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ポトフのできあがり


 ピンポン。
<ラグ>
 ガチャ。
「……」
「お、おう。話って、何だ?」
「……あ、」
「?」
「…いらっしゃい」
 ガクッ。
「とりあえず、上がって良いのか?」
 ……こくり。

「……もうすぐ、ポトフ…出来る」
(この時期にポトフかぁ、ちょっと遅れてる気がしないでもない)
「で、俺が呼ばれた理由なんだけど」
「…ポトフは、好き?」
(話が進んでないのね)
「ああ、好きだよ」
 ……ぽぅっ。
(目を見て言ったのに、そっぽ向いちまった)
「でさ、良い?」
「…あ……お風呂も、入る?」
(何で自宅の風呂に誘うんだよ…)

「川根さん、俺も手伝おうか」
「……?」
「?」
「…手伝うの?」
 ずるっ。
(――反応が遅くて、ちょっとイライラする。けど、態度に出しちゃダメだな。絶対傷つく)
「はい。じゃ、お皿並べるから」
「……お皿は、ここ」
(分かってる分かってる)
「……」
(垂れ目の彼女が、台所でエプロン姿でお玉を片手にぼうっとしている様子は、何だかほのぼのする)
「川根さん?」
「……?」
「テーブルセッティングは完了したけど」

「あ、ポトフ、そろそろ良いんじゃないの?」
「……あ…そろそろ、良さそう」
(言わなきゃいつまでも突っ立ってたんだろうな)
「どれどれ――う熱ちっ!」
「……」
(思わず手を引っ込めた俺を背に、彼女は素手で両手鍋の取っ手を掴んだ)
「おい、大丈夫か?」
「……うーん…よい、しょ」
(テーブルの真ん中の、鍋敷の上に置く)
「……あ、」
「ん?」
「……熱い」
「だから言わんこっちゃない!」

(とりあえず流水で冷やす)
「しかし、不注意以前の問題だろこれ。鈍すぎる」
「……っ!」
「あっ! ――悪い、ごめん」
「……っ、……くすん」
(ああ〜俺の馬鹿! でも、こんな調子じゃ普段の生活なんて生傷絶えないだろうに)
「……う、あぁ…」
「俺が悪かった。だってほら、こんな綺麗な手してんのに、もし火傷でもしたら台無しだろ」
 どん!
(彼女はいきなり俺を突き飛ばすと、リビングを飛び出して行った)
「ちょっと、待て!」

 ピシャ!
(洗面所の先の風呂場に入って、締め切られた)
「川根さん!」
 ぷしゅああ―――――。
「へ?」
(何でシャワー? 服着たままで?)
「……あぁ……あぁぁー」
(そして声を上げて泣き出した。どうにも理解に困る人だ)
「あぁぁぁー」
(びちゃびちゃ濡れる音が、止まらない)
「――あーもうっ!」
 ガラッ!
(躊躇うより先に中に入って、シャワーを止めた)
「川根さん、まずは落ち着いて」
「あぁぁぁぁー」

(何て、弱くて脆い泣き方なんだろうと思った)
(赤ん坊は周囲の子が泣いていると、つられて泣き出すとよく言う)
(俺も、昔から何だかそうだ。近所の子どもの泣き声が聞こえると、こう、心の底からやるせなくなる)
(差し出がましいかもしれない。だけど、目の前でこうも無力に泣かれると、俺は、自分の無力さも浮き彫りにされるようで、それが嫌で、何とかしたい)
(軽く抱き締める)
(ポンポン、と背中を叩いて慰める)
(すると彼女は、俺の体を支えに受け入れて、胸に顔を埋めて、泣いた)
(篭った泣き声。こっちの服までじんわりと濡れてくる)
(不思議と、気持ちが透く。些細なことで大袈裟に泣きやがってとも思うが、愛しくさえ感じる)
(泣き止むまで、十分)

「……くすん、くすん」
「――悪かった。本当に、ごめん」
(鈍いのはもう少し改善させてほしいのが本音だけど)
「……」
(泣き止んでも、俺から離れようとしない)
「川根さん? ポトフ、温め直さないと」
「……八尾、くん」
「何?」
「……嫌いに、ならないで」
(彼女は消え入るような声で、呟いた――必死に俺の洋服を、捕まえたままで)
「嫌わないから、安心して」
「……」
「な?」
 ……こくり。

(彼女は泣き疲れたのか、大人しい)
「川根さんが着替えるまで、俺は外で待つよ」
「……」
(風呂場から出ようとする――)
 がしっ!
「川根さん?」
 イヤイヤ。
「びしょ濡れのままじゃ、風邪引くだろ」
(洋服がべったり貼り付いている。さぞ気持ち悪かろう)
「……」
(何かを懇願するような目。顔をほんのり赤くして、俺を見上げる)
「ここに居なきゃ、ダメなのか?」
 …こくり。

(モーションを起こせず膠着状態)
(彼女はただ目を瞑って、俺に体を預けている)
(さっきの妙にドキッとくるような表情といい、一体何のつもりだ?)
(一旦退散して、立て直したい。調子狂う)
「あのー…川根さん」
「……?」
「このままずっと、こうしているつもり?」
 ……こくり。
(ダメだ、鈍いどころかこれじゃ思考停止。どんな反応されるか恐いけど、無理に離れるしかない)
「もう、良いだろ?」
「……やだ…八尾、くん」
「バスタオルで体吹いて、着替えて、そしてポトフ食べよう」
「……っ!」

(強情にも、俺を離してくれない)
「言いたいことがあるなら、言葉にしてくれないと分からない」
「……っ!」
「川根さん。な? 俺を困らせたくないんだったら、離れて」
「……っ!!」
「川根さん!」
「……っ、……わた、し…私、八尾、くん…あの…」
(乾いたというか、震えているというか、変な語調)
「聞いてる。じゃあ最後まで聞くから、ゆっくりで良いから、言葉にしてくれ」
「……本当、は、用事…なんて、なかった。でも、八尾くん、と…私、一緒にいたら、凄く、安心、するの。ずっと、いつでも、安心したいから…でも、それは、八尾くんには、多分……だ、だから、でも、嫌だから、せめて、嘘ついてでも、一緒に、いられるような…私……っ!」
「……」
「……ごめんなさい」

(それから彼女はずっと、”ごめんなさい”を繰り返した)
「――落ち着いて。川根さんが悪いことをした訳じゃない」
「でも……八尾、くん……うっ…」
(彼女が潰れそうな、壊れそうな心の中から、助けを求めている)
「川根さん」
「でも…きっと、のろまな私のことは……っ! 本当は……うぅっ! ……キライカモ、ッテ――!」
 がたん!
(彼女は地面に膝を突いた。自らを抱き締めて、項垂れて震えている)
(張り裂けそうになった)
(被害妄想かもしれない)
(だが鈍いの一言が、後ろめたい思いを引きずっていた彼女を、追い詰めた)
「……」
(はらはらと、彼女は声すら出せずに涙を溢した)

「嫌わないよ」
「じゃあっ! どうしてぇ、…行くのっ? ……一緒にいてぇ、…くれないと、私ぃ、独りぼっち…だからぁ…っ」
「立てる? 体、触っても良いか?」
「……」
「なら、俺も座る」
(そして、抱き締める。力いっぱいに、もう一度彼女を安心させてやる)
「川根さんは、こんなに可愛いだろ? 頼りないけど、細くて、綺麗で、良い匂いがして――それはお世辞でも、愛想で言ってる訳でもないよ」
「……ごめん、なさい」
「寂しくても独りだなんて、言わないこと。俺が絶対に力になるから」
「……嫌わない?」
「俺は川根さんのこと、好きだし、これからももっと、好きになりたい」
「…!! ……嘘」
「本当。嫌いじゃなくて、好き」
「……ぁ」
 ふっ――。

(彼女は何かの糸が切れたように、意識を失った)
(倒れかけた体を、俺の方に抱え直す)
(困った人だ。本当に、どうしようもないくらいに困った人)
(そんな彼女を、俺はずっと好きだった。こうして欠点もあるけど、そういう部分もひっくるめて、可愛い人)
(悲愴なくらいに一途な思慕を、俺は上手く気づいてやれなかった。鈍かったのは俺の方だった)
(濡れた髪を、二度三度撫でる)
(溜息)
(情緒不安定な彼女を、上手く支えてやれるようになりたい)
(素っ気無く逃げ出そうとしたせいで、拍車をかけた)
(俺の馬鹿)

<長い、長いラグ>
「……ぅ」
「川根さん?」
「……?」
(目が、ゆっくり時間をかけて開いていく)
「……八尾、くん…?」
「良かった。いきなり気絶するもんだから、どうして良いか…」
「……っ!」
(彼女は俺の背中まで、きつく腕を回してきた)
「……ごめん…なさい」
「許すよ。だから、川根さんのこと、分かってやれなかった俺のことも、許して、な」
「……好き」
「?」
「……恐くて、言えなかったけど、八尾くん…大好き」

(見つめ合う)
 ……ぽぉー。
「なぁ」
「……」
「もしもし?」
「……あっ、え?」
(よく停止する子だ。まぁ、良いや)
「一つ、確かなことを言う。俺は川根さんに遠慮してた」
「……はい」
「だから、これからはもっと単純に接して、そして優しくする。川根さんがそれで良いなら、の話だけど」
「……っ」
(零れ落ちるような笑顔)
「よし。じゃもう一度、いらっしゃい」

(愛しい人を、ぎゅっと抱き締めた)
「そして大事なことだけでも、なるべく主張すること。声でなくても、態度でも筆談でも良い」
「……」
「もう一度言うけど、川根さんは独りじゃない」
「……う…ん」
(これで、良いことにしよう。何か、とても温かい)
「水浸しだけどどうする? 判断は任せた」
(すると彼女は、じっと黙って、俯いて、ブラウスのボタンを外し始めた)
「俺は――」
 ……きゅっ。
(手首を掴まれた)
「……一緒に、お風呂、入りたい」

(彼女の誘い、もといお願いを聞くことにした)
(背中合わせに洋服を脱ぎ、タオルを貰って先に風呂場に入る)
(体を流して、湯船に浸かる。壁の方を向いたまま、声をかける)
「大丈夫だ」
 ……がらり。
(彼女が入ってきた)
(緊張、そして妙な親近感)
(平静を保てと自分に言い聞かせながら、その時を待つ)
「……」
(お湯を掬い、体を流す)
(洗面器が少しだけ背中に当たり、滴る水音が聞こえすぎるほどによく聞こえる)

 ……ちゃぷ。
(小さな湯船に二人)
(彼女の前の感触が、背中に密着する)
(首に顔が当たって、胸元のバスタオルと素肌の境目まで、分かる)
「――今更だが、どうしてここで泣いたんだ?」
「……」
(しばらく考えたかと思うと、背中に指で、文字を書き始めた)
(くすぐったい)
『せんめんき つかいたかった』
「なるほど。水を張って、ね」
(泣きたいけど、ぐっと気持ちを抑えたい時、声を出さないようにしたい時、そうするのかな)
「で、間違ってシャワーの方を捻ったのか」
『うん』

『あの』
「何?」
『こっちむいて いいよ?』
(そうか、良いのか)
「…川根、さん」
(体を回転させると、彼女の真っ赤な顔が、俺を見つめてきた)
(俺は座高から見える小さな谷間に、少し目が行く)
(いけない。自制しないと)
「……」
(ただひたすら、見つめ合う)
(お風呂が、ずいぶん熱く感じられる)
「…川根さんの、したいようにして。俺がそうしたら多分、歯止めが利かなくなると思うから」
「……したい、ように?」
(頷くと、彼女はしばらく考えて、行動に移した)
 ……ぎゅっ。

(下手なことをすれば、体と頭丸ごと逆上せあがっていただろう)
(湯船の中で要望に応え、彼女と抱き締め合った)
(…少しだけ腰が引けたものの、これは内緒)
(柔らかくて、落ち着く)
(ずっと昔からいた姉か妹のような、感覚も与えてくれる)
(likeとlove、どちらも心の中にある)
「……はふ…」
(肩に乗った彼女の顔が、息を漏らした)
(安堵と共に、その腕の力が抜けていく)
「ずっとこうしているのも、悪くないかもな」
「……うん……好き」

(そのまま何もなく、時間は過ぎた)
「……上がるね」
「おう」
(彼女はそう言って先に出ると、バスタオルを外した――ところで、慌てて俺は背を向けた)
(結んだ髪の下、綺麗なうなじに開けた背中から、腰に至る線が、一瞬見えた)
(悶々としている間に、彼女は体を拭き、そして風呂場を出た)
「ふう…」
(俺は何でこう、単純なんだろうな)
(少し落ち着こう。深呼吸深呼吸)
「すー…、はー…」
(そうこうしている内に、もう良いよと彼女の声がした)
(俺も上がるか)

「……」
(ドアの隙間から彼女は、俺にバスタオルを差し出してきた)
(洗面所で待っていてくれるのは、嬉しい反面少し恥ずかしい)
「出ます」
(開ける)
「……?」
「あの」
 ……かぁっ。
(慌てて後を向く彼女)
(パッと閃く花柄のスカートに、少し見惚れた)
(バスタオル巻いてるんだけどね)

(服を着直して、それから温め直したポトフを食べた)
(美味しかった)
(会話は少ないものの、ずっとにこにこしている彼女と、安心して過ごした)
「可愛いなぁ、川根さんは」
 ……がちゃこっ!
(こういうこと言うと、ウブに動揺するところとか)
(人のこと言えないけどね)
「最後にコーヒーまで、ご馳走様でした」
(また火傷するといけないから、煎れる時は付いてやっていたが)
「……」
(俺の顔を、じっと見つめてくる)
「何だ?」
「……もう、帰る?」

「――おし、じゃあせーので同時に、正直な答をYESかNOで」
「……?」
「俺に遠慮して帰したいならYES、まだ一緒にいてほしいならNO。俺も迷惑かけないよう帰るか、まだ一緒にいたいか、率直に答える」
 ……こく。
「いくぞ。せーのっ、」
『……』
(やっぱりな)
『……”NO”』

 がさ、ごそ。
(彼女が着替えている)
(俺はベッドの上で、腕で目隠し中)
 ――くいくい。
「ん…あ、それ…」
(半袖の寝巻は、少女が着るような柄と色)
(もこもこの半丈ズボンは、膝から下が涼しそう)
「川根さんらしいな」
 ……ぺこり。
(彼女はお願いしますと言うように頭を下げ、そうして俺の隣に、横になった)
「……あの」
「ん?」
「……私、馬鹿で、ドジで、口下手、だから…でも、ちゃんと、言う」
「おう」
「……このまま、ぎゅって、してて」

「ぎゅっと、か」
 ……こく、こく。
「俺も今は、それが良いと思う」
「……?」
「本当は、いつかは――川根さんと、痛いことしたいって考えちまう」
「……あ…わっ」
「でも今は、ただ優しく接したい。川根さんは、それでも良い?」
「……え、と…」
(自分の言葉が、些細に意味不明)
(けれども、好き)
「好きだよ、川根さん」

(腕の中に彼女の体を収めて、灯りを落とすともう一方の手も、絡め合う)
「……八尾、くん」
「?」
「……私も、優しいのが、良い」
(幸福感が沸々と、俺の何かを緩みに緩ませる)
(触れる肌は妙に冷たくて、こうして温めてやりたくなる存在)
(小細工や本能に任せる必要もなくて、こうして――ずっとこうして)
「分かった。じゃ…おやすみ」
「……おやすみ」

 ……ぴくん。
「どうした?」
「……あ…私も、好き」
(全くこの子は。何でこう、意識させてくれるんだ)
(遅くて頼りなくて、つい守ってやりたくなる、全部抱き締めたくなる)
(それはまるで他人じゃないかのような、大切さ)
「分かってるから、安心して寝ろ」
「……う、ん」
 ぎゅっ。
(やがて彼女は、寝息を立て始めた)
(俺の胸元に顔を、体に体を重ねて、手もしっかりと握ったまま)
(好きな子に必要とされることの嬉しさを感じながら、俺もこのまま一緒に……おやすみ)
2011年08月23日(火) 11:17:25 Modified by ID:uSfNTvF4uw




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