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「ラヴ・リンク」二話



 七月に入った。
 秀一が朋美と接触したのが五月初めなので、ほぼ二ヶ月経ったことになる。
 そんな頃だった。見計らったように、朋美からメールが来たのは。

「……朋美からだ」

 彼はもう、朋美を無意識に名前で呼ぶようになっていた。
 それほど親しい間柄と見るべきなのか、それとも……

「…………え? ……マジで?!」

 彼は本分を見終え、目を丸くしながら大きめの独り言をついた。
 内容はこうだ。

「七月に入りましたね。
 私たちが付き合ってから、そろそろ二ヶ月が経ちます。
 二ヶ月なんて、普通はみじかく思うかもしれないけれど、私にとっては凄い濃密に感じていました。
 槍田くんと話せるのは、私にとって最高の楽しみになりました。
 だけど、やっぱり直接話したいなって思うんです。
 文字だけじゃなくって、槍田くんの姿を見て話し合いたい。
 ……ですから、もしよければ私の家に遊びに来ませんか?
 あさっては親が仕事で帰らないので都合が良いので、槍田くんの都合がつくなら、是非いらっしゃってください。
 一緒に絵の談義とかして遊びましょう――suzutomo」

 実際どうかはともかく、変人の秀一でさえこれはお誘いにしかみえなかった。
 むろん、一緒に寝る、という意味のものである。

「……ど、どうする? …………どうする俺ぇ〜」



 PCの前で、頭を抱えてうめく秀一。
 確かに、彼も本能的には彼女を抱きたいと思っている。
 だが理性的に考えるなら、様々な事柄を考慮して親友のままでいたいとも思っているのだ。
 「恋人」と「親友」では、やはりその言葉の重さが違いすぎる。
 邪推かもしれないが、もし彼女の方から誘われでもしたら、恐らくそのまま床をともにしてしまうような気がする。
 でも、やっぱり朋美の身体を好きにできるのは魅力的だ。
 理性を本能を天秤にかけ、思慮を重ねた。
 ――何分たっただろうか。

「…………よっしゃ」

 長考し終えて呟くと、秀一は早速行動に移った――

 ―――

 七月二日、三時頃。
 聖羅高等学校の制服に身を纏った少女が、とぼとぼと街道を歩いていた。
 おそろしいほどの美少女だ。
 一流の彫刻家に彫らせたような彫りの深い面差しに、首元までかかる黒髪を飾っている。
 スカートの丈は今時の流行と異なり膝下まであるものの、その体つきの良さは制服の上からでも十分に見て取ることができる。

「はぁ…………」

 少女――鈴森朋美は暗澹な表情を張りつけながら、ため息をついた。
 きのう彼氏(と朋美が意識している)から送られてきたメールの内容を考えれば、致し方ないのかもしれない。
 あした一緒に遊ぼうという内容のメールを送ったのに……その日は都合が悪いのだという。
 じゃあその次の日は、と送っても、やはり理由をつけて拒否された。
 朋美はなんだか怖くなって、とりあえずはあきらめた。
 もしかしたら、槍田くんは私になにか含みがあるのかもしれない……そう考えてしまったのである。
 実際にはそんなことなど全くないのだが、立て続けに拒まれたとなると、偽って断っているのではないかと勘ぐるのも当然といえば当然だ。
 考え事をしながら歩を進めていたからか、あっという間に自宅に着いた。
 朋美の住む場所は、大きな一軒家である。
 父親が証券会社の重役なので、彼女は裕福な生活を送れるのだ。
 ……表向きは。

「……ただい――?!」



 頭を垂れながら玄関の扉を開けたので、彼女はすぐに異変に気付いた。
 父親の靴があるのだ。
 三時に家にいるなど、普通では考えられないのだが……

「おうおう、ようやっと帰ってきおったか」

 やや濁った声と共に異臭が流れてきて、朋美は鼻をつまんだ。
 どうやら、こんな昼下がりから酒をあおっているようなのだ。
 リビングからのそのそとやって来た肥えた父親の格好は、ひどくだらしなかった。
 ありえないことに、パンツとランニングだけの下着姿なのである。
 それに、正視したくないが――下半身を膨張させていた。
 ぶるっ、と華奢な少女の身体が震えを帯びる。 

「まったく、待ちわびたぞ。部下に仕事を押し付けるのも一苦労なんだから、気を利かせて早く帰って来い!」

 凄みをきかせて物を言い歩み寄ってくる父親を見て、朋美は完全に硬直してしまっている。
 玄関に立ったまま視線は一箇所――父の醜い顔に定められ、動くことができなかった。
 帰るのはあさってだって聞いたのに……
 朋美のそんな考えを制止するように、父の手が少女の腕を掴み、引き寄せられる。
 力ずくで引っ張られ痛みを伴ったが、慣れているのか、声に出すことはなかった。

「まったく……あいつに似ず、本当にいやらしいやつだおまえは!」
「――っ!!」
 侮蔑の言葉をつむぎながら、後ろから朋美の豊かな胸を鷲づかみにする父。
 朋美は頬を少し紅潮させながらも、歯噛みして恥辱に耐える。

「あいつが堕ろさないとか抜かした時は殴りつけてやったが……まさかお前のような愛玩具ができるとは思わなかったよ」

 制服の上から双丘を揉みしだきながら、声で言う醜男。
 「あいつ」とは、この男にとっての妻だった人物であり、朋美の母であった女性である。
 ……彼が部下である彼女を強姦に近い形で手をつけ、朋美が美しく成長した頃、彼女は失踪したのだ。

「……おい、玩具だからって黙ってんじゃねえ! 声出さんかい!」

 父は怒声を上げながら制服のすそを取るなり、一気に引き上げる。
 朋美はつられるようにして腕を上げ、制服が脱がされると、彼女の上半身が外気に晒された。
 高校二年生にしては大きな胸を、淡い緑色のブラが包み込んでいる。
 ほっそりした肢体は、程よくくびれた腰やなめらかな肌、華奢な肩など、見る者を十分に魅了するものだった。
 ――すぐに伸びてくる、太い腕。



「!! ぁっ……」

 いとけない途息が洩れる。
 ブラをずらされ、胸の突起を直接つままれたのだ。
 胸を歪ませながら乳首を引っ張り上げ、醜い顔に拍車をかけるような冷笑を、父は浮かべていた。

「ぅっ…………っ……」

 生理的な嫌悪感を覚えながらも、でき得る限り声は出さない。
 こんな男に感じているなどと思われるのが、甚だしく不愉快だからだ。
 しかし、父は朋美のこの反応に憤りを覚えたらしい。

「おい…………てめえ、反抗する気かおらぁ!!」

 更なる怒号を飛ばしながら、彼は朋美の身体を真正面に持ってくると――頬を思い切り張った。
 パァン、と甲高い音とともに、少女はリビングへ続く廊下の方へ仰向けに倒れこんだ。

「誰が育ててやってると思ってる!? この売女が!」

 罵りの言葉を発しつつ、床に寝転がり頬をおさえて涙目になっている朋美にずかずかと近づく。
 そんな父親を見据えながら、彼女は悟るように心内でつぶやいた。
 もう、何も考えるのはよそう……
 スカートをめくられ、足を開かされる感触をおぼえる。
 父は更に、なにやら猥雑な単語を連ねながら下着までも脱がし――秘所に刺激を与えた。

「――くはぁ!!」

 不意打ちのような形で、最も敏感な突起を舐め上げられたのだ。
 ちゅく、ちゅく、と続けて放たれる水音が朋美の耳に入るなり、感じたくはない悦楽まで彼女に襲い掛かってきた。

「……あぁん…………んぅ!! や、はン……」

 つい洩れ出てしまうあえぎ声。
 眼を閉じて口元に手を置き、もはや抵抗する気も起きなくなっていた。
 本能のままにむしゃぶりつくだけの舌技によがるなんて……
 劣情と羞恥に染まった表情を虚空に向けながら、彼女は執拗な攻めに対して必死に口をつぐんだ。
 だが残念なことに、少女の意思とは裏腹に快楽の波は留まるところを知らない。

「やっ! …………はぁ、あっ、あン……やぁあんっ!!」



 自らの陰部からぴちゃぴちゃ洩れる淫音。抑えるすべを失くした嬌声。
 嫌悪感が少しずつ気持ち良さに変わりつつあるのを知っていながら、自分にはどうすることもできない。

「はっ、ふははっ! いいか、いいのかおら!!」

 朋美が頬を赤らめながら可愛い顔を快楽に歪めるのを見て、醜男は濁った声で興奮を露にする。
 ――男の理性のたがが外れた。

「くく……さて、そろそろ入れるか……」

 彼の男根はすでに目一杯に反り返っている。

「…………」

 その剛直を虚ろな瞳に映す朋美は、一体何を思うのか。
 それが捻じ込まれるのを見届けないまま、彼女は意識を途絶え‘させた’……

 ―――


 朋美が恥辱の時を過ごした、四時間後。
 夏とあって、彼女は黄色いTシャツに青のショートパンツに着替えていた。
 夕食を終え、八時を回った時計を見ながら、勉強机の中から白い紙製の小袋を取り出す。
 そのまま中身を机にぶちまけると、出てきたのは無数の錠剤だった。
 ――抗うつ剤である。
 父は娘がそのようなものを摂取していることなど、つゆと知り得ていない。
 朋美が自分の意思で精神科に足を運び、診断を受けた上で薬を処方してもらっているのだ。

「…………」

 散乱するパキシルをうつろな眼で眺めていた朋美だったが――
 突如、美しい顔を醜く歪ませ、手近にあるペンを引っつかむと、自らの左手首を思い切り突き刺した。

「――あぁああ゛っ!! あぐうぅ…………」

 痛みに、整ったおもてを歪ませ、呻き声を発する少女。
 腕ごと机の上に突っ伏して、刺した箇所を見つめた。
 赤い血が、少しずつ、少しずつ腕をつたい、したたり落ちてゆく。
 ――朋美は、流れ出る紅い液体を見て、嗤っていた。ひどく暗鬱な、狂気じみた笑みだった。
 父に身体を弄ばれたあと、朋美は必ず自傷行為に走る。
 それが何を意味するのか。
 彼女にとって、この痛みと流れ出る血は生のあかし。
 同時に、怒りや不安、寂しさを紛らわすための行為でもあるのだ。



「…………秀一、くん……」

 会いたいよ――言葉をそこまでつむぐことは叶わなかった。
 理由は、分からない……

 ―――

 朝、八時十分ごろ。

「やっば!」

 槍田秀一は、時計を見るなり焦り始めた。この時間では、急がないと遅刻だ。
 文字通りの即行で着替え終えると、飛ぶように家を出た。
 夜更かしやオナニーの所為で万年寝不足の秀一だが、意外にも遅刻は少ない。
 彼にとっては学校は楽しく、更にはある目標があるためか、休むわけにはいかないという意志が働いているのかもしれない。
 次の電車には乗らなきゃ……
 意志を強く持ち、少年は早足で駅へと向かった。

 ―――

「ふぅ〜……」

 秀一はもう普通に歩いていた。
 正門の前に来た時点で55分。ギリで間に合った。
 欠席も遅刻も滅多にしないとはいえ、遅刻はしたくない。いや、彼にとってはだからこそと言うべきなのかもしれない。

「さーて……ん?」

 いつもの様に下駄箱に足を運ぶと、鈴森さんが靴を履き替えているところだった。
 これで、最初に会ったとき以来、二ヶ月ぶり二回目である。
 どうしたものかな……秀一は迷った。
 先日出したメールの所為で、なんとなく顔を合わせづらいのだ。
 ――こちらを振り向いた朋美と、眼が合った。

「あ……」



 大きな黒い瞳が驚きに見開かれ、優美な面差しが固まってしまった。
 ……かわいい。
 口に出そうになる言葉を飲み込み、同時に、胸が熱くなるのを感じる秀一。
 心臓が脈打つのが分かり、戸惑う。
 自分が持つ鈴森さんへの感情は、もう誤魔化しようのないところまできていたのに、なかなか受け入れられずにいた。

「お……おはよ、鈴森さん」
「……………………うん」
 ながい間を置いて、微かな返答がかえってくる。
 やはり、なんだか気まずい雰囲気が漂っていた。

「……ち、遅刻しちゃうからさっ、急ごう?!」

 言うやいなや、脱兎の如く駆け出す秀一。
 美しい少女を横切る時、口がパクパク動いていたような気がしたが、思い過ごしだということにしておく。
 少女は、少年とは対照的に慌てることはなく、至って落ち着いたように教室への道程を進み始めた。

 ―――

 昼休み。
 秀一は、いつも一緒に弁当を食う仲間の蟻屋望[ありや のぞむ]と福高伸幸[ふくたか のぶゆき]と共に昼食をとっていた。
 望は痩せていて、眼鏡をかけた一見インテリ風の容貌。
 伸幸は反対に肥えており、秀一とは比較にならない可愛そうな容姿の持ち主。
 ふたりの中間が秀一といった具合で、極めて分かりやすい三人組であった。

「――でよ、福高はどう思う? おらぁ(おれは)ミナはビッチっぺーからきれー(嫌い)なんだけどよ」
「えぇ? そうかな……あれでそうなら、ユズハはもっと――」
「いや、あらあ(あれは)真性ビッチだろぉ! っつーかビッチじゃねーのなんてユキたんとサヤたんしかいねぇだろぉ」
「え……僕はミナ好きなんだけど、シュウはどう思う?」

 返答に困った望は秀一にキラーパスした。
 が、その相手があらぬ方を見ていることに気付き、彼も思わずその方向に視線を送ってみた。
 男にしては大きな望の瞳に映ったのは、クラス一の美少女・鈴森朋美だった。
 独り物憂げな表情で、厚めの文庫本を読んでいる。

「どしたのシュウ? まさか彼女が……」
「槍田ぁっ! まさかリアルに目覚めたんじゃぁあるめぇなぁ!! おぉおれはみとめんぞっ」



 さっきまでの話はどこへやら、である。
 ふたりとも、真顔で鈴森さんを見つめる秀一が心配になったらしい。

「……別に、なんでもねえよ」

 素っ気無い、うわ言のような返事だった。
 どう考えてもあやしい。

「そういえば、最近よく鈴森さん見てるよね? 可愛いのは分かるけど、シュウはちっちゃい娘好きじゃなかったっけ?」
「俺もだっ! つか槍田っ。あら(ありゃ)どう見繕ってもビッチだぞっ! そんなのを見るんじゃないっ」

 二人の助言(?)にも、秀一の反応は乏しかった。
 ――秀一はというと、ぶっちゃけ二人に構っているヒマなどなかった。
 彼女に少し負い目を感じてしまっているのもあるが、それ以上に気になることがあったのだ。
 朋美は決まった時間になると、必ず教室を抜け出すのだ。
 いったいどこで何をしているのか。邪推かもしれないが、誰かにいじめられてるんじゃないか。
 そう思っていたら心配になったのだ。

「……!」

 朋美が、いきなり席を立った。ゆっくりと、僅かに不安定な歩き方で、教室を退いた。
 それを見届けると、秀一も席を立った。

「ぉ、おい! まさかあの女追うんじゃ――」
「『あの女』はやめてくれよ」

 色めきたちそうな伸幸を鋭く制し、続ける。

「せめて『鈴森さん』って呼んでくれ」

 伸幸は、もともと細目なのを更に細め、呆気に取られて秀一を見つめた。望も同感らしく、大きな瞳が一段と拡がっていた
 とても普段の彼が言うようなセリフではないからである。

「ヤボ用が出来ちまった。悪いけど、ついてこないでくれ」

 言い残すと、彼も早々に教室を出て行ってしまった。
 心ここにあらず、といった様相だったのはまちがいない。

「…………どうしちゃったんだろ、シュウ」
「おいおいおい! あいつがリアルに目覚めるなんて、認めたくねぇよぉ……」

 嘆く伸幸の表情には、何故か憫笑めいたものが張りつけられていた……



 ―――

 ストーキング。
 彼が行っている所業は、それ以外の何者でもない。
 美しい顔立ちに長い黒髪をなびかせ、抜群のプロポーションを有する少女――鈴森朋美を、秀一は追っていた。
 こんな時ではあるものの勿体ないなと感じたのは、彼女の歩き方だ。
 あまりよろしくない、安定感に欠ける歩み方なのである。
 モデル歩きしろとは言わないが、もう少しましな歩み方もあるだろうに。
 ――なんて推考しているうちに、目的地に辿り着いたらしい。女子トイレである。
 なんだ、トイレか。
 と一瞬思ったが、すぐに消えた。
 それなら、いつも全くの同時刻に赴く理由が見当たらない。思惟し過ぎかもしれないが。
 だが、彼女が女子トイレに入ると共に、間もなく彼は眼を剥くこととなる……

「やっときやがったかてめー!」

 やけにドスの効いた、女のものと思われる声が、女子トイレから聞こえてきたのだ。
 嫌な予感が当たってしまった。
 秀一は周囲を見回し、誰にも見られていないことを確認すると、恐る恐る女子トイレを覗き込んだ。

「おらっ、さっさとやれや!」
「淫乱豚なんだからな、しっかりやれよメス豚!」

 次々飛んでくる罵詈雑言に、秀一は怒りと不安に胸が締め付けられるほどの不快感をもよおした。
 自分でさえこうなのだから、朋美はもっと辛いに違いない。
 そう頭に巡らせながら、中を覗き――すぐにやめた。
 あれ……………………!!?
 幻を見せられた。
 そう思いたかった。
 だが、彼の願いは、聞こえ来る不穏な声とも音ともつかないものに、すぐにも裏切られることになった―― 
                                                  二話 おわり



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作者 6-548
2009年01月11日(日) 16:29:01 Modified by ID:QoBh7SNwMg




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