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これも弟から「おもしろいらしいからやれ」と手渡された一本です。
極限脱出シリーズの作り手たちが作ったサスペンスADVだそうです。
ADVにしては珍しく、CEROのレーティングではZ指定を受けています。そのため内容もいい意味で開き直っており、かなり直接的な殺害描写・スプラッタ描写や、キツめの下ネタがふんだんに散りばめられています。
肝腎のストーリーですが、かなりおもしろいです。「過去にあった事件を現在に絡ませる」というおもしろいストーリーの「基本」(というよりは、定石)はしっかりと押さえられています。詳しいことは書きませんが、最後には怒涛の如き勢いでネタばらしがされ、それまでの伏線が全て回収されて一つにつながるストーリーラインはお見事です。惜しむらくは、序盤のフリが少し弱いことでしょうか。ゲームを始めるといきなり最初の殺人事件の現場の捜査をすることになるのですが、主人公の刑事は、ある時点より以前の記憶を失っているとか、他人の子どもを自宅に預かっているとかいった不思議な設定を山ほど抱えています。冒頭から不思議な設定が多すぎて結構置いてけぼりにされてしまうので、そのあたりをもう少し丁寧に描写してくれた方が、お話としての引きが強まった気がします。ただ、主人公の出自は本作のストーリーの根幹に関わる部分なので、あんまりしつこく触れることもできないというジレンマはありますね。
それと、これは好みの問題でしょうが、全体的にはシリアスなサスペンスなのに、要所要所でしょうもない下ネタが挟まるのが個人的には鬱陶しかったです。サスペンスとしてのリアリティや緊張感を大きく損なうレベルに達していると思います。例えば、緊迫した銃撃戦をやっている中でエロ本を投げて敵の気を引くという展開を見せられます。マジで見せられます。笑える内容ならまだいいのですが、これ自体昭和のギャグ漫画でやっていたような手垢まみれの下ネタで、それをどや顔で見せられてもこちらとしては真顔になるよりありません。少なくともシリアスなシーンでの下ネタは、全カットで良かったと思います。
加えて言うなれば、お話自体はおもしろいですが、プレイヤーに本格的な謎解きや推理が求められるタイプのゲームではありません。口を閉ざす相手に適切な証拠品を突き付けて尋問するパートはありますが、間違いによるペナルティはなく総当たりでなんとかなります(一応ノーミスで終えればトロフィーがもらえます)。またこのゲーム一番の独自要素として、「ソムニウムパート」という操作パートがあります。これは、対象者の脳内に主人公が入っていって記憶を喚起していくような捜査手法なのですが、対象者の頭の中だけあって夢のような不条理な世界が構築されており、論理的な推理というものがほとんど通用しません。ゲーム内で用意されている正解にたどり着くための手順は、攻略情報を見ない限りはほとんど総当たりで試していくしかなく、ゲームとしての面白味は大してありません。このゲーム独自の要素がこんな感じの出来なのは結構痛いと思います。
とはいえお話はおもしろいので、ミステリー好きはやって損はありません。知名度が低いのが惜しい一作です。ボリュームはトロコンまでやっても10時間〜20時間ほどでしょうが、ADVならそんなもんでしょう。ADVに欲しいスキップ等の機能はほぼ全て標準装備されています。この機会にどうぞ。
※その他細かい点(重度のネタバレあり)
・主人公が冷凍倉庫で死体を見つけ、警察の応援を要請してその場を離れるも、警察が到着した時には死体が消えていたという描写があります。実は死体は冷凍倉庫内のフォークリフトの中(座席下のスペース?)に隠されていたのですが、そこは普通調べると思うんですけどね。警察官も作中で「隅々まで調べた」というようなことを言っていましたよ。そこまで広い倉庫にも見えないうえに、物はほとんど置かれておらず死体を隠せそうな場所も2台のフォークリフトしかないので、これを見つけられないというのは「無能」と言われても仕方ない気がします。
・狼範の体を乗っ取った主人公が世島邸に乗り込んでラスボスと対峙した際に、ラスボスにあっさり捕らえられてしまうのですが、さすがに不用心すぎると思いました。ラスボス本人はただの若造かもしれませんが、世島邸に兵隊がたくさんいることは予想できるはずですし、丸腰で行った割りには自分が狼範本人ではないと分かるような不用意な質問をしすぎです。せめて外部にSOSを伝える手段は用意しておくべきじゃなかったでしょうか。
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極限脱出シリーズの作り手たちが作ったサスペンスADVだそうです。
ADVにしては珍しく、CEROのレーティングではZ指定を受けています。そのため内容もいい意味で開き直っており、かなり直接的な殺害描写・スプラッタ描写や、キツめの下ネタがふんだんに散りばめられています。
肝腎のストーリーですが、かなりおもしろいです。「過去にあった事件を現在に絡ませる」というおもしろいストーリーの「基本」(というよりは、定石)はしっかりと押さえられています。詳しいことは書きませんが、最後には怒涛の如き勢いでネタばらしがされ、それまでの伏線が全て回収されて一つにつながるストーリーラインはお見事です。惜しむらくは、序盤のフリが少し弱いことでしょうか。ゲームを始めるといきなり最初の殺人事件の現場の捜査をすることになるのですが、主人公の刑事は、ある時点より以前の記憶を失っているとか、他人の子どもを自宅に預かっているとかいった不思議な設定を山ほど抱えています。冒頭から不思議な設定が多すぎて結構置いてけぼりにされてしまうので、そのあたりをもう少し丁寧に描写してくれた方が、お話としての引きが強まった気がします。ただ、主人公の出自は本作のストーリーの根幹に関わる部分なので、あんまりしつこく触れることもできないというジレンマはありますね。
それと、これは好みの問題でしょうが、全体的にはシリアスなサスペンスなのに、要所要所でしょうもない下ネタが挟まるのが個人的には鬱陶しかったです。サスペンスとしてのリアリティや緊張感を大きく損なうレベルに達していると思います。例えば、緊迫した銃撃戦をやっている中でエロ本を投げて敵の気を引くという展開を見せられます。マジで見せられます。笑える内容ならまだいいのですが、これ自体昭和のギャグ漫画でやっていたような手垢まみれの下ネタで、それをどや顔で見せられてもこちらとしては真顔になるよりありません。少なくともシリアスなシーンでの下ネタは、全カットで良かったと思います。
加えて言うなれば、お話自体はおもしろいですが、プレイヤーに本格的な謎解きや推理が求められるタイプのゲームではありません。口を閉ざす相手に適切な証拠品を突き付けて尋問するパートはありますが、間違いによるペナルティはなく総当たりでなんとかなります(一応ノーミスで終えればトロフィーがもらえます)。またこのゲーム一番の独自要素として、「ソムニウムパート」という操作パートがあります。これは、対象者の脳内に主人公が入っていって記憶を喚起していくような捜査手法なのですが、対象者の頭の中だけあって夢のような不条理な世界が構築されており、論理的な推理というものがほとんど通用しません。ゲーム内で用意されている正解にたどり着くための手順は、攻略情報を見ない限りはほとんど総当たりで試していくしかなく、ゲームとしての面白味は大してありません。このゲーム独自の要素がこんな感じの出来なのは結構痛いと思います。
とはいえお話はおもしろいので、ミステリー好きはやって損はありません。知名度が低いのが惜しい一作です。ボリュームはトロコンまでやっても10時間〜20時間ほどでしょうが、ADVならそんなもんでしょう。ADVに欲しいスキップ等の機能はほぼ全て標準装備されています。この機会にどうぞ。
※その他細かい点(重度のネタバレあり)
・主人公が冷凍倉庫で死体を見つけ、警察の応援を要請してその場を離れるも、警察が到着した時には死体が消えていたという描写があります。実は死体は冷凍倉庫内のフォークリフトの中(座席下のスペース?)に隠されていたのですが、そこは普通調べると思うんですけどね。警察官も作中で「隅々まで調べた」というようなことを言っていましたよ。そこまで広い倉庫にも見えないうえに、物はほとんど置かれておらず死体を隠せそうな場所も2台のフォークリフトしかないので、これを見つけられないというのは「無能」と言われても仕方ない気がします。
・狼範の体を乗っ取った主人公が世島邸に乗り込んでラスボスと対峙した際に、ラスボスにあっさり捕らえられてしまうのですが、さすがに不用心すぎると思いました。ラスボス本人はただの若造かもしれませんが、世島邸に兵隊がたくさんいることは予想できるはずですし、丸腰で行った割りには自分が狼範本人ではないと分かるような不用意な質問をしすぎです。せめて外部にSOSを伝える手段は用意しておくべきじゃなかったでしょうか。
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