当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

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 2026年のダブルインパクトです。

1.滝音[漫才]
 典型的な足し算の漫才でした。
 足し算の漫才というものを改めて説明しておきます。まずボケ1つと、それに対応するツッコミの台詞を1つ考えます。この1ボケ1ツッコミが組み合わさったユニットをひたすら並べ立てて尺を埋めれば、足し算の漫才の完成です。基本的にはユニットがずらっと単線的に並んでいるだけなので、ユニット同士の順番を無作為に入れ替えてもあまり影響がないというのがポイントです。
 今のM-1は、単純な足し算の漫才では優勝できません。とあるユニットを別のユニットの伏線にしたりして台本を複雑化するなり、とにかくユニットの数を増やして手数で勝負するなり、演技力の高さに裏付けられた強烈なキャラクターを持ってくるなり、何らかの一工夫が必要です。
 この漫才には、どれもありませんでした。ボケの1つ1つも、日本語の慣用句や定着した言い回しを少しズラしたり対義語的に言い換えたりしただけのものが多く、全体的にしょうもなかったです。2人とも演技力だけは及第点だったのでそれなりにウケてはいたようですが、M-1では準決勝にもいけない可能性も大いにあると思います。

2.ドンデコルテ[コント]
 万引き犯(銀次)がスーパーらしきお店のバックヤードで店長らしき人(小橋)から説教を受けるという設定でした。
 ただこのお店は自転車も魚も売っている設定だったので、どんな店なのかがいまいちピンときませんでした。食料品も売ってるようなバカでかいホームセンターでしょうか。それともアメリカのウォルマートみたいなところなのでしょうか。何であれ、この点をツッコんで処理してくれないとネタに入っていきづらいと思いました。
 銀次の演技は、下手というほどではないですが、去年のM-1(や2本目の漫才)で見せた演説芸ほどの説得力はありませんでした。他方で小橋の役どころは、一見すると淡々としゃべっていればいいだけにも見えるのですが、実のところは万引き犯をバイトに誘ったり、いつまで経っても頼まれた仕事をやらなかったりと「表面上はデキる奴に見える無能」を演じなければならず、非常に難しいです。銀次が最後にギブアップする(という展開が説得力を持つ)ほどのド無能には到底見えなかったので、やっぱり演技力は足りていなかったんだと思います。
 加えて、ネタの主な笑いどころが「バカでかい店なのにバックヤードが狭い」という一点だけでした。一応変化もあったのですが、このボケが笑えないとなかなかネタに入っていけないのはキツいと思いました。登場人物が多いわりに演者は2人しかいないので不自然な説明台詞も多く、それも没入感を削いでいました。大オチの「高校生4人」を小橋の説明台詞に頼ってしまったのは致命的と言えるでしょう。

3.ダンビラムーチョ[コント]
 部員が動物の能力を得た野球部の監督(大原)が、試合に負けた後に部員に説教をするという設定のコントでした。相方の原田は、ゴリラになって超人的なパワーを得たという設定の部員を演じていました。
 原田のゴリラは、ゴリラのマスクをかぶり、盛んにウホウホ言っていましたが、マスクはちゃちく、「ウホ」もどう聞いても人間の声であり、設定に全然説得力がありませんでした。超人的なパワーを得ているはずなのにドラミングも地面叩きも監督に人力で制止されており、それがノイズになりました。どうせなら、そこにツッコミを入れる人が欲しかったです。また他の動物になった部員も声だけ登場していたのですが、冒頭に何人かの設定を不自然な説明台詞で割りと長めに説明したにもかかわらず、ほとんどその後に活きてきていませんでした。あそこまで不自然な説明台詞を入れてフるからには、もうちょっとネタに活かして欲しいです。ちなみにあくまで「部員が動物になった」という設定だったはずなのに理事長までモモンガになっていましたが、そこにもツッコミは入っていませんでした。
 序盤の「動物の力を得たのに大阪桐蔭に負けた」というボケはそれなりに面白味がありましたが、上記の通り各種設定の整合性や必要性が詰めきれておらず、全体的にとっ散らかっていたので、何を笑えばいいかが分かりにくく見ている方としては迷子になってしまいました。ひょっとして、とっ散らかっていることを笑えばよかったのでしょうか。それなら、その点に対するツッコミが必要だったと思います。

4.TCクラクション[漫才]
 「ないものゲーム」というこの世にないものを言い合うオリジナルのゲームを2人でやる漫才でした。ボケの古家が冒頭にこの提案をして、ゲームを遊ぶ際の歌とリズムを実演します。またこの説明段階で古家が挙げた「この世にないもの」の例が、「緑の虎」でした。
 私は「緑の虎」系統の大喜利がネタ中に見られることを期待したのですが、実際に出てきたのが「無償の愛」とか「輝かしい未来」とかそういう哲学的なものばかりで、ちょっと期待外れでした。また、古家がずっとやっていた「ないものゲーム」のリズムをとる際の歌(「ないものゲーム」をリズムネタにするとしたら、ブリッジに当たる部分)は、微妙に長いうえに動きも歌詞も基本的にずっと一緒だったので、早々に飽きが来ました。あの部分の尺を削ってもっと「ないもの大喜利」の手数を増やして欲しかったです。
 また哲学的な回答の方も、おもしろさよりも売れてない芸人が「無償の愛なんかこの世にない」ということを声高に主張している悲惨さの方が勝ってしまっていました。おそらく、古家の演技力が足りておらず、かわいそうなおじさんが空元気で無理してふざけながら自暴自棄で心にもないことを言っているように見えてしまったからです。ブラマヨの吉田やチュートの徳井に同じようなことを言わせれば、もっと堂に入った芝居(=ちゃんと本心からそう思っているように見える堂々とした演説)ができると思います。

5.蛙亭[コント]
 放送部員としてお昼の放送をする小6男子(中野)と小5女子(イワクラ)のコントでした。中盤、マイクが切れていなかったことを告白された時の中野の表情は、おもしろかったです。声を出して笑いました。流石の演技力だと思いました。
 ただ笑いどころがほぼそこだけだったので、長いフリの割りにはコスパが悪いと思いました。フリの場面では2人とも変なしゃべり方をしていたのですが、小学生のキャラ付けとしてもボケとしても中途半端で、あそこにもっと笑いどころを増やした方がいいと思います。他方で、2人とも小学生のようなしゃべり方をしている割りに、たまに大人びたことを言い出したりもするので、キャラ付けがどっちつかずになっている面も指摘できます。前述の通り変なしゃべり方には特に面白味もなかったので、クレヨンしんちゃんみたいに終始大人びた感じのしゃべり方に統一してしまうのもひとつの手だと思います。
 とはいえ、イワクラの演技力の低さがあまり目立たなくなっていたのは良いことだと思いました。

6.ななまがり[コント]
 森下が色々な妖怪に扮して登場し、初瀬がそれに対するリアクションをとるという流れが基本線でした。
 ななまがりは、2人とも演技力が物足りないです。森下のボケの芝居は休み時間にふざけている小学生の域を出ないので、妖怪を演じてもこの世のものならざる存在には全く見えないですし、初瀬も言葉で自分の感情を説明し過ぎで、本当に怖がっていたり楽しんでいたりするようには全く見えません。本当に恐怖の感情を覚えた人は、「怖い」と言葉で言ったりはしないはずです。演技力に自信がないから言葉で説明をしちゃうんだろうな、というようにも見えてしまいます。
 大喜利力も物足りません。おもしろ妖怪を考える際の大喜利が小学生の1周目(コロコロコミックレベル)から抜け出られていないような感じです。このネタではそれを逆手に取ってメタ大喜利(出る順番を間違えるとか、前の妖怪にネタバレをされてしまうとか、名乗る際に噛むといったボケ)をやってはいたのですが、それだけでカバーはしきれていませんでした。メタ大喜利の前の大喜利も、高レベルなものを見せて欲しいです。ハム貼りジジイやアスパラ浣腸アメリカ人で満足して欲しくはありません。そもそも、名前で全部を説明してしまっているので、それが登場した時の驚きもありません。名前ももっと工夫できるとなおよいです。
 あと、森下の衣装は基本的にずっと黒の全身タイツであり、カツラと持ち物を変えて違う妖怪を演じていたのですが、演技力の低さも相俟ってずっと同じ人がふざけているように見えてしまいました。着替えている時間がないのは分かりますが、演技力を上げられないのであれば何らかの演出上の工夫が欲しいところではあります。

7.ビスケットブラザーズ[漫才]
 京都の高級旅館に客(きん)が訪れるという設定のコント漫才でした。コントでもできたとは思いますが、コントにすると大掛かりなセットが必要そうなボケが多かったので、敢えて漫才にしてお客さんの想像に委ねる部分を多くしたのは、賢いやり方だったと思います(審査員のジュニアも同じことを言っていました)。漫才にすることでコストカットができるという意味では、このネタを漫才でやった意味もあったということでしょう。加えて、お金をかければ「案内の者」や浴槽に吊り下げられている「湯の者」なども含めて全てを完全に再現するとこともできるでしょうが、それを徹底的にやると今度はお客さんが引いてしまうレベルの映像ができ上がるような気がします。故に、やっぱり漫才という形式が一番だったのだと思います。漫才というやり方を選んだからには漫才じゃないとできない(=漫才という形式で伝えることが一番おもしろい)ネタをやって欲しい、というのは私の常々思っていることです。このネタは、その好例です。
 きんのツッコミの演技力は充分でしたし、原田が演じるボケキャラの演技力も及第点でした。「鶏か豚か」と聞いた板前が豚に扮し始めたクダリはおもしろかったです。すなわち大喜利も、相対的には高レベルでできていたと思います。

8.今夜も星が綺麗[漫才]
 タクシー運転手とお客さんの漫才でした。
 設定こそよくあるものでしたが、大喜利も高レベルでしたし、ジグソーパズルやらトランクやら伏線もたくさん貼られていました。コンビ名まで伏線にしたネタは、初めて見たような気がします。
 2人の演技力のこのネタの中では十分でした。非常にきれいにまとまった漫才だったと言えます。M-1でもかなり戦えるでしょう。
 審査員の点数が妙に低かったのが不思議です。

<FINAL>
1.ドンデコルテ[漫才]
 去年のM-1で見せたスタイルと同じで、銀次の演説に小橋がツッコんでいくスタイルでした。
 ボケの中核を為していたのは「銀次の話がつまらない」というものですが、銀次はそもそもしゃべりが巧いので、「マンモスの話や田沼意次の話をしても女子が聞いてくれない」という主張に全然説得力が感じられなかったのが一番の問題だったと思います。サウナの話も炒飯の話も、充分聞いていられました。もっとつまらない話(私がぱっと思い付くところでは、法定地上権とか、充当の順序とか)をしてくれた方が笑えたと思います。

2.ビスケットブラザーズ」[コント]
 原田がパンイチの不審者を演じているコントでした。原田のわがままボディは存分に活かされていたと思います。ただ2人がいきなり仲良くなっているなど、色々と回収されない謎が残るネタでした。セオリー通りいネタを作るのであれば、謎を残すくらいなら全部笑いとして回収した方がいいです。
 なお原田がきんから「通り魔のことをなぜ知っているのか」と聞かれていましたが、前にあったボケを活かして「全員知っている」と答えてほしかったです。

3.蛙亭[漫才]
 これは、ビスブラの1本目のコント漫才と異なり、コントでもできるやつでした。
 まあそこはいいのですが、中野が演じていたわがままな奥さんのキャラが仕上がり過ぎていて、それだけで無茶苦茶おもしろかったです。イワクラは相変わらず全然芝居ができていないのですが、中野の演技力だけで全てカバーできていました。イワクラの演技力が上がり過ぎると、今度は逆にイタすぎるカップルとして見ていられないレベルになってしまうような気もしました。

4.ダンビラムーチョ[漫才]
 サウダージのメロディで五十音を歌うというネタでした。
 ただ、どうやっても冒頭のサビの最後の4文字である「ごころよ〜」のところが残ってしまうというのがボケになっていました。変化は一応あったのですが、このボケが多めであり、やるたびにサビを全部歌うので、笑いどころの数も少なかったです。
 原田による優しめのツッコミの演技は及第点だったと思います。

5.滝音[コント]
 寿司屋の大将(さすけ)が刑事(秋定)から嘘発見器を使った取調を受けるという設定のコントでした。嘘発見器は事件に関する質問の時は一切反応しませんでしたが、大将が寿司について熱いことを言った時に初めて反応してピー音を出します。
 この冒頭は非常に魅力的なのですが、その後刑事が大将に好きな寿司ネタを聞き、大将が答えた3つのネタ全てにピー音がかぶさって放送禁止用語を言ったみたいになるというボケが入ります。このボケは、冒頭のボケとは関係のないかなりの変化球です。本当は、大将の(取調とは無関係の)しょうもない嘘で笑わせて欲しいのです。その後も刑事が嘘発見器がちゃんと動いているかどうかを自分で確かめるために、自分で「私は女性と付き合ったことがある」と言って試すというクダリがありましたが、このボケも良くないです。この刑事がモテないキャラであるというフリも何にもないので、その嘘を見せられたところでおもしろくは感じられないのです。これをやるなら刑事の人と為りを見せるフリが必要ですし、その手のフリを入れないのであれば、フリがなくても明らかに嘘と分かるものを入れた方がいいです。毒もあると最高なので、例えば「トランプ大統領はまともだ」とか「マックのポテトは冷めても美味しい」とか、そういうようなやつです。
 その後はきちんと大将のしょうもない嘘をボケの中軸に据えてくれていたのですが、間に冒頭のフリを活かせていないボケが2個も挟まってしまったので、しばらく迷子になってしまいました。変化球を入れるなら、もっと後の方がいいです。それこそ、後半にあった「大将の台詞よりもピー音が先に来る」という変化球ボケと同じくらいの出順です。

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