この作品は、いろんな意味でエポックでとても興味深い作品だと思います。
ひとつめは、「わかつきひかる」さんが、
はじめて年下の男の子の主人公を書いたということです。
この作品の主人公である雅人は、前半、年下らしくちょっと頼りない感じで描かれています。
頼りなさげな主人公というのも、わかつきさんの作品ではじめてですね。これまでは、愛情は深いのですが、ちょっと強引で、ヒロインを征服していく男キャラ中心でしたから。
ブログに
こんな記事がありました。
上の記事は、この作品が出版されてから約7ヶ月後、次の年下主人公作品である
メイド イン プリンセス(2005年5月出版)を書き上げた後のエントリでしょう。
この作品の主人公の雅人は、後半、ヒロインとの立場が入れ替わって、この作品以前の主人公と同じく、強引にヒロインを征服していく、ちょっと年下らしからぬキャラになっていますが、「メイドインプリンセス」では、最後まで主人公がとてもかわいらしく描かれていて、「まさしく年下キャラ」という感じがします。
だんだんと主人公キャラの幅が広がっていっていますね。
次に、イラストレーターの「あきら」さんとの組み合わせで出す作品に、「○○プリンセス」という題名にして、シリーズ化とまではいかないまでも統一感をとった最初の作品という点も面白いです。
わかつきさんも、
ポルノは立ち読みせずタイトルと表紙で買っていくものと言っていますが、読者がそういった購買行動を起こすことを考えると、
「わかつきひかる」(作者)+「あきら」(イラスト)+「プリンセス」(タイトル)=面白い
と読者に認識してもらい、次の作品にも手をのばしてもらうように仕向けたかったのでしょうね。
既存の読者の囲い込みという点で、また後日のMyシリーズにつながる手法だという点で、面白いなあと思いました。
さて、他の方の意見を探すと、「銀盤カレイドスコープ」との関係を指摘している記述をいくつかみつけました。
この作品が「銀盤カレイドスコープ」のパロディという指摘なのですが、中身は全然似ていないし、引用もありません。
そんなわけで、パロディではないと思います。
ただし、タイトルと表紙の雰囲気が似ている感じがするのは否めません。タイトルの決定と表紙のイラストの発注は、編集者の管轄らしいですから、もしかすると編集者は便乗しちゃったのかな。
著作権法的には合法ですが、マーケティング的には「禁じ手」に近そうです。(注)
編集者は、そんなあたり十分承知の上だったとは思いますけど。
(注)この手法を多用しすぎると、結局自身のレーベルの評判に傷がつき、効用よりダメージが大きくなる危険性が高いという意味で、禁じ手に近いと表現しました。