最終更新:ID:oKizATGNQw 2011年12月25日(日) 21:40:17履歴
れーな、れーなっ!
んー、なんね?
しりとりしよっ
はぁ?
しりとりぃー
なんでしりとりやと?
いーから!
彼はいつも突拍子のない発言をしていた。
昔から、特に意味もなく人をおちょくって遊んでいた。
そんな彼に夢中になってしまい、こんなにも好きになってしまったのは、なぜだろう?
「れーなぁ」
本当に男なのかと思えるような甘ったるくて舌っ足らずの声が聞こえた。
れいなが振り返るとベッドの端の方で枕を抱えて頬を膨らませている絵里がいた。
「せっかく家に居るんだしさぁ、僕と遊んでよぉ」
「れな雑誌読んでるけん、あとで」
そうやって少し冷たく言うと、絵里は途端に泣きそうな顔をする。
眉を八の字に下げて、「雑誌なんていつでも読めるじゃーん」と体を前後に揺する姿は、到底、男子高校生には見えない。
整った顔立ち、流れる短い髪、柔らかい物腰、その割に運動神経は良いし、ダンスの腕前は相当なもの。
頭は……良いとは言えないけど、性格は優しいし、多少アホっぽいところがあるけど、どう考えたって、モテる。
なんでそんなモテモテ絵里がれいなと付き合っているのか、れいなには時々分からない。
こんなにワガママで短気で不器用でチビで目つき悪くて脚も遅くて…あ、なんか考えてて寂しくなったっちゃん……
れいながぼんやりそう考えていると、不意に背中に温もりを感じた。
彼の長い腕が首に回されて、ようやく抱きしめられていることに気づいた。
「ねぇ、れーな」
耳元で囁かれた甘い声にドキッとする。先ほどまでの声とは少し違う、ひとりの男の声だった。
「僕としりとりしよ」
「はぁ?なんで?」
「いーからさ、しりとりしよーよ」
そうして絵里は柔らかく笑う。
れいなはといえば、後ろから抱きしめられているし、無下に振り払うこともできず、雑誌をベッドに置き、ふうと息を吐いた。
それを肯定とみなしたのか、絵里は笑い、「えーっとね」と考える。
「じゃあ、れーなの『な』」
「…なんでそんな言葉からやと?」
「と、と…とりあえずだからいーのだぁ」
おい、もしかして続いているのかこれは…とれいなは思うが、もう気にすることはしなかった。
彼のマイペースはいまに始まったことではない。
どうせ突っ込んでも流されるのは目に見えていたので、れいなも次の言葉を考えた。
「相変わらずやね…絵里は」
「わお、それ褒めてくれてるの?」
「NOに決まっとろーが」
「がーんですよ」
その言葉にれいなは反応し、振り返った。
「それ反則やない?」
「えー、そんなことないよぉ」
「そんなん、なんでも『ですよ』ってつければ『ん』で終わらんやん」
絵里は「むぅ」と口を膨らませたあと、「じゃあもう1回最初からね」とれいなの肩に顎を乗せる。
いつも、抱き締めたり、キスしたり、エッチしたりして、ふたりの距離は近いはずなのに、こんなの慣れているはずなのに、れいなの鼓動は収まらない。
どうしてだろう、どうして今日はこんなにドキドキするんだろう。
―好きやから……かな?
そう考えていると、後ろから声が追いかけてきた。
「じゃあ、れーにゃ!」
ああ、またこいつは…と思うが、れいなはなにも言わず、それならばと返した。
「やっぴぃ!」
そうして「ニシシ」と笑うれいなを見て、絵里も「うへへぇ」と笑い返す。
絵里はぎゅっと回した腕の力を強くすると、耳元で言葉を発した。
「いつまでも、一緒にいよ」
その言葉に、れいなの胸が高鳴った。
思わず振り向くと、真剣で、だけど優しく微笑む絵里がいる。
ああ、絵里には聞こえていたのだろうか。
絵里は、れいなの心の動きを、不安な感情を掬い取ろうとしていたのだろうか。
れいなは行き場のなかった手を上げ、絵里の腕を優しく掴んだ。
そして、消え入りそうな声で呟いた。
「……よろしくお願いします…」
れいなの確かな声を聞いた絵里は微笑んだまま、再びその耳元で囁いた。
「好き」
甘い声が室内に響く。たったの二文字のその言葉は、ふわりと宙に浮き、優しくれいなを包み込む。
確かな温もりが沁みわたり、泣きそうになったれいなはそっと絵里に向き直る。
揺れる大きな瞳で絵里を見つめると、絵里も真っ直ぐにれいなを射抜く。
「……キス、し…」
その言葉が完全に宙に舞う前に、れいなの唇は絵里に吸い込まれた。
触れるだけの甘いキスに、一瞬でれいなは酔いしれる。
「してあげますよ、いつでも。れーな」
そこには、いつものようにだらしなく笑う絵里がいた。
何処までも真っ直ぐな絵里の想いを見ていると、自分のふとした悩みとか疑問なんて陳腐なものに思えてしまう。
絵里の想いは変わらない。れいなの想いも変わらない。
それならただ、一緒に手を繋ごう。
ふたりで笑いながら、ずっと手を繋いで歩いていこう。
「…なんか、ムカつくっちゃ」
「やー、それはさすがにひどくない?」
「いーと!絵里はそれでいーと!」
そうしてれいなは絵里の腕の中でくるりと体を回し、「ん?」と思っている絵里の首に腕を回し、体重を乗せた。
油断していた絵里は「うぉ!」と声を上げ背中からベッドに倒れ込んだ。
れいなはそっとキスをしたあと、「れなの勝ちやね」と笑った。
じゃあ、えりの『り』
り……りす
すきぃ!
は?
すきぃ!!
い、いみ分からんっちゃん!
あー、れーなの負けぇ!
かめれなしりとり編 おわり
んー、なんね?
しりとりしよっ
はぁ?
しりとりぃー
なんでしりとりやと?
いーから!
彼はいつも突拍子のない発言をしていた。
昔から、特に意味もなく人をおちょくって遊んでいた。
そんな彼に夢中になってしまい、こんなにも好きになってしまったのは、なぜだろう?
「れーなぁ」
本当に男なのかと思えるような甘ったるくて舌っ足らずの声が聞こえた。
れいなが振り返るとベッドの端の方で枕を抱えて頬を膨らませている絵里がいた。
「せっかく家に居るんだしさぁ、僕と遊んでよぉ」
「れな雑誌読んでるけん、あとで」
そうやって少し冷たく言うと、絵里は途端に泣きそうな顔をする。
眉を八の字に下げて、「雑誌なんていつでも読めるじゃーん」と体を前後に揺する姿は、到底、男子高校生には見えない。
整った顔立ち、流れる短い髪、柔らかい物腰、その割に運動神経は良いし、ダンスの腕前は相当なもの。
頭は……良いとは言えないけど、性格は優しいし、多少アホっぽいところがあるけど、どう考えたって、モテる。
なんでそんなモテモテ絵里がれいなと付き合っているのか、れいなには時々分からない。
こんなにワガママで短気で不器用でチビで目つき悪くて脚も遅くて…あ、なんか考えてて寂しくなったっちゃん……
れいながぼんやりそう考えていると、不意に背中に温もりを感じた。
彼の長い腕が首に回されて、ようやく抱きしめられていることに気づいた。
「ねぇ、れーな」
耳元で囁かれた甘い声にドキッとする。先ほどまでの声とは少し違う、ひとりの男の声だった。
「僕としりとりしよ」
「はぁ?なんで?」
「いーからさ、しりとりしよーよ」
そうして絵里は柔らかく笑う。
れいなはといえば、後ろから抱きしめられているし、無下に振り払うこともできず、雑誌をベッドに置き、ふうと息を吐いた。
それを肯定とみなしたのか、絵里は笑い、「えーっとね」と考える。
「じゃあ、れーなの『な』」
「…なんでそんな言葉からやと?」
「と、と…とりあえずだからいーのだぁ」
おい、もしかして続いているのかこれは…とれいなは思うが、もう気にすることはしなかった。
彼のマイペースはいまに始まったことではない。
どうせ突っ込んでも流されるのは目に見えていたので、れいなも次の言葉を考えた。
「相変わらずやね…絵里は」
「わお、それ褒めてくれてるの?」
「NOに決まっとろーが」
「がーんですよ」
その言葉にれいなは反応し、振り返った。
「それ反則やない?」
「えー、そんなことないよぉ」
「そんなん、なんでも『ですよ』ってつければ『ん』で終わらんやん」
絵里は「むぅ」と口を膨らませたあと、「じゃあもう1回最初からね」とれいなの肩に顎を乗せる。
いつも、抱き締めたり、キスしたり、エッチしたりして、ふたりの距離は近いはずなのに、こんなの慣れているはずなのに、れいなの鼓動は収まらない。
どうしてだろう、どうして今日はこんなにドキドキするんだろう。
―好きやから……かな?
そう考えていると、後ろから声が追いかけてきた。
「じゃあ、れーにゃ!」
ああ、またこいつは…と思うが、れいなはなにも言わず、それならばと返した。
「やっぴぃ!」
そうして「ニシシ」と笑うれいなを見て、絵里も「うへへぇ」と笑い返す。
絵里はぎゅっと回した腕の力を強くすると、耳元で言葉を発した。
「いつまでも、一緒にいよ」
その言葉に、れいなの胸が高鳴った。
思わず振り向くと、真剣で、だけど優しく微笑む絵里がいる。
ああ、絵里には聞こえていたのだろうか。
絵里は、れいなの心の動きを、不安な感情を掬い取ろうとしていたのだろうか。
れいなは行き場のなかった手を上げ、絵里の腕を優しく掴んだ。
そして、消え入りそうな声で呟いた。
「……よろしくお願いします…」
れいなの確かな声を聞いた絵里は微笑んだまま、再びその耳元で囁いた。
「好き」
甘い声が室内に響く。たったの二文字のその言葉は、ふわりと宙に浮き、優しくれいなを包み込む。
確かな温もりが沁みわたり、泣きそうになったれいなはそっと絵里に向き直る。
揺れる大きな瞳で絵里を見つめると、絵里も真っ直ぐにれいなを射抜く。
「……キス、し…」
その言葉が完全に宙に舞う前に、れいなの唇は絵里に吸い込まれた。
触れるだけの甘いキスに、一瞬でれいなは酔いしれる。
「してあげますよ、いつでも。れーな」
そこには、いつものようにだらしなく笑う絵里がいた。
何処までも真っ直ぐな絵里の想いを見ていると、自分のふとした悩みとか疑問なんて陳腐なものに思えてしまう。
絵里の想いは変わらない。れいなの想いも変わらない。
それならただ、一緒に手を繋ごう。
ふたりで笑いながら、ずっと手を繋いで歩いていこう。
「…なんか、ムカつくっちゃ」
「やー、それはさすがにひどくない?」
「いーと!絵里はそれでいーと!」
そうしてれいなは絵里の腕の中でくるりと体を回し、「ん?」と思っている絵里の首に腕を回し、体重を乗せた。
油断していた絵里は「うぉ!」と声を上げ背中からベッドに倒れ込んだ。
れいなはそっとキスをしたあと、「れなの勝ちやね」と笑った。
じゃあ、えりの『り』
り……りす
すきぃ!
は?
すきぃ!!
い、いみ分からんっちゃん!
あー、れーなの負けぇ!
かめれなしりとり編 おわり
タグ