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「ありすさんと正義くんは無関係ですか?」 (HJ文庫)

著者:わかつきひかる 挿絵:侑 出版社:ホビージャパン 発行日:2011年6月1日






本の紹介(公式)

鈴木正義くん(16)は、本人の外見とある噂のせいで怖がられ、交友関係が残念レベルな少年。この間も、電車で助けたクラスメイトの女の子に泣かれちゃう始末でした。ところが、そこで泣いちゃった少女=校倉ありすさんは、その事件をきっかけに、正義くんの不思議に気がつき始めるのです――わかつきひかるのちょっぴり変なラブコメディ、お届けです。 (HJ文庫) (ちょこっと立ち読み)



主な登場人物

校倉ありす(あぜくらありす)
不思議ちゃん。でも可愛くって(顔も可愛いのだけど、行動も考え方も可愛いんだ!)、前向きな元気な娘。でもそれをなかなか外に出せないので、周りとは少し浮いている。友達は余り多くない、というかほとんどいない。でもとても目立つ(いろんな意味でね!)から、学園の隠れアイドルって影で呼ばれている。
鈴木正義(すずきまさよし)
ヤクザの息子って思われているちょっと陰気で長髪な男子高校生。実際はそんなことはないし、とても純粋で温和な性格をしている。とあることで受けたトラウマを抱えて、周りの誤解を仕方がないことと諦めてしまっている。
柚木篤子(ゆずきあつこ)
正義くんの幼馴染。ってことは?
生徒会長で、まじめで品行方正で面倒見がよくてまさに生徒会長〜っ!という女子高校生。でもなぜか、ありすには冷たく接してしまう。


感想

久しぶりのHJ文庫の新作です。
日常系のファンタジー要素のない、ほのぼのしつつコミカルなおかしみと、ちょっとした涙をさそう、そんな作品にしあがっています。
えーと僕は、途中で何箇所も笑わせてもらいました。
そういえば、わかつきひかるさんのコミカルな持ち味の作品ってあまり記憶にないなあと。
いえ、過去の作品にまったくそういったシーンがないわけではないのですが、これほど笑ったものも思い出さなくて。
ちょうど僕の笑いのツボにはまったのかもしれません。

さて、こういった日常系の作品は、どうしても「キャラ」勝負になると思います。
そしてこれだけたくさんのライトノベルが出版されると、その「キャラ」の萌え属性はかなり出尽くした感があって、どうしても過去に類似のキャラというのが存在する可能性が高くなってきていると思います。
メインヒロインは、「不思議ちゃん」属性です。でも理解不能な電波娘というわけでなくて、妄想と引っ込み思案からくる周りとちょっと合わない女の子ということで、どこにでもいそうなそういったリアリズムがあると思います。
女性作家ならではで、なぜそういったとんちんかんな行動をとるのかという理由(ありすちゃんの心の動き)が書いているので、そういったこともあるのだろうなと読者側に妙な納得感がでてきます。そのあたりが、「何を考えているのか全く不明!」という電波ちゃんとはちょっと違うところでしょう。
まあ、不思議ちゃん属性のメインヒロインの場合は、主人公の男キャラは、その不可思議な行動に右往左往させられる、それが滑稽であるところに作品の面白さがあると思うのですが、そこはさすがわかつきひかるさん、研究済みというか、そのあたりはきっちりとおさえてあるのでしっかりと笑わせてもらえます。
実は僕もこういった男キャラの右往左往系はきらいじゃない(というか、こういった萌え属性を好む読者は多いと思う)から、正直に言うともっとありすちゃんが何かしでかしてくれてもよかったなと思っています。全体的な分量でいうと、この作品は何かしでかすありすちゃん50%、しっかりもののありすちゃん50%ぐらいのウェイトだと思いますが、僕の好みは、何かしでかすありすちゃん70%、しっかりもののありすちゃん30%なのですね。
だって、男性にとって女性って「よくわからない」ものだと思いますし、だからこそ好きな人に振り回されるのも楽しかったりするのだと思います。そしてこういった不思議ちゃん系を好む男性読者というのは、自分が女性に寛容であるのが長所と思っているか、少なくともそうありたいと感じていると思うのです。だから一層そんなやりとりを楽しいと感じるのではないでしょうか。

ところで、わかつきひかるさんの公式ホームページにこんな投稿がありました。
SF読んで、SF書いてはいけません。
引用をします。
私はジュブナイルポルノについては心配していないんですが、ライトノベルは、かつてのSFの道を辿っているように見える。 「××××」が売れてるから「××××」を書けと編集が依頼する。 「××××××の楽しい×××」が売れてるから「女流ポルノ作家の明るい生活」を書けと編集が強制する。 私には力がなくて、両方ぽしゃってしまいましたが、それって、SF読んでSF書いてることになるんじゃないかなぁと。
わはは、先生、相当怒ってますね(笑)。
ちなみに、この記事を読むとそれぞれ次の本みたいなものを書いてほしいという依頼だったことがわかります。
ところでここ数年、ライトノベルはレーベルが増え、出版点数が増える一方、全体の売上が出版点数の増加ほどは増加しないゆえ、競争の激化というか、市場の飽和状態が生じてきたと思います。
「売れている本があるから二番煎じの本を書け」というのは論外だと思うのですが、僕はひとつの仮説をたてていました。
「かのこん」はかなり前のライトノベルなので置いておくとして、わりと新しい「ライトノベルの楽しい書き方」にはひとつ注目している特徴があります。
他のライトノベルでは、たとえばこれも同じ特徴があると思っています。
そして同じ特徴を持つのですが、もう少し現実に近くなったなと感じて買った本がこれです。
「ライトノベルの楽しい書き方」「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」が売れたのは知っているのですが、「なれる!SE」ってどうだったのでしょうか?
実はこの本を読んでから絶不調になってしまって、ライトノベルを読めなくなってしまったのでその後を追跡していないのです。(注)
でも売れる特徴は持っていたと思うので買って読んだのですけどどうだったのでしょう?
(注)読むのをよせばよかったのですが、僕もSEなものでこの本を読みながら楽しいというより自分の会社のことと無関係に思えなくなって打ちのめされてしまったというわけです。

とりあえず先に論をすすめます。
上記の3つのライトノベルは、みんなメインヒロインが職業を持っていて経済的自立をしている(っぽい)のですね。
そういえば世の中はリーマンショック以来、新卒者の就職率が激下がり状態ですし、さらにここに来て震災がおこってますます不透明感を増しています。
ライトノベルの主たる購読層、高校生とか大学生の男子学生にとって「不安」は増すばかりなのではないでしょうか。(女子学生もそうだと思いますが、そこまで論を広げると収拾がつかなくなるので後の機会に)
そりゃみんな可愛い女の子と仲良くなりたいのだと思います。
でも現実の不安の中ではそれどころでないのかもしれません。だからこそかなえにくい想像?妄想?を、読者はライトノベルに求めているのだとすると、メインヒロインが自律している、しかしスランプや他の原因で問題を抱え、それを主人公が一緒に悩みながら解決する、そして仲良くなる、そんな物語を求めているのではなかろうか、そう感じました。

さて、その観点でこの「ありすさんと正義くんは無関係ですか?」を見てみると、実にいいプラットフォーム(設定)だなと感じるのです。
第1巻ですから、まだ登場人物たちはそれほど方向性を持っていませんが、正義くんは将来家業をついでお坊さんになるという漠然とした未来と義務、方向性を持っています。
一方、ありすちゃんは、まだふわふわとした感覚なのですが、何か正義くんのために役に立ちたいという感情を持っているようです。
そして、もっと自律している生徒会長という存在もあって、正義くんを巡ってのバトルが必至な状況でもあります。
第2巻が出版されるのであれば、そこに僕が楽しみにしているのは、ありすちゃんの自律、目指す方向、職業、そういったことです。
それを正義くんが右往左往させられながら、ありすちゃんの成長を助けてあげる、そしてともに成長する、そんな物語を読みたいな、そう感じながらこの本を閉じました。



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