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Inscryption

 複数のYouTuberが紹介しており、気にはなっていたタイミングでゲームカタログに追加されたので、やってみました。

 ゲームのベースは、トレーディングカードゲームです。ここに、カルドセプトのようなすごろく要素が若干加わっています。とはいってもカルドセプトのような山手線型の盤面ではなく、スタートとゴールがあります。またプレイヤーはサイコロを振るわけでもなく、1マスずつ進んでいくことになります。プレイヤーは盤面を進みながら道中で待ち受ける敵を倒し、ゴールではボスと戦うことになります。また盤面上のマス目には、このような対戦マスの他に、新しいカードが手に入ったり、既存のカードを強化できたり、カード同士を合成できたりといった種々のイベントマスがあります。盤面は前述のように基本的には一本道ですが、道中ではいくつかの分岐があり、プレイヤーは持っているカードと相談しながら適切な強化マスを選んでいくことになります。なお、周回をやり直すたびに盤面の構成はランダムで変化します。
 以上のとおり本作では、盤面の構造も、手に入るカードも、(初期デッキとして与えられる数枚を除けば)各周回ごとにランダムで変化するローグライト要素があります。そういう意味では、本作はトレカにおける「構築」よりも、MTGの「リミテッド」のような、ランダムで手に入る「武器」に応じてアドリブで立ち回りを考えていく頭の使い方が必要になってきます。

 とはいえこれはあくまで本編の第1章の話です。ゲームを進めていくと、ちょっとルールの異なったゲームを行う新章に突入していき、プレイヤーはこのゲームに隠されたメタ要素に気付かされていくことになります(もっとも第1章の時点で、このようなメタ構造を匂わせる「違和感」は随所に散りばめられています)。このあたりは詳しく説明しすぎるとネタバレになってしまうので、あんまり言いたくありません。是非、やってみてほしいです。本作は、カードゲームの裏に隠されたホラー的なストーリー要素も大きな魅力になっているのです。私は、十全にこれを楽しむことができました。なおストーリークリア後にプレイできるようになる高難易度モードは、第1章のルールで行われます。

 ちなみに一般的なトレカと一緒で、フィニッシャー1枚とそれを早期に場に出せる仕組みを整えるのがクリアへの近道です。特に高難易度になると、敵は圧倒的な物量と展開力で場を支配してくるので、長期戦は不利にしかなりません。1枚で勝ちをもぎ取れるフィニッシャーをさっさと場に出して1ターンで勝負をつけてしまうのが最適解の戦術になります。そうすると、余計なカードはフィニッシャーのドローを遠ざけるだけなので、できるだけデッキを圧縮していくような立ち回りが求められることになります。そういう意味では、本作における有効な戦略はほぼ1つしかない(フィニッシャーになり得るカードは複数ありますが、皆一様に攻撃力が高くなおかつ1ターンに複数回攻撃ができるカードばかりなので、あまり変わり映えはしません。前述のようにこれらを合成していく要素もあるので、合成を繰り返していくと出来上がりは尚更似たようなカードばかりになります)ことになるので、MTGの構築のような戦略自体を考える楽しさや、デッキを作り上げていく楽しさ、あるいはカードゲームとしての懐の広さはあまり味わえないと思います。

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