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HEAVY RAIN 心の軋むとき

 Life Is Strangeと同じく、山本さほ先生の『無慈悲な8bit』で紹介されていたのを見て手を出してみました。

 舞台はアメリカで、開発したのはフランスの会社で、「主人公をアクションゲーム的な操作で動かせるサウンドノベル」というところがLife Is Strangeと共通しています。なんか、ここまで被ってるのは何か原因があるのかしらね。

 筆者がやったのは2016年に発売されたPS4版ですが、元は2010年に出たPS3版です。確か、『いい電子』でも紹介されていた記憶があります。

 プレイヤーは、4人の主人公を動かしながら、舞台となる街で起きた「折り紙殺人鬼」による連続殺人事件の真相に迫っていきます。この折り紙殺人鬼というのは、秋に10歳前後の男の子をさらって、数日間とある場所に監禁しておき、タイムリミットが来るとその男の子を雨水で溺死させてしまうというシリアルキラーなのですが、この数日間の猶予のうちに男の子の父親に様々な「試練」を課して、これをクリアーすれば男の子の居場所を教えるという愉快犯的な犯行をやっているわけです。犯人は誰で、どういう目的でこういうことをやっているのかに迫るゲームという意味では、ミステリーのサウンドノベルという色が濃いです。

 そうなると一番大事なのはストーリーですが、筆者は十分楽しめました。ただまあ、犯人の正体に関してはどんでん返しを狙い過ぎていて、多少それまでのお話の展開に無理が生じている感は否めません。説明不足の点や矛盾点も多く指摘されており、そういうのが気になる人は気になるのではないでしょうか。
 あと、タイトルにも入っている通り、「雨」が今作のキーの一つになっているため、プレー中は基本天気が悪いです。主人公もどちらかというと暗めの人が多く、最終的に事件が解決できるのはいいとしてもそこに至るまではげんなりするような展開の連続であるため、(好みもあるでしょうが)筆者はやっているとかなり気が滅入りました。苦手な人は気を付けましょう。

 では、ゲーム性の部分についてはどうでしょうか。
 和製サウンドノベルと異なるのは、テキストを読まされるだけではなくて、主人公をアクションゲーム的な操作で動かしながら謎解きやら何やらができるという点です。ここは、前述のようにLife Is Strangeと同じですが、Life Is Strangeよりはだいぶできることの幅が広いです。ただまあ、謎解きや前述の「試練」に挑む場面、また悪人との格闘のシーンなどを除けば、できることのほとんどは日常的な動作であって、それができるからなんだということは言えると思います。「立ち上がる」とか「座る」とか「冷蔵庫を開けて牛乳を取り出す」とかそういった操作もいちいちプレイヤーでやってやる必要があるのです。こういう日常の煩わしいルーティーンを省略できるのがゲームのいいところであり、こういった「現実」から目を背けられるこそエンターテインメントだとは思うので、これをそのままプレイヤーがやらされるというのはいかがなものでしょうか。リアリティがある程度大事なのは確かですが、そこを追求しすぎるとどんなゲームであっても主人公が一定時間おきにトイレに行かなければならなくなります。そのへんは省略して楽しい部分にばかり目を向けることができるからこそ、没入できるのではないでしょうか(逆に言うと、「トイレに行かなくてもいい」というのはエンターテインメントだからこそできる「嘘」なのです)。
 また「試練」や悪人との格闘も、ゲーム的な操作で挑むことができるとは書きましたが、アクションゲームや格闘ゲームほどの練りこみがあるわけではなく、ただのQTEの連続です。1回やれば、飽きます。
 つまり、わざわざやらされてもおもしろくない部分にしかゲーム性がないのです。これなら主人公を操作できるゲームにした意味がほとんどないと思うので、ただのテキストを読ませるサウンドノベルで良かったかと思います。

 Life Is Strangeと同じく、フローチャートのようなものはありません。ただこちらはLife Is Strangeと違って序盤でのプレイヤーの選択肢がエンディングに影響を及ぼす場合があり、主人公が死んでしまうようなバッドエンディングも複数用意されています。にもかかわらず前述のようにフローチャートみたいなものがないので、全てのエンディングを見ようと思ったらゲームを何周もしないといけません。途中からやるということができないのです。特定のエンディングを見ることでとれるトロフィーや全てのエンディングを見るととれるトロフィーがあるので、トロフィーコンプを目指す場合は根気が必要です。2周目だからムービーやQTEをスキップするということも一切できません。
 このように、(Life Is Strangeをやった時も思ったことですが)和製サウンドノベルなら当然搭載しているインタフェースが全然整備されておらず、イライラを募らせる仕上がりになっているのです。海の向こう側にノウハウが伝わってないとしたら、ちゃんと教えてあげた方がいいのではないでしょうか。ここで書いた問題点は2010年のPS3版の時点で指摘されていたのに、全然直っていなかったんですよ。

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