当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2019年のキングオブコントです。

1.うるとらブギーズ
 催眠術の設定です。
 催眠術師(佐々木)がツッコミで、かけられる方(八木)がボケです。ボケの中核は、「八木が他人のしゃべることを一緒にしゃべってしまうので、催眠術師が集中できない」という内容です。
 他のお客を出したりするなどして変化を見せていたので、そこは良かったと思います。ただ、このネタに笑えるかどうかは、八木が佐々木に合わせて同じことをしゃべってしまうというボケをおもしろく思えるかどうかにかかってきます。正直なところ私には全然ハマりませんでしたが、そこは完全に好みの問題なので、私一人を笑わせられなかったことを気にしなくてもいいと思います。

 あと、事前に綿密に合わせていないと同じ内容を同時にしゃべるということはできないでしょうから、アドリブで遊ぶという発展性があんまりないネタだと思いました。一回やらせてはみたいですが。

2.ネルソンズ
 「絶対に他言するな」と言われたことをすぐにしゃべってしまう和田がボケの主人公です。和田の先輩役である岸の激昂がきっかけとなって、和田がゲロってしまうというクダリが何度もあるのですが、岸の怒る芝居も和田のビビる芝居もそこまでうまくないのでのめり込めません。怒る芝居については浜田や堤下のものを参考にできると思います。
 あとは、岸が怒鳴ってから和田がしゃべっちゃうまでの「間」も重要なのですが、まだ甘いと思います。具体的にどうしろということは言えないのですが、もっと最適な間があると思います。

3.空気階段
 最初は、ものすごくオーソドックスな、悪く言えばしょうもないタクシーコントだったのです。運転手役の鈴木が一つボケて、乗客役の水川がそれに対して一つツッコミを入れて、っていう一小節をひたすら積み上げていくだけの、足し算のネタだったのです。富澤がタクシーという設定でネタ書いたらこんな感じになるだろうな、っていうしょうもなさだったのです。
 そういう形でこの原稿もまとめようと思っていたら、同じ水川が演じる2人目の客が現れて事態は一変します。この水川が演じていたのは、1人目の客と瓜二つの別人という設定なのです。1人目の客とのしょうもないやりとりは、丸々フリだったのです。
 試みは、非常に興味深いです。ただかなりホラーめいていたので、私はあんまり笑えませんでした。どうせならもっとダイレクトに笑いにつながる方向の仕掛けを入れて欲しいとは思いましたが、このネタにおける「仕掛け」を笑えるかどうかは好みかと思います。松本は「もっとシンプルで良かった」というコメントを残していましたが、同じことを言いたかったのではないかと思います。

 あとネタ全体の構成として、フリである1人目の客とのやりとりが不安になるぐらい長かったうえに、2人目の客が出てきて以降の展開をもうちょっと長く見たいと思ってしまったので、時間配分はもう少し考え直してもいいかもしれません。ただまあ、フリは不安になるぐらい長いからこそ「転」が活きてくる面もありますし、キングオブコントということでネタ時間に制約もあったでしょうから、これ以上は言いません。

 テレビで売れたいなら鈴木のクズな性分をもっと前面に押し出したネタをやってもいいかもしれません。自分の素に近ければ演じるストレスも抑えられると思います。これは、関係ない話です。

4.ビスケットブラザーズ
 ツッコミ不在のまま2人だけの世界を見せつけてくる(私の定義から言えば)シュールなネタでした。照明が変わりBGMが鳴り始めてから急に2人が記憶を取り戻す展開があり、その後また2人が素に戻ってから、またあることをきっかけに2人が記憶を取り戻していました。私はこの繰り返しがおもしろかったので、素に戻ってからしょうもないきっかけでまた記憶が戻るというのをしつこくやって欲しかったです。

5.ジャルジャル
 おもしろかったですよ。もしかしたら、ジャルジャルファンの松本がおもしろそうにしてたのが嬉しかっただけかもしれません。いや、おもしろかったですよ。
 
 福徳は英語に聞こえるようなことをしゃべるという設定で(礼二のモノマネみたいな)英語っぽい発音(意味を為さないもの)をしているだけでしたが、ちゃんと英語をしゃべってくれた方が説得力が出たと思います。でもそういう日本人は少数派でしょうから、無視してくれて構いません。一応言っておきますが、俺は英語を聞き取れるんだぞという自慢をしたいわけではありません。大して聞き取れません。

 そこは細かい話でして、一番の問題はボケ役の福徳のビジュアルなんですね。とんがった顔が原因かははっきり分からないんですが、芸人の華というかフラのようなものがないので、笑っていいものかどうかも分からなくなってしまうのです。全体的にもっとひょうきんさを漂わせてほしいのですが、顔が原因だと無理な話になってしまいます。残念でした。後藤がボケ役に回った方がマシかなとも思いましたが、後藤は後藤で地味で華がないんですねえ。

6.どぶろっく
 得意の歌とギターを活かしたミュージカル調のネタでした。
 普通のミュージカルのようなものを見せる長めのフリのあとに、2人のブレイクのきっかけとなったゲスい展開になっていきました。完全な下ネタであり、またボケもその1本をひたすらごり押すだけだったのですが、おもしろかったです。結局、おもしろいんです。ちゃんとした歌唱力・演奏力に下支えされた状態で大真面目にしょうもないことを言うからこそ、おもしろさが際立つのです。どぶろっくでなければできないネタだと思います。

 神様役の森が自分で普通のギターを持って演奏していたのですが、そのせいであんまり神様っぽく見えなかったです。ギターをもうちょい神様っぽいデザインにするとか、いっそのこと持たずにBGMにするとか、このへんの演出は一考の余地があろうかと思いますが、細かい話です。

7.かが屋
 暗転を多用して実際の時系列をグチャグチャに見せてくる珍しいネタでした。最新の時系列に帰ってくるたびに賀屋の悲壮な表情を見せられて、笑いがこみ上げてきました。これは、賀屋のあのビジュアルあってこそのものです。福徳に欲しいやつです。
 設定的に店員役の加賀がけしかけたからこそ現在の状況になっているという背景があるので、加賀に対する憤りや恨みといった別の感情を見せることもできたと思います。暗転後の賀屋の表情やポーズにはもっとバリエーションが欲しかったです。それこそ、油断してタバコを吸ってるみたいなメタなタイプのズレも入れ込むことができたと思います。

8.GAG
 前年のネタに引き続き宮戸は女装していました。ただ前年の反省を踏まえてか、今回はきちんとブスという設定でした。
 宮戸の彼氏役で、宮戸のことを美人だと思い込んでいるという設定の福井も前年のネタと同じく(渡部陽一みたいに)妙にゆっくりしゃべりながらボケの主役を演じていました。このネタは、その福井のキャラクターをおもしろいと思えるかどうかに全てがかかっています。福井には、女装している宮戸が美人だと考える根拠(こじつけ)をもっとたくさん出して欲しかったです。そういうこじつけを武器に宮戸がブスだという正論を振りかざす坂本とケンカすることで生まれるのが笑いです。
 それから福井が坂本に投げられた後に、坂本が昔力士をやっていたと告白するクダリがありましたが、投げる芝居がヘタクソでした。加藤浩次がスッキリでふなっしーを投げた時みたいにもっとすんなりとやらないと、坂本が昔強かったというボケに説得力が生まれません。

9.ゾフィー
 腹話術師が人形と一緒に不倫の謝罪会見をするという設定です。
 腹話術は結構ちゃんとできてました(大きな声を出さないといけない局面では人形で顔を隠していたので、そうでもないのかしら)が、単なる腹話術のネタになってたと思います。芸人なりのアイディアが持ち込まれた感じがしませんでした。

10.わらふぢなるお
 ダメでしたねえ。去年のファイナルステージと同じ感じで、ずっとうっすらとスベってました。動きがあんまりなくてコント漫才みたいなコントだったのですが、先輩のサンドウィッチマンと同じで一つのボケとそれに対する一つのツッコミという一小節をひたすら積み上げる足し算のネタになってました。
 サンドウィッチマンには、このしょうもなさをカバーできる演技力とフラ(華)がありますが、このコンビにはまだありません。

 ふぢわらはハマるキャラとそうでないキャラの落差が激しいですね。去年の1本目や水曜日のダウンタウンの「芸人なら自分のネタと同じ状況が起きたら完璧にツッコめる説」でノブ相手にやってたやつはドハマりしてたんですけど、今回のは全然です。この落差を埋めるのが演技力です。
 ちなみに口笛なるおは押しなべてイマイチです。

<ファイナルステージ>
1.ジャルジャル
 ホラーみたいなオチでしたよ。お笑いではなかったと思います。
 あとは、特筆すべきことのないネタでした。泥棒が家人と出くわすっていう設定もこすられまくっていると思います。

2.うるとらブギーズ
 サッカー中継の実況と解説という設定のネタでした。

 特に言うことがないなあ……。日本代表選手の名前は実在の人でも良かったと思います。

3.どぶろっく
 江口と森が1本目から衣装と役回りを丸っきりチェンジしていましたが、やっていることは完全に一緒でした。ミュージカル調のフリが始まってから、こっちの期待はいつ「大きなイチモツ」というキラーフレーズが出てくるかということだけになったのですが、ここを大きく裏切られたらもっとおもしろいはずです。「大きなイチモツ」であれだけウケてしまった以上そんなことは不可能なんですが。

 江口がギターを持っていることに不自然さを感じてしまったというのは1本目と一緒です。歌が好きな農夫という設定にしてもいいんじゃないかしら。冒頭の歌詞にそれをちょっと入れ込むだけでいいので。

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