…ブオォォォォォーーー……


「はい、できたよー」
お風呂をあがって寝室に移動した二人。
寝室には白く大きなベッドが二つ配置されている。

さゆみはえりに渡されたキャミソールとニット地のショートパンツを履き、
えりに髪を乾かしてもらう。
さゆみと同様の格好にパーカーを羽織ったえりは、そのまま続けて自分の髪を乾かし始めた。

その間にさゆみはバックから携帯を取り出し、
親へ「友人宅へ泊まる」旨のメールを送る。
すると送信完了画面が表示されるのとほぼ同時に、メール受信画面へと切り替わった。


「…………」

「さゆー、良いモノ持ってきたよぉー」

いつの間にかブローを終えて寝室から出ていたえりは、すぐにさゆみの元に戻ってきた。
「甘いの好きー?……ってなんかあった?」
コンビニで購入した苺プリンを手に問い掛ける。
片側のベッドに腰掛けて携帯を見つめるさゆみの硬い表情に気づくと、
その隣に腰をおろした。

「……ふーん、この子なのね」
携帯を覗き見るえり。
画面には仲の良さそうな男女のプリクラ画像が映し出されていた。

「バイト先の、先輩なんだって」
「へぇー……でも、やっぱかわいい子だね。さゆが選ぶだけのことはある」
自然に笑いかけるえり。

さゆみがゆっくりと話し出す。

「こういうの、初めてじゃないの」
「…」
「今までも、誰かを“好きだ”って気づくと同時に諦めてて。
 叶わないってわかってるから、今日みたいに壊れる時のこと考えて過ごすの」

俯きながら話すさゆみ。
その頬に垂れる髪を耳にかけてやり、静かに話を聞くえり。

「その日が来るまで近くに居られればいいって。
 ……でも、いざこうなると、やっぱり苦しいね」

さゆみが自嘲気味に眉をさげて笑う。
えりはさゆみの頭を抱えるようにポン、ポン、と一定のリズムで撫でる。


「そっかぁ。さゆは、やっぱり優しい子だ」
そう言って柔らかく笑うえり。
「でもこれからもそうなの?」
「……」
「えり難しいことはわかんないけどさ、さゆはもっと好きなようにしていいと思う。
 子供みたいに好きなモノ抱きしめて『好きだー』ってさ。それでいいじゃん」


いたずらに笑いながらさゆみの顔を覗き込む。
「けっこう単純なモンだよ、ジンセイなんて」

へへっ、と笑いながら苺プリンの蓋を開けてスプーンですくうえり。
生クリームが沢山のったソレをさゆみの口に運ぶ。

「……」
えりを見つめながらゆっくりとくわえるさゆみ。
なにも解決していないようでいながら、何かが変わったような不思議な気持ちだった。

えりはさゆみの口からスプーンを引き抜き、
次は自らの口にプリンを運ぶ。

「ていうか現に今日、えりはさゆのこと『好きなように』しちゃったしね」

食べる直前にサラッとそんなことを口にするえりに、固まるさゆみ。
お風呂場での行為を思い出し、今更恥ずかしさが込み上げる。

「てかえりの勘ってすごくない?もうさゆ見た時にキュピーンって来たんだよねっ」
食べ進めながら、興奮気味に話すえりをじっと見つめるさゆみ。



「……ねぇ、えり」
「ん!なに?」
今日はじめて名前を呼ばれ、喜びながら顔をあげるえり。

「さっきの……さっきの続き、して?」
えりのパーカーの裾を掴むさゆみ。心なしかその瞳は潤んでいる。
「…いいの?えり優しくないから失恋の弱味とか気にせずつけこむよ?」

言葉とは裏腹に優しい声色で問うえり。
「だって、さゆみの好きなようにしていいんでしょ?」


「…………あはっ」
少しの間のあと同時に笑い出す二人。

「じゃあ…」
えりは指先で少し生クリームをすくい、わざとさゆみの唇の端に塗りつける。

「遠慮なく、いただきます」
そしてそこに口を近づけて舐めとり、そのまま顔をずらして唇を合わせる。

「んっ……」
そのままの体勢で持っていたプリンの容器をサイドテーブルに置くと、
ゆっくりと後方にさゆみの身体を倒していく。


「…っと。ちょっと待って」
身体を起こしたえりがリモコンを手にして常夜灯に切り替えると、部屋が薄暗いオレンジ色に包まれる。

「えりけっこう雰囲気重視するタイプだから」
微笑みながらパーカーとキャミソールを脱ぎ、自らの上半身をさらけ出す。
「ばんざいして?」
そしてさゆみのショートパンツを脱がせ、キャミソールを腕から引き抜く。

服を脱がせるためにベッドの上で立て膝になったえりの胸が、
ちょうどさゆみの目の前にくる。

「あっ……」
さゆみは自然と張りのある膨らみに手を伸ばすと、
その両方をやんわりと揉んでいく。
えりはさゆみに身体を近づけ、さゆみの両肩に手を置く。

「ふふっ、いいよ…もっとして?」
えりはもっと距離を近づけるため、肩に置いた手をさゆみの首の後ろで組む。
するとさゆみは舌を伸ばし、左胸の乳首を突つく。

「うん、そう……もっと…」
えりの要求に応えるように、その尖端を舌先で弄んで、音をたてて吸い付き、
反対の胸の尖端を指で左右に震わせて刺激を与える。

「…ん…っちゅ……」
「あっ…さゆ……いい」

しばらくさゆみからの愛撫を楽しむと、一旦身体を離し、
ベッドの上部に背中を預けてさゆみを後ろから抱えこむえり。

「ありがとう。次はさゆの番ね」
両腕を前に回して胸やお腹を撫で回されると
さゆみの内側にぞわぞわとした感覚が込み上げる。

「ふぅ…ん…」
しかしゆっくりと這いまわる手のひらは胸を大きく撫でるだけで、
なかなかその中心には触れてくれない。

「柔らかいなぁ、さゆ」
「あっ…えり……」

さゆみのもどかしい思いを無視するように、その顎に手をかけて横を向かせるえり。

「んぅっ」
背後からさゆみの唇を挟み込むように口付ける。
「へへ、甘いねぇ」
嬉しそうに少し舌をだして自身の唇を舐めると、また何度も口づけを繰り返す。

口づけに応じながらも、更なる愛撫を求めるさゆみは、
身体を這うえりの手のひらに自身の手を重ね、胸へと導こうとする。

「ん……ここ触ってほしいの?」
「あっ」
唐突に右胸の中心を摘ままれて声がもれる。
その反応を見て満足げに口角をあげ、さゆみと身体を入れかえて上になるえり。

「じゃあいっぱいしてあげる」
さゆみの下腹部に腰をおろし、
両脇から中央に寄せるようにさゆみの胸を揉むと、
人差し指で両胸の乳首を繰り返し弾く。
「はぁっ!……んん」
求めていた直接の刺激にさゆみの息が徐々に荒くなる。

「ちょー可愛い」
えりは肘で身体を支えながら右胸に唇を寄せると、
舌先で乳輪をなぞってから舌全体で舐めあげる。

「はぁっ…んっ」
「っん…ちゅ………へへっ」
楽しげに親指の腹で尖端をやんわりと撫でまわし、再び舌で素早く震わせる。

「あっ、はぁっ……」
反対の胸の尖端も指で摘まんでは、爪の先で軽く引っ掻かれ、
指と口で不規則な刺激を与え続けられることで、どんどんさゆみの身体の熱が高まってゆく。

「はぁっ、はぁ…」
「……じゃあこっちも見せて」
さゆみの上から身体をおろし、足を開かせるえり。
膝を割って、その間に自分の身体を置くと
ショーツの上からさゆみの秘部を人差し指でなぞる。

「んっ」
「もっと気持ちよくなりたいよね?」
押し付けるように指を前後させる。
熱く湿った感触がさゆみの興奮を表していた。
「やっ……」
「これ取るね」
さゆみの腰に手をかけゆっくりとショーツを引き抜いていく。
クロッチ部分がオレンジの灯りを反射して光っていることで、充分にソコが濡れていることがわかる。

さゆみの太ももを抱えるようにして、ソコに顔を近づけるえり。
「……やぁっ!はぁっ」
舌で舐めあげられ、反射的に足を閉じるように力をいれるさゆみ。
しかしえりは更に強い力で足を固定しながら、ソコに舌を伸ばす。

「あっ!……ふぁっ…あんっ」
「んぅ……ちゅっ、ちゅ…ん」

さゆみの足のあいだに顔をうずめ、舌と唇でやさしく丁寧に、
それでも的確に感じるところを攻め続けるえり。

「はぁっ!……ぁっ…」
腰をくねらせながらえりにされるがままのさゆみ。
ふと下に視線を落とすと、唇の端を舐めて妖艶に微笑むえりと視線が絡む。

「…………!」
その何かを企むような表情に背筋をなぞられたかと思うと、
次の瞬間には腫れた突起に強く吸い付かれ、舌で集中的に弄ばれ、背中を仰け反らせる。


「んあっ!!……はぁっ」


太ももを震わせて軽く達したさゆみ。
「……はぁ、はぁ」
右腕を目にあてて息を整える。
その間にショートパンツを脱ぎ、自分も全裸になるえり。

「落ち着いた?……でも、もうちょっと付きあって欲しいなぁ」
優しく問いかけながらも、さゆみの左足を自分の右足の腿に乗せる。
「……?」
何をされているのかわからないさゆみをよそに、
先ほどとは逆に自分の左足でさゆみの右足を片膝をたてて跨ぐ。

「……つぎは一緒に気持ちよくなろ?」
えりは自身の秘部を指で何度かなぞってから、さゆみとの距離を近づけて
足が交差した状態で互いの秘部同士を密着させた。

「はぁんっ…!」
「…っ!?」
予想外のえりの行動に戸惑うさゆみ。
それに構わず、えりは密着した部分を擦りあわせるようにゆっくりと腰を前後に揺する。

えりと交わり、揺れる自らの身体。
その光景があまりに官能的で、自分のことではないようにすら感じられる。

「「あっ…あ、はぁっ…あっ」」
二人の声と淫らな水音が室内に響く。
しかし指で刺激するより不自由な行為のため、どこかもどかしい感覚が募ってゆく。

「あっあっ、ふぁっ…んん!」
「はぁっ……そんなかわいい声出されたらえり止まんない…」

えりがさらに強く腰を押しつけるように下腹部を動かす。
「さゆも自分の好きなように動いて…?」

好きなように……

もっと刺激がほしい
もっと気持ちよくなりたい
もっと…もっと……。


横たわっていたさゆみは身体を起こして右肘で身体を支えながら、
もう片腕でえりの左膝を抱え込む。

「んっ」
そしてえりの動きに呼応するように腰を動かしはじめた。

「あっ…さゆっ…いい!」
「はっ、ん…はぁっ」
快感を貪るように身体を重ね合わせる二人。
痛いくらいに擦りあわせる腰は、すでにさゆみの意思とは関係なく
身体が勝手に快感を求めて動き続けていた。

「やばっ……えりのがイキそっ…!」
「んはぁ……あっ」

さゆみがあまりに積極的に行為に没頭したため、
さゆみを気持ちよくさせるつもりであったえりの絶頂が近づいていた。

「ちょっ…」
えりは密着した二人のあいだに手を伸ばし、さゆみの秘部を指で刺激する。
「ふぁっ!!」

突然のことに大きく身体を震わせるさゆみ。
それでもえりの指を挟んで二人の腰は動き続ける。
「「はあっ、あっ、あっ…んっ」」
えりがさゆみの腫れた突起を指で擦る。

「いやぁっ…はあぁっっ!!」
「んっ…!!」

その強い刺激に痙攣するように身体を震わせて、再びベッドに身体を沈めたさゆみ。
次いでえりも背中を仰け反らせて絶頂に達した。

そのまま眠りについたさゆみは、えりにより隣にあるもう一つのベッドに運ばれ、
えりもその横で眠りについた。



翌朝。
先に目を覚ましたさゆみ。
すでにベランダには日が差し込んでいた。

…やっぱりきれいなひと。

隣に眠るえりの寝顔を見て、改めてその綺麗な容姿に目を奪われる。

「……んぅ……さゆ?」
「…おはよ」
目を覚ましたが、変わらず眠そうなえり。
えりが起きるまで待とうと、穏やかな朝の景色に目を向けるさゆみ。
窓の外では鳥たちが鳴いていた。

「…本当はわかってるんだ。自分で自分を苦しめてるだけだって」
独り言のように話し始めるさゆみ。
「バカだよね」

「…さゆは考えすぎなんだよきっと。もっと好きなようにしていいんだよ」
いつの間にか起きていたえりが話し始める。

「でももうさゆは大丈夫。知っちゃったから。
 ……この感覚を覚えちゃったから」
「……」
一瞬、昨晩の妖艶な表情を見せるえり。
しかしすぐに目を細め、さゆみに笑いかける。
鳴いていた鳥は空に飛び立っていった。

「これから絶対、楽しくなるよ」
その優しい表情とともに、えりの言葉が染み込んでいった。
昨日の雨はとっくにあがっていた。



「もう少し寝ようよ」
「…うん」

えりの体に身を寄せ、さゆみは夢の世界に飛び立っていった。



Fantasyが始まる編 終

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