PM20:55。
数分前に降り始めた雨は強さを増し、
今朝、傘を持たずに家を出たさゆみは抗うことなく素直に雨に濡らされていた。
きっと傘を持っていたところで今日のさゆみにそれを開く気力はなかった。

(なんでいつもこうなっちゃうんだろ…)
失恋。
胸に募らせ続けた想いは相手に伝わることもなく燻ったまま、つい先程、終わりを迎えた。

“なんで”
その答えを嫌というほどわかっているから、
気持ちをどこへ向ければよいのかわからず、ただ途方に暮れる。
冬の雨は氷のようにさゆみの身体と心を急速に冷やしてゆく。

(…あー、明日休みで良かった…)

「ねぇちょっと!」
誰かがさゆみの腕を掴む。

「あなた大丈夫っ?!」
「……」
「ちょー手ぇ冷たいし!」
「……だいじょ」
「とりあえずうちの店来なよ」
「へ?…あ、いやっ」
「いいから!早くっ」
強引にさゆみの腕を引っ張り、走り出す女性。
彼女も傘を持っていないが、さゆみほど濡れてはいなかった。
抵抗する気力さえ持ち合わせていないさゆみは、
前を行く彼女の手のあたたかさをぼんやり感じながらほぼ無意識に足を進めた。

「やばいっ寒すぎる!」
「……」

手を引かれて着いた先は綺麗なマンションだった。
明るいエントランスの灯りに照らされ、自分を拾った女性の姿が明らかになる。
さゆみはここにきて初めて彼女に意識を向けた。

(きれいなひと…)

ジャージというラフな出で立ちながら、肩口で揺れる柔らかい茶色の髪と端正な顔立ち。
可愛らしくも女性らしい、そんな印象を与えるヒトであった。

手にぶら下げた白い袋を見るに、コンビニ帰りにさゆみを拾ったようであった。
さゆみの視線に気づいた彼女は笑いかけながら、掴んでいた腕を離す。

「エレベーターですぐだから」
そう言ってまた歩きだす彼女に、無言で付いていくさゆみ。


「どうぞぉ」
「……」
スニーカーを脱ぎ、電気を付けて中へと進んでいくその女性。
さゆみは玄関で立ち尽くす。外観と違わず広くて綺麗な部屋。

「うひぃ〜暖房つけっぱにすれば良かったー!」
「……あ、あの」
「あっお風呂はもう沸いてるから。ちょっと待っててね」
そう言って彼女はさゆみにタオルを渡し、携帯でどこかに連絡をとる。

「…あっもしもーし。えりだよー。
申し訳ないですが急用できたから今日は無しの方向で、お願いしまーす。
…えへへっ。今度サービスするからぁ!…ね?…うん、すまんね。はーい!ばいばーい」


…………。


「あの、すみません。私帰りますんで…」
「ぇ。」
「失礼します」
「なんで!ダメダメ、えり今用事なくなっちゃったし」

部屋から小走りで玄関へと戻ってくる彼女…“えり”。
「いや、初対面だし、こんな…」
「あっ私えり。あなたは」
「は?」
「な・ま・え」
「……さゆみです。」
「さゆみちゃん…さゆで良いよね。えりもえりで良いからね」
「…」
「よし。じゃお風呂いこう」

えりのペースについていけないと感じたさゆみは少し口調を強める。
「いや、だからさゆみはっ「一人で居られるの?」
「……?」
「今日のさゆは一人で居ちゃいけないんじゃないかなって。えりは思うんだけど」

正面から見つめられて動きも思考も停止する。
「こんな寒い日に独りは寂しい…でしょ?」
さゆみに渡したタオルを手に取り、さゆみの体を包むように拭くえり。

「あーあ。こんなに冷たくなっちゃってぇ……おいで?」
茫然とするさゆみのブーツを脱がせて手を引き洗面台へ。

えりに促され、濡れて重くなった白いコートを脱ぐ。
洗面台の鏡に写った自分を見つめながらさゆみが言葉を紡ぐ。

「…今日、好きな人に会ってたんです。映画見て、ご飯行って。
学校以外で二人で会うのって滅多にないから、結構服とか気合い入れて」
コートをハンガーに掛けたえりがさゆみの後ろに回り、
話を聞きながらさゆみの結わいた髪をほどいていく。

「でも、『恋人が出来たんだ』って。頭ガーンって殴られたみたいになって…
でも意外と冷静に、笑って『おめでとう』とか言えてたりして…
たぶんこうなるのわかってたから」

えりがさゆみの黒いワンピースの背中のチャックをゆっくりと引き降ろす。

「そっかぁ。偉かったね」
「…ぜんぜん。今だって本当は『おめでとう』なんてちょっとも思ってない。
なんで気づいてくれないのって、どうして笑いながらそんなこと言えるのって」
「うん…」
「だけど伝えなかった自分が悪いだけだって。それも嫌ってほどわかってるから…」
初対面のひとに対してこんなことを話しているのが不思議だと思いながらも、
口にするとほんの少しだけ心が軽くなった気がした。

「その、さゆの好きなひとってさ……“かわいい”?」
「…?」
「へへ。えりわかっちゃうんだなぁー」
不敵な笑みを浮かべたえりがさゆみの肩に手をかけ、ワンピースを滑り落とす。

「えりもソッチのひとだから。」
鏡越しにえりの妖しい視線に捕らえられ固まるさゆみ。
“ソッチ”の言葉が指す意味…想い人が同性であることを言い当てられたことに単純に驚いていた。

えり自身も服を脱ぎ始める。
「さっきコンビニで立ち読みしてるときにさゆのこと見つけたんだけどね。
なんか直感で“あの子迎えにいかなきゃ!”って思ったの」
「…なんで?」
「えりと同じ匂いがするって…オンナの勘ってやつ?」
と笑いながら、すでにえりは完全に裸になっていた。
そしてさゆみのブラジャーのホックに手をかける。

「失恋はつらいよねー…」
次いでショーツを腰からゆっくりと引き降ろす。
えりは立ち上がり、後ろからさゆみの両肩に手をおいて首筋に軽く唇を押し当てる。
「…今日はえりが忘れさせてあげる」
再び鏡越しに視線がぶつかる。
「こんな可愛くて綺麗なんだから…楽しまないともったいないよ?」
腰のラインを手のひらでなぞられて身体が震える。
長い間雨に打たれて熱も出ているかもしれない。
ぼんやり夢のなかにいるような心地のまま、さゆみはえりに身を委ねた。

白くて広い浴室にはキャンドルや花飾りが施されていた。
「えりここでさゆみたいな女の子のお相手する仕事してるの」
えりの放つどことなく妖艶な雰囲気から、その仕事がなんとなく想像できて納得してしまった。

「まぁ昼は普通の仕事もしてるんだけど。はい、座って」
椅子に腰かけさせると、温水のシャワーでさゆみの身体を暖めるように流していく。
そして手慣れた様子でさゆみの髪を洗い流すと、
スポンジを手に取り鼻唄まじりにさゆみの背中を洗い始めた。

「色白いねぇー…羨ましい」
スポンジを持つのとは逆の手のひらが直接背中を撫で回し、その感触に恥ずかしくなり無言のままのさゆみ。
「あー。『こいつ慣れてるなぁ』とか思ってるでしょ?」
「ひゃあっ」
えりはふざけた口調でさゆみを責めると、そのまま背中から抱きついた。
「さゆみたいな可愛い子と一緒に居るからドキドキしてるんだよ。わかる?」
驚いたさゆみだが、押し当てられた胸の感触と共にえりの鼓動が伝わり、首だけで頷く。

「ね?…じゃあちょっと横になって」
マットにさゆみの身体を横たわらせるとその腹部に跨がるえり。
スポンジを泡立てると手首から肩にかけてゆっくりと洗っていく。

「さゆは…今までも好きな子が出来ても言わないでいたの?」
「…嫌われるの怖いし、さゆみが言っても迷惑かけるだけだから」
目を伏せて呟くように答えるさゆみ。

「さゆは優しいんだね」
手のひらにのせた泡で直接両方の胸を撫でていくえり。
びくっと肩を竦めるさゆみに構わず、脇やお腹にかけて撫で回していく。

「人のカラダってなんでこんなに気持ちいいんだろうねぇ…」
言いながら覆い被さるようにさゆみに上半身を重ねるえり。
少しだけ身体を浮かせて自分の乳首で円を描くようにさゆみの乳輪をなぞり、
胸と胸をこすり合わせる。


「「あっ……はぁっ…」」
唇がくっつくほどの近い距離で互いの目を見つめながら吐息を洩らす二人。

「はぁっ…えりは優しくないから」

さゆみの髪を耳にかけて頬に手を当てる。
「このまま…もらっちゃうね?」


軽くついばむように口づける。
一度距離を離して見つめると再び距離をなくして深く口づける。
「んぅ……っはぁっ」
えりに舌を吸われ、手で左胸を愛撫され、どんどんさゆみの身体が熱くなっていく。

「んっ…さゆも、したいようにしていいんだよ」

その言葉を言うために一度離れたえりの唇の見つめたまま、
さゆみはえりの頭と背中に腕を回し、しがみつくように唇を重ねた。

必死なキスに応えながら、さゆみの胸を撫で、
乳首を指ではじいたり摘まんだりして弄ぶえり。

「はぁっ……ん…あっ」

さゆみから洩れる声が徐々に高くなり、足をこすり合わせる様子に気づくと、
えりがその太ももの間に手を伸ばす。
「ぁあんっ!」
「こっちも気持ちよくなりたいよね?…おいで」



身体を起こし、さゆみの腕をひいて、泡風呂になっている浴槽にそのまま連れ込む。
後ろから抱きかかえるように自分の太ももにさゆみを乗せるえり。
再び後ろからさゆみの胸や太ももを撫でていく。

「どう?気分は」
「は、ずかしい…」
「でも気持ちいいでしょ?」

太ももを撫でていた手がより深い場所を探るように這っていく。
反射的にさゆみがその手を引き止めるように手を重ねるが
それに構わずに手のひら全体で包むようにさゆみの秘部を撫でる。
「んぁっ!」
「ふふっ可愛い。…さゆはかなり感じやすいね」

そのまま指で筋をゆっくりと何度か往復してから、手前にある腫れた突起を爪で軽くはじく。

「いやぁっ」
さゆみの身体が激しく反応すると、泡に覆われた水面が大きく揺れる。
すると背中を仰け反らせたさゆみの胸が泡にまみれて水面から顔をのぞかせる。
その淫らな光景に満足げに笑いながら、
泡で指を滑らせるように大きく胸を撫で回す。

「んっ…」
さらに、主張するように固く立ち上がったピンク色の乳首を摘まんで刺激し、
同時に秘部のぷくっと膨らんだ突起を指先でくるくると弄るえり。
「あぁっん!はあぁっ!…んんっ…いやぁっ」

逃げるように腰をくねらせながらもどんどんのぼりつめていくさゆみ。
えりはその様子を楽しみながら白い背中に何度も口づける。

「んんっ!…あぁ…っもうっ…!」
「もうイッちゃうの?まぁいいや」

弄っていた指でその突起を押し潰すように強く刺激する。


「ひやあぁぁっ!…っはぁっ…!」



ぐったりとしたさゆみの後ろから腕を回して抱きしめるえり。

「かわいかったよさゆ。」
「……はぁ…はぁ…」
まだ息を整えているさゆみ。
「もっと可愛いところ見たいなぁ…ってところだけど、
のぼせちゃうからとりあえずあがろっか」
えりに抱えられ浴槽を出て、シャワーで泡を流してもらう。

「よし、いこう!」
「……」

めまぐるしい一日に未だ思考がついていかないさゆみだが、
えりの手の感触と体温に不思議な安心感を覚えながら、
その手を引かれて浴室をあとにした。



つづく...

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