当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2022年のTHE Wです。

<過去回>
2021.12.13THE W 2021
2020.12.14THE W 2020

1.TEAM BANANA
 去年と同じで基本構造は毒が多めの「ツッコミと相槌の漫才」であり、向かって右の山田の毒が過ぎる時はそれがツッコミのみならずボケの役割も果たし、藤本のフォローはそのボケに対するツッコミにもなっているという仕組みのネタでした。今年のネタは、毒が一般人のみならず一定の有名人にも向いていました。
 去年からずっと続く問題ではあると思いますが、この手の毒やルサンチマンに説得力を持たせるには、ブラマヨ吉田みたいな圧倒的な見た目や、有吉みたいな圧倒的な人生が必要なんだと思います。山田には、残念ながらどちらもありません。もっと露出を増やしてキャラや裏側の人間性が見えてくれば変わってくるとは思いますが、今の段階では弱いです。そのため、毒づかれると見ている側としてはちょっと引いてしまうのです。毒の対象が剛力彩芽や結婚報告をしてくる知人などといった手垢まみれの素材だったのも良くないでしょうし、山田に演技力があんまりないのも良くないと思います。吉田や有吉のような背景的な部分の説得力がないのであれば、せめて草薙みたいに真に迫る魂からの声を届けてほしいというところです。演技力が乏しいので、台本を読まされている感が拭えないのです(ちなみに吉田と有吉は、魂からの声も出せています)。このへんをちゃんとすれば、M-1でももっと上に行けるはずです。

2.ヨネダ2000
 コントでした。愛が、誠の排出したウンコを演じていました。
 そんな奇天烈な設定の作品なので、やりたいことをやれている感はとても出ていました。やりたいことをやったのであれば、私から言うことはないのですが、細かいことが結構気になったので一応記しておきます。
 まずウンコ役の愛は茶色い全身タイツに身を包んでいたのですが、なぜかスニーカーを履いていました。正直そこが一番おもしろかったのですが、ウンコを演じ切るのであれば足の先まで茶色いタイツの方が良かったと思います。ボケとしてわざとスニーカーを履いていたのであれば、お見事です。
 次に、誠の台詞にショックを受けたウンコがトイレから逃げ出すという描写がありましたが、ウンコはスタンドを上げた自転車をその場で漕いでいるだけなので、逃げ出しているように見えませんでした。自転車を漕いでも便器の中からは脱出できないと思われるので、ただ単にウンコが便器の中で自転車のその場漕ぎをしているようにしか見えませんでした(そのため、誠が逃げ出したウンコを探しに行くその後のクダリを見ても、私はしばらくつながりが理解できませんでした)。「便器の中での自転車のその場漕ぎなんて意味不明なことはしないだろう」という反論が入るかもしれませんが、コントの設定からして意味不明なので、色々な可能性をこちらは考えてしまうのです。ウンコが便器の中でただただ進まない自転車を漕ぐっていうシュールなボケなのかなと勘繰ってしまうのです。そういうシュールなボケだったのであればそれまでではありますが、逃げ出したように見せたいのであればもう少し演出上の工夫が必要だと思います。
 それからネタの冒頭で誠は2回ウンコを出すのですが、2回も排便する演出上の必要性がいまいち見えてきません。2回ともウンコ役は愛なので、見た目は一緒なのですが、本来であれば違うウンコである以上同一人物が演じるのはおかしいことです。このせいで、このネタをどう見たものかという迷いが私には生じてしまいました。また、前述のウンコが逃げ出すというストーリー展開は、誠が2回目のウンコに「形が良くない」という言葉をかけたから生じたものですが、誠本人は全く同じ形の1回目のウンコには特に何も言っていなかったので、ここでも見る側に混乱が生じます。1回目のウンコのクダリはバッサリ切ってもいいと思います。

3.さとなかほがらか
 クレーム対応中のコールセンターの職員を演じる一人コントでした。コールセンターで電話をかけてきた客に、保留音に見せかけた文句だらけの保留音ソングを歌ってやるという狂気的な内容です。本人の見た目がかなりしゃんとしていたのですが、中身は(田中も言っていた通り)かなりヤバい人物なのです。
 ただそんな設定の割りに、他の部分で肝腎の狂気が薄まってしまっていました。
 まず一人コントなので、客が電話で言ったことは復唱という形で自分でしゃべらないと見ている側に伝わりません。ただこの復唱によって、「客の言ったことは理解できる職員なんだな」という印象を私は持ってしまいました。本当の狂気の持ち主は、もっと客と話が噛み合わないはずなのです。これは、一人コントの限界です。客側を演じる人物がいれば、職員側は客の話を無視ないし軽視することで狂気を演出できるのです。
 もうひとつは非常に微妙な部分なのですが、普通にしゃべっている時と保留音ソングを歌っている時のギャップをもっと出して欲しかったです。そうしてくれた方が少なくとも私にはハマります。普通にしゃべっている時の声はもっと高くもっと媚びた感じで、保留音ソングを歌っている時はもっと低くもっと怨みを込めて、やって欲しかったです。局面に応じてロボットのように瞬時にモードを切り替えられる狂気が見たかったのです。加えて言うなれば、歌っている時はなんとなくしゃべっている時より滑舌が悪くなっている感じがしたので、もっと一音一音をハッキリ発音して欲しかったとも思います。ただ、このあたりをあんまりやりすぎると台本を読まされている感が出てしまう気もするので、先述の通り本当に微妙な部分ではあります。
 「アイマスクなら自分では色は見えない」というツッコミには大喜利のセンスを感じたので、持つべきものは持っていると思います。頑張ってください。審査では全票がヨネダ2000に入ってしまっていたので審査員たちも頑張ってフォローしていましたが、そんなに差はなかったと思います。

4.Aマッソ
 「体の見た目で判断されたくない」という理由で大きな箱に身を包んで就職面接にやってきた志望者(村上)と面接官(加納)という設定のコントでした。
 行き過ぎたフェミニズムやポリコレを諷刺している内容にも見えたのですが、それ自体は題材として各所(twitter等)でこすられまくっているので、Aマッソに今更やって欲しくなかったというのが正直なところです。
 あと二人ともそんなに演技力が足りてません。加納のツッコミは平場だともうちょっと真に迫る感じでできるはずですが、なんか今回のネタにおけるツッコミは虚空に消えていくような虚しさがありました。
 最後に大オチで箱の中身をバラすのかバラさないのかというのはみんな気になったでしょうが、加納が言葉でバラすというなんとも中途半端な形でした。とってつけたような感は否めなかったので、あれなら全くバラシを入れない方が良いと思います。

5.天才ピアニスト
 おばちゃんを演じていたますみの演技力は問題ないです。竹内の演技力の方は、もうちょっと磨けると思います。
 他人の喧嘩を肴に酒を飲むおばちゃんという設定は、最初に見たときは「おっ」と思わせるのですが、それ以上に爆発はしなかった印象です。特に途中までずっとおばちゃんにツッコミを入れていた竹内が最後はおばちゃんに同調してしまうオチは、ネタの主題やスタンスみたいなものがブレてしまうので、私は好きではありません。ただ、好みの問題ではあると思います。
 あと、舞台がどうも公園という設定だったようなのですが、それがパッと分からなかったので、もうちょっと何かセット的なものを置いといて欲しいと思いました。

6.爛々
 ネタの内容云々の以前に2人ともところどころ何を言っているのかが分からなかったので、そこを直さないとどうしようもありません。特に「チョメ!」みたいな2人が推していきたいであろうパンチラインで聞き取りづらくなっていたのが致命的だと思います。
 2人の身長差はハッキリしており、キャラクターとワンフレーズのインパクトはありそうなので、テレビ的な使いようはありそうでしょうかね。

7.スパイク
 小川演じるプリンセスが居酒屋にバイトをしに来たという、ある意味よくありそうな設定のコントです。
 小川は、舞台のお姫様よろしく、ものすご〜く芝居がかったプリンセスをずっと演じているのですが、舞台みたいな大袈裟な芝居はすごくうまいです。
 対して上司役としてお姫様にツッコミを入れていく松浦は、まず演技力が物足りません。その上松浦の台詞回しも、コント風に芝居がかかっているのです。現実世界で一般人が小川みたいなバイトに出会ったとしたら、もっと冷たくあしらうように接すると思いますす。にもかかわらず松浦は「お笑いというファンタジーの中でしかそういうことは言わないだろうなあ」というツッコミ台詞をずっと言っていたので、芝居がかかった小川と芝居がかった松浦が喧嘩をしてしまい、ネタのテーマみたいなものがブレてしまっていました。松浦は前述のようにもっと一般人に寄せた薄めの対応にした方が良かったと思います。哲夫は両者の対比がおもしろかったと言っていましたが、私はそうは思いません。もっと分かりやすい対比にすることができると思います。

8.フタリシズカ かりこる
 フタリシズカという男女コンビの片割れだそうです。
 まあ求められる演技力はそんなに高いものではないでしょうから、思い付いたもん勝ちみたいなネタではありましたが、おもしろかったです。Bブロックの中で一番おもしろかったと思います。
 本人が演じる「あかりさん」に電話をかけてきた男と、あかりさんとの関係性が僅かにしか分からないので、フリとしてもうちょっと情報をくれても良かったと思います。

9.河邑ミク
 カンニングするときの変顔がほとんど笑いの全てだったので、これがハマらないとずっとハマりません。笑いどころの絶対数も少なめだったので、もっと変化が欲しいなあとは思いましたね。
 あと変顔をアップで撮ってしまうと必死にペンを動かしている手が画角に入らなくなるので、「カンニングをしている」ということが若干分かりにくくなります。そういう意味でも顔だけに頼るのは避けた方がいいでしょう。

10.エルフ
 ネタのストーリーは一番映画的でちゃんとしていたとは思います。最初にタメ口で電話をしていた荒川が携帯ショップで店員のはるからタメ口を利かれてタメ口の響きの悪さに気付く展開なんか、特に気が利いていると思います。塚地の言っていた通りまともに見えるはるもヤバイ奴だったというのには意表を突かれました。オチの伏線も、ちゃんとネタ中に用意されていました。
 ただ綺麗すぎてあんまりテレビのお笑いっぽくない感はありました。もう少し破調があった方が愛されるような気はします。

11.紅しょうが
 前年前々年の漫才ではなく、コントをやっていました。
 ゴミ捨て場で寝ている熊元がボケだと思わせつつ、稲田もボケてくるという裏切りは良かったとは思います。2人が喧嘩をし始めたところで期待はできましたが、この裏切り以上の爆発力は後の展開にはなかった印象です。特に稲田が自分の過去を吐露するシーンなんぞは笑いどころもなく、中だるみしていました。

12.にぼしいわし
 前々年からあまり成長が見られません。
 ネタ中のボケを考える際のクオリティの高い大喜利ができていません。演技力も足りません。ツッコミが棒読みです。それ以上に言うことがありません。

<最終決戦>
1.紅しょうが
 1本目とは違い漫才でした。「日常の不満を言って、相方がそれに共感して本人以上に怒る」というクダリを交互に続ける形式の漫才でした。漫才が進むにつれて2人の感情のボルテージも徐々に上がっていたのですが、肝腎の大喜利がやっぱりできていない感じがしました。2人の言う不満に、あんまり共感できなかったということです。
 あと2人の台詞がところどころ聞き取りづらかったです。特に絶叫しながらしゃべると何を言っているのかが分からなくなりがちでした。

2.天才ピアニスト
 かなり良かったですよ。1本目と較べればボケの数も増えていたし、大喜利の平均点も上がっていたと思います。竹内の演技も1本目よりはよくなってました。
 惜しむらくは、お母さんが(関白亭主にいじめられている)ちょっと可哀想な人に見えてしまうので、突然VRを見だすヤバさを笑いにくくなってしまっていることでしょうか。お母さんにも、「笑われてもしょうがないと思える要素がある」ということをフリとしてお客さんに伝えた方がいいと思います。例えば、お父さんが文句をつけた肉じゃがが本当にまずい、とかですね。

3.ヨネダ2000
 「動物と話せる人間」というおもしろくなりそうな設定なのに、その設定はほぼ無視して最後までモヒカンだけを推したコントでした。最初に犬が「でっかいモヒカン」って言った時は「そんな正統派な笑いもできるんだ」と思って笑ってしまったのですが、ずっとモヒカンだけを推していたのでかなり早い段階で飽きてしまいました。ただ最後に1本目と同じ踊りを踊り始めた時もやっぱりおもしろかったです。なんか、「結局やりたいことはアレだけなんだな」っていうのがおもしろかったのです。

<総評>
 優勝は天才ピアニストでした。とても順当な結果だと思います。

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