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Déraciné

※正しい表記は上記の「Déraciné」です。wikiの表記上限界があったのでページ名は「Deracine」としました。

 私は、「アッシュと魔法の筆」のVRトロフィーを手に入れるためだけにVRゴーグルとPlayStation Move モーションコントローラー2本を手に入れてしまったのです(両者が抱き合わせになっている「エキサイティングパック」というセットの中古品を買いました)。3万5800円もしたので、どうせなら他のVRソフトもやってみようと思ったのです。
 色々調べてはみたのですが、VR対応ソフトはなかなかにラインナップが貧弱であり、その中で私が一番興味を持てたのがこの作品でした。私が最近ハマっている「死にゲー」の総本山・宮崎英高氏が手掛けたゲームだったからです。

 中身は、死にゲーでは全くありません。プレイヤーは作中で「妖精」と呼ばれる存在を操り、外界から隔絶された寄宿学校で生徒の子供たちと交流するお話になっています。妖精は「時」を止めて現実世界に干渉する能力を持っており、学校内に落ちているアイテムを拾ったりその場所を動かしたりしながら間接的に子供たちの行動に影響を及ぼしていくのがゲームの主内容です。このコンセプトは、「ゴーストトリック」とかに似ているでしょうか。拾えるアイテムについているフレーバーテキスト、中世ヨーロッパっぽい世界観、考察の余地が多いストーリー、グラフィックの画風などには「フロム」っぽさを感じることができます。
 クローズドサークルである寄宿学校を舞台にしたストーリーにも、ゴシックホラー的な雰囲気がかなり漂っており(詳述は避けますが、お話が進んでいくとダークでホラーな感じがどんどん増していきます)、この点もソウルシリーズっぽいです。登場するキャラクター達も、グラフィックが綺麗すぎるわけでもなく、かなり人形っぽさを残しているのですが、それが却って怖さを増していると思います。何よりVRなので、この人形みたいな見た目のキャラクターにかなり肉迫することができるのです。終盤のとあるシーンなんか鳥肌ものですよ。ストーリーはソウルシリーズほど分かりにくいわけでもなく、ちゃんと大要は把握できるようになっています。作品によって「どこまでプレイヤーに説明するか」を調節できるのはすごいですね。
 この作品をプレイするには、VRゴーグルの他にPlayStation Move モーションコントローラー2本も必須になります。ボリュームは薄め(1周5〜6時間ほど。エンドコンテンツもなし)ですが、2000円ちょいと安いので、ソウルシリーズの世界観が好きな方はやってみてください。

 個人的な話になりますが、モーションコントローラーの先端についている光る球体は、かなり独特のにおいがします。理科室に置いといたゴムみたいなにおいなんです(※ただ後に気付きましたが、ゴーグルの部品からも同じにおいがしていました)。このコントローラーを持ってゲームをプレイすると、このにおいがずっと鼻をついてくるのですが、本作ではどうもそのにおいが作中の寄宿学校の中に漂っているにおいのような気がしてきてしまいます。目と耳はVRで没入しているからこそ、鼻もついでに没入してしまうのでしょう。でもそれが、逆に本作の「怖さ」を増していて良かったと思います。理科室みたいなにおいなので、登場人物たちの「人形っぽさ」も高めてくれているのです。
 逆にこのにおいが合わない作品では、あまり良くないかもしれません。




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