見渡す限りの大海原。穏やかに揺れる船の舳先が、紺碧の水面を滑らかに滑っていく。
俺は甲板で辺りにたち込める潮の香りを一杯に吸い込むと、船室で待っていた船長のもとへと急いだ。
そろそろ、待ちくたびれた船長が葉巻をふかし始める頃合だろう。
二十歳を迎えた俺は、学生時代にせっせと貯めたお金で世界旅行を計画した。
だが、所詮バイトで稼いだ額など高が知れている。
さすがに飛行機で各地を回ることはできず、俺はしかたなく遠洋漁業用の船に乗せてもらうことにしたのだ。

「すみません、遅れちゃって」
「遅れるのは構わんさ。時間はたっぷりある。だが、ワシが待っていられるのはこの葉巻がある間だけだぞ」
そういうと、すでに3本目に突入していた茶色い筒を口から離して船長が笑った。
「それで?目的地はどこだったかな・・・ああ、ここか・・・ふーむ・・・」
テーブルの上に広げられた海図に指を這わせ、船長が1人で考え込む。
「行けますか?」
「もし行けなきゃ、君を乗せたりはせんよ。ただ、ちょっと気になることがあってな」
「何か?」
俺がそう聞くと、船長は黙って海図上の1点を指差した。
そこだけ地図が書き込まれておらず、ぽっかりと穴が空いたようになっている。
「ここから行くとしたら、この海域を通らにゃならん」
「何も書かれてませんけど・・・ここは何ですか?」
「さあな・・・海図の調査団体も、ワシら漁師ですらも、そこに何があるのかはわからんのだ」
そう言いながら船長は短くなった葉巻を床の缶に投げ捨て、新たな葉巻を箱から取り出して口に咥えた。
「何もないかも知れんし、何か島のようなものでもあるのかも知れん。いずれにしろ・・・」
葉巻に火をつけて一服し、船長が後を続ける。
「その海域に入って無事に出てきた船はいまだかつてないそうだ」
「迂回する方法はないんですか?」
「そうだな・・・そうすると大陸を1つ大回りすることになる。10日から2週間は到着が延びるぞ」
それは、俺にとって受け入れ難い時間の浪費だった。
ただでさえ短い休みを利用して出てきているのだ。移動にそんなに時間をかけてはいられない。
「うーん・・・無事に抜けられますか?」
「まあ、ワシも本当なら危険は冒したくないんだが・・・どうしてもというなら今回だけ行ってみるとしよう」
「ありがとうございます」

船長との打ち合わせを終えると、俺は再び甲板にやってきた。
舳先で砕けた海水が霧状になって辺りに降り注ぎ、じわりとした湿り気を肌に塗りつけていく。
入ったが最後誰1人として無事に出てきたことがないという謎の海域・・・
そこに何があるのか想像しただけで、軽い不安とそれ以上の好奇心にかられてしまう。
世界には、まだまだ俺の知らないことがたくさんあるのだ。
少し風が冷たく感じ始め、俺は寝具のある部屋へと取って返すとベッドの上でウトウトとうたた寝を始めていた。

次に目を覚ました時、辺りはすでに暗くなっていた。
もぞもぞとベッドから這い出し、操舵室へと向かう。
すると、船長が額に玉のような汗を浮かべながら舵を握っていた。
「どうかしたんですか?」
「ん?ああ、起きてきたのか。いや、そろそろあの海域に入る頃なんだが、どうにも胸騒ぎがしてな・・・」
確かに、空に浮かぶ満月が煌煌と辺りを照らし出し、青白い靄のようなものが辺りに立ち込めている様はどこか不気味ささえ感じられる。
「で、でも空だって晴れてるし・・・異常はないんじゃ?」
「だがコンパスは狂ってきている。こんな磁気の乱れが起こる原因はワシの知るところ2つしかない」
「2つ?」
船長は舵を握る手に力を入れながら、ゆっくりと俺の方を振り向いた。
「1つは・・・特定の海域で飛行機や船が行方不明になるという話を聞いたことがあるだろう?」
「ああ、あの何とかのトライアングルっていう奴ですね」
「そうだ。乱磁気の原因は諸説あるが、海域を囲んでいる島々にその原因があるだろうことは容易に推察できる」
船の前方に視線を戻し、船長は俺が何かに気付くのを待っているかのように時間を置いた。
「あれ?でもあの海図にはこの周辺に島なんてなかったはずじゃ?」
「そう、ここはそんな局所海域ではなく、あくまで2つの大陸に挟まれた広大な海洋そのものなんだ」
「じゃあ、2つ目の原因は?」
もしかしたら、俺はそれを聞くべきじゃなかったのかもしれない。
「巨大な生物の・・・体内電気だ」
船長は、何かに視線を釘付けにしたまま声を絞り出した。
その様子に、俺もつられるようにして前に視線を向ける。そして、目に飛び込んできた光景に声を失った。

恐ろしく巨大なドラゴンの首が、海面から突き出してこちらを睨み付けていたのだ。
顔の幅だけでも、優にこの船の2倍以上はあるように見える。
そのドラゴンの顔にニヤッという笑いが浮かんだかと思うと、首が静かに海中へと潜っていった。
「いかん!逃げるぞ!」
船長は突然そう叫ぶと、大慌てで操舵室から甲板へと飛び出した。
わけもわからぬまま、俺もその後ろをついていく。
すると、船長は微塵の躊躇いもなく船の後尾から海へと飛び込んだ。
ザバーンという大きな水音が上がり、それに少し遅れて船長の声が聞こえてくる。
「早く飛び込め!」
「ええ!?なんで?」
「いいから早く!」
だが、その一瞬の躊躇いが運命を分けたようだった。
ゴゴゴゴゴ・・・
突如、船が下から何かに激しく突き上げられた。
物凄い力で船が持ち上げられたかと思うと、そのまま数十メートル上まで一気に跳ね飛ばされる。
「うおおっ!?」
俺は甲板の手摺を掴むことすらままならず、船とともに宙へと舞い上げられた。
次の瞬間、バクンという音とともに船が海面から突き上げた巨大なドラゴンの口の中に飲み込まれる。
「うわああああああああ!」
俺は間一髪の所でドラゴンの口の外に漏れたお陰で食われずに済んだが、このままでは成す術もなく遥か眼下の海面に叩きつけられてしまう。
辺りに響き渡るドラゴンの轟音のような唸り声を聞きながら、俺は勢いよく迫ってくる水面を前に気を失った。

ザー、ザザー・・・
「う・・・んん・・・」
次に気がついたとき、俺はどこかの島の砂浜に打ち上げられていた。
すでに夜は明けていて、海に浸かった膝から下が寄せては返す波に洗い流されていく。
「こ、ここは・・・?」
湿った砂に埋もれた顔を持ち上げて辺りを見回してみるが、砂浜の奥に森が広がっている他は何も見えなかった。
一体ここはどこなのだろうか?俺はあの時・・・巨大なドラゴンに船ごと食われかけて気を失ったんだっけ。
じゃあ、ここはあの海域の近くにある島なのだろうか?
「い、いててて・・・」
体を起こそうとすると、全身が軋むように痛む。
骨折などはしていないようだが、相当な高さから水面に打ちつけられてここまで漂流してきたのだから、多少どこか痛めていたとしても不思議はない。
俺より先に海に飛び込んだ船長の姿はどこにも見当たらなかった。
とにかく、島の中を調べてみるしかないだろう。もしかしたら、誰かが住んでいるかもしれない。
俺は痛む体を無理矢理引き起こすと、フラフラとよろめきながらジャングルを思わせるような鬱蒼とした森の中へと入っていった。

ズッ・・・ズッ・・・
草木を掻き分けるようにして森の中を突き進んでいくと、どこからか足音のようなものが聞こえてきた。
咄嗟に息を殺して、茂みの中から音のした方を窺う。
「あ、あれは・・・ドラゴン・・・?」
見ると、奥の小道を小柄な緑色のドラゴンが歩いている。まるでどこかへ向かっているようだ。
後を尾けてみようか・・・いや、そんなことをして何になるっていうんだ。早く誰か人間を見つけないと・・・
すると、ブツブツと茂みの中で呟いていた俺の上に突如大きな影が覆い被さった。
「え・・・?」
何かが後ろにいる!
ギョッとして背後を振り向くと、大きな赤い鱗に覆われたドラゴンが俺を見下ろしていた。
「なんだ貴様は・・・一体どうやって人間がこの島に入ってきたのだ?」
ドラゴンが俺をギッと睨みつけながら問い詰めてくる。
「え、いや、その・・・う、うわあああ!」
その鋭い眼光に肝を潰され、俺は脱兎の如くその場から逃げ出していた。
滅茶苦茶に葉や枝を押しのけながら後ろも振り返らずに道なき道を突き進み、ドラゴンが追ってこないことをひたすらに祈る。

どれくらい走っただろうか。俺は恐怖と疲労に消耗して草の中にドサリと倒れ込んだ。
幸い、あのドラゴンは俺のことを見逃してくれたらしい。
柔らかい土の上に寝転んでハァハァと大きく息をつきながら、俺はドラゴンの言葉を反芻していた。
"どうやって人間がこの島に入ってきた"?それはつまり、この島には人間がいないってことじゃないか。
一体、この島は何なんだ?俺、生きて帰れるんだろうか・・・?
不安が徐々に膨れ上がってきたが、とにかくもう少しこの島について調べてみる必要があるだろう。
とりあえず、今はこの動悸をしずめないと・・・
そう思って胸に手を当てた瞬間、俺の鼓動はさらに激しく跳ね上がった。
こげ茶色の鱗を纏った大きなドラゴンが、頭の方からぬっと首を突き出して俺の顔をじっと覗き込んでいたのだ。
「あ・・・ああ・・・」
そんな・・・ここにもドラゴンが・・・だめだ、もう逃げられない・・・
おもむろに、俺の首に向かって鋭い爪の生えたドラゴンの腕が伸びてくる。
殺されるという恐怖に、俺はぎゅっと目を瞑って身を固めることしかできなかった。

ガシッという音とともに、俺はドラゴンに頭を掴まれた。
「ひぃぃ・・・」
頭蓋をすっぽりと覆ってしまうような強大な手に、思わず消え入るような悲鳴を上げてしまう。
「ククク・・・捕まえたぞ」
ドラゴンはそう呟くと、頭を掴んだままグイッと俺の体を持ち上げた。
「う、うぐぐ・・・」
そして、そのまま茶色い細かな鱗に覆われた尻尾をグルグルと巻きつけられてしまう。
隙間なくぎっちりと俺の体に尻尾を巻きつけると、ドラゴンはようやく手を離した。
「うう・・・うぐ・・・」
微かな息苦しさに呻いた直後、尻尾の先端がクルンと顔に巻きつき口を塞がれてしまう。

ドラゴンは俺を完全に拘束すると、のそのそとどこかへ向かって歩き出した。
巣にでも連れ込まれて食われてしまうのだろうか・・・?
それとも、これまでに見たような大勢のドラゴン達によってたかって・・・?
「む、むぅ〜〜!」
俺は先行きの見えない不安に必死で身を捩って逃れようとしたが、ドラゴンはギュッと尻尾を引き締めて俺の体をきつく締め上げた。
「むぐ・・・ぐぅ・・・」
ギシギシと体中の骨が軋むような苦痛に耐え切れず、俺は口を塞いだドラゴンの尻尾に思い切り噛みついた。
だが、尻尾を覆った硬い鱗にはとても歯が立ちそうにない。
「静かにしておれ。生かして連れてこいということだが、あまり暴れるのならこの場で締め殺すぞ・・・」
生かして連れてこい?一体誰がそんなことを・・・
俺はドラゴンの静かな脅迫に抵抗を諦めると、なすがままに体の力を抜いた。
とにかく、俺は今すぐ殺されるわけではないようだ。少し様子を窺ったほうがいいだろう。

体に巻きつけられた尻尾の中でユサユサと揺られながらドラゴンの行く先を見守っていると、やがて森の切れ目が見えてきた。その奥の方に、何やら白い建物のようなものが見える。
ドラゴンが森を抜けると、その建物の全体像が目に飛び込んできた。
こ、これは・・・城?
空高く昇った太陽の光を反射して輝くそれは、明らかに人間が建てたと思われる巨大な城のようだった。
そして、開かれたままの城の扉の中へ、ドラゴンが吸い込まれるように入っていく。
西洋風の凝った装飾が施された豪奢なつくりの通路を通り、俺は大きなシャンデリアのかかった広間へと連れてこられた。
部屋の中央に数段高くなった大理石の台座が敷かれていて、その上で1匹のドラゴンが眠るようにして蹲っている。
「連れてきましたぞ、女王」
茶色いドラゴンが床に低く傅き、俺を尻尾で高く持ち上げたままそう叫ぶ。
その声に、女王と呼ばれたドラゴンが目を覚ました。
透き通るような淡い水色の毛をサワサワと靡かせ、頭に生やした紫水晶のように半透明な2本の角がこの上もなく美しい。
そしてゆっくりと茶色の尻尾に包まれた俺の方へと視線を向けると、妖しげな笑みを浮かべながら近づいてきた。
こ、今度こそ・・・俺は食われるんだ・・・
絶対に逃げられないという現実を嫌というほど突きつけられながら、俺はただただ死の恐怖に震えていた。

女王が近づいてくると、茶色のドラゴンは俺をスッと女王の前に差し出した。
角の色と合わさるような女王ドラゴンの紫色の瞳が、じっと俺を見据えている。
「ほう・・・お前だな、我が島を騒がせている人間というのは・・・」
女王はすらりと細い爪の伸びた水色の手を俺の顎に添えると、くっと顔を自分の方に向けさせた。
「う・・・うう・・・」
依然として口を塞がれているせいで、小さな唸り声しかあげられない。
だが、女王はそんな俺の様子をしげしげと見つめながら後を続けた。
「ふふふ・・・怯えておるわ・・・お前をどうするかは、後で私が決めてやる」
女王はそう言うと、茶色のドラゴンの方へと視線を移した。
「牢の中にでも繋いでおけ」
「はっ」

女王から命令が下されると、俺は茶色のドラゴンに地下にある薄暗い鉄格子のついた牢へと連れていかれた。
そして、扉の隙間から尻尾でポイッと牢の中へ投げ入れられる。
ドサッ
「うぐっ・・・」
「クククク・・・おとなしくしておれ。まあ、いずれにしろお前は誰かの餌になる運命なのだろうがな・・・」
ガチャリと扉が閉められると、ドラゴンはそう言って笑いながら階上へと上がっていった。
「そ、そんな・・・頼む、出してくれ!」
俺は鉄格子を掴んで大声で叫んでみたが、その声に答えてくれる者は誰もいなかった。
「う・・・うっう・・・」
しかたなく脱出を諦め、黒いレンガのようなものでできた石壁に背中を預けて床に蹲る。
散々な旅行だった。航海に出た船はドラゴンに丸呑みにされ、漂流した挙句にドラゴンばかりが棲むこんな恐ろしい島に流れ着くなんて・・・
その上、俺はドラゴンに囚われの身になって明日をも知れぬ命なのだ。
もしかしたら今すぐにでも、あの女王と呼ばれた美しいドラゴンが俺を食い殺しにくるかもしれない。
時折壁を伝って聞こえてくるドラゴン達の足音にビクビクと怯えながら、俺は2時間程暗い牢の中で絶望の時を過ごしていた。

ガチャリ
突然、地下牢へと続く扉が開く音が辺りに響き渡る。
鉄格子の間からそちらを覗き見ると、あの女王のドラゴンがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「あ・・・ああ・・・」
予想通りの展開に、俺は鉄格子から離れて後ろの壁際まで下がった。
相変わらずサワサワと水色の毛を揺らしながら女王が牢の前に立ち、扉の鍵を開ける。
そして、薄ら笑いとも呼べる笑みを浮かべながら牢の中へと入ってきた。
「ま、待ってくれ・・・助けて・・・」
両手を前に突き出すようにしてドラゴンの接近を拒絶しながら、俺は涙ながらに叫んでいた。
端正な顔つきのせいであまり目立たなかったが、ドラゴンらしく口の端から鋭く尖った牙が顔を覗かせている。
その恐ろしい凶器から目を離せずにいると、女王は唐突に口を開いた。
「ひっ!」
一瞬食われるのかと思って俺は目を瞑ったが、次の瞬間女王の声が耳に届く。
「助かりたいのか?」
「・・・え?」
女王の発した意外な言葉に、俺は思わず呆けたような声を上げていた。

「た、助けてくれるのか?」
「ふふ・・・別にお前を殺すつもりなどない。私はただ、ある提案をしにきたのだ」
そう言うと、ドラゴンは俺から1メートル程離れた所で床に蹲った。
「提案?」
「私とともに暮らすつもりはないか?」
「と、ともに暮らすって・・・」
俺の目をじっと覗き込みながら、女王が後を続ける。
「何、簡単なことだ。毎晩、私の相手をしてくれればそれでよいのだからな」
「相手?なんの相手だ?」
「ふふふふ・・・知らぬとは言わせぬぞ。これに決まっておろう?」
ドラゴンは蹲った姿勢のまま器用に下半身をずらすと、しっとりと潤いを持った股間の割れ目を俺に見せつけた。
「お、俺にドラゴンの交尾の相手をしろってのか?そ、そんなこと・・・それより、家に帰してくれ!」
「家に帰してくれだと?ふふふ・・・仮にそれを私が認めたところで、どうやって島を出るつもりだ?」
「そ、それは筏を作るとか誰か他の人の船に乗せてもらうとか・・・」
そんな俺の案を、ドラゴンがフンと鼻で笑う。
「お前も、巨大な海竜を見ただろう?船など出せば、あっという間にそやつらの餌食になるだけだ」
「じゃあ・・・俺はもうこの島からは出られないのか・・・・・・」

深刻そうに頭を抱えた人間を見ながら、私は少しだけ希望を与えてやることにした。
「1つだけ、島を出る方法はある」
「ほ、ほんとに?」
「翼竜に人間どもの町まで乗せていってもらうがいい。私が説得すれば、彼らも聞いてくれるだろう」
人間の顔から、先程まで影を落としていた絶望の色が消えていくのが私にもわかった。
「だが、今の季節彼らは森の洞窟の奥で深い眠りについている。目を覚ますのは、まだ当分先の話だ」
「そ、そんな・・・」
「ふふふ・・・それまででよければ、私の相手になってもらえるか?」
だが、人間はまだ踏ん切りがつかないという様子で返事を渋っていた。
「で、でもその・・・なんていうか・・・」
「別に、嫌なら嫌で構わぬのだぞ?代わりにこの地下牢で暮らしてもらうだけだ。食事くらいは運ばせよう」
「う・・・それはさすがに・・・でも俺がドラゴンと・・・」
だが、それでも決断がつかなかったらしい。仕方ない・・・言うべきかどうか迷っていたが、最後の手段だ。

「今は島の食料が少なくなる時期だからな・・・ふふ・・・程度の差はあれ、誰もがみな腹を空かせている」
「え?」
突然の女王の話に、思わず聞き返してしまう。
だが、女王はあくまで独り言を呟くように俺から視線を外して淡々と後を続けた。
「飢えた誰かが私の目を盗んでここにやってきたとしたら・・・ふふふ・・・お前も無事では済むまい」
最後に、女王はツンと顎を上げると俺を見下ろすようにしてとどめの一言を付け加えた。
「まあ、恐らく3日ともたぬであろうな・・・ふふふふふ・・・」
「うう・・・わ、わかった、わかったから・・・助けてくれよ・・・」
このままここにいればいずれ誰かに食い殺される・・・先程まで感じていた恐怖を思い出し、俺は脅迫に負けて女王の提案を受け入れた。
「ふふふ・・・最初から素直にそう言えばよいのだ。では、早速寝室へ行くとしようか・・・ふふふふ・・・」
楽しそうに笑いながら牢を出ていく女王ドラゴンの後についていきながら、俺はこれでよかったのかとひたすら自問を繰り返していた。

夕暮れの日差しが差し込む回廊を女王の後ろについて歩きながら、俺は辺りをうろつく他のドラゴン達の好奇の目に晒されていた。
「あれか、捕えた人間というのは」
「グフフフ・・・これから女王様に食われるところなのだろう。そうとも知らずについていくとは、憐れな奴だ」
あちこちで囁かれるドラゴン達の声に、俺は視線を落として聞こえぬ振りをしていた。

しばらく誰もいない廊下を歩いていくと、女王は突き当たりにある一室の扉を開けて中に入っていった。
「これは・・・ベッド?ドラゴンもベッドで寝るのか?」
フサフサの尻尾を楽しそうに振りながら部屋に入っていく女王の後に続くと、大きな白いシーツのかけられたベッドが目に飛び込んでくる。
「ここは以前、人間が生活していた城なのだ。もっとも、島にいた人間達は我々に滅ぼされてしまったのだがな」
女王はそういうと、その巨体を跳ねさせてベッドの上にボンと飛び乗った。
広いダブルのベッドも、大きなドラゴンが上に蹲ると狭く見える。
「ふふふ・・・私も、意外とこの感触が気に入ってしまってな・・・お前には馴染みも深かろう?」
「あ、ああ・・・」
ベッドの上で妖艶な笑みを浮かべる水色のドラゴンの美しさに、俺はしばしその場で立ち尽くしていた。
「どうした、何を呆けている?さっさとお前もくるがいい」
クネクネと長い体を左右にうねらせ、ドラゴンが俺を誘う。
それに吸い込まれるようにベッドに近づくと、ドラゴンは端に寄って俺の場所を空けてくれた。
多少の期待と不安が入り混じりながら、俺も服を脱いでそのスペースへと潜り込む。

ベッドの上でドラゴンと並ぶように寝そべると、女王は俺の首の後ろに肌触りのよい柔らかな腕を回してきた。
そして、俺の頭を近くに寄せ、首筋にペロペロと舌を這わせ始める。
「ふふふ・・・人間を味わうのは何年振りのことか・・・」
女王の高潔なイメージとは程遠い分厚い舌で舐め回されながら"味わう"などという言葉を聞かされると、思わず俺はこれから食われてしまうのではないかという錯覚に陥ってしまう。
「あふっ・・・」
片足に尻尾を巻きつけてスリスリと愛撫しながら、女王の舌が俺の耳へと移動した。
「心地よかろう?ふふふ・・・こんなところを他の雄に見られたら、お前は八つ裂きにされてしまうだろうな」
「うっ・・・」
足に巻きついていた尻尾が解かれ、その先端が太腿を這い上がってくる。
そして、すでに固く聳え立っていた俺のペニスに繊細な毛尾がシュルリと巻きつけられた。
「それ・・・」
シュル・・・シュル・・・
「ふああっ・・・」
フサフサの尻尾がペニスを巻きとるように前後に動かされ、まるで羽毛に包まれて愛撫されているような快感が股間から突き上げてくる。
それと同時にドラゴンの手が動き、俺の胸から生えた赤い蕾をクリッと摘み上げた。
「ひゃあ!」
「ふふ・・・どうした、お前も私を責めてくれてよいのだぞ?私の玩具になっているだけではつまらなかろう?」
うっとりとした笑みを浮かべながらも、女王はその宝玉のような紫の瞳で俺の目を食い入るように見つめていた。

「ふふふふ・・・」
女王は相変わらず尻尾で俺のペニスを優しく揉みしだきながら、自らの割れ目をすっと俺の前に押し出した。
「さあ・・・お前の好きなようにするがよいぞ・・・ふふふ・・・」
ショリッ
「うくっ・・・」
先程までよりも強くペニスの裏筋を擦り上げられ、その快感に俺は反射的にドラゴンの性感帯へと手を出させられていた。
そしてトロトロと熱い愛液を滴らせる割れ目を広げ、中へゆっくりと指を入れる。
「ふふふ・・・何も遠慮することはない・・・お前がやらぬというのなら・・・」
ショリショリショリ・・・コリリッ
「うああっ!」
「私がお前を責めるだけだからな・・・ふふ・・・ふふふ・・・」
じっとりを俺を睨め回しながら女王が更に尻尾を小刻みに震わせ、俺の乳首を細い爪の先で弄ぶ。
頭の角と同じように透き通った紫ガラスのようなドラゴンの爪が翻る度に、俺は快感と羞恥に体を跳ねさせた。

「どうした、手が止まっておるぞ?そら、もっと奥まで入れぬか・・・」
言いながら、女王が肉襞をヒラヒラとはためかせて指先まで割れ目に入れていた俺の手を膣の中へと吸い込む。
ジュブッ
激しい水音とともに、煮詰めたばかりの熱いジャムの中に手を突っ込んだかのような感覚がじわりと広がった。
「あう・・・う・・・」
ほとんど、俺はこの妖艶なドラゴンの意のままに操られていたと言っていいだろう。
ペニスに擦りつけられる極上の竜毛が、乳首を捻り上げる耽美な竜爪が、そして俺の手を舐めしゃぶる淫靡な竜膣が、鉋をかけるように俺の理性をみるみる削り取っていく。
「ふふふふ・・・一足先に、その手で私の中を味わってみるがいい」
グチュグチュッという音とともに、肉襞が俺の手をきつく挟みつけた。
それと同時に膣の入口が固く締まり、手が抜けなくなる。
「ひっ・・・ま、待って・・・」
ドラゴンの最も嗜虐的な空間に片手を拘束され、俺は軽いパニックに陥って女王を制止した。

「なんだ、今更怖気づいたのか?」
「い、いや・・・た、頼む、ちょっと待ってくああっ!」
柔らかい尻尾でペニスをギュッと締め上げられ、抗議の声が途中から嬌声に変えさせられる。
「ふふふ・・・喋る暇があるのなら少しは私を責めてみたらどうなのだ?こんなふうにな・・・」
その言葉とともに手の平を挟む左右の肉襞が互い違いに波打ち、手が揉みくちゃに掻き回された。
「わ、わああぁ・・・」
俺はその責めにも特に快感は感じなかったが、この手がもし自分のペニスだったらと想像して背筋が寒くなった。
何しろ、相手はドラゴンの女王なのだ。
屈強な雄のドラゴン達ですらも容易く捻じ伏せ、屈服させてしまう最強の性器。
その恐ろしい蜜壷の中に、俺は今片手を囚われて弄ばれている。
俺なんかがどう足掻いたところで、とても敵うはずがなかった。
「ふふふ・・・情けない奴め・・・まだ夜は長いというのに、もう降参するのか?」
コリコリと乳首を揉みしだきながら、女王がもう一方の手を俺の頬に添える。
そして、尖った爪の先で慈しむように俺の頬を撫でおろした。
「う・・・うう・・・こ、降参するから・・・や、優しくしてくれ・・・」
「ふふふふふ・・・よかろう、夜通し可愛がってやろうぞ・・・」
女王はそう言うと、俺の手を嬲っていた膣から力を抜いた。
手の平に纏わりついた愛液をしごき取るように、膣の入口をきつく締めつけながら湯立った手が吐き出される。
そしてそれは、これからいよいよ女王ドラゴンとの本番が始まることを意味していた。

女王は俺の体をベッドに広げると、その上からゆっくりとのしかかってきた。
ズシィッ・・・
「う・・・は・・・お、おも・・・」
みっちりと強靭な筋肉の詰まったドラゴンの巨体を預けられ、俺の体がベッドに深く食い込む。
そして、女王は俺の上でグネグネと左右に体をうねらせながら妖しげに笑った。
「ふふ・・・雄のドラゴンにすら軽々には許されぬ私の中を、人間のお前が味わえるのだ。喜ぶがいいぞ・・・」
その言葉に続くように、ドラゴンの膣が口を開けたクパッという音が下の方から聞こえてくる。
いよいよ、あの中に俺のペニスが飲み込まれるのだ。
これから与えられるであろう想像を絶する快感を無理矢理想像し、俺は顔に恐怖の色を浮かべた。
「ふふふふ・・・恐ろしいのか?そう怯えた顔をするでない・・・生きてここから帰りたいのであろう?」
「あ、ああ・・・帰りたい・・・」
「ならば・・・今しばらくは私に付き合ってもらうぞ」
クチュ・・・
言葉を返す間もなく、女王の膣が俺のペニスをパクリと咥え込んだ。
ジンジンとペニスの芯まで響くような熱さが、天にも昇るような快感を容赦なく送り込んでくる。
「ふふ・・・よいか・・・?」
確認の念を押しながらも徐々にペニスを圧迫し始める膣の動きに、俺はグッと拳を固めた。
グギュッ・・・ギュギュ・・・
「あ・・・ああああ〜〜〜!」
俺が何も言わないのを承諾と受け取ったのか、分厚い肉の壁がペニスをゆっくりと押し潰し始める。
快楽よりも恐怖が先行し、俺は嬌声とも悲鳴ともつかない大声を上げていた。

その頃、部屋の外では数匹の雄のドラゴン達が集まって中から聞こえてくる物音に聞き耳を立てていた。
「い、一体女王様は中で何をされておるのだ?」
「あの人間を召し上がっているのではないのか?」
「いや、どうも先程からブツブツと女王様の声が聞こえてくるのだ。時折人間の方の声もな」
少し扉を開けて中の様子を覗き込みたいという欲求に駆られながら、ドラゴン達がひそひそと言葉を交わす。
「まさかとは思うが・・・女王様はあの人間を夜のお相手に選ばれたのかも知れぬぞ」
「な、何を馬鹿なことを・・・永く女王様に仕えているワシ等ですら、寝室には入れてはもらえぬというのに」
女王のもとに人間を連れてきた茶色い鱗に覆われたドラゴンが呟く。
「だが、あの人間は寝室に入ってからもうかれこれ3時間になるというのにまだ生きておるのだぞ?」
「では、少しだけ部屋の中を覗いてみてはどうなのだ?」
「何だと!?もし知れれば我等など皆殺しの憂き目に遭おうぞ。女王様の恐ろしさを知らぬわけではあるまいに」
いつまでも決着のつかぬ議論を静かに戦わせながら、ドラゴン達が寝室の中で起こっていることを想像し始める。
"ああ・・・ああああ〜〜・・・"
"ふふふ・・・その快楽に喘ぐ声、悶える仕草、雄の感触・・・久し振りの人間もなかなかよいものだな・・・"
「む、むぅ〜・・・人間め・・・もし明日も生きていたとしたら、どうするか見ておれよ・・・」
部屋の中で熱く繰り広げられているであろう情事を悶々と思い浮かべながら、雄のドラゴン達は我らが女王を奪った人間に静かな殺意を燃やし始めていた。

グシュグシュッスリッ
「ひああっ!」
ペニスが肉襞に揉みしだかれると同時に筆先のように柔らかい尻尾の先端が尻穴をくすぐり、俺はビクンと両手足を跳ねさせた。
捕えた獲物は決して逃がさないというドラゴンの強大な体重に組み敷かれながら、力を抜いて快楽に身を任せる。
「ふふふふ・・・そろそろ、お前のモノを搾らせてもらうぞ・・・」
手加減してくれていたのかじわじわと嬲られていたのかはわからないが、俺は女王の中に入れてからこれまでの間、まだ1度も射精させられてはいなかった。
「あ、ああ・・・」
神秘的な雰囲気を漂わせる女王の魅力と快楽に圧倒され、ゴクリと息を飲み込みながらも頷く。
「では・・・ふふふ・・・禁断の快楽をたっぷりと楽しむがいい」
ギリッ・・・クチュクチュクチュクチュクチュ・・・
女王の声とともに、膣の入口がペニスの根元をギッチリと締め上げた。
そして、そのまま孤立したペニスを掬い上げるように周囲の肉襞が下から上へと蠕動する。
「うぁっ!うああああっ!」
これまでとは比べ物にならない強烈な刺激に、俺は大きく目を見開いて顔を震わせた。
その不安と恐怖の入り混じった形相を鎮めるべく、女王が再び俺の顔にスッと手を当てる。
「心配するな・・・死にはせぬ。ただ少し、人の身のお前には苦しいかも知れぬがな・・・」

ズギュッ
「ひぁっ!」
一際激しくペニスがしごき上げられ、その快感に俺は女王の手の中で顎を仰け反らせた。
露出した俺の首筋を、女王が爪を立てぬように水色の繊毛で覆われた指の腹でスリスリと撫で回す。
「ふふ・・・可愛い奴だ・・・」
「あ・・・ああ・・・だ、だめだ・・・我慢で・・・できない・・・」
「いいぞ・・・私の中へ放つがいい。さあ・・・遠慮はいらぬ」
なんとか射精を堪えようとする俺の我慢を打ち砕くかのように、尻尾の先端が再び俺の尻穴をクリクリとくすぐり回す。
そしてそのこそばゆさに力が抜けた瞬間、とどめの一撃がギチギチに張り詰めたペニスに叩き込まれた。
ドシャグシャッ
「うあああああああ〜〜〜〜〜〜!」
ペニスが変形するほどの激しい肉襞の愛撫に、俺は長い間溜め込んでいた大量の精を一気に放った。
蕩けるように熱い女王の膣の中が、一瞬にして俺の精で満たされる。
「あ、あく・・・くああ・・・も、もう勘弁して・・・くれ・・・」
体の中を弾け回る快楽の余韻に身を捩りながら、俺は女王に解放を懇願していた。
「ふふふふ・・・いいだろう、続きはまた明日にしてやる・・・今日はもう休むがいい・・・」
そう言うと、女王は俺の手を解放した時と同じように根元から強くしごきながらペニスを引き抜いた。
「くはっ・・・」
女王が快楽の坩堝から引き上げられてグッタリとベッドの上に横たわる俺と並ぶようにして蹲り、ブルブルと震える俺の顔をペロリと優しく舐め上げる。
「ふふふ・・・明日もまた、楽しみにしておるからな・・・」
俺の耳元でそう囁きながら、女王が俺の首の下に太い腕を差し入れ体の上に半分ほどのしかかる。
柔らかな腕枕と暖かいドラゴンの毛皮に包まれて、俺は一瞬にして夢の世界へと旅立った。

翌朝、気持ちよさそうに眠る人間を起こさぬようにそっとベッドから抜け出すと、私は人間の寝顔をじっと覗き込んだ。
昨日1日で味わった恐怖、快感、疲労、そしてわずかな希望。
そのどれもが、静かな寝息を立てる表情にわずかずつ顔を出している。
「今度こそ・・・私のものにしてやるぞ・・・」
独り言を呟き、遠慮がちに頬を舌先で軽くなぞる。
「う・・・う〜ん・・・」
無防備に唸りながら寝返りを打つ様を確認すると、私はいつものように広間の台座の上でうたた寝をするべく寝室を出ていった。

「これはこれは女王、昨晩の人間のお味は如何でしたかな?」
回廊を抜ける途中、あの人間を私のもとに運んできた茶色いドラゴンが声をかけてきた。
その質問に2重3重の意味を読み取り、思わず返答に詰まってしまう。
彼らは私が人間を食い殺したと思っているのだろうか?
それとも、扉の外で私の睦言に聞き耳を立てていたとでも?
「ああ・・・なかなか新鮮であった。だがくれぐれも言っておくが、寝室には決して足を踏み入れるでないぞ」
「はっ・・・」
どことなく歯切れの悪いドラゴンの返事に軽い不安を抱きながらも、私は冷たい大理石の上に辿りつくとグルリと体を丸めてそこに蹲った。
昼の間くらいは、こうして他のドラゴン達に姿を見せていなければならない。
だが前を行く他のドラゴン達を見ていると、皆平静を装っているようでどこか落ち着きがないような気がした。
気のせいであればよいのだが・・・

昼過ぎになって多くの者が柔らかな陽光にウトウトと惰眠を貪り始める頃、茶色い鱗に覆われたドラゴンは女王が眠っているのを確認して静かに寝室へと足を向けた。
昔から・・・そう、あれはこの島から最後の人間がいなくなったときからだったろうか、女王様は我々に寝室へ入ることを固く禁じてきた。
それが一体何故なのかはワシにもわからなかったが、禁を破って寝室に侵入した者達が無残に処刑されたことは未だに脳裏に深く焼きついている。
普段温厚な女王様がその時見せたあの怒りに満ちた表情は、処刑の現場を見ていたワシら全員を恐怖に震え上がらせたものだった。
だが、今回ばかりは事情が違う。
ワシらですら入ることを許されぬ女王様の寝室で、こともあろうに人間が眠っているのだ。

開けてはならぬと言われた寝室の扉の前で、ワシは大きく息をついた。
辺りを見回しても、女王様どころか他の仲間の姿すら見当たらない。
ワシは腹を決めると、寝室の扉を静かに押し開けた。
キィィィ・・・
中を見渡すと、ベッドの上で人間が幸せそうな表情を浮かべて眠っている。
それを見た途端、ワシは怒りにまかせてベッドの上に飛び乗っていた。

ズブッ・・・
「う・・・うあっ!」
眠っている途中に突然鋭く尖ったものを喉に押しつけられ、俺は痛みに呻いて目を覚ました。
ぼやける視界で辺りを見回すと、俺をここに連れてきたあの茶色いドラゴンが爪の先を俺の喉にグッと押しつけ、烈火のように燃える怒りの眼で俺を睨みつけていた。
「う・・・な、何だ・・・?」
「貴様・・・なぜまだ生きておるのだ?昨晩女王様と何をしていた!」
俺の上に覆い被さりながら、ドラゴンが声を抑えて恐ろしい勢いで凄む。
下手に答えれば容赦なく俺の喉笛に爪を突き入れるつもりだ。
「な、何をって・・・あ、相手をしてくれって言われて・・・」
ドスッ
「ぐああっ!」
その瞬間、固い鱗に覆われたドラゴンの尻尾が露出していた俺の股間に向かって振り下ろされた。
激しく襲いくる鈍い痛みに悶えた俺を押し留めるように、再び喉の先を鋭利な爪が突く。
「嘘をつくな・・・女王様が貴様のような人間をお相手に選ぶはずがなかろうが」
「ほ、本当なんだ!昨日地下牢に女王がやってきてああっ!」
ズンッという音とともに、再び尻尾が股間に叩きつけられる。それも、さっきより幾分強く。
「貴様ら人間如きが気安く女王などと呼ぶでないわ!」
そう言って、今度は俺にも見えるようにドラゴンが尻尾を高々と振り上げた。
「正直に言え・・・そうすれば、少しは楽な死に方をさせてやるぞ」
「う・・・ううう・・・た、助けて・・・」
もはや、このドラゴンには何を言ったところで無駄だろう。
自分達ですら相手にしてもらえぬ女王に人間の俺が選ばれたのだから、彼らが嫉妬に狂うのも無理はない。
「答えたくないならばそれでも構わん。地獄の苦しみを味わわせてやるまでだ」
その言葉とともに、振り上げられた尻尾がゆらりと揺れる。
それが意味することを悟り、俺は泣きながら悲鳴を上げていた。
「うわ、うわああああああああ!」

「何をしている!」
俺の股間を叩き潰そうと尻尾が振り下ろされかけた瞬間、突然寝室の入口から女王の鋭い声が飛んできた。
決して見られてはいけないところを目撃され、茶色いドラゴンが恐怖に固まる。
「貴様・・・ここに足を踏み入れてはならぬとさっきも言ったはずだな・・・?」
「い、いやあの・・・女王・・・これにはわけが・・・」
先程まで俺を殺さんと猛っていたドラゴンが、今や完全に怯えきっていた。
慌ててベッドから転げ落ち、恐れを抱きながら尻をついてじりじりと後ずさっている。
女王は俺の方を一瞥すると、喉に残っていた爪の跡と涙に濡れた顔を見て全てを悟ったようだった。
そして、再び禁を破った老ドラゴンの方へと顔を向ける。
ついに壁際へと追い詰められた茶色いドラゴンは、徐々に膨れ上がる恐怖にガタガタと震えていた。

ジリ・・・ジリ・・・
怒りの表情を浮かべながら、女王が茶色いドラゴンににじり寄っていく。
「あ・・・ああ・・・お、お許しください女王・・・ワシはただ・・・」
逃げ場を失ってただただ震えるドラゴンに、女王がゆっくりと覆い被さった。
そして、背筋の凍りつくような冷たい笑みを浮かべながら呟く。
「わかっておる・・・お前も私の中を味わいたかったのだろう・・・?」
恐怖に痺れる老ドラゴンの両腕を床に押さえつけ、その股間から伸びていた肉棒に狙いをつける。
「ど、どうかお許しを・・・ひ・・・助け・・・むぐっ」
老ドラゴンが震える声を絞り出した瞬間水色の美しい毛先を靡かせる女王の尻尾が素早く口に巻きつき、ギュッと締め上げてその声を封じ込めた。
「黙れ・・・禁を破った貴様には断末魔の声を上げることも許さぬ」
俺にはあんなに優しかった女王が、今や恐ろしい雰囲気を辺りに放ちながら憐れな老ドラゴンを圧倒していた。

クパッという聞きなれた音とともに、女王の膣が口を開ける。
その処刑の鐘の音に、口を縛り上げられたドラゴンの顔に恐怖の表情が浮かんだ。
「む・・・うむ・・・むぐぐ・・・」
なんとか顔に巻きついた尻尾を振り解こうとドラゴンが顔を振るものの、怒りを込めて巻きつけられた女王の尻尾を振り解くことはできそうにない。
「望み通り、たっぷりと私の中を味わわせてやろうぞ・・・」
ズブズブズブズブ・・・
その言葉ととも、俺のペニスなどより2回りも大きなドラゴンの肉棒がいとも簡単に女王の膣の中へと飲み込まれていった。
「む〜!むぐぐ〜!」
快感からか、それとも恐怖からか、老ドラゴンが声にならぬ声を上げる。
ドシュッグシャッズシュミシャッ・・・
凄まじい圧搾の音が辺りに響き渡り、老ドラゴンが激しくバタバタと手足を暴れさせる。
だが女王はそれを巧みに捻じ伏せると、老ドラゴンの顎の下から生えていた逆鱗を指先でスリスリと弄び始めた。
「ふふ・・・ほぅら、ここが一番効くのだろう?」
「む、むぐ〜〜〜〜!!」
全身を鱗に覆われた雄のドラゴンにしかない最大の性感帯を思う存分に弄くられ、老ドラゴンがとめどなく溢れ出す快感の苦しみに悶え狂う。

「そろそろとどめをさしてやろう。一切手加減などせぬからな・・・」
ゴシュゴシュゴシュッズリャッドシャッ
ビュビュ〜〜〜ッ
「・・・・・・!!」
「ひっ・・・」
最後に加えられた致死の快楽に老ドラゴンの体が一際大きく飛び跳ね、勢いよく精が飛び出した。
その凄惨な光景に、俺も思わず小さな悲鳴を上げてしまう。
長い長い射精を終えて女王が尻尾を解き放つと、力尽きた老ドラゴンがガクリと床に転がった。
そして、その冷たい表情のまま女王が俺の方に向き直る。
「あ・・・ああ・・・た、助け・・・」
逃げる間もなくベッドの上に飛び乗ってきた女王に組み敷かれ、俺はたった今処刑された老ドラゴンと同じ運命を辿るのかと恐怖に震え上がっていた。

「ひ、ひぃぃぃぃ・・・」
ブルブルと震える俺の顔をペロリと一舐めすると、女王はもとの優しげな顔に戻って囁いた。
「心配するな・・・お前は私が守ってやる・・・」
「う・・・ううう・・・なんであんなことを・・・」
快楽に悶え泡を吹いて死んだ老ドラゴンの顔を見つめながら、俺は女王に恐る恐る問い掛けた。
すると女王は俺の体と直角に交わるようにして腹の上に両腕と顎を乗せ、静かに語り始めた。
「もう何年前のことか忘れてしまったが、この島には元々森に我々が、そして城の周辺に人間が暮らしていた」
昔を思い出すように、女王が視線を落とす。
「初めはお互いに共存していたのだが、やがて人間達は森に棲む我々の存在に恐怖を抱き始めたのだ」
「じゃあ、人間とドラゴンの戦いが?」
「そうだ。だが人間がどう抵抗したところで、本気になった我々ドラゴンに敵うはずなどなかったのだ」
女王は大きく息をつくと、俺の手を掴んで軽く持ち上げた。
「こんな細腕ではどんなに鋭い武器も雄達の鱗の前には用を成さぬ。人間達のいたこの城はたった1日で陥落した」
「それで?」
「奪った城の中を歩き回って私がこの部屋を見つけた時、このベッドの上で若い人間の男が寝ていたのだ」
それが、人間達の最後の生き残りだったのだろう。
「男は私の姿を見つけても少しも動揺することなく、ただ静かに横になっていただけだった」

"お前は・・・逃げぬのか?ここにいれば殺されるだけだぞ"
"はは・・・関係ないさ。どうせ俺はこの島からは出られない。海竜どもが辺りに巣食ってやがるからな・・・"
"そうか・・・ならば、お前の体をこの私に預けてみぬか?命は保証しようぞ"
「その時から、私は人間というものにどこか心惹かれていたのかも知れぬ」
"ああ、いいよ・・・好きにしてくれ"
「そして、私達は夜通し熱く交わった」
女王はそこまで言うと、途端に切ない表情になって後を続けた。
「だが翌日・・・私が目を離した隙に仲間が寝室に入り、ベッドで眠っていた男を食い殺してしまったのだ」
それはきっと、女王にとって大切な何かが奪われてしまった瞬間だったのだろう。
「私はその時、怒りにまかせてその仲間を処刑した。それからというもの、誰もこの部屋には近寄らなくなった」
「あんたは・・・俺とともにここで暮らすのが望みなのか?他のドラゴン達の反感を買ってまで・・・」
「ふふ・・・それが、惹かれるということではないのか?」

その夜、俺は再び女王と熱く燃え上がった。
いや、一方的に燃え上がらせられたと言った方が正しいかもしれない。
だが処刑された老ドラゴンが見せしめの如く寝室の前に置かれていたせいで、もはや誰も扉の前で聞き耳を立てている者はいなかった。

その一件以来、女王は常に俺の周囲に気を配ってくれるようになった。
定期的に玉座を抜け出してきては寝室の様子を窺い、たまに果物や森の木の実を持ってくる。
ただでさえ島の食料が乏しいというのに、本来ドラゴン達に食われてしまってもおかしくない俺に女王が直接食べ物を運んでくれるのだから、彼女がいかに俺に対して特別な感情を抱いているのかがよくわかる。
だがそれは同時に、雄のドラゴン達の嫉妬と反感を買うのに十分な理由でもあった。

「今日も誰かが部屋の前で中の様子を窺ってたぞ」
「ああ、知っている。だが、お前には絶対に誰にも手出しはさせぬ」
「でも・・・いいのか?女王がこんなことをして・・・」
俺がそう言うと、女王は俺の体に預けていた体重をフッと緩めて微笑んだ。
「何だ、お前も私の心配をしてくれるようになったのか?」
「い、いや別にそういうわけじゃ・・・」
「ふふ・・・彼らは私には逆らえぬのだ。この島で唯一子孫を残せる立場なのだからな」
そして、再びその膣に咥え込んだ俺のペニスをギュッと搾る。
「うっ・・・じゃ、じゃあ普段はどうやって彼らと交尾を?」
「1つの季節にたった1匹だけ、私が直々に選んだ雄のみが毎夜の営みを許されるのだ。そして・・・」
「今期は俺を選んだってことか」
次の言葉を先に言われ、女王はいたずらっぽく笑うと俺の乳首をしゃぶった。
チロチロチロ・・・
「ふあっ!?」
「ふふふ・・・そういうことだ。だから彼らが嫉妬に狂うのもわからなくはない。だが、お前を奪わせはせぬ」
「くっ・・・そ、それじゃあ季節が変わったら、俺は家に帰してくれるんだろ?」
フサフサの手で俺の頬を撫でながら、女王が尻尾の先で足の裏をクシュクシュとくすぐる。
そして、そのこそばゆさに身を捩った俺のペニスを肉襞で容赦なく舐め尽くした。
ズリュッグリュグリュッ
「あ、ああ〜〜!」
全身を駆け巡る快感に悶えて暴れる俺の腕を、女王が素早く押さえ込む。
「お前が望むのならな・・・翼竜達が起き出してくれば、彼らが空を舞う姿がここの窓からも見えるようになる」
「あ・・・あぅぅ・・・」
女王は快楽の余韻にピクピクと痙攣する俺の頬に自分の頬を近づけ、スリスリと擦りつけてきた。
「・・・どうしても・・・帰りたいのか・・・?」
その問が意味することを、俺は揺れ動く意識の中で考えていた。

やがて季節が変わり空に翼竜達の姿が見かけられるようになった頃、俺は突然女王に城の中庭へと呼び出された。
何事かと思って女王についていくと、中庭の真ん中で巨大な翼を広げた緑色の翼竜が低く傅いている。
「事情は話しておいた。どこへでも、お前の好きなところへ連れていってくれるだろう」
極力感情を押し殺した声でそう言うと、女王は俺の返事を待っていた。
これで、俺はようやく家に帰ることができるんだ。
俺の命をつけ狙う凶暴な雄のドラゴン達からも、そして・・・奇跡的な出会いに俺を慕ってくれた女王の元からも離れて・・・
俺が島を出れば、きっと女王は再び大切なものを失う悲しみの底に沈んでしまうことだろう。
約束したこととはいえ、女王はさっきから俺に顔を見られぬように俯いていた。

「いや・・・やっぱり、俺はここに残るよ。助けてもらったこともあるし、それに・・・」
その言葉に、女王が俺の方を振り返る。
涙こそ流していなかったが、あの美しかった水色の毛並みが悲しみにぐしゃぐしゃに荒れていた。
「俺も・・・あんたと暮らしてみたいんだ」
「ほ、本当によいのか?」
信じられないという表情で、女王が恐る恐る念を押す。
「ああ、本当だ。だから・・・俺は部屋に戻るよ」
俺はそう言うと、タッと城に向かって駆け出していた。
これでいい・・・あれほど俺を気にかけてくれている女王を、俺はこれ以上苦しめたくはなかった。

足早に城の中に消えていく人間の後姿を見つめながら、私は呆然とその場に立ち尽くしていた。
その様子に、そばにいた翼竜が楽しそうに呟く。
「ははは・・・それにしても、女王も意地悪な御方だ」
「何?なぜだ?」
「もしあの人間が帰ると言ったら、その場で彼を殺してしまうおつもりだったのでは?」
その言葉に、私は鋭く研いであった爪をサッと隠して平静を装った。
「言うな。お前はもう下がってよいぞ・・・ご苦労だった」

翼竜が地を離れたのを確認すると、私は城へと向かった。
スッと大きく息を吸い込み、すっきりと晴れた青空を見上げる。
仮にあの人間を殺すつもりがあったとしても、果たして私にそれができただろうか?
だが、そんなことはもうどうでもいい。あの人間は・・・いや、彼は私のためにここに残ると言ってくれたのだ。
私は研いだ爪で顔の毛並みを整えて女王としての威厳を取り戻すと、ウキウキと尻尾を左右に振りながら城の中へと帰っていった。

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