコ
ほぼ岡部のピン芸だったのでせっかくいる秋山と菊田をもっと活かしてください。「これだったらルシファー吉岡にもできるぞ」って高橋維新に言われちゃいますよ。
28.ゆりやんレトリィバァ
One Directionの"What Do You Mean?"に合わせて「意味が分からない状況大喜利」の回答を次々と披露していくネタです。音と大喜利の組み合わせは本人が得意とするところでしょう。
これもいつものことですが、大喜利の答えとしては意味が分からなすぎるものが多いので、クオリティは高くないと思います。
29.かが屋
設定は、新しいと思います。「母親へのサプライズを練習する息子とその友人」というかなりトリッキーなものです。しかし、中身のボケはスマホの画像回転にほぼ頼っていたので、それだけのネタに見えてしまいました。2人の素のキャラクターも実力も全然見えてきませんでした。
サラリと言われた「ジ・お母さんじゃない？」は今回のOAで一番おもしろかったです。
30.宮下草薙
草薙の極端なマイナス思考に宮下がツッコミを入れていくネタです。構造は吉田のマイナス思考から喧嘩が始まるブラマヨのネタに近いと思います。そうなるとどうしてもブラマヨと比べてしまいますが、ブラマヨほど派手な喧嘩はできていません。
草薙がネタで見せているキャラクターは素の彼に近いと思います。これをテレビで出し続けられるのであれば露出がもっと増えるということですね。
31.EXIT
チャラ男どうしの漫才です。その割にサザエさんを題材に「戻りガツオ」とか「ふえるワカメ」とか古典的な小噺みたいなボケを連発してきたのでその意外性がおもしろかったです。ただ（アメトーークの兼近を見た時も思いましたが）漫才でのキャラを作りすぎで普通にしゃべることすらできていないので、このまんまだとテレビに出続けることはできません。テレビに出続けたいのであればどこかで方向転換が必要ですが、それをしたらしたで不自然だと思われちゃうのが怖い世界なんですねえ。
32.インパルス
「板倉ワールド」と言えば聞こえはいいですが、ボケのテイストがずっと一緒だったので、ハマるかハマらないかが勝負になってしまいます。
私はハマりませんでした。
33.とろサーモン
変なことを早口でまくし立てる久保田の芸は一級品です。
34.プラス・マイナス
2人とも芸があって自由に暴れてふざけている感じがしたので非常に良かったです。
35.レギュラー（リズムネタ博物館得票数1位）
久しぶりに見るとリズムとあるあるネタに全く合いそうもない珍妙な動きに妙に心揺さぶられます。バズったのも納得の出来です。まあ、何回か見ると飽きてしまうからこその現状ではあるんですけどね。2人の素のキャラクターが全く伝わらないネタだからこそ、テレビにはしがみつけないんですね。
どうせなら「ハイ！ハイ！ハイハイハイ！」の動きも見たかったです。
36.東京03
長めのフリがあったので、いつもみたいに角田が妙に芝居がかった言動でマジメ系クズの小市民を演じるコントになるのかと思いきや、急に飯塚がツッコミのアドリブ大喜利コントのようになってしまいました。
良かったですねえ。ここまで露骨だと「高橋維新に褒められたくてわざわざこういうテイストにしたんじゃないか」と疑ってしまいますねえ。えっへっへ。あれを、もっと長いことやって、アドリブのクダリをどんどん入れて欲しいです。ボケ役は、最低もう1人欲しいですけど。
37.中川家
多分、たくさんある引き出しを順番に開けているだけのネタです。どっちがどういう順番で開けようと対応ができるんでしょうね。だからこそ、漫才形式ではなくてひな壇でやってもらう方がおもしろいと思うのです。
38.爆笑問題
足し算ですよねえ。
<総評>
冒頭でも述べましたが、もう1回言います。ネタ（とネタ番組）の存在意義は�ゞ睫戮鵜�芸人の実力の訓練の題材�７歐佑亮体呂慮�極めの題材という3つしかありません。M-1は別にいいんです。頑張れば、この3つの存在意義しかないことを自覚して品評会に徹しているとギリギリ理解できます。でもこの番組は言い訳ができません。ネタという貧弱な手法で最高峰の笑いが提供できるという間違った発想が根本にあることがプンプンと伝わってきます。
芸人の皆様は、ネタしかできないからといって悲観することはありません。ネタですら、誰にでもできることではありません。少なくとも私にはできません。そして、ハイクオリティなネタができれば�ゞ睫戮韻虜猯舛砲覆襪里如△箸討眩農欧蕕靴い海箸世隼廚い泙后Ｇ阿里燭瓩妨世辰討�きますが、皮肉ではないですよ。
何しろ、テレビみたいに小道具や大道具や編集機材がなくても、自分たちの身一つで笑いがとれるのはそれはそれですごいことです。だって、例えば船が難破して漂着した無人島で笑いをとるには、小道具も大道具も編集機材も使えないですからね。そういう極限状況でも体一つで笑いがとれるのは、それはそれで尊重すべきことですが、我々は別に船が難破して無人島に流されたわけではないので、現状でそこにこだわるのは間違いだと思います。わざわざ笑いの手段を制約して自分で自分の首を絞めてどうするんですか。そんなの、敢えてキツい減量をしたうえで下の階級のボクサーを倒しにいくのと一緒です。テレビは、それで満足してはいけません。
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