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Thymesia

 かなり完成度の高いインディーのソウルライクということで話題になっていたので、手を出してみました。

 結論から言うと、確かにおもしろかったです。
 本作は「SEKIROブラボを掛け合わせたような作品」と形容されることもありますが、この表現は言い得て妙です。疫病が蔓延るダークな中世ヨーロッパ風世界観は、確かにブラボっぽいです。
 他方で戦闘システムは、ちょうどSEKIROブラボを足して2で割ったような感じだと私は思いました。
 本作の敵は、ザコもボスも、白の体勢ゲージと緑の体力ゲージという2種類のHPを持っており、両方を0にしないと倒せません。体勢ゲージは、SEKIROにおける体幹と名前は似ていますが、システムはかなり異なります。R1の通常攻撃を敵に当てると、体勢ゲージを減らすことができ、その裏側にある体力ゲージが見えてきます。その状態で、R2で繰り出せる爪攻撃(通常攻撃より隙が大きめ)というものを当てると、ようやく体力ゲージを減らすことができるのです(R1の通常攻撃でも体力ゲージは減らせますが、ダメージが少なく効率が悪いです)。つまり、敵を倒すには「まず通常攻撃を当てて体力ゲージを露出させ、その後でR2の爪攻撃を当てて体力ゲージを削る」という本作独自の立ち回りが求められるのです。体勢ゲージは、しばらく経つと体幹のように自動回復してしまうので、一度露出させたら爪攻撃を急ぎたいところですが、その焦りを敵は突いてきます。ここに、駆け引きが生まれます。
 他方でボス相手には、また違った感じの立ち回りが求められます。まず本作には、ガードがありません。レベルアップで得られるスキルポイントを消費すれば習得は可能ですが、被ダメージを0にすることはできず、あくまでしくじった時のカバー用のものです。他方でワンボタンでの回避は可能であり、スタミナの概念もないのでSEKIROみたいに出し放題ではありますが、性能がそんなに高くないのでボスの激しい攻撃を避けきることはほぼ不可能と言っていいです。じゃあどうすればいいのかと言えば、ボスに最も有効なのは「跳ね返し」という名のパリィ(攻撃が当たる直前にL1)なのです。実はパリィを決めた場合にも白の体勢ゲージを減らすことができるので、ボス相手には攻撃をパリィでいなしながら体勢ゲージを削り、攻撃が止んだら爪攻撃を当てて緑の体力ゲージを減らすという立ち回りが最も有効になっているのです。この戦い方を覚えると、ザコもこのやり方で処理した方が楽だということに気が付きます。とはいえ敵の攻撃には色々なパターンがあり、パターンごとに最適なパリィタイミングは異なるので、何度も死にながら体でそのタイミングを覚えていく必要はあります。そういう意味では、本作にはSEKIROと同じようなリズムゲー的要素があります。以上から、本作については、「回避しながらチマチマ削る戦法ができなくなり、真正面からの対峙を常に余儀なくされるSEKIRO」と理解するのが最も当を得ていると私は思います。

 一応気になったところも挙げておきますが、まずボリュームが少ないです。本作は仁王のようなステージクリア形式(拠点からステージを選ぶ形)なのですが、メインステージはなんと3つしかありません(一応メインステージのアセットを使い回したサブクエストもあります。この点も仁王と似ていますね)。ゲームクリアだけを目指すのであれば、この手のゲームに慣れている人なら10時間を切れるでしょう。トロコンまでやっても15時間〜20時間程度だと思います。また敵のバリエーションも少なく、ザコは人型のものしかいません。ボスも人型が多いです。なので、定価で買うと損した気分になる人もいると思います。

 とはいえやって損はないので、安く手に入るならやってみましょう。

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