タグ検索で流血133件見つかりました。

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立ちはだかる巨壁

雲1つ無い清々しい快晴の空の下、我は見晴らしの良い断崖の上から遥かな下界に佇む人間達の町を眺めていた。 その多種多様な文化や思想が混在するはずの人間達が驚く程に統制の取れた生活を営んでいる様は我にとっても感嘆と賞賛の対象であると同時に、心中に渦巻く微かな葛藤が小さな苦笑となって我の顔に滲み出していく。 好奇心旺盛な人間達でさえ近付くことの無い峻険な岩山の奥地に住まう我ら竜族にも、至極当然のことながら他者とは違う様々な生き方を目指す者達が存在するのだ。 日々の糧を手に入れようと人間達の町や村を襲う乱暴者、毎…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ce%a9%a4%c1%a4%c... - 2010年08月19日更新

静寂の夜に

風も波もない穏やかな海の底に佇む、小さな海中洞窟。 「ふぅ・・・」 その最奥にある薄暗い住み処の中で、1匹の大きな海竜が落胆気味に小さな溜息をついていた。 透き通った紫色と純白の2色に塗り分けられた体をまるで大蛇のように艶かしくくねらせながら真っ赤な長髪を靡かせるその海竜は、仲間達の間でナギと呼ばれている。 長年この暗い洞窟の中で勇猛な雄龍の出現を待ち続け、そしてついに数年前、ようやく深い山間の洞窟から移住してきた雄龍と結ばれて可愛い2匹の子を授かったあの海竜である。 だが常に勝気で夫であるアンクルにすら…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c0%c5%bc%e4%a4%c... - 2008年08月12日更新

仇敵の胸に抱かれて

月明かりどころか微かな星の瞬きさえ見当たらない、世界の全てを漆黒の闇が覆う不気味な夜。 俺は深い森を抜けた先でそんな黒一色の夜空を背景に巨大な城のシルエットが浮かび上がっているのを目にすると、背後に従っていた3人の仲間達に向けて小さく声を掛けていた。 「いよいよだぞ」 「ああ・・・」 「ここまで、随分と長く掛かったわね」 無骨な男達の中で紅一点のメリルが、その凛とした青い瞳で俺と同じく不気味な城を見上げながらそんな声を漏らす。 確かに・・・彼らとともにこの旅に出発したのは、もう5年も前になるだろうか・・・…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b5%d8%c5%a8%a4%c... - 2017年05月11日更新

天国に息衝く母達

「ふぅ・・・今日は定時に上がれそうだな・・・」 「ああ、俺も何とか目途が付きそうだよ。週末くらいは早く帰りたいしな」 「まあ今年も新入社員は入らなかったから、新人の面倒を見るのに手間が割かれてないだけまだマシな方だよ」 俺はそう言ってもう定時5分前となった社内の時計に目をやると、ようやく一段落した今日の業務を見直していた。 「そういやあいつ、今年も後輩が出来なかったってぼやいてたなぁ」 「そう言ってられるのも今の内だろ。いざ新人が入ったら、自分の仕事なんかまるで手に付かなくなっちまうからな」 そして同僚と…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c5%b7%b9%f1%a4%c... - 2018年08月08日更新

血塗られた遺産

「行って来まーす!」 僕はそう言って家を飛び出すと、まだ昼食を食べたばかりで些か重い腹を揺すりながら村外れの森へと駆けていった。 この人口200人にも満たない小さな村では同じくらいの歳の子供は数えるくらいしかおらず、今年で9歳になる僕は村から程近い森で遊ぶことの方が遥かに多かったのだ。 もちろん友人が全くいないというわけではないのだが、森での採集や狩りを生業にしている僕の両親とは違って他の子供達の親は自分の子供が森に入ることを余り良くは思っていないらしい。 僕は今よりももっと小さい頃からお父さんに連れられ…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b7%ec%c5%c9%a4%e... - 2018年03月04日更新

物言わぬ黒翼

「お嬢様・・・森には危険もございます故、余り私めの目の届かぬところへは行かれませぬように」 「爺やが遅いのじゃ!何時も何時も、ちゃんと妾について参れと言うておるではないか!」 ある晴れた日の午後・・・ 妾は週に2度の楽しみである森への散策に出掛けると、少しばかり息苦しそうに後ろをついてくるもう70歳近い執事の老体を気遣うことも無く薄暗い木々の回廊の中を駆けていった。 周囲を森に囲まれた貧しい小国だからなのかこの国の王である父ももうすぐ6歳の誕生日を迎える妾に特に贈り物の類をくれるつもりは無いらしかったもの…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ca%aa%b8%c0%a4%e... - 2019年01月06日更新

タイトル無し2

Human-side [[Dragon-side>タイトル無し]] 俺の心に空いた虚無はどうすれば埋まるのだろうか 俺はいつものように当ても無くただ彷徨っていた。 俺はあの時の約束を果たすべく 今尽き掛けているこの命を再び燃やそうと 俺はただ歩いていた。 「おい!そこの人間!我の縄張りで何をしている!!!」 ふと、声が聞こえその方向を見る。 すると、黒竜が俺の方を見て怒りを露にしている。 しかし、今の俺には竜でさえも心を動かす理由にはならない。 「なんだドラゴンか・・・」 俺は今人語を解す…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%a5%bf%a5%a4%a5%c... - 2008年12月17日更新

天国の花々

「よし・・・今月はこれで終わり・・・と・・・」 「もうすっかり慣れちまったけど、やっぱり月末ってのは何かと忙しいもんだな」 「まあ俺達なんかよりも、本当は経理や人事の方がよっぽど多忙なんだろうけどさ」 同僚とそんな会話をしながら、俺は何とか定時前に仕事を終わらせることが出来てホッと一息ついていた。 「そういやお前、明日は有給を取ってるんだっけ?」 「ああ・・・何でも人事部の方で有給取得を推進する動きがあるらしくてな。月初から休むのは何か気が引けるけど」 「今話題の働き方改革とかって奴か・・・まあこの業種で…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c5%b7%b9%f1%a4%c... - 2017年10月08日更新

千刃を弾く月光

まだあどけない少年だった10年前とは見違える程に逞しいハンターへと成長した、赤髪を靡かせた若者との再会。 そんな生涯で唯一心を許した人間との心休まる時間を久し振りに満喫した我は、美しい夕焼けを背景に島から遠ざかっていく彼の乗った船を崖の上からじっと見送っていた。 この先、我が生きている間にまたあの人間に出逢うことはもう無いかも知れない。 我がそう思ったのは日に日に強力な武具を身に纏って我を討伐せんと襲い掛かって来る無数のハンター達に明日にも仕留められてしまうかも知れないという危惧ももちろんあったのだが・・…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c0%e9%bf%cf%a4%f... - 2014年12月11日更新

救出

突然、私は深い眠りから覚めた。 一瞬愚か者が私の洞窟に侵入でもしたのかと思って辺りを見回すが、別に問題はない。 「フン・・・思い過ごしか・・・」 いつもならこのような真昼に目が覚めることなどほとんどないというのに・・・ 「ゴアアアアアァ・・・」 真っ黒な鱗に覆われた巨大なドラゴンは大きく空気を震わせて欠伸をすると、妙な予感に思わず目覚めてしまった己を叱咤して洞窟の冷たい地面に再び蹲った。だが・・・ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・ 突如、轟音とともに大地が激しく揺れた。 「むおっ!?」 予想だにしていな…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b5%df%bd%d0... - 2008年08月12日更新

恐妻家

「キャウッ、キャウキャウ・・・」 「キュウ・・・キュッキュキュウ・・・」 外に逃げ出せないように地面を深くくりぬいた穴の中で、子供達が甲高い声を上げながら跳ね回っていた。 その元気な幼子達の様子を眺めながら、深い溜息をつく。 「ふう・・・全く、なぜワシがこやつらの面倒を見ていなければならんのだ・・・?」 本来子供達の面倒を見るのは妻の役目のはずなのだが、当の妻はワシに一言言い残すと今日も上機嫌で洞窟を出ていった。 「獲物を獲ってくるから、その間子供達をお願いね」 ・・・それはワシの役目だというのに。 確か…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b6%b2%ba%ca%b2%c... - 2008年08月12日更新

渓流を染めし蒼

物々しい武装に固められた無数の船と大勢の屈強なハンター達が行き来する、大港タンジア。 その一角に建てられたとある1軒の家の中で、大勢の子供達に囲まれた1人の老人が深紅の宝玉を掲げていた。 「子供達や・・・これが何か判るかね?」 見る者の目を吸い付けて離さない奇妙な魅力と妖しさに満ちたその不思議な宝玉に、今もまた20以上の小さな目が正に興味津々と言った様子で釘付けになっている。 「それ、一体何なんですか?」 「これはな、世に言う"火竜の紅玉"という石じゃ。今では、それ程珍しい物ではなくなってしまったがの」 …

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b7%cc%ce%ae%a4%f... - 2013年07月20日更新

羽の舞う青春

すっきりと晴れ渡った青い大空と、美しく澄み渡った蒼い大海原。 俺は船尾の方から微かに聞こえてくるくぐもったエンジン音に耳を澄ませながら、快速船の甲板でそんな青の世界をじっと眺め続けていた。 ここは故郷のある大陸からは遠く離れた海の上・・・ 船長の話によれば、もう間も無く水平線の向こうに目的地の島が見えてくるらしい。 「おうアレス、ここにいたのか。結構探したんだぞ」 だが何時まで経っても目的地の姿が見えて来ないことに焦れていたその時、俺は船室から出て来た友人の声に気付いて背後を振り返っていた。 「ああ、ち…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b1%a9%a4%ce%c9%f... - 2015年02月17日更新

招かれざる災禍

数人の人間達と1匹の青い雌竜がその場を後にしてから数時間後・・・ 深い夜の闇に沈む洞窟をある1つの影が訪れていた。 最早確信と言っても差し支えのない暗い悲劇の予感に、洞窟の中へと踏み入れられる彼の足取りはまるで深い泥濘の最中を引き摺るかのように重々しい。 だがいよいよ濃い血の匂いが充満する住み処の最奥へと辿り着くと、彼は真っ暗な闇の中で広場の中央に倒れ伏した己の母親を即座に見つけ出していた。 背後から容赦無く首を噛み砕かれて息絶えた、大きな大きな母竜の無残な姿。 やがて既に冷たくなったその骸に頬を寄せると…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%be%b7%a4%ab%a4%e... - 2010年12月23日更新

闇夜に踊る影

「む・・・う・・・?」 月明かりさえ届かぬ洞窟の奥深く、我は周囲を押し包んだ漆黒の闇の中で不意に目を覚ましていた。 珍しいこともあるものだ・・・普段は昼間でさえ空腹を訴えた時以外は眠りから目を覚ますことなどほとんどないというのに、こんな夜中に起きるなどこれまでの生涯を振り返ってみても初めてのことかも知れぬ。 ふと脇に視線を向けると、美しい青色の体毛を纏った妻が相変わらず幸せそうな寝顔を浮かべて熟睡していた。 フフ・・・まあいい・・・ 妻のこの寝顔が見れただけで、意味も無く深夜に目覚めてしまったことへの埋め…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%b0%c7%cc%eb%a4%c... - 2010年11月02日更新

爪牙交えし果てに

ゴク・・・ゴク・・・ 心地良く喉を通り過ぎる、美しく澄んだ冷水の感触。 我は雲1つ無く晴れ渡った清々しい空を見上げると、満腹になった腹を抱えたまま湖畔の湿った土の地面に横たわっていた。 今日の食事は普段の我の獲物に比べればやや小柄な1頭の仔鹿だったものの、適度に痛め付けた後で生きたまま丸呑みにしてやったお陰か独特の征服感が胸の内を満たしている。 だが、恨むならこの我の縄張りに生まれ落ちてしまった己を不運を恨むのだな・・・ やがて腹の中に感じる哀れな獲物の感触をそっと摩りながら、我はふとそんな独り言を脳裏で…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c4%de%b2%e7%b8%f... - 2018年07月27日更新

昏き執念の果てに

清々しい木漏れ日の降り注ぐ、広大な深い森の中・・・ あたしは朝から続いていた空腹をやっとの思いで捕らえた仔鹿で何とか満たすと、木々の間に開けた小道で腹ごなしに食後の散歩を楽しんでいた。 あたしももうすぐ20歳・・・まだまだ竜としては幼い子供のようなものだが、手足を覆った赤色の鱗が徐々に徐々に明るい紅色へと色付いてきているのがはっきりと感じられる。 あたしの母親がそうであったように、どうやら私は歳を重ねる毎に元々淡かった体色が段々と深く濃い色へと変化していく種の竜らしかった。 どうしてそんな体質があるのかは…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ba%aa%a4%ad%bc%b... - 2012年10月27日更新

北を守る者

木々の合間を縫うように走る、紫色の影。 その影に追い立てられて、ジュウは行けども行けども終わりの見えない森の中を、必至の形相で逃げていた。 普段決して足を踏み入れてはならないとされている、村の北に広がる森。 村に住む若き薬師、ジュウは、ふと珍しい薬草を見つけて安易な気持ちでそこに入ってしまい、不用心な事に迷い込んでしまったのだ。 胸に深々と切り付けられた爪痕からは、とめどなく血が流れだしていた。 痛みと恐怖をこらえながらジュウは、おそらく奴は遊んでいる、と思った。 ただ仕留めるならば、遭遇時の一撃で十分…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%cb%cc%a4%f2%bc%e... - 2018年04月30日更新

砂塵舞う闘技場

今より遥か昔、2世紀後半を迎えた古代ローマ帝国は暴君ドミティウスの圧政のもとで民衆達に野蛮な娯楽を提供していた。 決闘・・・そう言えば聞こえはいいが、その内容はほとんど公開処刑と変わらない。 奴隷に身を落とした者達が今日を生き残るため、あるいは腕に覚えのある闘士達が日銭を稼ぐため、巨大なコロシアムを埋め尽くした3万人を超える観衆の前で日々命を賭けた凄惨な戦いが繰り広げられるのだ。 ある時は鎧を身につけていない軽装の闘士達が剣と盾を打ち鳴らし、またある時は腹を空かせた獰猛なトラやライオンが憐れな挑戦者に牙を…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%ba%bd%bf%d0%c9%f... - 2008年08月12日更新

鍛えるは鋼の爪

ドガッ! 「う・・・ぐ・・・はあっ・・・」 まるで雷が落ちたかのような、生まれて初めて感じる凄まじい衝撃。 琥珀色の鱗を纏った巨大なドラゴンが勢い良く振り回した屈強な尻尾に撥ね飛ばされて、僕は岩壁に強か打ち付けた背中の痛みに息を詰まらせていた。 幾度と無くドラゴンの背に振り下ろしたはずの自慢の剣は余りに硬い竜鱗にほんの小さな傷さえ付けられず、反対にその刀身には今にも砕け散ってしまうのではないかと思える程の無数の亀裂が刻み込まれている。 そして体を起こす気力がついに尽きてしまうと、獲物を仕留めたドラゴンが静…

https://seesaawiki.jp/w/moedra/d/%c3%c3%a4%a8%a4%e... - 2011年03月29日更新

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