まず、最初に・・・
エピローグ部のハムスターの桃太郎くんのエピソードを読んで、ちょっと驚いた方いませんでした? 「よもや・・・」と僕は思ってしまって(笑) ストーリーを先に読みたいのだけど、頭の片隅に残っているというか、そんな「もやもや感」がありました。
配本日の翌日、わかつきひかるさんの公式ホームページに投稿があり、そこにハムスターのチュー太郎くんの近況が書かれていました。
下はハムスターのチュー太郎くんの写真です。チュー太郎くんは、私を見かけると寄ってきて、「なあに? ひかるちゃん、どうしたの?」と聞いてくれるんですよー。かわいい弟です。やっとまともな写真が撮れた……。もよもよしているのは新聞紙です。はじめはペットショップで買った巣材を入れていたんですが、飛び散って掃除が大変なんだもんっ。
(お花を生けました。)
このサイトはファンサイトなもので、これまで作品へのダメだしはほとんどしていないのですが、これにはちょっとダメだしを・・・
チュー太郎くん、健在でなによりです。ほっとしました。そんなわけで「もやもや感」は完全になくなったのですが、これちょっと人騒がせなエピソードですよ。(笑)
さて、ハムスターの桃太郎くんの話も含めて、この作品は、わかつきひかるさんの「好きなもの」が満載です。企画段階から、記念碑的な作品として書いたのじゃないかと思います。
いろんなものてんこ盛りの、とっても幸せな作品なのですが、一方、様々なチャレンジが隠れています。そのあたりもわかつきひかるさんらしいなと思いました。
まず最初は、美緒と雅也が結ばれるまでのストーリーに、女装エピソードがある点があげられると思います。
雅也の親友が実は女装癖があって・・・ということなのですが、本当にわかつきひかるさんらしい導入です。この女装男の記述ってそんなに多くないのですが、そこそこ存在感があるのがとても不思議です。
わかつきひかるさんのブログ記事によると、確かポルノのお約束には、他の男性キャラを出してはいけないというものがあったと思います。(元記事を探したのですが、見つかりません。すみません) でもこの作品には、ちゃっかり脇役として男性キャラがでています。
2009/10/20の「
ラブプラスとドリームクラブと小説の約束。」にも、ポルノには約束事がたくさんあるが「わざと約束に挑戦するようなお話を書いたりしている」と書いています。こうやって、少しずつ書くことができるものを増やしているんですよね。
女装については、後半のプレイに主人公が女装してセックスするシーンがあります。これは「
My妹〜小悪魔なAカップ」についで2回目。もうすっかり定番プレイと言えるかもしれません。絵柄的にもなかなかいいのではないかなと思います。261ページの挿絵がそれです。
ストーリーは、Myシリーズとほとんど同じ特長を持っています。Myシリーズには「
My妹(マイマイ)」にも指摘していますが、以下の特長があります。
- 主たる登場人物は、ヒロインと主人公の二人のみ。
- 二人は同居をしている。
- 二人の血のつながりはない。(義理の関係まで、インモラルな面は極力排除)
- 短期間で初体験→調教に至る。
- エッチとともに恋心が深まる。(エッチ以外のイベントはほとんどない)
- 最後までラブラブ状態が続き、ハッピーエンド。
今回は美少女文庫200冊記念ということもあって、ストーリーの冒険はしなかったんだなと思いました。いい意味でラブラブ満載のいつも通りのわかつきひかるさんの作品と言えます。
でも、エンドにはちょっとしたチャレンジがありますね。「
My姫」に続いて2回目の結婚&妊娠エンドです。(注1)
ところで、この作品はジュブナイルポルノですから、作品の肝はエロシーンだと言えます。
チャレンジの二つ目は、エロシーンです。
「
ボクの女神は淫魔(リリス)サマ!?」を読んだ時から感じていたのですが、最近わかつきひかるさんは、SM描写を濃く書くようになってきたなと思います。
淫魔サマの場合は、立ったままの拘束プレイでしたが、今回はさらに手錠やら首輪(注2)がでてきます。さらにプチSM対応のラブホテルで壁の拘束具を使ってと、かなり本格的なSM描写になっています。大きな鏡の前で犬のように首輪に鎖をつながれている美緒さんって、相当エロいですよね。お尻からはアナルビーズが尻尾のように垂れ下がっていて、鏡にうつる自分の姿を見ながら腰を振っている・・・ 絵柄を想像するとこれはすごいなと。
残念なことは、このシーンは挿絵になっていないのですよね。後半は見せ場盛りだくさんなので、どうしても挿絵は挿入シーン中心になるのは致し方なしとしても、ちょっと残念だったりしました。
また、犬のように拘束された美緒さんを雅也がそのまま放置し言葉で苛めるシーンがあるのですが、こういったシーンもこれまでなかったように思います。(注3)
このときの美緒さんの内面、つまり恥ずかしいけど興奮している気持ちをもっと書いて欲しかったなと思いました。これまでにないシーンですしね。そういう女性側の感情描写は男性作家には苦手でしょうから、特に期待しているところです。
わかつきひかるさんの初期の作品は、最近の作品と比べ、主人公がかなり強引(レイプもどきな初体験もある)で調教色も強かったですし、ヒロインの感情、つまり怖いとか恥ずかしいとかの描写も濃かったと思います。
元に戻って欲しいとか、原点に返りつつあるということを言いたいわけでなく、最近の作品を読んでいる読者さんに、そういった作品もわかつきさんは書いていたんだということを知っていただきたくて書きました。
わかつきひかるさんの作品は、ラブラブで幸せで甘いストーリーが特長ですし、それが魅力なんだと思います。
ただこの作品には、甘いけれど真剣な二人の愛情と激しいセックスというわかつきさんの作品のよさを残しつつ、ほんの少し初期の作品のエッセンスを取り込み、さらに新しいシーンを作ろうとしている、そんなチャレンジを感じます。
今後どのように変化していくのか、楽しみにしています。
追記
上記の感想に書ききれなかったのですが、この作品の見所のひとつとして、振袖、裸エプロン、お嬢様風ワンピースという美緒の服装もあげられると思います。裸エプロンとワンピースは挿絵もあります。
(注1)
「孕ませもの」というジャンルもあるようなのですが、わかつきひかるさんの場合は、結婚して妊娠するというエンドになっています。自分のキャラには、物語が終わった後も幸せであることという願いみたいなものも感じます。
結婚&妊娠も、ポルノには書かないという約束事があったようです。「
My姫」の成功(2刷になっています)で、それも大丈夫になったということでしょう。
(注2)
「
My妹〜小悪魔なAカップ」に首輪が出てきますので、首輪は2回目ということになります。手錠ははじめてですね。
(注3)
拘束+放置プレイ(放置プレイは拘束してないとなりたたないですよね)は、過去の作品にも数回あるのですが、以前の拘束プレイは寝た状態での拘束だった点が違います。言葉いじめははじめてだと思います。