2021年のTHE Wです。
<過去回>
→2020.12.14THE W 2020
1.ヨネダ2000
ツッコミのほとんどない漫才でした。私の定義で言うところの「シュール」です。
向かって右の愛は基本的にずっと「どすこいどすこい」と言っているだけなのですが、たまに向きを変えたりといった変化を入れてきていたので、そこは良かったと思います。シュールなネタ作りをするコンビは、シュールに胡坐をかき、「ずっと変えないことこそシュール」などと宣ってネタを「練る」作業を放棄する場合が間々あります。この手の変化はどんどん入れ込んで欲しいと私は思っています。シュール自体がフリになるので、オーソドックスな変化でも活きてくるからです。
とはいえ、「普通」のネタではないので、トップバッターとは明らかに相性が悪いです。フリとして後続の紅しょうがのような「普通」のネタが先だって披露されていたら、ウケも変わったかもしれません。
そもそもこの賞レースの「トップバッター不利問題」は、審査の公正さを追究するのであれば早めに何とかした方がいいと思います。準決勝の最下位チームが自動的にトップバッターになる、くらいの徹底的な措置が必要だと思います。敗者復活のような制度を設けているなら、敗者復活組をトップバッターにすべきでしょう。そうすると敗者復活組が優勝するというようなドラマが生まれづらくなりますが、ドラマ性は公正さの前には後退させるべき要素です。他方で、「賞レースもあくまでTVショウでありエンターテインメントなんだから、ドラマ性をより重視すべきだ」というのもまたひとつの意見です。
2.紅しょうが
去年披露したネタと同じで、熊元が自分の見た目をさておいて上から目線でズレた恋愛アドバイスをするというネタでした。
感想は去年とあまり変わりありませんが、やっぱり実際の男性と2人で合コンをさせた方がおもしろくなると思いました。漫才というフォーマットの限界が今年も見えました。
3.茶々
いいフォーマットでしたねえ。様々なフリが思いつきます。是非アドリブで色々とフッてみたいです。
本人もネタ後に「見た目のハンディを乗り越えて」と言っていましたが、かなりシュッとした見た目です。熊元やゆりやんみたいな見た目の演者にやらしてもおもしろくなるんじゃないかなあと思いましたが、シュッとしているゆえに怖さ(ホラー感)が出るもんだとも思うので、それぞれに良さがあるんでしょう。
4.TEAM BANANA
去年披露した2人の見た目を活かした漫才とは異なり、今年のは矢野・兵動ややすともみたいな「ツッコミと相槌の漫才」でした。ボケは街中で見かける人たちのおかしな行動であり、向かって右の山田がそれに毒のあるツッコミを入れ、相方の藤本が相槌を打ちつつ毒を入れられた人をフォローするという構造でした。ただ山田のツッコミは少々毒が過ぎるので、それがボケになっており、それを否定する藤本のフォローは山田に対するツッコミにもなっていました。
山田がともこや兵動に及ばない部分は、街中で見かけるあるあるのクオリティでしょうね。そこでおもしろいものを出せるのは大喜利力です。中川家も同じようなことをやっているので参考になるでしょう。ただ、この3組が全て関西のコンビなので、やっぱり関西人の方が向いている気がします。
5.オダウエダ
一発目の「食べられへんねや」はおもしろかったです。
去年と同じでサイコなボケが多かったですが、ツッコミはいちいちきちんと入っていたので、私の定義で言うところの「シュール」ではありません。
ボケの大喜利はまだまだで、去年から変わらずサイコに徹しきれていません。例えばハツが言っていたことは就活の発言としては普通過ぎますし、判決の内容が「敗訴」なのは、ボケとしてはベタ過ぎます。もっとサイコにしろとは言っていません。そこでもう一回大喜利をして欲しいのです。
それから2人とも棒読み気味なのも去年からあまり改善が見られませんでした。ボケの小田は棒読みでも「そういうサイコな人なんだな」と思えるのでまだ許容できるのですが、ツッコミの植田は棒読みから脱却しないとウケが頭打ちになります。もっと演技力をつけましょう。
6.天才ピアニスト
業者によるドアの強度チェックの際に、ボケのますみがドアを開閉するたびに要らん小芝居を入れるという設定のネタでした。
ただますみが披露したゾンビ映画の小芝居の際になって、ツッコミの竹内がゾンビあるあるのおかしさにツッコミを入れ始め、しかもこのクダリ結構時間をとっていたため、本来この設定で根幹として打ち立てた「小芝居が要らない」というズレがどこかに飛んでいってしまいました。そのくせ最後には当初の設定に帰ってきており、両者の溶接が不十分な印象を受けました。
解消の方法は色々考えられます。私は寄り道に過ぎない小芝居の内容自体に対するツッコミをもっと痕跡的なものに止めた方がいいと思いますが、逆も考えられるでしょう。それは実際に試しながら考えていかないと分からないと思います。
7.女ガールズ
アマチュアのトリオということがネタ前のVTRで紹介されていましたが、うち2人はお芝居をしているということだったので、完全なアマチュアでもないでしょう。
このVTRは良くなかったです。3人は漫才を披露していましたが、VTRを見たことで私の中で醸成された「アマチュアならさぞかしイタいんだろうなあ」という予想を裏切るほど3人の演技力が高くなかったからです。プロの芸人であれば、たとえヘタであっても「あんな演技力でプロを目指すとは無茶をするなあ」と思えてなんとなく許せてしまうのですが、アマチュアがうまくないとすごくイタさ(申し訳なさ)を感じてしまうのです。
良くないのはあのVTRを作った番組側です。
8.ヒコロヒー
あるある的な偏見を述べるネタなので、ピンと来ない時はとことんハマらなくなってしまいます。それが審査員から一票ももらえなかった理由でしょう。
偏見の種類もずっと一本調子だったわけではなく、パンクロックとフォークに対する偏見の2種類を盛り込んではいましたが、私にも「パンクロッカーは音大に行かない」というもの以外はあんまりピンときませんでした。あそこがネタのピークになっちゃってましたね。
9.スパイク
いや2人とも演技はきちんとできているんです。でもまあ、キャラがあんまりはっきりしていなかったので、少々面食らいました。
フリの紹介VTRでボケの小川があざとく、ツッコミの松浦が観察眼の鋭い毒舌と紹介されていましたが、そういうネタでもありませんでした。そのせいで戸惑ってしまった面も多分にあります。あのVTRも良くないです。
ネタ中のボケも、あんまり大喜利力の高さを感じさせませんでした。松浦のツッコミの台詞にもありましたが、小川の地団太を踏むような動きとか、急にキックボードで舞台を横切る挙動など、全体的にアメリカのスプラスティックなカートゥーンみたいで、大喜利力ではないものに頼っている感を受けました。小川は酔っ払いを演じていたのですが、「まあ現実にいる酔っ払いはこんな感じだろうな」っていうようなことしかやっておらず、おもしろのショウになっていなかったのです。
10.Aマッソ
コントでしたが、2人のしゃべくりのケンカが主だったので、漫才形式でもそれなりにできるネタでした。
2人の演技力は明らかに向上しています。「電話対応の時には自社の人間は下げないといけない」という既にこすられまくっているようテーマだったのですが、しっかりおもしろく見えていたのはそのためです。
ここに大喜利力を感じさせる内容を盛り込めれば、素人の支持も玄人の支持も得られると思います。
こういうことはもう言ってはダメなんでしょうが、男同士のコンビで同じネタをやってみてもおもしろいとは思います。Aマッソは、昔から女性コンビという点をあまり強みとして使おうとしていない感じがするのです。それに時代が追い付いてきたということでしょう。
<最終決戦>
1.Aマッソ
去年披露したプロジェクターを背後に抱えながらの漫才でした。プロジェクターの内容は去年より凝っていた印象を受けます。このネタの欠点は、去年の記事で指摘したとおりです。Aマッソには自由にしゃべってもらって、あとから編集で字幕やら映像やらを足して最終的な映像作品を仕上げた方が、私はおもしろくなると思います。
そして、1本目のネタより「私は大喜利ができるんだぞ」という内容を入れ込もうとしていたのは伝わってきましたが、どうにもイマイチでした。大喜利力はもっと磨けると思います。
ただインパクトはものすごかったので、後続のコンビはやりづらいだろうなとは思いました。
2.天才ピアニスト
レジのおばちゃん(ますみ)が買い物客(竹内)の購入内容からその日の献立を当てようとするも、なかなか当てられず、いつか正解を出すことを期して客に勝負を挑んでいくという設定のコントでした。
この設定はおもしろいんです。私はずっとこの設定に根差したままやって欲しかったですが、後半は1本目と同じく当初の設定とは違うボケを入れてきていました。このコンピはそういうのが好きなのでしょう。
私が当初の設定のままやって欲しかったと思ったのは、この設定を活かす余地がまだ存分にあるからです。もっともっと、練れます。
例えば初日に客が買ったのはタマネギ・ジャガイモ・ニンジン・豚肉で、おばちゃんは「今日カレーライスやね」と言ったのですが、正解は肉じゃがでした。おばちゃんは「肉じゃがなら糸こんにゃくを買う」と食い下がるのですが、客は「糸こんなら家にある」と応じます。おばちゃんは「糸こんが家にあるってどういう状況?」と偏見に満ちた反撃するのですが、メニューに関してはそれ以上ラリーが続きませんでした。
まずこのラリーはもっと続けられると思います。この手のしょうもないラリーは、かまいたちがやってるみたいなしゃべくり漫才にできます。あんまり具体例が思いつかないのが恐縮ですが、「糸こんを買い置きしてるのなんてセブンイレブンかローソンぐらいのもんや」みたいなことを言えば「ファミマもやっとるわ」みたいなツッコミが入れられます。
そして初日に正解が出せなかったおばちゃんは「買い物に悪意がある」と客をなじるのですが、2日目に客が買ったのはカレールーとネギで、正解はカレーうどんでした。カレールーとネギなんていう大ヒントがあれば、カレーうどんという正解はほぼ確実に当てられるはずです。おばちゃんの「悪意がある」というフリがあったので、私は絶対に何か引っ掛けがあるだろうと思っていたのですが、まさかの引っ掛けなしでカレーうどんが正解でした。ここにはフリの通りに悪意を入れて欲しいんです。正解を「ネギマ」とかにして欲しいのです。そうすればまたおばちゃんが食い下がってしゃべくり漫才ができます。「家で晩飯にネギマ作るやつなんかおるか!」とか「カレールーはどうすんねん」とか「カレーは隣の浪人生のお兄ちゃんに作ったるねん」とか「そんなカワイイことする奴は家でネギマなんか食わん!」みたいなラリーができます。
3日目も正解は「すき焼き」だったのに客の方は肉を買っておらず、おばちゃんがその点に大して文句を付けないのは不自然に感じました。
全体的に設定と序盤のフリが活かしきれていません。活かしきれないうちに違う種類のボケを入れるので、煮えきらないのです。「違う種類のボケ」で言えば、おばちゃんが自分にバーコードリーダーを当てて値段が表示されるというクダリも設定をブレさせるので、不要だと思います。
こんだけ書いたのは、このネタの設定が良かった証拠です。あまり悪いようにとらないでくれると嬉しいです。
それとこれは完全な余談ですが、初日の暗転後、照明が消えきっておらず、はける様子が見えてしまっていました。誰が悪いのかは分かりませんが、ああいうのが見えると冷めるので気を付けてください。
3.オダウエダ
ネタの中身は「カニのストーカー」という相変わらずサイコなものだったのですが、このネタは1本目と異なり、序盤にストーカー役の植田を「小田に対するストーカーなんじゃないか」と思わせ、「もしかしたら普通のストーカーを題材にした普通のネタなんじゃいか」と客を誤解させるフリをきちんと入れていたので、カニのストーカーというサイコなネタバラシがあっても笑いやすかったと思います。
ボケとツッコミは1本目から入れ替わっていましたが、ツッコミの棒読みが気になってしまうというのは一緒です。ボケの内容をツッコミ役が一々全部言葉にして説明してくれるせいで、棒読みが際立ってしまっていました。
それと、このコンビはサイコなネタなのに最初と最後にきちんと挨拶をしてくれるので、それが段々おもしろく感じられるようになってきました。
<総評>
大会のレベルは確実に上がってきていると思います。
私はAマッソが優勝でいいと思いましたが、オダウエダという結果は意外に感じました。
テレビで売れそうなキャラの持ち主は、残念ながら見つかりませんでした。強いて言えばヨネダ2000の愛ですが、競合がたくさんいるので違いを出せないと難しいです。
<過去回>
→2020.12.14THE W 2020
1.ヨネダ2000
ツッコミのほとんどない漫才でした。私の定義で言うところの「シュール」です。
向かって右の愛は基本的にずっと「どすこいどすこい」と言っているだけなのですが、たまに向きを変えたりといった変化を入れてきていたので、そこは良かったと思います。シュールなネタ作りをするコンビは、シュールに胡坐をかき、「ずっと変えないことこそシュール」などと宣ってネタを「練る」作業を放棄する場合が間々あります。この手の変化はどんどん入れ込んで欲しいと私は思っています。シュール自体がフリになるので、オーソドックスな変化でも活きてくるからです。
とはいえ、「普通」のネタではないので、トップバッターとは明らかに相性が悪いです。フリとして後続の紅しょうがのような「普通」のネタが先だって披露されていたら、ウケも変わったかもしれません。
そもそもこの賞レースの「トップバッター不利問題」は、審査の公正さを追究するのであれば早めに何とかした方がいいと思います。準決勝の最下位チームが自動的にトップバッターになる、くらいの徹底的な措置が必要だと思います。敗者復活のような制度を設けているなら、敗者復活組をトップバッターにすべきでしょう。そうすると敗者復活組が優勝するというようなドラマが生まれづらくなりますが、ドラマ性は公正さの前には後退させるべき要素です。他方で、「賞レースもあくまでTVショウでありエンターテインメントなんだから、ドラマ性をより重視すべきだ」というのもまたひとつの意見です。
2.紅しょうが
去年披露したネタと同じで、熊元が自分の見た目をさておいて上から目線でズレた恋愛アドバイスをするというネタでした。
感想は去年とあまり変わりありませんが、やっぱり実際の男性と2人で合コンをさせた方がおもしろくなると思いました。漫才というフォーマットの限界が今年も見えました。
3.茶々
いいフォーマットでしたねえ。様々なフリが思いつきます。是非アドリブで色々とフッてみたいです。
本人もネタ後に「見た目のハンディを乗り越えて」と言っていましたが、かなりシュッとした見た目です。熊元やゆりやんみたいな見た目の演者にやらしてもおもしろくなるんじゃないかなあと思いましたが、シュッとしているゆえに怖さ(ホラー感)が出るもんだとも思うので、それぞれに良さがあるんでしょう。
4.TEAM BANANA
去年披露した2人の見た目を活かした漫才とは異なり、今年のは矢野・兵動ややすともみたいな「ツッコミと相槌の漫才」でした。ボケは街中で見かける人たちのおかしな行動であり、向かって右の山田がそれに毒のあるツッコミを入れ、相方の藤本が相槌を打ちつつ毒を入れられた人をフォローするという構造でした。ただ山田のツッコミは少々毒が過ぎるので、それがボケになっており、それを否定する藤本のフォローは山田に対するツッコミにもなっていました。
山田がともこや兵動に及ばない部分は、街中で見かけるあるあるのクオリティでしょうね。そこでおもしろいものを出せるのは大喜利力です。中川家も同じようなことをやっているので参考になるでしょう。ただ、この3組が全て関西のコンビなので、やっぱり関西人の方が向いている気がします。
5.オダウエダ
一発目の「食べられへんねや」はおもしろかったです。
去年と同じでサイコなボケが多かったですが、ツッコミはいちいちきちんと入っていたので、私の定義で言うところの「シュール」ではありません。
ボケの大喜利はまだまだで、去年から変わらずサイコに徹しきれていません。例えばハツが言っていたことは就活の発言としては普通過ぎますし、判決の内容が「敗訴」なのは、ボケとしてはベタ過ぎます。もっとサイコにしろとは言っていません。そこでもう一回大喜利をして欲しいのです。
それから2人とも棒読み気味なのも去年からあまり改善が見られませんでした。ボケの小田は棒読みでも「そういうサイコな人なんだな」と思えるのでまだ許容できるのですが、ツッコミの植田は棒読みから脱却しないとウケが頭打ちになります。もっと演技力をつけましょう。
6.天才ピアニスト
業者によるドアの強度チェックの際に、ボケのますみがドアを開閉するたびに要らん小芝居を入れるという設定のネタでした。
ただますみが披露したゾンビ映画の小芝居の際になって、ツッコミの竹内がゾンビあるあるのおかしさにツッコミを入れ始め、しかもこのクダリ結構時間をとっていたため、本来この設定で根幹として打ち立てた「小芝居が要らない」というズレがどこかに飛んでいってしまいました。そのくせ最後には当初の設定に帰ってきており、両者の溶接が不十分な印象を受けました。
解消の方法は色々考えられます。私は寄り道に過ぎない小芝居の内容自体に対するツッコミをもっと痕跡的なものに止めた方がいいと思いますが、逆も考えられるでしょう。それは実際に試しながら考えていかないと分からないと思います。
7.女ガールズ
アマチュアのトリオということがネタ前のVTRで紹介されていましたが、うち2人はお芝居をしているということだったので、完全なアマチュアでもないでしょう。
このVTRは良くなかったです。3人は漫才を披露していましたが、VTRを見たことで私の中で醸成された「アマチュアならさぞかしイタいんだろうなあ」という予想を裏切るほど3人の演技力が高くなかったからです。プロの芸人であれば、たとえヘタであっても「あんな演技力でプロを目指すとは無茶をするなあ」と思えてなんとなく許せてしまうのですが、アマチュアがうまくないとすごくイタさ(申し訳なさ)を感じてしまうのです。
良くないのはあのVTRを作った番組側です。
8.ヒコロヒー
あるある的な偏見を述べるネタなので、ピンと来ない時はとことんハマらなくなってしまいます。それが審査員から一票ももらえなかった理由でしょう。
偏見の種類もずっと一本調子だったわけではなく、パンクロックとフォークに対する偏見の2種類を盛り込んではいましたが、私にも「パンクロッカーは音大に行かない」というもの以外はあんまりピンときませんでした。あそこがネタのピークになっちゃってましたね。
9.スパイク
いや2人とも演技はきちんとできているんです。でもまあ、キャラがあんまりはっきりしていなかったので、少々面食らいました。
フリの紹介VTRでボケの小川があざとく、ツッコミの松浦が観察眼の鋭い毒舌と紹介されていましたが、そういうネタでもありませんでした。そのせいで戸惑ってしまった面も多分にあります。あのVTRも良くないです。
ネタ中のボケも、あんまり大喜利力の高さを感じさせませんでした。松浦のツッコミの台詞にもありましたが、小川の地団太を踏むような動きとか、急にキックボードで舞台を横切る挙動など、全体的にアメリカのスプラスティックなカートゥーンみたいで、大喜利力ではないものに頼っている感を受けました。小川は酔っ払いを演じていたのですが、「まあ現実にいる酔っ払いはこんな感じだろうな」っていうようなことしかやっておらず、おもしろのショウになっていなかったのです。
10.Aマッソ
コントでしたが、2人のしゃべくりのケンカが主だったので、漫才形式でもそれなりにできるネタでした。
2人の演技力は明らかに向上しています。「電話対応の時には自社の人間は下げないといけない」という既にこすられまくっているようテーマだったのですが、しっかりおもしろく見えていたのはそのためです。
ここに大喜利力を感じさせる内容を盛り込めれば、素人の支持も玄人の支持も得られると思います。
こういうことはもう言ってはダメなんでしょうが、男同士のコンビで同じネタをやってみてもおもしろいとは思います。Aマッソは、昔から女性コンビという点をあまり強みとして使おうとしていない感じがするのです。それに時代が追い付いてきたということでしょう。
<最終決戦>
1.Aマッソ
去年披露したプロジェクターを背後に抱えながらの漫才でした。プロジェクターの内容は去年より凝っていた印象を受けます。このネタの欠点は、去年の記事で指摘したとおりです。Aマッソには自由にしゃべってもらって、あとから編集で字幕やら映像やらを足して最終的な映像作品を仕上げた方が、私はおもしろくなると思います。
そして、1本目のネタより「私は大喜利ができるんだぞ」という内容を入れ込もうとしていたのは伝わってきましたが、どうにもイマイチでした。大喜利力はもっと磨けると思います。
ただインパクトはものすごかったので、後続のコンビはやりづらいだろうなとは思いました。
2.天才ピアニスト
レジのおばちゃん(ますみ)が買い物客(竹内)の購入内容からその日の献立を当てようとするも、なかなか当てられず、いつか正解を出すことを期して客に勝負を挑んでいくという設定のコントでした。
この設定はおもしろいんです。私はずっとこの設定に根差したままやって欲しかったですが、後半は1本目と同じく当初の設定とは違うボケを入れてきていました。このコンピはそういうのが好きなのでしょう。
私が当初の設定のままやって欲しかったと思ったのは、この設定を活かす余地がまだ存分にあるからです。もっともっと、練れます。
例えば初日に客が買ったのはタマネギ・ジャガイモ・ニンジン・豚肉で、おばちゃんは「今日カレーライスやね」と言ったのですが、正解は肉じゃがでした。おばちゃんは「肉じゃがなら糸こんにゃくを買う」と食い下がるのですが、客は「糸こんなら家にある」と応じます。おばちゃんは「糸こんが家にあるってどういう状況?」と偏見に満ちた反撃するのですが、メニューに関してはそれ以上ラリーが続きませんでした。
まずこのラリーはもっと続けられると思います。この手のしょうもないラリーは、かまいたちがやってるみたいなしゃべくり漫才にできます。あんまり具体例が思いつかないのが恐縮ですが、「糸こんを買い置きしてるのなんてセブンイレブンかローソンぐらいのもんや」みたいなことを言えば「ファミマもやっとるわ」みたいなツッコミが入れられます。
そして初日に正解が出せなかったおばちゃんは「買い物に悪意がある」と客をなじるのですが、2日目に客が買ったのはカレールーとネギで、正解はカレーうどんでした。カレールーとネギなんていう大ヒントがあれば、カレーうどんという正解はほぼ確実に当てられるはずです。おばちゃんの「悪意がある」というフリがあったので、私は絶対に何か引っ掛けがあるだろうと思っていたのですが、まさかの引っ掛けなしでカレーうどんが正解でした。ここにはフリの通りに悪意を入れて欲しいんです。正解を「ネギマ」とかにして欲しいのです。そうすればまたおばちゃんが食い下がってしゃべくり漫才ができます。「家で晩飯にネギマ作るやつなんかおるか!」とか「カレールーはどうすんねん」とか「カレーは隣の浪人生のお兄ちゃんに作ったるねん」とか「そんなカワイイことする奴は家でネギマなんか食わん!」みたいなラリーができます。
3日目も正解は「すき焼き」だったのに客の方は肉を買っておらず、おばちゃんがその点に大して文句を付けないのは不自然に感じました。
全体的に設定と序盤のフリが活かしきれていません。活かしきれないうちに違う種類のボケを入れるので、煮えきらないのです。「違う種類のボケ」で言えば、おばちゃんが自分にバーコードリーダーを当てて値段が表示されるというクダリも設定をブレさせるので、不要だと思います。
こんだけ書いたのは、このネタの設定が良かった証拠です。あまり悪いようにとらないでくれると嬉しいです。
それとこれは完全な余談ですが、初日の暗転後、照明が消えきっておらず、はける様子が見えてしまっていました。誰が悪いのかは分かりませんが、ああいうのが見えると冷めるので気を付けてください。
3.オダウエダ
ネタの中身は「カニのストーカー」という相変わらずサイコなものだったのですが、このネタは1本目と異なり、序盤にストーカー役の植田を「小田に対するストーカーなんじゃないか」と思わせ、「もしかしたら普通のストーカーを題材にした普通のネタなんじゃいか」と客を誤解させるフリをきちんと入れていたので、カニのストーカーというサイコなネタバラシがあっても笑いやすかったと思います。
ボケとツッコミは1本目から入れ替わっていましたが、ツッコミの棒読みが気になってしまうというのは一緒です。ボケの内容をツッコミ役が一々全部言葉にして説明してくれるせいで、棒読みが際立ってしまっていました。
それと、このコンビはサイコなネタなのに最初と最後にきちんと挨拶をしてくれるので、それが段々おもしろく感じられるようになってきました。
<総評>
大会のレベルは確実に上がってきていると思います。
私はAマッソが優勝でいいと思いましたが、オダウエダという結果は意外に感じました。
テレビで売れそうなキャラの持ち主は、残念ながら見つかりませんでした。強いて言えばヨネダ2000の愛ですが、競合がたくさんいるので違いを出せないと難しいです。
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