タグ検索でテメレア5件見つかりました。

プレクルソリス

堆い城壁に囲まれた広場は深い沈黙に包まれていた。 唯一、金属のきしむ音だけが淡々と風を揺らし続けている。 豊穣の季節の終わりを告げる冷ややかな空気に抱かれたそれは、言い知れない虚無感を帯びていた。 「罪人、前へ」 静寂を破る、地を這うような低い声。 その主たる男は厳粛な表情で唇をかみ締めていた。 掲げた手のひらが微かに震えているようにも見える。 男は静かに手を下ろすと、まぶたを閉じてゆっくりと息を吸い込み、再び両目を見開いた。 彼の声によって広場の内周を囲う兵士が円陣を整え始める。 やがて、奇妙なほどに美…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%a5%d7%a5%ec%a5%a... - 2008年08月12日更新

ヴォリー

「ンモオオォォォオオ!」 さんさんと陽光降り注ぐ穏やかな昼下がりの牧草地で突如として上がった牛の悲鳴。 泥棒か、狼か。考えられる原因はそんなところだが、何せこんな真っ昼間である。 人にしろ獣にしろ、白昼堂々と牛を掻っ攫うような真似はしないだろう。 そういう輩は夜を待つものだ。 つまりそれは、招かれざる客がそのどちらでもないことを示唆しているに違いなかった。 芝生に身を放り投げていた農夫は牛の悲鳴にようやく重い腰を上げて、喧騒の中心に視線を投げた。 そして、仰天した。 「ド、ドラゴン…!誰か!誰か助けてくれ…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%a5%f4%a5%a9%a5%e... - 2008年08月12日更新

竜と人と

学の本を閉じ、驚いたそぶりを隠すことなくテメレアに視線を向けた。 この唐突な質問自体が驚きに値するものだったが、 普段は自分の朗読にじっと耳を傾けているテメレアが急に話題を切り出したことに、ローレンスは面食らった。 雲ひとつない穏やかな星空の下、ランプの灯りにゆらめくテメレアの表情がどこか寂しげに見える。 「どうしてそんなことを聞くんだい?」 驚倒の表情を取り繕い、あたかも平静にローレンスが言った。 質問を質問で返されたテメレアはしばらく考え込むように目をつむっていたが、やがてそのままの状態でこう続けた。…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ce%b5%a4%c8%bf%c... - 2008年08月12日更新

レヴィタス

違う。ぼくのキャプテンじゃない。 近づく足音の方向をちらりと見遣り、小さな竜は深いため息をついた。 途端、その腹部から赤黒い血が溢れ出す。 「レヴィタス、しっかり!」 竜を腕に抱いた青年が声を上げた。 こぼれた涙が幾度も竜の頬を叩くが、反応は薄い。 足音が止んだ。 竜はまぶたを閉じる瞬間、怒りに身を震わせる足音の主を見た。 ──ローレンス。 あなたの怒りは、ぼくのキャプテンに向けられているんですね。 でも、違うんです。キャプテンは悪くないんです。 飛行士の多くは、戦闘能力に秀でたリーガル種や、ロングウ…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%a5%ec%a5%f4%a5%a... - 2008年08月12日更新

発情期

ローレンスは困惑していた。 テメレアは初めての発情期を迎えた。雌雄の区別を持つ生き物であれば珍しくもない成長過程のひとつだ。 だが、ドラゴンはただのけだものではない。人間と同等、いや、それ以上に賢いのだ。 ドラゴンは発情期の衝動を自制できる、そのケレリタスの言葉に疑いはない。 彼は上官であると同時に数百年を生きたドラゴンでもある。説得力は相当なものだ。 しかし、自身のテメレアに対する接し方 ──特に日常的な世話のあり方が他の担い手と比べて特殊であることをローレンスは自覚していた。 ロック・ラガン基地に赴…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c8%af%be%f0%b4%f... - 2008年08月12日更新

どなたでも編集できます