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おうきょのれい

ちょいとそこのあんた。
そう、今こっちを向いた二枚目のお兄さん。お前さんのことですよ。ちょいとあっしの話を聞いてくれませんか?
なにせまだ一度も人に言った事がねえもんでね、ちいーっとばかり長くなるかも知らんが、
そこまで時間はとりやしません。ちらりと見えるその立派な一物よりもずっと、ずうっと短い小咄でございやす。

おっ、下もいける口ですかい? そいつはいい。落ちで霜が降りることもなさそうですわ。
え、何を勝手に話を進めてると? あっしの話なんて聞く気は無い?
まあまあそう言いなさんな。かっかかっかと熱くならずに、これでも一杯ぐいっと飲んで気を静めてくだせえ。
こんなもん飲んじゃ余計に熱くなりやすかね? へっへっへ。

そういえば今から話す小咄も、こんな風に酌をしたことから始まるのでござい――


    おうきょのれい


浮世絵にも美人画やら春画やら色々と種類があるでしょう?
あっしはそういうもんを描いて食い扶持にしてるんですが、この通り手よりも口の方がよく動くんですわ。
なので、他人の画を安く買って高く売る、そういった副業もしている訳です。
ああ、だからと言って朝気付いたらおたくの家に見覚えの無い掛け軸がぶら下がってるなんて事はこれっぽちもありやせんから安心しなすってくだせえ。
あきんど商売はあくまで副業でありやす。そっちの稼ぎの方が大きかった事は気にせんでおきましょう。

その日のあっしは一段と気分が良かった。まんまるいお月様の下でね、ういーひっくとふらふらと覚束ない足取りで下宿先へと歩いていやした。
何故かってそれを話すには、おてんと様が顔を出してた頃まで戻らにゃなりませんな。
日差しがぎんぎんと強い昼過ぎでした。
口に立派な髭を生やした身なりの良い壮年の方があっしの所へすたすたやって来て、持っていた画の一枚を眺め始めたんでさ。

こっちも商売なもんでね、あちらさんが画を見定めてる間にあっしらもその人となりを見極める訳です。
あ、この人は財布の口が緩そうだとか、しっかりした目を持ってるからそうそう吹っ掛けられそうにねえな、てな具合でさ。
その髭丈夫は着ているもんもそうですが、背筋がぴんと伸びておりやした。それを見りゃこっちもぴんと来るもんです。
ははあ、この人は金を持ってるなと。
なになに、死んだじじいも背筋だけは物差しが一本入っているみてえにしゃんとしていたが、うちは見ての通りの貧乏だと?
折り目正しい人は由緒も正しいってね、まあそういった事が多いんでやんす。おじい様もきっと立派な方だったんですよ。

金持ちってえのは、目が確かでも裕福だからちょっとばかし高めに言ってもその値でぽんと払うような気概があるもんでさ。
こっちとしちゃあ願ってもないおいしい相手。何か買ってくれないかと首を伸ばして待っておりやした。

口元に蓄えた髭と同じように金もたんまり持っていたんでしょうかね、やがてその年配は自慢の髭を撫でながらこちらを一瞥してこう言ったんでやす。
これを戴けないか。値段はそちらの言い値で良いね、とな。

思わずあっしも顔のにやけが止まりませんで。洒落のせいでも、高い値で画が売れる事でもありません。
その髭紳士には悪いですが、もっと気の利いた話をする人もおりやしたし、絵に高値が付く事もそこまで喜ぶ程珍しいもんじゃあねえんです。
あっしがなんで上機嫌になったかっていうと、いくんちか時間をまた戻さにゃなりませんな。
売れた画は他の行商から買い取った画だったんですがね、他の絵師の画かというとそうではない。
かと言ってあっしの描いた画なのかというと、これまた事情が違うんでありやすが。

実はその画は幽霊画だったんでさ。頭がぱっくり裂けて血を垂らした女がうらめしやー、てえな具合の。
それ自体はとうの昔に仕入れたものなんですが、これがさっぱり売り手が付かない。
年季が入っていてねえ、とても巧く描けた良い品なんですがね、なにしろ幽霊なもんで逆に凄みが出て恐ろしく不気味な画でして。
家族連れがふらりと立ち寄れば、それを一目みた子供が泣き出して、
大の大人でさえ気味悪がって手に取ろうとも目を向けようともしないでそそくさとその場を出てしまう程でさ。
そのせいで他の画も売れなくなってきたもんだから、あっしもなんでこんな画を買ったのか頭を抱え始めた所です。
誰か知り合いの行商に押し付けようにもうまく行かないし、かといって燃やして処分するなんてのはもっての他。祟られたら大変でやんす。

なんとかせにゃあ、このままのたれ死んでしまうぞと無い知恵絞った結果、一つの名案を思いつきましてね、早速それに取り掛かりやした。
先に言ったように、まあこれがその後の明暗を分けたって訳なんでさ。
要は、あっしの売り方じゃあなくて、元の画がわりいのは分かってやしたから、それをちょちょいと変えてやりゃあいいでないかと。そう思ったんですな。
幸いあっしは絵描きですしね。そりゃあ腕は大した事ありゃせんですが、その幽霊画よりも悪くない。
失敗して下手な画になったらなったで、元の気味悪さよりはましだろうなんて気楽に考えとったんでさ。

まず岩絵の具をたんと使いましてね、血で真っ赤な顔に白粉をたっぷりと塗りたくってやりました。そりゃあもう豪快にたんまりと。
燃やすのは駄目でそれは良いってのはおかしい? なるほど、そりゃそうだ。
しかしその時のあっしにゃあそんな事これっぽっちも頭に無かったんだなあ。
元々出来のわりい頭ですから、一つこりゃいいやと思いついたらあんまり他の事には回らんようになってるんでありやしょう。

とにかくあっしは、どんどんと絵筆を走らせやした。
白粉なんて言葉使いやしたが本当にその通りで、絵を描くというよりかは年頃の娘っこに化粧してやるような気持ちです。
あれやこれやと施していく内に、なんだかこのうすっきみわりい女にも情がわいてきやしてね、それはそれは丁寧にやったもんです。
手は進まねえが、口は軽やかなもんで、赤い口紅をついーっと塗れば、おうお嬢さんなかなかべっぴんだねえ。
乱れた髪はあっしの腕じゃあどうしようもなかったんですが、そんな所も、たらりとしな垂れかかる黒髪がそそるじゃねえかあ。

なんて、一言一言、口説き落とす勢いで嘯きながら、これより気い張り詰めてやった事はねえんじゃねえかってくらい、丹念に。

上っていたお天道様もだいぶ下に来た頃でさ。
ようやく筆を置いてその女子を見てみるとまあ、なんということでしょう。
呪詛を吐き散らしていた幽霊の姿は、匠の手によって物静かそうな、とっても素敵な令嬢に変貌を遂げました。ってな具合でさ。
自分で言うのもなんですが、なかなかどうして美しい仕上がりでありやした。
見せろと言われてもその画はもうありゃあせんですがね、見事な変わりっぷりに和田んところのおアキさんも度肝を抜くにちげえねえ優麗な姿でしたよ。
自分の知らない人を出すんじゃねえって? ふひひ、すいやせん。

まぁ半分あっしが描いたようなもんですから、そんな画をどんな値がしても買うと言ってくださる方が現れた訳です。
何度も言っていやすが、あっしはそんな巧い絵描きでねえもんで、それが初めての出来事だったんでさ。もう嬉しいのなんのって。
その髭男爵は今は持ち合わせがねえってんで明日取りに来るという話で、その夜は祝い酒をやってたっつー訳です。
ふぅ。やっと話が追いつきやした。

一杯やらかした後、酔いも宵も良い加減。手に持った一升瓶を見ては酒の肴もなしに一生楽しめるなあ、などと馬鹿な事考えて一笑してやした。
寝床に帰ればそこは独り身の悲しい所。あっしの他にゃあ誰もいない、真っ暗な寝床がお出迎えって訳でさあ。
いつもはがらんとした空っぽの風景を見るたんびに、はあと一つ溜め息を付くんですがね。
その日はそんな事は気にならん位、代わりに酒臭いげっぷが出るってな具合に満ち足りた気持ちでさあ。
いやあ所帯を持った今じゃそんな事は気が狂っても起きやせん。既に狂ってのかもしれやせんがね。へっへっへ。

蝋燭に火を点けて部屋でもう一辺飲みなおそうと思った所、昼間の掛け軸が目に付きやした。
そうです、あっしがおめかしした美人でさあ。考えてみりゃあこうやって美味い酒が呑めるのもこのお嬢のお陰な訳で、
徳利を持ってきやしてね、掛け軸の前にお供えした訳です。ありがてえありがてえ、神さま仏さま紙美人さまでやんす。

瓶の口の一滴まで飲み干すと、なにせ腹がたっぷんたぷんと膨れるまで飲みやしたもんですから、ちょいと用を足しに厠へ行ったんです。
その前の日まではね、きいきいとうるさい床だと文句垂れていたんでやすが、
それすらもあっしの前途を祝ってるように聞こえてきてね、本当かなりのもんでした。
そんで水だけ垂らして部屋へ戻ろうと首をそっちへ向けたんですが、背筋にぞくぞくっと寒気が走りました。

え、また小便に行きたくなかったんだろって? んなあほな。あっしの膀胱はさっき空けた一升瓶の如く一滴残らず出し尽くしやした。
いやあそれもおかしいですね。悪寒がした時あっしは恥ずかしながらあまりの事に酔いも吹っ飛び、小便もちびっちまいやしたから。

薄暗い部屋、音も立てずにひっそりと、いつのまにか見知らぬ女がそこに座っておりました。

歯はがたがたと震えまして下を向けば膝もがくがくと揺れておりやす。酒が回って前後不覚という訳では決してございません。
きいきいと音を立てるぼろっちい床が何も音を立てねえっていったらもう思い浮かべるものは一つしかありやせん。
蝋燭も風でいつの間にか消えちまって、お月様も姿を隠れてる。墨汁をこぼしたみてえな視界の中で、青白い肌がやけに目立っておりやす。
どうやらあちらさんはあっしには気付いてないようで、このまま身体をくるりと翻してそのまま逃げちまおうと思ったんですが、
ふと掛け軸の事が頭に過ぎりやした。

その晩盛大に飲み散らかしたんで路銀はほとんど残っちゃいねえどころか、明日払うなんて調子の良い事言って周りの連中にも振舞っちまったんでさあ。
おてんと様が昇った後、部屋に戻っても掛け軸が無事である保証は一体どこにありましょう?
なんとか掛け軸だけでも持ってかんと首を括ることになっちめえぞと踏みとどまりやした。

臆病ですからね、幽霊は怖い。前に進むにゃあ相当の覚悟が必要でした。
前を行けば暗い部屋の中に幽霊がいる。後ろを行けばこの先の人生真っ暗だと、どちらも暗闇を歩くことにゃあ変わりねえ。
こんなでっぷりと膨らんだ腹を括れば口からぴゅうっと酒が吹き出ちまうだろうが首よりはましだろうって、やっとのことで決心がつきました。

一歩あちらさんへ踏み出しやした。そうすっとやっぱりこの木の床がきいっと甲高い音を立てる。
あちらは簪も挿さずに伸ばし放題の黒髪を揺らして、こちらに顔を上げました。
するとあっしも堪らなくなって、ひいっと女みてえな声を上げちまう。
その時のびびりようと言ったらね、このままお月様と一緒に雲隠れしちまうかって心境でさあ。

しかしあっしは逃げやせんでした。いやいや歌舞伎や絵巻に出てくるような勇敢さは持ち合わせておりません。
ただの小便ちびりの中年でやんす。
いくら小心者といえど、さっきの悲鳴はさすがに大きすぎるんでねえかと思ったら、
え? お前はこんな所で見栄を張るなって?
いやいやその時張っていたのは気だけでやんす。

えっと、どこまで話しましたっけ? ああそうだそうだ。

声がやけに大きいと訝しんで目を細めると、肩を震わせるあちらさんの姿が見えるじゃありませんか。
悲鳴を上げたのはこっちだけじゃあ無かったんでさあ。
なんでえ、怖がりの幽霊なんて絵の描けねえ絵描きみてえじゃねえかと親近感が湧いてきまして。

暗がりに腹を括って飛び込めば、吹き出されたのは焼酎ではなく笑い声。ってな具合でやんす。


どっとはらい。

……それで腹を抱えて一件落着、めでたしめでたしって訳にゃあいきません。

ひとしきり笑った後、改めてあちらさんを見てみる。暗がりではっきりとは分からないが、その姿を見た時思わず目をそらしちまいました。

目を向けられない、と言っても件の幽霊画とは訳がちげえ。
はっと息を飲むような――あれだけ酒を飲んだ後にお前はまだ飲むのかってえ茶々はやめてくだせえ――
美人というのはこういう人のことを言うんでしょうね、雪のように白く澄んだ肌。どんな夜よりも黒くて長い髪。
絶世の美女。それでいてどこか懐かしいような親しみがある。

自分が唾を飲み込む音が聞こえちまうくらい静かな夜に、盛大な夢を見ました。夢としか思えなかったし、こんな話は嘘っぱちにしか聞こえんでしょう。
頭ん中を覗き見されたのかと疑う程の自分好みの絶世の美女が、小汚い宿の一角、そこにちょこんと座ってる。
呆けている内にあちらさんがもごもごと口を動かしました。
と思ったら身に纏っていた上等な着物をはらりと脱ぎ始めるじゃあありませんか。

「……おう……きょ……の……れい……です」
あちらさんの声がか細いからか、こちらが興奮しているからか、
そん時あっしの耳で聞き取れたのはそれだけでして、何を言ってるのか分からない。
自分で言うからには霊であるんでしょうが、おうきょとは、はてさて。地名か人名かしらんと訝るも無知ゆえに分からぬ。
しかしねえ、花街のどんな女より華のある娘っこの裸が目の前でこてんと布団の上に転がれば、それもしょうがないことですわ。
声とおんなじように控えめな胸が二つ、ほっそりとした肢体についておりやして、
肉も付いてないのに部屋一杯に広がるような色気を、そりゃもうぷんぷんと出されちゃあ、こちらの鼻息もふんふん出るってもんでさあ。

黒髪から覗かせる綺麗な顔は、
あちらさんは口紅をしているようでぷっくりと柔らかそうな唇には白い肌に映えるだろうこれまた綺麗な赤で染まっていたんだがあ、
そいつと同じくらい頬も色づいていてね、恥ずかしそうに眉をへの字にしてこっちを見ていやした。
肩が微妙に震えているのは、安宿に吹き抜ける夜風の寒さだけじゃあどうにも無いようで、その姿はどう穿った見方をしても遊女にゃあ見えねえ。
こっちは何十何百ってえ人を相手に商売してきてますからね、眼には自信があった。
絵描きなのに、口やら眼やらが良くても困ったものですが、とにかくこちらの娘っこは美人局ではなさそうだ。

それにねえ、別にこの続きを見れるのなら夢でも狐の仕業でも別にいいかという気分に不思議となっておったのです。

育ちの良さそうなお嬢さんが、茹でた蛸みてえに真っ赤になりながらもここまでしてくれてるのに何もしないってのは逆に失礼。
据え膳食わぬは絵師の恥ってえ訳でね、はだけた肌に手をすっと伸ばしやした。

上質の紙でもここまで白くて粗のないものをあっしは触ったことがありやせん。冬の雪のような肢体は、蒸し暑い夏の夜よりも熱を帯びておりました。
小振りな乳房に手を這わせると、びくんと顎が上下する。
気持ちいいのかと訊ねてみると、はしたないと思われるのが嫌だったんでしょうかね、口をぎゅっとつぐんで顔を左右にふるふると振っている。
こういう娘っこには、ついつい意地悪をしたくなってしまうもんですよねえ?
そうけえ、手を乗せるだけでそんなに気持ちよかったのかあ、こりゃあよっぽどの好き者なのかもしらんなあと、
独り言のように呟くと、手で顔を覆い隠してしまいました。その夜のお月様のようにあちらさんの顔はすっぽり隠れて全く見えやせん。

あっしはそういった性癖の持ち主じゃあねえもんで、いやあ本当に違うんですよ、いじめるのはここいらでやめにして、
あっしの手の中に収められたままのそれをいじる事にしました。
ふにょふにょと柔らかい揉み心地はさしずめ大福といった所でしょうか。それでいて搗きたての餅のように手に吸い付いて離れない。
ところで、自分がそうとは思ってえねえのにそうなってしまった、直そうと思っているんだが一向に直らねえ、ってなこたあ、ありませんかね?
あっしですか? あっしゃあこの口ですかね、閉じよう閉じようって手で塞いでいてもいつの間にか開いちまいますからね。
黒髪を垂らしたあちらさんもそういった、人の力じゃあどうにもなんねえもんを持っておられてね、
潤んだ瞳、ぎゅっと噛んで薄桃どころか白くなっている唇、借りてきた猫のようにおとなしく縮こまった肩、
どこを見渡しても私をいじめて下さいと言っているように見えるんでさあ。本人は米粒ほどにも口をきかねえのに、不思議なもんです。

そんな風に否定しちゃあいるが胸は正直だねえ、もっと触ってほしいってこっちの手にひっ付いてくるぞと罵ってみる。
あちらさんがあの調子なもんで、ちょっと前にいじめんのはよそうと決めたばっかなのにもう破っちまいました。
あちらの表情は分からないが、耳や首が真っ赤に色づいていくのが見てとれました。
そりゃあもうはっきりと変わりましてね、はて、もう秋が来たのかと頭を傾げたくれえです。

しかしそりゃあ気のせいでいくら触っていても飽きはまったく訪れません。厚みはねえのにふかふかと心地よい体躯をしっかりと指で堪能していきます。
あちらの身体は相当に繊細なようで、触った場所にゃあ薄く手の跡が残るんですわ。それが面白くって、ぺたぺたといたる所に手をつけました。
それは初雪の、まだ誰も踏み入れていない白絨毯に足跡をつける楽しさにも似ていました。
時が過ぎて昼になる頃にはきっと大勢の人がそこを通って茶色い泥道になっているんだろうが、
そうなる前に自分が初めて歩いたんだってえ印をそこかしこに残しておきたかったんでさあ。

しっかし、あっしばかり愉しんであちらはそうでないじゃあ具合が悪い。
この通り顔は隠れちまってるし、喘ぎ声一つだしやしない。しゅっと肉の付いていないきれいな顎もあれっきり上下しない。
まいった、これじゃああちらさんが悦んでいるかなんて分からんぞ。
乳房を餅をこねる様にいじりながら困っていると何やら硬いくりくりとした感触が指に伝わってきました。
これは何ぞやと指先で転がしてみると、あちらのすらりと伸びた足がぴんと棒のように固まりました。
これは只事ではないと思わず手を引っ込める。暗闇でもその色合いの良さが分かる桃色の小山がぴんと二つ反り立っていました。
美味しそうなその実を口に含む。するとあちらのくびれた腰が釣り上げられた魚のように大きく跳ねました。
昼は淑女で夜は娼婦ってかあ。しかし娼婦でもこんな良い反応はせんだろう。
などと思っていると、口に出ちまったのか、あちらさんの黒髪が左右に宙を舞っておりやした。

ひととおり撫で回してみれば、どこを見渡しても白い所なんてありゃあしなくなっておりやした。
と言いましても、雪解けのぬかるんだ泥道が出来た訳じゃあありません。
紅葉山のように赤く火照った身体。乳房の上の桜咲く二つの小山。
あちらさんは相も変わらずその見目麗しい顔すら見せちゃあくれませんが、
盛り上がっているのはあなただけじゃありませんってえ口にせずとも態度で教えてくれています。

はやる気持ちを落ち着かせながら、ふんどしに手を掛ける。すると憤怒した一物が外に出ます。
憤怒てえのは言葉のあやで、そんだけ興奮していたっつうことでさあ。
下の頭は怒っているのに、ほんまもんの頭の方は絶世の美女を前にして狂喜乱舞しておるっちゅうのも変な気がしますな。
口吸いもまだと言われてもなんら不思議じゃねえくれえにうぶなあちらさんの反応が気になる所ですがあ、
何も見ぬこと見猿の如し、うんともすんとも言わぬ。

肉はついていないが、痩けてもいない、美しい頬をナニで叩いてみる。諸行無常の響きはねえが、ぺちぺちと瑞々しい音がなりました。
何が、ってナニがなんですが、自分のほっぺたに当てられているのか気になったのか、目を覆っていた細い指がのそのそと開いていきやす。
指と指の間からでもその形の良さが伝わってくるつぶらな瞳がその正体を捉えると、ぱっとまた指を閉じてしまいました。
けれども、結構な興味がおありのようで、頬に当てていましたから、それはちょうど顔の横にあったわけなんですが、首を回して真正面へと持ってきました。
微々たるもんですが、開いたり閉じたり、手がもごもごと動いている。

気になるのなら手をどかして見たらいいのでないかとこちらが提案する。
当然のことながら、返事は来やせん。
腕ずくでとっぱらっちまえば一番手っ取り早かったんでしょうが、その時はどうしてかそんな考えはこれっぽちも頭にありやしませんで、
いや無理にとは言わんが、嫌なら別に構わん、といった風な言葉を取繕うみたいに添えましてね、
字面から見んとなかなかぶっきらぼうですが、あっしは紳士ですからね、絵を売る時に出すいかにも媚びへつらっている調子で言っとりましたよ。
じいいいと、けらの鳴き声が聞こえてきました。
夜の間中ずっと鳴き声が響いているから、その日も、もうずっと前から鳴いていたんでしょうね、
そんな事にも気づかねえ位に気をとられていたのかと驚きやした。

しかし、けらは本当にうるさい。
蚊に刺されみたいなもんで一旦気づいちまうと無視するこたあ出来んようになってしまう。
じいい、じいいとずっと響かせているその声の主に、よくもまあ飽きもせずに鳴き続けるものだと、
呆れが感心に変わって、どれ位の時が経った頃でしょうか。

障子の向こうの外の景色を、ぼうっと眺めていた両の目を座敷に戻すと、久しぶりに顔をお出しになられたあちらさんがおりました。

先程の愛撫やら言葉責めやらで、羞恥や快感という染料が綯い交ぜになってあちらさんの、
肉も付いていないのに不思議とぽってりとした、こちらの欲情をそそる頬を鮮やかな赤で染め上げておりやす。
熱に浮かされたような、陶酔した表情であっしの肉棒に釘付けの黒髪美人に、
これからあなたの中に入るものだ、しっかりと挨拶をしときなせえと一言声を掛ける。

するとあちらさんはよっぽどそちらの方面の知識がねえのか、くいっと頭を斜めに傾げてこちらを見上げるので、
これをそそへと入れても痛くないように口に含んで舐めるのだと説明すると、お天道様の下じゃあやらねえようなはしたない事だというのは分かるらしく、
赤い顔がぼんっと更に赤みを増して、ふるふると駄々をこねる童のように首を降る。
けれど、押しには弱いのか、こちらが退かないのを察すると目をぎゅっとつむり、意を決し小さな口をめいっぱい開けて顔を股座へと近づけやした。

目を瞑っていたせいで顔は見当違いの軌道を描き、鼻の穴に男根が擦り付けられる結果となってしまいやす。
そうか、そんなに牡の臭いが好きか、そう嘲るように呟くと滅相も無いというような感じでぱっと目を開き顔を肉棒から離しました。
あちらさんの筋の通った鼻についた我慢汁が、尿道口とあちらさんとを繋ぐ橋を掛けて、それが月明かりに照らされて、やけにいやらしく輝いておりました。

どうせ一夜限りの夢なのだから、自分の不細工な一物を咥えてもらうつもりだったのですが、それを見たらこちらも我慢の限界が来ちまいましてねえ、
飢えた獣のような乱暴な手付きであちらさんの恥部をまさぐりました。
するとどうだろう、もう何もする必要がねえ位にくちゅくちゅと濡れそぼっておるではありゃせんか。
その水気を帯びた音ときたら、あっしが厠で小を足した時よりも大きいほどでさあ。
人の身体は、まああちらさんが何者かはひとまず置いておいて、ここまで水分に満ちているのかと、ただ単純に感心して思わずその旨を口から漏れると、
悪意がないのがわかる分、あちらさんにはよっぽど耐え切れない言葉だったのでしょうね、
自分はそんなはしたない女ではないと主張するみてえに、布団を使ってごしごしと自分のそそを拭き始めました。

それが新たな刺激になってしまうのか、何度拭いても愛液がとめどなく溢れてくるものだから、布団が栗の花の匂いを漂わせる液体でしなしなと、
洗濯をして乾かさなかったもののようにべちゃりとたっぷりと水を含んでしまいやした。
あちらさんは目を伏せて長い睫が夜だというのに影を作り、しくしくと泣き出してしまったではありませんか。
何と言っていいか分からず、肩を出来る限り優しく叩いて慰めて、ようやくあちらさんの涙も枯れると、ようやく男根を挿し入れることとなりやした。

なにせあちらさんは妙齢の、美しい肢体を惜しげもなく晒している訳でさあ、
おおよしよしと宥めている間もつんと屹立している乳首やぽこんとせり出たそそやもじゃもじゃと絡まり波打つ陰毛が見えるのです。
そりゃあ男なら萎えずにおるのもしょうがあるまいて。片方の手が頭を撫でておる間にもう片方が乳房をむにゅむにゅと揉み解すのもこれまたしょうがあるまい。

あちらのそそに突き入れてみると、使い込んでおらんのか、やはり狭くてきつい。しかし進まなんだという訳ではない。
涙は枯れたが下は今もなお大洪水。潤滑液が溢れておるものだから、こちらにみっちりと絡みつく肉襞もその役目を果たせなんだ。

押し入れる度にこちらに抱きついていたあちらさんは、その腕の力を強め、悩ましげな吐息を首筋に吹きかける。
根元まで入ると、動かなくなったことを不思議に思ったのか、どうされたのか、というような眼差しをこちらに向けてきたので、
全部入ったのだと囁いてやると、なにやら微笑みをこちらに浮かべました。
うんともすんとも喋らないあちらさんのことだからどういった理由で笑ったのかは今も分かりません。
しかし、その顔が幸せそうだったのは誰が見ようと明らかだったと、あっしは思います。

あちらさんは出来る限り声をださまいときゅっとその可愛らしい口を噤んでいるものの、
こちらの肉棒があちらさんを一突きする度、ああっと一声、なんとも美しい嬌声が響きます。
両の乳首が摘んでくれと言わんばかりに存在を主張しておるので、ぎゅうと摘んでやると濁音交じりの悲鳴にも似た声が奏でられる。
下の口がひくひくと蠢くので苦痛でないのだけは確かでありやした。

お前さんは全く喋らんのに、下の口はぱくぱくとお喋りだなあと気持ちよさから頬を釣り上げながら喋ると、
あちらさんは、やはり頭をぶんぶんと左右にするのですが、そそがその通りだと蠕動しているので全く意味がありやせんでした。
じゅぼじゅぼと音を立て、穴と棒の隙間から漏れたどちらとも分からない液体が泡になっておりますが、そろそろあっしにも限界が近づきやす。
すると自然と腰の振りも速くなり、あちらさんもよほど耐えられなかったのか、ようやく重い口を開きやした。
「かん……にん……か……にん」
またも涙目になりながら髪を乱し、堪忍と呟き続けるあちらさんを尻目に突き入れ続け、やがて果てました。
びくんびくんと脈を打つ肉棒を抜くと、あちらさんのそそから濁った白い液体がたらりとだらしなく垂れました。
そんな様子を見ている内に視界が白んでいき、知らん内に眠ってしもうたという訳です。


話はそれで終わりやせん。申し訳ない、もう少しだけ続くんでさあ。
起きてみると、夜も白み、すっかりお天道様が上っておりやす。これだけ明るいのに、あの無口な雪のように白い肌をもった美女はまったく見つからん。
名前も知らないので、おおい、おおいと馬鹿みたいに声を出してみますが、うるさいぞと他の客に言われるだけでありやした。
怒鳴られた時、ふとあの晩のけらのことを思い出しやした。

土の中に潜って、日の光を見ることの無いけらは、何も見えない闇の中、必死で叫び続けているのです。
自分はここにいるということを。誰かがそれに気づいてくれることを信じて喧しく叫び続けているのです。
けらのことを煩わしいと思ったのは、きっと無意識のうちに同属嫌悪を抱いていたのでしょう。
よくもあれだけあちらさんにいやらしく言葉を投げ掛けたのも、何も喋らないあちらさんに自分という存在を知らせたかったからに違いありやせん。

何も反応が返ってこないというのは、いないのと変わりありやせん。
あっしは何か証拠が欲しかったのです。あの綺麗な人がここにいるという証拠が。あの夢のような体験が事実であるという証拠が。

自分以外に人気のない貸家の部屋には昨晩飲み散らかした酒と、裏返しになったあの美人画があるだけでした。
昨日の約束を思い出し、あっしは絵を丁寧に箱にしまうと、髭紳士の元へ向かうことにしました。

髭紳士に約束の掛け軸を差し出すと、一目、これは受け取れないと断られました。
裏返しのまま、表を見ないで持ってきたので画を間違えて持ってきてしまったのかもしれない。あるいは昨日酔った勢いで酒を引っ掛けてしまったとか?
色々と理由を考えてみやしたが、見たほうが早いってんですぐさまそれを見てみると成る程その原因が分かりやした。

その画は確かに昨日の美人画でしたが、
掛け軸の向こうの美人は着物を着崩し、太股から赤と白の混じった液体をつーっと垂らし、白い肌を羞恥で真っ赤にして立っておりやした。

あっしは昨日の晩の出来事を正直に話すと、髭紳士は大笑いし、今度またあなたの画をくれればいいと代金だけ寄越して颯爽と去っていかれやす。
こんなこともあるのか。
そうしみじみ思いながら、あっしは掛け軸を、皺がつかないように、抱きしめました。


あの晩の幽霊が自分の理想の美人なのも、妙に親しみを感じたのも当たり前の話でした。だってそれはあっしが描いたんですもの。
その後何度かあちらさんは画から出てはあっしと夜を共にして、「おうきょのれい」という言葉の意味も分かりました。
あの晩の出来事は、幽霊画として世に生まれ、老若男女問わず誰からにも虐げられる存在だったあちらさんを、
言い値で買い取る人が出る位の美人に仕立て上げてくれたあっしへのお礼だったそうです。
なんでまぐわう事を礼にしようかと思ったのか、自分の持っているものなんてそれ位しかあらん、
それに誇れるものなどあなた、つまりあっしですが、が褒め称えてくれたこの身体しかなかったのです、などと、ぽつりぽつりと口ごもりながら語ってくれました。
「今日の礼です」そう言おうとしたものの、なにせ初めて喋ったものだから、うまく言葉にならず、
「今日」が「おう」になり、言いなおしたものの間違えないように注意しながら口に出したので途切れ途切れになってしまったと。そういう訳なんでさあ。
ひょんなことから家庭を手に入れたあっしはその後、心機一転、あの晩のあちらさんの言に因んだ名に変え、画に没頭しました。
描いて描いて描いて描いて。そして気づけば画描きはあっしのれっきとした本業となっておりやした。今では何人も弟子を抱える一大一派でさあ。
今はその画はありやせん。
というのも、はるか昔に生まれた幽霊画は誰の手に取られることも無く百年を過ぎて付喪神となり、
その後ある絵師――まあ、あっしのことなんですがね――によって美人画となり、今では子沢山の幸せ家族画に姿を変えておるからでさあ。



何故こんな素っ頓狂な話を恥ずかしげもなくする気になったのかというと、これまた話が長くなりますがこの際ですから説明させてくだせえ。

ようやく立身出世したあっしは、あの日大金をくだすった髭紳士に恩返しをする為にあの不思議な晩の出来事が起こった町へと戻ってきました。
思えばあの紳士から戴いた大金が無ければ酒場や何やらの借金で野垂れ死んでいた事でしょう。
しかし残念ながら、あの人の好い髭紳士はその性格のせいで騙されて一文無しとなり老衰で死んでしまったと言うじゃありゃせんか。
豪邸を売り払われたご親族は、その輝かしい過去はどこへやら、今も質素な生活をしているのだという。
あっしは思いました。今、この時こそが、あの時のご恩を返す時なのだと。

今の今まで飽きもせずによくあっしの話を聞いてくれました。
話を聞いて下さっている時のあなたの背筋は、あなたの祖父上と同じようにぴんと竹が入ったように真っ直ぐでしたよ。
これがこの日の為に書き溜めた画の山です。これが少しでもあなた方の生活の足しになってくれればと思いやす。
ああ、この円山応挙という印は、紛い物ではありやせんのでご安心を。

これであっしの礼は、しまいでございやす。


(了)

作者 ◆95TgxWTkTQ
2008年01月20日(日) 11:41:46 Modified by n18_168




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