タグ検索で長編27件見つかりました。

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過去への忘れ物

ある晴れた日の昼下がり、私はぼんやりと考え事をしながら住み処から程近い森の中を歩いていた。 最近は狩りの仕方もようやく覚え始め、時折見掛ける小動物に反射的に飛び掛かっていっては運良く仕留められた獲物に顔を綻ばせる毎日を送っている。 だが、今日ばかりはそんな平和な日常と少しばかり様子が違っていた。 幾つかの大きな木の向こうにチラチラと見える、隠し切れていない大きな体・・・ 濃紺や黒といった暗い体色から察するに、恐らくは雄の竜に違いない。 そして一体何事かと思って無防備にも更に歩を進めた次の瞬間、不意にその全…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b2%e1%b5%ee%a4%d... - 2010年03月21日更新

我が翼を想いて

今ではもう数少ない書物の片隅でしか語られることのなくなった古き時代・・・ 大陸の方々に散らばる小さな国々が、領土を広げるために幾度となく制圧と統合を繰り返した時期があった。 とは言っても、国同士が血で血を洗うような戦争を繰り広げていたというわけではない。 ある程度の纏まりを見せ始めた幾つかの国が我先にと競うように行っていたのは、国境に面した未開の地に生きる無数の蛮族達の平定である。 そしてそんな彼らの軍事力として最も貢献していたのは、日々の訓練に明け暮れている屈強な兵士などではなく、当時の人間達にとって最…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b2%e6%a4%ac%cd%e... - 2008年08月12日更新

Another Javawock

Beware the Jabberwock, my son! The jaws that bite, the claws that catch! Beware the Jubjub bird, and shun The frumious Bandersnatch! 我が息子よ、ジャバウォックに用心あれ! 喰らいつく顎、引き掴む鈎爪! ジャブジャブ鳥にも心配るべし、そして努 燻り狂えるバンダースナッチの傍に寄るべからず! ――ジャバウォックの詩 ルイス・キャロル 1968年、12月10日。 東京都内某…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/Another%20Javawoc... - 2012年09月07日更新

破幻の竜玉

「う・・・ぐ・・・ぐああああっ・・・!よ、よせ・・・やめてくれぇ・・・ひいいっ・・・」 「クフフ・・・お前をどう料理するのか全てはあたしの思うがまま・・・たっぷりと泣き叫びな・・・」 宵闇に染まった深い森の奥から、木々の間を吹き抜けるそよ風に乗ってそんな雌雄の声が聞こえてくる。 どうやら、"奴"は今憐れな獲物を甚振っている真っ最中らしかった。 正直夜の闇に乗じて不意打ちを仕掛けるだけでは"奴"を倒せるのか不安だったのだが、お楽しみ中ということであれば勝算は遥かに大きくなるというものだ。 俺は心中でそう独り…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c7%cb%b8%b8%a4%c... - 2011年08月21日更新

顕竜刀記知愛之巻

 (―――マたカ)  彼は苛立だしげに喉の奥で唸ると、爬虫類に酷似した瞳孔を細め周囲を窺った。もう何 度繰り返してきたかしれないその行為は、またしても徒労に終わる。  (ダが、イる……)  周囲は深い森の中、一頭の年若い雄竜は不安を確かにしつつ四肢の歩みを再開した。薄 緑の鱗はまだ歳月の綻びを知らず瑞々しい輝きを湛え、頭部の角も完全に伸びきっていな い。さしずめ幼年期を終えたばかりといった所。彼は今勝ち得て間もない餌場に出向く途 中、思わぬ追跡者に悩まされていた。  グオ! オ、オォウッ、オオオオ…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b8%b2%ce%b5%c5%e... - 2010年08月11日更新

寄居蟹

――あるところに、一頭の子竜がいました。 ――子竜は独りきりでしたが、とても幸せでした。 「うわ・・・、雨凄いな・・・。」 レイがそう言うと、サラが気の無い様子で「んー」と返事をした。 先刻から降りだした雨は止むこともなく、次第に窓を叩く力を強めていく。 レイは額と鼻の頭を窓から離し、後ろで足を組む竜人の方を向いた。 「・・・つらぬきとめぬ何とやら?」 「は?」 同居人の人間の言葉に、サラが本から顔を上げる。 「それ秋の歌でしょ?しかも露の話だし・・・。」 読んでいた本を栞も挟まずに閉じ、首を回しながら…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b4%f3%b5%ef%b3%a... - 2009年03月16日更新

裏窓

俺の部屋の窓の正面には、ボロアパートと廃墟になったオフィスビルが建っている。 俺はその隙間から見える雲が好きだった。 それはアパートのベランダの格子の隙間を縫うように現れて、向かいのオフィスビルまでゆるく蛇行しながら橋をかけている。 俺は毎日、昼夜問わずその雲を眺めて過ごした。 俺が俺のアパートの俺の部屋に入ったときから、雲の形は変わっていない。 変わる訳が無い。 俺は、本物の雲を見たことが無い。 俺が気に入っている雲は、この町を覆う壁に描かれた絵なのだ。 俺の住んでいる町には、空が無かった。 どこまでも…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ce%a2%c1%eb... - 2008年08月12日更新

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