当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

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 スクエニがいかにも「AAAでござい」という態度で世に送り出してきたオープンワールドアクションゲームです。ゲームカタログに入ったタイミングで手を付けてみました。
 本作が発売されたのは2023年1月24日のことですが、当時のスクエニは自信満々そうに微妙なクオリティのゲームを多々リリースしており(「ハーヴェステラ」と「ヴァルキリーエリュシオン」が2022年11月発売、「Babylon's Fall」のサービス終了が2023年2月27日です)、「スクエニ叩き」が業界全体で一種のトレンドやコンテンツと化していた面があります(残念ながら本稿を書いている2025年2月時点でも大なり小なりその傾向は残っていると感じられます)。Metacriticにおける本作のメタスコアも2025年2月17日時点で64点しかなく、前述のような「トレンド」のために本作の評価が不当に貶められているのであれば良くないことなので、私も実際にプレイをしたうえで公正な評価を本作に下そうと思いました。

 結論から言うと、64点というのはやっぱり不当に低いと思います。私は、73点くらいのゲームだと思いました。もっと分かりやすく言うと、UBIが濫発している「ガワだけはそれなりにちゃんとしているように見えるオープンワールドゲーム」のど真ん中に位置するような作品だと思いました。
 
 主人公のフレイは、ニューヨークでネズミのように貧しく暮らしていた孤児(といっても、ゲーム開始時にはすでに20歳です)です。そのフレイが、しゃべる腕輪(後に彼女が「カフ」と名付けます)と出会い、アーシアという異世界に飛ばされるところから物語は始まります。アーシアは、ゲーム内ではオープンワールドとして再現されており、オープンワールドゲームらしく色々な探索ポイントがあります。個々の探索ポイントでは、敵を殲滅したり探し物をしたりと小さなクエストが用意されており、それを達成するとアイテムがもらえたりフレイのステータスが上がったりします。ここまでは、よくあるオープンワールドゲームの仕様かと思われます。
 本作の問題は、それ以上のものが何もないことだと思われます。フレイは実に色々な種類の魔法を使えますが、戦闘システムにそれほど深みはありません。死にゲーほど難度が高いわけではないので、緊張感はありません。そのくせ敵は全体的に妙に固いので、一戦一戦に時間がかかります。敵の攻撃を避けながらちまちまこちらの魔法を当てていく単調な戦闘になりがちなのです。敵の種類はたくさん用意されていますが、どれを相手にする時も「避けながらちまちま削る」という戦法になってしまうので、早めに飽きが来るのです。フレイはゲームを進めるにしたがって最終的に4属性の魔法を使えるようになり、敵ごとに弱点や耐性といった概念もありますが、これらの要素はそこまで戦闘に影響しないバランスになっているので、(属性をあまり考慮せずに)威力を上げた魔法でごり押すだけでも体感の所要時間はそれほど変わりません。
 アーシアには人が住んでいますが、設定上「ブレイク」という現象によって生じた瘴気で世界全体が覆われているので、オープンワールドの中央に鎮座するシパールという街にしか人がいません。サイドクエストも全てこのシパールで発生します(ちなみに個々のサイドクエストも単純なお使いが中心で、ストーリー的にもゲームプレイの面でも深みはありません)。フレイがいくらオープンワールドを探索して敵を倒していってもシパールの人々が他の場所に引っ越していくことはありません。本作のように「人気(ひとけ)のないオープンワールド」といえばDEATH STRANDINGもそうでしたが、あちらでは他のプレイヤーが設置した構造物で辛うじて人気を感じられますし、何より主人公(プレイヤー)が頑張ればそれだけ輸送網が発達してゲームプレイが楽になっていくという「ご褒美」がきちんと用意されていました。本作はいくらフレイで頑張ってもアーシアの人々がずっとシパールにしがみついたままなので、そういったご褒美もなく、探索のモチベーションが上がらないのです。探索すればするだけフレイは強くはなりますが、戦闘は前述のように単調で退屈なので、「時間のかかる作業」が「あんまり時間のかからない作業」になるだけなのです。

 メインストーリーは、短いです。メインストーリーだけ一直線で進めれば10時間〜15時間ほどで終わるでしょう。一応フレイがなぜアーシアに呼び出されたかが分かるストーリーになっており、カフの裏切り(というよりは、フレイに接触した真の目的の暴露)というどんでん返しも用意されているので、それなりに見応えはあると思います。ただ、ゲームプレイとの嚙み合わせがそんなに良くないのが難点です。まず、展開が駆け足過ぎてカフの裏切りにおける唐突感が強くなってしまっています。加えて、このどんでん返しはプレイヤーがカフと共有した時間がより長ければ長いほど(すなわちオープンワールドの探索に使った時間が長ければ長いほど)効果的になると思いますが、前述のようにオープンワールドの探索にそれほど旨味はなく砂を噛むような退屈さがあるので、多くの人はまずメインストーリーを終えようとしてしまい、効果が薄いままこの展開を迎えていそうなのです。そこが、非常に残念です。
 設定上、カフというのはアーシアと長く対立していた隣国レディッグが生み出した兵器のようです。「In Tanta We Trust」という有料追加DLCで過去のことは描かれますが、カフが生み出されるよりも過去の話であり、結局レディッグがどういう国なのか、なぜアーシアと対立していたのか、両国の戦争におけるそれぞれの大義名分はどういったものなのか、カフがどういう経緯で生み出されたのかといったプレイヤーが一番知りたいであろうところはほとんど分かりません。更なる追加DLCや続編も予定していたのではないかと推測されますが、もはや期待はできないと思います(ただこのDLCは、本編では極めて痕跡的な形でしか接触できなかったフレイの生母シンタとずっと共闘できるので、その意味ではプレイヤーの溜飲を下げてくれる面はあります)。ちなみに、フレイが元いた世界の側の人間であるというフレイの実父のことも、DLCまでやってもほとんど分かりません。こちらも更なる追加DLCや続編での展開を予定していたのかもしれません。

 そんな感じです。ストーリーは悪くないと思いますが、ゲーム性の部分が凡庸なので、プレイしていても退屈な時間が長く、肝腎のストーリーもあまり活きてきません。ゴッド・オブ・ウォーHorizonシリーズみたいな文句なしのAAAタイトルは、ちゃんと戦闘がおもしろいです。ゲーマーがのめり込めるようなアクションゲームにするには、ある程度難化するのを厭わずに「単純作業だけでは勝てない戦闘システム」を作り出す必要があると思います。

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