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Slay the Spire

 Inscryptionを気に入った私が次に手を出してみた類似ゲームです。とはいえリリースはこちらの方が早いので、Inscryptionの方が後発の類作ということになります。
 本作の方が元祖なのでこの言い方も妙なのですが、とてもInscryptionに似ています。一言で言うと「ローグライクデッキ構築カードゲーム」とでも言うべき内容ですが、「ローグライク」とはいってもアクション要素はありません。ランダムで生成されるすごろくのようなマップを1マスずつ進んでいきながら、これまたランダムで手に入るカードの取捨選択をして自分なりのデッキを構築し、最後のマスで待つボスの打倒を目指すゲームです。ボスに至るまでの道中のマスには分岐があり、戦闘マスやイベントマスなど色々な種類があります。戦闘は自キャラと敵キャラがHPを削り合うターン制コマンドRPG方式であり、自キャラの方は集めたカードを自らのターンで使っていくことになります。「コマンドRPGになったロックマンエグゼ」と言えば伝わるでしょうか。
 プレイヤーが最初に選択するキャラクターは、無料DLCで追加された1キャラを含めて4種類います。この4キャラは、手に入るカードの内容が全くと言っていいほど異なるため、それぞれに得意な戦法を発揮できるデッキを組んでやる必要があります。とはいえ全キャラにラスボスと渡り合えるレベルの戦法が片手で数えられるくらいはあるため、デッキの組み方は非常に多彩です。手に入るカードの傾向を見ながら、どの戦法をとるかも自分で考えていく必要があります。そういう意味ではInscryptionよりも求められるアドリブのレベルが高く、難度も高いです(その裏返しではないでしょうが、Inscryptionのようなメタ要素やホラー要素はありません)。1つのルールのもとでこれほど多彩な戦法を考え出した製作者サイドには頭が下がる思いです。バランス調整等は、大変だったと思います。

 トレカ好きは、気に入ると思います。PS Plusのゲームカタログに入っているので、是非やってみてください。

補記

 「ローグライク」でランダム要素があるとはいえ、リセットするとドロー内容や入手できるアイテムが変わる、という種類のランダム性はありません。初手の引きが悪いからといってゲームをリセットしても、全く同じドロー内容になります。報酬の内容が気に入らないといってゲームをリセットしても、選べる報酬の内容は一緒です。実際に試してみると、乱数保存のあるスパロボと同じような印象を受けると思います。
 とはいえ、本作の仕組みはスパロボの乱数保存とも違うと思います。前述の通り本作はすごろく状のマップを1マスずつ進んでいく構成のゲームですが、このマップの1つ1つは「シード」という名前で呼ばれています。全シードにはアルファベットと数字で構成されたコード番号が設定されており、1回でもプレイしたことがあるシードは、(最後まで踏破できたかどうかは問わず)プレイ記録からそのコード番号を確認することができます。そして、このコード番号を指定して特定のシードをプレイする機能もあります(シードを特定してプレイすると、トロフィーは獲得できません)。
 すなわちランダムなのはあくまで「ニューゲームを始めた際にどのシードが選ばれるか」という点のみであり、シード内での敵の挙動、ドロー内容、手に入るカードやレリック等のアイテムは、かなりの部分で固定されているものと思われます。それが、セーブデータのバックアップを駆使して色々試してみた私の結論です。もちろん完全に固定されているわけではなく、シード内でどの分岐を進むか、3択の報酬の中でどれを選ぶか、といった点を変えれば、手に入るアイテムのラインナップや個々の戦闘におけるドロー内容は変わることもありました。とはいえ、どのシードにおいてもプレイヤーが採り得る選択肢の数は有限であるため、全シードにおいてその選択肢の数に合わせた数の固定された展開が用意されているだけだと思われます。そこまで考えれば、本作にランダム要素はなく、各々内容の固定された複数の未来があり、分岐点に到来するたびにプレイヤーが進むべき道を選んでいる(=逆に言うと、選ばれなかった未来を剪定している)だけなのです。トーナメント表を上から下に降りていくようなゲームだとイメージすると、分かりやすいかもしれません。
 そうなると気になってくるのは、(シードが全部で何種類あるのかは分かりませんが、)「全シードで(クリア後に解禁される高難易度モードも含めて)ラスボス撃破が可能な立ち回り(=未来)があることがきちんと確認されているかどうか」です。この答えがNOだとしたら、何をどうやってもクリアできないシードも存在する可能性があることになり、幾分こちらのモチベーションが削がれてしまいます。ここは、非常に気になるところです。

 ちなみに「ニューゲームを始めた際にどのシードが選ばれるかがランダムである」と述べましたが、この言い方もかなりミスリーディングです。あるシードで死ぬ直前のセーブデータをバックアップしておき、死亡後に新たに始めた周回で選ばれるシードが変わってくるかを検証してみましたが、変わりませんでした。どういう順番でシードが選ばれるかも、何らかの手法で固定されているものと思われます。

 このように本作はリセマラが非常にやりづらい構成になっており、そういう意味ではトロファー泣かせではあります。セーブデータのバックアップをとっておけば、敗北したシードで違う分岐を選び、選ばれなかった別の未来を覗き見ることは可能にはなっています。とはいえ前述の「全シードでラスボス撃破が可能な立ち回りがあることがきちんと確認されているかどうか」という問いに対する答えが不明なので、どうしようもなく微妙なデッキしかできなかったシードにどこまで固執していいのかも分かりません。

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