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Wife Quest

 ゲーム性だけの部分を切り取って見れば、良質な2Dプラットフォームアクションです。ドット絵で描かれたレトロなグラフィックはクラシックな名作を彷彿とさせます。全7ステージしかありませんが、1ステージが長めになっています。各ステージは基本的に一本道ですが、メトロイドヴァニア的な探索要素も若干ながらあり、また各ステージのボスを倒すごとに主人公が強化されてできるアクションが増えていくという強化要素もあります。足場の端の方に着地しているのかしていないのかという判定の部分に若干の違和感を覚えることはありましたが、プレイヤーを飽きさせないためのギミックは豊富であり、難易度の上がり方もちょうどいいです。すなわち、基本的には手堅く楽しく作られている良作なのです。ボリュームは1周10時間もかからないほどですが、安価なので値段相応だと思います。

 本作一番の特徴は、その舞台とキャラクターの設定でしょう。タイトルにあるとおり主人公はミアという「嫁」であり、モンスターにさわらわれた旦那を助け出すためにクエストに挑むというストーリーになっています。ちょうど救出者と被救出者の性別がマリオから逆転しているわけです。その意味では、とてもポリコレ的なゲームです。
 ただこのモンスターというのが、みなアニメ絵(anime)で描かれた豊満な美少女になっています。ボスもザコも、全員が美少女モンスターです。美少女モンスターというのは、ケモノ娘と一緒で、美少女度合いとモンスター度合いの配分比に作風や個人個人の嗜好が現れるものかと思いますが、本作の配分比はちょうど「モンスター娘のいる日常」のそれと同じくらいです。私の体感ではちょうど1:1ぐらいの感じです。
 さてこの美少女モンスターたちが、さらった旦那に対して抱き着いたりキスしたりといったセクハラを執拗にかましてきます。主人公のミアも敵側から「貧乳」と盛んに罵倒されます。それを受けたミアがブチ切れて、モンスター娘たちに「お仕置き」という名の(かなり強度な)暴力を振るうという展開が本作では繰り返されます。
 そういう意味では、この作品はポリコレ的な発想とは対極の位置にあります。複数のモンスター娘たちから一方的に好かれてハーレム的なセクハラを受ける展開は昔からある男性目線の美少女アニメそのものですし、ミアのバストサイズという「外見」へのハラスメントも、ミアの暴力性という古風な女性性からの逸脱をコミカルに描くのも、とても古典的で、牧歌的なまでにポリコレに無頓着な表現手法です。

 作り手は、ポリコレへの配慮という名目でその対極にあるゲームを作ることで、ポリコレを皮肉りたかったというのは深読みをしすぎでしょうか。あるいは、単に昔の牧歌的なゲームが作りたかっただけ(ポリコレはそのための隠れ蓑)かもしれません。そもそも何も考えていない可能性も大いにあるとは思います。

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