なだらかな山の中腹を覆う、広大な深緑の森の中。
明るい木漏れ日と小鳥の鳴き声に目を覚ました僕は、今日で100歳の誕生日を迎えた。
産まれた時はお母さんの卵から出て来たくらいだから、大きさで言えば精々人間の頭くらいのものだったはずだ。
それが100年経った今では大きくて硬い水色の鱗を背負い、腹の辺りは蛇腹状になった肌色の甲殻で覆われた立派なドラゴンとして成長を遂げていた。
だがそんな僕にもある1つの悩みがある。
それは、この歳になってもまだ両親と同じ洞窟で3匹揃って暮らしているということだった。
親子仲良くといえば聞こえはいいかもしれないが、仲間のドラゴン達からは何時まで経っても親のもとを離れられない子供だといって馬鹿にされてしまうのだ。

「ねえ、お父さん・・・」
「ん・・・どうした?」
濃い青紫色の鱗を纏った大きなドラゴンが、ゴロゴロと洞窟の地面に寝そべったまま力のない返事を返してくる。
「僕、今日でもう100歳になったんだよ。そろそろ独り暮らしさせてくれてもいいでしょ?」
「何だ、自分の親と一緒に住むのが嫌になったのか?」
「そういうわけじゃないけど・・・周りの皆から独りで生きていけないなんて情けない奴だって言われるんだよ」
だが父はだるそうゆっくりと頭の向きを変えると、僕の方から顔を逸らした。
「別に構わないが・・・お前、狩りはもうできるんだろうな?」
「当たり前だろ。この前だって大きな鹿を2頭も仕留めたばかりじゃないか」
「それならいい・・・母さんにも話してから行くんだぞ」
歳が大台に乗ったからなのかそれとも深く考えていないだけなのか意外にあっさりと父親の了承をもらい、僕は張り切って薄暗い洞窟の奥でまだ熟睡している母親を起こしにいった。

「お母さん、起きてよお母さん」
子供とはいえ十分に鋭く尖った茶色い爪で母親を傷つけぬように気を使いながらも、その巨体をユサユサと揺すってみる。
「う〜ん・・・な、何・・・?」
全く・・・眠いのかどうか知らないけれど、今日は父も母もあまりにぐうたら過ぎる気がした。
いつもなら僕が起きる頃にはもう両方とも狩りに行っているか、少なくとも母さんがその真っ赤な体毛の生えた尻尾で父さんを叩き起こしているかのどちらかなのに。
「僕、今日から独りで暮らすよ。どこかいい洞窟を見つけて、自分で獲物を獲って過ごすんだ」
「あらそう・・・いいけど、洞窟を探す時は気をつけるのよ。世の中には縄張りってものがあるんだから」
「縄張り?」
今まで大して遠出をしたことのなかった僕は、その初めて耳にする言葉をつい聞き返していた。
「他の誰かが支配している所に無闇に入ったりしちゃだめってことよ」
「ああ、うん・・・大丈夫だよ」
そんなの当たり前だろという風に相槌を打つと、母がまたゴロンと転がって眠りについてしまう。
「じゃあ・・・僕はもう行くよ」
手でも振っている代わりなのか、まるで僕を見送るかのようにお母さんの尻尾が上下に揺れていた。

洞窟の外へと飛び出すと、僕は眩いばかりに森の中へと降り注ぐ太陽を見つめた。
まずは、住むための洞窟を探すところから始めなければならないだろう。
とはいっても所々深く抉れた岩山に森が被さっているような山なので、住んでいる仲間の数以上に余っている洞窟などは探せばいくらでもあるだろう。
せっかくだから、今よりももっと標高の高い所に住みたいものだ。
そう心に決めると、僕は興奮に胸を躍らせながら鬱蒼と生い茂った木々の間を縫うようにして山を登り始めた。
初めて歩く知らない森の雰囲気が、丁度よい緊張感となって背筋を駆け上っていく。
だが一応は辺りに注意を払いながらも、僕は住むならどんな洞窟がいいかをずっと頭の中で考え続けていた。

2時間も歩き続けた頃だろうか。
もう、僕の元の住み処だった洞窟からは遥かに離れたことだろう。
「そろそろ住みやすそうな洞窟が見つかればいいんだけどなぁ・・・」
僕は誰にともなくそう呟きながら時折視界に入る獣達には目もくれずキョロキョロと辺りを見回している内に、やがて薄暗かった森の出口が近づいてきた。
その奥にはチラチラと岩壁のようなものが見え隠れしていて、洞窟の1つや2つくらいはありそうだ。
ガサガサ・・・ガサッ
「す、すごいな・・・」
草木を揺らす騒々しい音とともに背の低い茂みを掻き分けて森を抜けた瞬間、僕は目の前に広がっている光景に思わず溜息を漏らした。
視界一杯に澄んだ水を湛えた広大な湖が広がり、その周りを小高い岩壁がまるで外壁のように丸く包んでいる。
しかもその岩の壁にはいくつかの大きな洞窟がぽっかりと口を開けていて、まるで誰かの秘密の隠れ家のようだ。
湖の目の前にある大きな洞窟・・・
こんな所に住むことができたら、とっても気持ちいいだろうなぁ・・・
そんなことを考えつつ、すでに先客がいないことを願いながら恐る恐る洞窟の中を順番に覗いていく。
だが全部で4つある洞窟にはどれも生物が住んでいる気配は全くなく、僕はこの洞窟が誰の所有物でもないことを確信することができた。

「やった!」
まるで100歳になったお祝いをもらったような気がして、僕は思いもかけず手に入れられた素晴らしい住み処に思い切り飛び上がった。
残りの3つの洞窟は、誰か仲のいい友達にでも紹介してあげればいいだろう。
自分の、いや自分だけの住み処を見つけられた嬉しさにしばらくの間地面の上をゴロゴロと転がり回ると、僕はここまで洞窟を探し回ったお陰でずいぶんと泥土に汚れてしまった体を洗うために湖へと向かった。
まるで底まで見通せそうな綺麗な水をじっと覗き込んでから、少しだけ水面に口をつけてみる。
コク・・・コク・・・
なんて美味しいんだろう・・・冷たい水が乾いた喉を一気に潤していくのがわかる。
ゴク・・・ゴク・・・んぐんぐ・・・
僕はまるで何かに取り憑かれたかのように大量の水を飲み下すと、ザバーンという音を立てて湖の中へと飛び込んだ。
あまりの気持ちよさに、体を洗うという目的も忘れて思わず泳ぎ回ってしまう。
まあ、汚れは落ちるから別にいいだろう。

自由気ままに湖で一通り泳いだ後、僕は岸から上がって地面の上へと寝そべった。
濡れた体をポカポカと真昼の陽光が照らしだし、なんとも心地のよい暖かさが全身を包み込んでいく。
「ああ、気持ちいいなあ・・・このまま昼寝したい気分だ・・・」
そう呟きながらうっとりと目を閉じかけたその時、僕は何か異様な気配を感じて反射的にバッと体を起こしていた。
見ると、今まで僕が泳いでいた湖の中から大きな黄緑色の鱗に覆われた顔が突き出して僕の方を睨みつけていた。
「わっ!な、何だおま・・・」
だが突然のことに驚いて叫び声を上げようとした瞬間、巨大な1匹の龍が水の中から飛び出してくる。
そして一瞬にして僕を捕えると、グルグルととぐろを巻くようにしてその長い体を僕に巻きつけ始めた。
「わ・・・わ・・・」
パニックに陥って声を上げている間に、僕は龍に上半身をグルグル巻きにされて地面の上に尻餅をついていた。

「ワシの湖を荒らすとはいい度胸だな、小僧・・・」
「こ、小僧!?ぼ、僕はもう100歳だぞ!小僧なんて呼ぶな!」
100歳になって成竜になったと思っていたところを小僧などと呼ばれ、僕はカッとなって思わずそう反論していた。
「グフフ・・・800年以上も生きておるワシにとっては、お前など小僧どころかひよっ子じゃ」
「う・・・うぐ・・・くそ、は、離せよ!」
体に巻きついた龍のとぐろを引き剥がそうとしてみるが、僕の力ではビクともしない。
それどころか、逃れようともがけばもがくほど体がきつく締め付けられてしまう。
「そんな弱々しい力で、ワシから逃げられるとでも思ったか?」
そう言いながら、龍が少しずつ僕に巻きつけたとぐろを引き絞っていく。
ミシ・・・ミシ・・・メキ・・・
「あう・・・ぐ・・・く、苦し・・・」
「住みよい洞窟を見つけて浮かれておったのであろう?あれはワシの物じゃ。ワシに無断で立ち入るでないわ!」
「べ、別にいいだろ!?あんなにあるんだから1つくらい僕にくれても・・・うああっ!」
その瞬間、まるで老龍の怒りが注ぎ込まれたかのように締め付けが一段と強くなった。
「減らず口を・・・これでもまだ懲りぬのか?謝れば許してやってもよいのだぞ?」
ギシギシと何かが軋むような音とともに、体が少しずつ押し潰されていくようだ。
全身を硬い鱗と甲殻で守られているとはいえ、筋肉や骨には容赦なく凶悪な圧迫感が押し寄せてくる。
「うぁ・・・だ、誰がお前なんかに・・・ぐぅぅ・・・」

僕は気力を振り絞ると、辛うじてとぐろの外に突き出している左腕で胸に巻きついた龍の体を持ち上げようとしてみた。
だがいざ力を入れようとした瞬間、背後から伸びてきた龍の手に腕を掴まれて抵抗を封じられてしまう。
「グフフフ・・・反省する気はないというのか?ならば・・・」
龍はそう言いながら残った右手で僕の顎を掴んで横を向けさせると、無防備に曝け出された首筋にカプッと軽く噛み付いた。
「ひっ・・・」
短い悲鳴を上げている間にもゆっくりと龍の口が閉じられ始め、鋭い牙がググッと鱗へ食い込んでいく。
「あ、や、やめ・・・ああ・・・た、助けて・・・あああん・・・」
いくら首筋を覆う鱗が強靭であったとしても、龍の鋭い牙と屈強な顎の力にかかれば僕の首を噛み砕くことなど朝飯前なのだろう。
やがてジワジワと鱗へと沈んでいく牙の感触と恐怖に屈服し、僕は泣きながら叫んでいた。
「ご、ごめんなさいごめんなさい!あ、謝るから・・・許してぇ・・・おじちゃぁん・・・」



ガクガクと震えながら声を張り上げると、龍はあっさりと僕の首から口を離してくれた。
「フン・・・最初からそうやって素直に謝ればよいのだ」
「う、うぅ・・・」
牙の食い込んだ鱗がそこだけ牙の形に陥没していて、もう少しで鱗が突き破られるところだったのがわかる。
「どうだ、まだあの洞窟に住みたいか?」
その時、ポロポロと涙を流していた僕の耳元に囁くように老龍がそっと呟いた。
「住んでも・・・いいの・・・?」
「別に構わんぞ。だが、もちろん条件がある」
「ど、どんな条件?」
噛み殺される恐怖からは解放されたとはいえ、僕はいまだに龍のとぐろの中に捕えられているのだ。
いつまたあの恐ろしい締め付けを味わわされるかわからずに、僕は恐る恐る龍の問に答えていた。

「3日に1度、その日に小僧の狩った獲物の中で1番大きな獲物を湖に投げ込み、ワシに捧げるのだ」
それはつまり、家賃を払えということなのだろう。
まあ縄張りの一部を僕に貸し与えてくれるというのだから、それくらいはむしろ当たり前なのかもしれない。
「それだけ?」
とんでもないという様子で、龍が左右に首を振る。
「もう1つある。毎晩、ワシの相手をしてもらおうか」
「あ、相手って・・・何の相手をするの?」
「グフフフ・・・小僧ももう100歳なのだろう?その歳になっても知らぬとは言わせぬぞ」
だがそうは言われても、ずっと両親とともに暮らしてきた僕には何のことか皆目見当もつかなかった。
「わ、わからないよ・・・一体何のことか・・・」
「そうか・・・まあいい、それなら今夜ゆっくりと教えてやろう」
そこまで言うと、龍はようやく僕に巻きつけた巨大な体を解いてくれた。

その夜、僕は龍に呼び出されるがままに湖のほとりにやってきた。
龍の方はというとすでに湖から上がってきていて、地面の上に長い体を伸ばして横たわっている。
そして短く生えた両足の間からは、1本の肉の棒がピンと天を衝いてそそり立っていた。
「遅いぞ、小僧。さっさとこちらへこんか」
「う、うん・・・それで・・・僕は何をすればいいの?」
「ええい、察しの悪い奴め・・・ワシのモノをしゃぶるのじゃ」
まるで耳の中で何かが言葉の認識を遅らせているかのように、龍の言葉を理解するのに随分と時間がかかってしまう。
「しゃ、しゃぶる・・・の・・・?これ・・・」
「そうじゃ。ほれ、早くせい」
よ、よくわからないけど・・・とりあえず言われた通りにした方がよさそうだ。

僕は長い龍の体に跨るようにしてその肉棒へと口を近づけると、そっと舌先で舐め上げてみた。
レロ・・・レロッレロ・・・
「ぬ・・・うく・・・」
決して強くはないが切ない快感に、龍がグネグネと体をうねらせる。
「こ、こうでいいの?」
「い、いいから続けるのじゃ!」
大声で催促され、僕は思わずビクッと身を震わせて龍のモノを口へと含んだ。
レロッ・・・ヌチュ・・・クチュクチュ・・・
「ふぬ・・・い、いいぞ小僧・・・なかなか・・・う、上手いではないか・・・」
よほど気持ちがいいのか、龍の口の端から唾液がたらりと滴り落ちている。
色々と試してみるうちに少しずつコツが分かってきて、僕は牙を立てないように注意しながら口全体を使って龍の肉棒をしごき上げた。
ズリュッズリュズリュズリュリュッ
「ぬおぁっ!?」
ブシャッという音とともに、唐突に龍が肉棒から白濁液を発射した。
口の中に広がった熱さと何とも言えない苦い味に、慌てて口を離す。

「大丈夫・・・?おじちゃん・・・」
「う、うむ・・・今度は小僧の番だ」
「え・・・ぼ、僕の番って・・・ふああっ!?」
戸惑いながら聞き返した直後、僕は股の下を通っていたザラザラの鱗に覆われた龍の尾で股間を掬い上げられた。
「グフフ・・・小僧もなかなかよい声を出すではないか」
ジョリ・・・ジョリ・・・
「き、気持ちいい・・・よぉ・・・」
快感に足の力が抜けてへたり込んだ僕の股間を、龍がなおもその鱗で擦りおろしていく。
「あん・・・あぁん・・・ちょ・・・待って・・・はぅん・・・」
「どうだ、もう限界じゃろう?それ、とどめじゃ」
ジョリリッ
ビュビュッビュ〜〜
「あ、あ〜〜〜!!」
体が浮き上がるほどの激しいとどめの擦り上げに、僕の肉棒が成す術もなく精を噴き上げた。
「こ、こんなの・・・初めて・・・」
荒い息をつきながら、快楽の余韻にブルブルと身を震わせる。
「今日は最初の夜じゃし、このくらいで勘弁してやろう。明日の夜も・・・わかっておるな?」
「う、うん・・・わかったよ・・・おやすみなさい・・・」
なかなか力の入らなかった足腰になんとか気力を注ぎ込むと、僕は老龍にそう言い残して自分の洞窟へと戻った。
真っ暗な洞窟の中で地面の上に蹲りながら、両親の顔を思い浮かべる。

お父さん、お母さん・・・僕、新しい住み処を見つけました。
目の前に大きな湖もあるし、洞窟の中もすごく広いし、とってもいい所だよ。
それになんとなく・・・上手く言えないけど・・・なんだか幸せに暮らせそうな気がするんだ。
頭の中で両親にそこまで告げると、僕はそっと目を瞑った。
明日は、張り切って狩りにでかけるとしよう。
洞窟の外に広がる湖の水面にはまるで僕の新たな生活の始まりを祝福するかのように、大きな満月が輝いていた。

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