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I Am Dead

 これもPS Plusのおかげでタダでできたので、PS5版をやってみました。

 ジャンルの説明が難しいのですが、ゲーム性の部分だけを切り出せば一応パズルゲームになるんだと思います。ただ本作は、ゲーム性よりもストーリーと雰囲気作りに重きが置かれていると思われます。
 プレイヤーが操る主人公モリスは、タイトルの通り、すでに死んでいます。死んでいるので、色々な物の中身を透かして見ることができます。モリスは生前はシェルマーストン島という離島の博物館でキュレーターを務めていたのですが、ゲームを始めると、まずモリスより先に死んでいた飼い犬のスパーキーに出会うことになります。スパーキーは死んだばかりでなくなぜか人語を操れるようにもなっており、そのスパーキーから火山島であるシェルマーストン島に噴火の危険が迫っているということが告げられます。モリスはそれを阻止するために、島のあちらこちらで自身の透視能力を使いながら色々な物を探すことになります。
 この説明も、特に後半部分をだいぶ端折っています。モリスが探す「物」というのは噴火の阻止に役立つ実用的な物ではありません。「霊体を操るゲーム」というとGhost Trickを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、あのゲームのように科学的に現実に介入するわけでもありません。モリスの仕事は、スパーキー曰く、噴火を阻止するための新たなガーディアンのスカウトらしいのです。これまでその仕事をやってきた現任のガーディアンが限界を迎えているから、新任の人物に交代させようということらしいのです。モリスがやればいいじゃないかと思った人は私と同じで「お話をすぐ終わらせたがる」性根の持ち主ですが、モリスはできないらしいです(どうもこのあたりのルールはあんまりはっきりしません)。
 モリスは、島のあちこちをめぐり、自分と同じようにすでに死んでいる人の「思い出」(を象徴する有体物)を探し集めながら、新任ガーディアン候補の死者と交流することになります。これがこのゲームの大まかな流れです。そしてこの「思い出探し」が本作のゲーム性の根幹を為す部分です。島が舞台とは言いましたが、島全体がオープンワールドになっているわけでもなく、ゲームは全部で6つのステージに分かれており、ステージごとに探索できる範囲は狭く限定されています。その探索範囲の中にある色々な物を回転したり縮小・拡大したり中身を透視したりしながらお目当ての物を探していくパズルが、本作のゲームらしい部分です。この「探し物」には、ストーリー関連の物以外に、ウォーリーみたいなサブのおまけもいくらか用意されているほか、お題として与えられた色々な物の「断面図」を(回転・縮小・拡大・透視の4操作を駆使して)探すサブ要素もあります。とはいえ、前述の通り本作はそのゲーム性そのものよりも、シェルマーストン島という作中の舞台や、作品全体に流れる空気感や雰囲気を楽しんでもらうことに重点を置いている作品です。シェルマーストン島は、クリケットが盛んなようなのでコモンウェルス圏のように見えますが、一方で魚人という非現実な存在も普通に登場します。このあたりに作り手の作家性が表れているとは思いますが、こういった作中の空気感や雰囲気の部分は文字列だけではどうしても伝わらないので、実際に検索して各位で画像なり動画なりを見てみてください。
 ボリュームは少なめです。探し物には難しいものも混じっているのでドツボにハマるといくら時間があっても足りないでしょうが、詰まったら攻略情報を参照するというやり方で進めるとトロコンにも10時間もかかりません。
 まあ「雰囲気」が好きになれた人はやってみればいいんじゃないでしょうか。

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