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リレー小説〜his & her side〜(後編)

〜his side〜
結果から言おう。
あの二人は早々に「あとは二人で〜」と言って去り、
残された俺と彼女は楽しく談笑しながら飲んでいたのだが……
「……………」
「あー……大丈夫?」
「……え、あ、大丈夫」
彼女はどうやらお酒を飲むのが初めてらしく、飲むペースがわからなかったのか、
すでに顔は真っ赤で、言葉は微妙に呂律が回っておらず、おまけに反応が鈍い。
「えーっと、そろそろ行こうか」
「……………あ、はい、わかりました」
ちなみに、俺はかなり酒に強いほうなので、これぐらいではなんともない。
会計に行こうと、立ち上げる。それに合わせるように、彼女も立ち上げったが
「…………あれ?」
そう言って、ふらついた足取りで後ろに倒れそうになる。
「わっ!!ちょっと待った」
咄嗟に、彼女の方に行き、支える。
「………………すみません」
「良いって別に」
彼女を支えたまま、会計を済ませ、店を出る。かなり長居をしていたらしく、
日が早く沈むようになった空は、すでに紫色で、月が見えていた。




〜her side〜
せかいがぐるぐるまわっている。
うん。
だいじょうぶ。わたしも同時にまわってればだいじょうぶ。
でもあまりまわっちゃうとめが回る。
そうだ。
ぎゅっとすればいいんだ。

いいにおい。
汗と整髪料のいいにおいがする。
ぎゅうっ、と腕をだきしめると、そのにおいはもっと大きくなる。
腕はちょっと太くて、筋肉質で、わたしの腕とは大違いだ。
やっぱり男の人の腕って、すごいんだ。
うまれてはじめておとこの人の腕に抱きついて、その感触はとてもすごくステキだ。

耳元で333君がなにか言ってきている。
ステキ。ステキ。333君の息の温かさとか、耳をジンジンとしびれさせるような響きとか、
その高くも低くもない音程とか。なにをいってるかわかんないけど、すごくステキ。
抱きついている333君の腕と触れている皮膚の裏側あたりがなんだか甘痒くうずいてきてしまう。

あれ?
ここ、どこだっけ?
ちょっと寒い。
333君の腕はあったかい。
体もあったかい。
だからぎゅうう、と、もっと強く抱きしめる。
当たってるおっぱいが「くにょん」と歪んじゃうくらい強く。

ふらふらしちゃいそうなわたしを、333君はしっかりと支えながらあるかせてくれている。
ステキ。こんなふうに、べたべたいちゃいちゃしながら街を歩くカップルを「バカみたい」と思ってたけど。
わたしは間違ってた。
それはすごくステキで、嬉しくて、楽しくてシアワセなことなんだ。うん。
ろれつの回らない言葉で333君にそれを伝えたのだけど、わかってくれたかな?

なんだか色とりどりのネオンが目に映っている。
世界がふわふわしてるから気がつかなかった。
隣でわたしを支えてくれている333君がなんだかちょっと無口になってるみたい。
――ダメなのかな。
わたしが地味でつまんない女だから、333君はそんなふうにつまんなくなっちゃうのかな。
そう考えると、なんだか泣きたい気持ちになってしまう。333君にはシアワセになってほしい。
333君みたいなステキな男の人は、いつでもシアワセで楽しい気持ちになっていて欲しい。
でも、わたしじゃダメなのかもしれない。

気がついたらわたしは、
「……わたしじゃ…ダメなのかな」
彼の耳元でそうささやいていた。




〜his side〜
「ふふ……」
頬笑みながら、彼女が回る。
クルクルと舞うように、冬の夜風にスカートを乗せて、妖精のように…。
……と、表現すれば可愛いものの、客観的に言わせてもらえば完全に酔っ払いだ。
「つか、何で回るんだ?」
「…世界が…回ってるもの。だから…私も……」
うん、やっぱり酔っぱらっている。
酔っぱらった彼女はしばらく回っていたが、やがて三半規管に限界が来たらしい。足がもつれる。
「おっと…」
俺は手をのばして彼女の手を取って引張る。反動で彼女の体がこちらに向かってくる。
受けとめた感触は羽毛のように柔らかく軽く、しかし確かな実体と質量を俺に与えた。
「大丈夫?」
店を出てから何度目かの質問。彼女は惚けたようにこちらを見て頷く。
酔っ払ってはいるもののとりあえず大丈夫そうなので、歩きはじめる。
彼女は今度は回らなかった。代わりに、俺の腕を抱きしめるようにしてきた。
正直助かる。いつ転ぶかハラハラして見ずに済むし……それに、暖かい。
錯覚なのだとは思う。冬の寒さによる熱の略奪を防いでくれる厚手の生地は、同時に俺と彼女の間に厳然と存在して熱の交換を妨げる。
けれども腕に感じる彼女の体の柔らかさは温もりを錯覚させる。それは錯覚だが、彼女と言う温かい存在を確かに俺に伝える。
そう……彼女は今、俺の隣にいる。
彼女の体の柔らかい感触も、冬の空気に混ざる甘い香りも、確かに今、俺の隣にいる彼女の存在を伝えてくれる。
感動だった。そうとしか表現する言葉を知らなかった。
人間は生まれた時は興奮と沈静の二種類しかない。それが快不快、喜怒哀楽と分化していき、一つ一つがラベリングされていくことで感情が形成される。
感情が動いた。それは俺が今まで知らなかった類のもので、快いもので、喜楽に属するものだ。
「……××」
何か言おうとして、初めて感じた感情は、彼女の名前という形で口を零れた。
彼女は何も答えなかった。声は小さかったし、彼女も意識が朦朧としていたのだろう。
理性ではそう分かっていても、胸が締め付けられるような切なさを感じる。
……俺ってばこんなに乙女チックだったのか?
自分のポエマーっぷりに呆れていると、声への答えだとしたら時間差付きの反応が来た。
俺の腕を抱きしめる力が増す。
彼女の柔らかな感触が、よりはっきりと腕に伝わってきた。特に胸とかが「くにょん」と。
「…っ、××?」
「あったかい……」
うろたえる俺に、安心し切ったように彼女は俺に体重を預けながら呟く。
その信頼と、感じるはずのない体温を感じるという錯覚の共有を、俺は嬉しく思った。
「すてき…」
「ん?」
「間違いだよ、私…。ばかみたいなことじゃ間違えだもん…。
だって幸せで、うれしくて、たのしくて、幸せなこと」
酔っぱらっている彼女の言葉は文法が間違っていて、単語が重複していて、呂列が回っていなかった。
けれど、確実に分かったことがある。彼女は今、幸せを感じている。そしてその理由は俺にある。
「ああ…」
俺が言ったのは感嘆だったのだろうか返答だったのだろうか?自分でもわからなかったが、言葉の理由は俺も幸せを感じたからだった。
不意に目が、アンバランスなクリスマスカラーのイルミネーションが巻きつけられた看板を捉えた。
『休憩一時間―――』
ラブホテル、という類のものだ。


満たされていた幸福感を、稲妻のように切り裂いて衝動が突き抜けた。
性欲だ。腕に感じる彼女の感触が、急に生々しいものに感じられた。幾重もの布切れ越し感じる、やわらかな肉。異性の体。
「……わたしじゃ…ダメなのかな」
耳元で声がして、はっとした。潤んだ彼女の瞳が、俺をとらえていた。
「333くん、しゃべんなくて…私が地味でつまんない女だから、シアワセじゃないんだよね?
私が……333君が私でシアワセになってほしいのに…」
目の潤みが、涙になって零れる。
めまいがしてきた。世界が回り、自分の脈動が聞こえる。
『食っちまえ』
脳裏に響いた声は、木船が去り際に言った冗談の記憶か俺の本能の誘惑か?
「…何でもするよ?どうすればいいの?私の全部をあげるよ?それでシアワセになれない?333君はシアワセになれない?」
耳朶を震わせる声は、彼女の誘惑か俺の都合のいい妄想か?
ああ、俺は酔ってる。何に?アルコールにか?彼女にか?性欲にか?ラブホの前でこんなことを言われているという状況にか?
ぐるぐると回る思考の中で……俺は……

「………駄目だよ」




〜her side〜
 抱きしめられて、告げられた。
「………駄目だよ」
ああ…やっぱり私じゃ駄目なのか…かなしいな。
「そうじゃない!」
じゃあ、どう駄目なの?
「どうって…ま、まだ再会して間もないし…
酔っぱらってる所をなんて卑怯だと思うし…
まだ君の気持をしっかり聞いてないから」
気持ち?どういうことだろう。私は…
あ、そうか。私、言ってなかったっけ?
彼に言ってなかったっけ?
うん、好きだって言ってないや。
恥しいな…。けど言おう。いいや、言っちゃおう。
地味な私だけど、今は酔っぱらってるもの。酔っ払ってていつもと違うもの。
いつもと違う私だから、いつもと違うことをしちゃうもん
「大好き」
ああ、気持ちいい。ぎゅっと縮こまっていた心が広がるみたい。
「333くんのこと…大好き。好きなの。私だってずっと好きだったの。
腕が好きだし、たくましいし、ハンカチでエッチな気持ちになっちゃうくらい好きだよ?」
「え、えっち…って」
うん?何か変なこと言ったかな?地雷原かな?けどいい。もっと言おう。
「大好き…私、333くんのこと、好き…で…」




〜his side〜
突然に、言葉が途切れてから一分ほど経って、俺はようやく気付いた。
「……××?」
声を掛けても、戻ってくるのは一定間隔の呼吸のみ。寝てしまったようだ。
「はぁぁぁ…」
その場に崩れ落ちてしまいそうな脱力感。
ああ、やっぱり酔っぱらってたんだな、それもひどく。
勢いに任せてここに連れ込まなくて良かった。
たぶん、この状況で行為に至っても、彼女はきっと許してくれるだろう。けれど、俺自身がきっと許せなかったはずだ。
「好き…か」
改めて確認して心が温かくなる。
『333くんのこと…大好き。好きなの。私だってずっと好きだったの。
腕が好きだし、たくましいし、ハンカチでエッチな気持ちになっちゃうくらい好きだよ?』
胸中でリフレインして、確信する。
想いが通じた、と。
……まあ、なんだかめちゃくちゃ爆弾発言が紛れ込んでいる気がしないでもないが…それでも、
「両想い、か」
顔がニヤける。好きな人に、好きになってもらえる。そんなありふれた、けれど最高の奇跡。
「けど……だとしたらちょっともったいなかったかな」
緊張感が抜けた所に、ちょっと魔が差してきた。
が、一蹴する。焦ることはない。
彼女と、これからゆっくりと時間を共有していこう。彼女と着実に時間と、思い出と、絆を積み重ねて……そして……
「とりあえず、タクシーだな」
俺は彼女を支えながら、大通りの方に歩きだした。



彼女を自宅まで送り届け、家族に託して家路につく。
ふう……意識はしっかりしている。
まだ酔っているはずだけど、胸の奥深いところから何かが湧き出てくる。
興奮、感動、焦燥?
自分でも正体がわからずに自分の気持ちを持て余す。
落ち着けよ俺。

部屋に入って、ベッドに転がっても気持ちは落ち着かない。
こういうときはクールに一本抜いて……とも考えたが、分身は静かに眠ったようだ。
ピクリともしない。
動物的本能よりも、人として恋が成就した興奮のほうが強いと言うのか……

彼女が、好きだっていってくれた……ずっと好きだったって……。
俺も……好きだった。 あの頃も、そして今も。
俺の中から湧き上がってくるこいつは……喜びか?
ああ、そうか。 俺は嬉しいんだ。
彼女と、想いは繋がっていたことが。
中学生だった あの頃、自分の恋心を伝えることすら出来ずに時間は流れてしまった。
あれから10年。
お互いに成長し、経験を積み、再会出来たことはきっと只の偶然じゃない。
俺と彼女が自分に素直になって想いを伝えあうことが出来るようになるまでに必要だった時間なんだ。

俺は……彼女が好きだ。
一眠りして目が覚めたら、彼女に会いに行こう。
そしてもう一度、彼女に想いを伝えよう。
今度は、他人の手も酒の勢いも借りずに。
自分の言葉で、自分の想いを 彼女に伝えよう。

自分自身の気持ちに整理がついたせいか、少し落ち着いてきた。
落ち着いたとたんに本能が鎌首を持ち上げてくる。
現金な奴だ。
自らの本能と熱く格闘した俺は心地好さの中で眠りに落ちていった。










「えと、本当に良いのか?」
「うん……」
俺は自分の部屋に上げた彼女を見詰めながら、へたれてしまう自分に活を入れる。
「……ずっと好きだったから。……もう、止まらないから」
彼女の声に、俺は小さく頷いて見せる。
どくんどくんとやかましい音が響く中。
どうしてこうなったかを思い出していた。


今日も講義を受けに出てきた俺の周りは、あっという間に男友達で占められていた。
むろん、原因は言うまでもなく昨日のことをあっさりと言いふらしまくった木船だ。
元々、ダチとバカやってることが多い俺だけど、その手の話題は全くなくて――というか、俺のダチは大抵そう言う奴で木船が変わってるだけだけど――だから嫉妬混じりの祝福でもみくちゃにされてしまった。
単純に言えばそれだけのこと。
……だったんだが。
昼飯時、学食に行こうとした俺の携帯がいきなり鳴って、彼女から電話が入ったんだ。
木船と大林さんに謀られて校門前に来ていたらしい。
――しかも、手作り弁当を携えて。
正直、ダチ連中からの殺意を受けながら――無論、木船が冗談半分で広めたからだ――俺は彼女と合流して、そのままふける事にした。
何でかって言えば、かなり身の危険を感じたからだ。
……なんせ、わざわざ校門までついてきて、彼女と俺の周りを取り巻いてくれたんだから。
しかも、彼女に不躾な質問までし始めたんだから、逃げる以外に彼女を護る手段が無かったわけだ。
で、そのままデートにかこつけて、夕食時になったから送っていこうと思ったんだ。
その時に、彼女が俺の家を見たいって言い出したってだけの話し。
だけど、本当は気付くべきだったんだ。
彼女が、そのつもりでいることを。





「俺、……俺さ」
何の変哲もない、家具らしい家具もない俺の部屋。
なのに、ただ彼女がいてくれるだけで、きっと一流ホテルでさえ敵わないほどの雰囲気に包まれた部屋で、俺は目の前に立っている彼女を見詰める。
彼女は顔を赤くしたまま、ただこっちをじっと見詰めてくる。
その様子に、胸の奥が熱くなる。
昨夜の事を、全部覚えてるって彼女は言った。
とても恥ずかしくて、思い出すと顔から火が出ちゃいそうだとも言った。
そして、彼女が向けてきた言葉に、俺はまだ、答えが出せない。
いや、答えはとっくに決まってる。だけど、その先を口に出来ない。
どこまでヘタレなんだろうか、俺は。
「あの、さ」
彼女は何も言わずにただ見詰めてくる。待ってくれている。
だから、俺は顔をしっかりと上げて、いきなり自分の頬を軽くはたいた。
「?」
驚いたように目を丸くする彼女に笑いかけて、俺は深呼吸をして彼女を見詰める。
「俺もさ、××の……、君のことがずっと好きだった。君が初恋で、言葉をかけることも出来なくて結局、終わるはずだったんだと思う」
呟きながら、一歩だけ前に踏み出して。
「好きだ。君のことを誰よりも何よりも好きで、大切にしたい。そう思ってる」
「……じゃぁ、なんで昨夜は?」
顔を赤らめた彼女が、じっとこちらを見詰めてくる。
その真剣な眼差しに、答えるために、数度深呼吸した。
「だってさ、酔っぱらった女の子に手を出すなんて、男として最低だからな。そりゃ、据え膳食わぬは男の恥って言う奴もいると思うけど……、好きな女性だからこそ、そんな事したくなかったんだ」
言いながら、更に一歩を詰めて、俺は彼女を抱きしめていた。
彼女も俺の背中に腕を回して抱きついてきて。
気がつけば、そのままキスを交わしていた。




〜her side〜
キス、してる。
唐突に奪われたんじゃなくて、一方的に押しつけたのでもなくて、きちんとお互いのことを思いながら、キスしてる。
時々、こすりつけるようにされると、ぞくって背筋が粟立って胸の奥が暖かくなってくる。
……悪戯心を起こして、私は彼の唇に舌を這わせた。
んっ、と彼が困ったような表情を浮かべながら私を受け入れてくれる。
同じように舌を出して、私の唇を舐めてくれた。
それだけの事で、口から生まれた痺れが、背中を通ってお腹の奥に響いて来た。
いけないって思うよりも早く、じゅんっと液体が湧く感触を覚えた。
彼の唇をこじ開けて、舌を差し込む。
彼も同じようにしてくれて。
普通なら他の人が触れるはずもない場所を預けていることが、預けられていることが嬉しくて心地よくて…………気持ちよくて。
液体が漏れていくのを抑えられない。
「んっ……ぷはっ」
彼が私から唇を離して、少しだけ困ったような表情を浮かべる。
「あの、さ。今日はこれからどっか出掛けようか? ゆっくりと歩くだけでも良いんだけどさ」
「……いや、です」
彼の言いたいことが理解できたから。
私はしっかりと首を振った。
だって、決めてたから。彼へ向ける思いをこれからもずっと忘れないために。
初恋……うぅん、違う。
同じ人に、抱いた二度目の恋を、終わらせないために。
私は彼の目を見詰める。
その瞳に、映り込んでる私の顔は真剣と言うより、……どこかはしたなく見えたけど、ソレだって構わない。
だって、こんな顔を見せるのは、彼にだけ。
333君にだけだから。
「最後まで、して欲しいです。……抱いて、欲しいです」
彼がじっとこちらを見詰めたまま、一歩下がる。
抱擁がなくなるのが寂しいけど、それが拒絶じゃないって解ってたから。
私はただ微笑んで見せた。
「今まで、大好きでいたから。今もずっと大好きだから。これからも大好きでいたいから」
だから、と。
彼に微笑みを向けたまま、私はまだ羽織ったままだったコートを脱いで、そのままぱさりと床に落とした。
「えと、本当に良いのか?」
彼の戸惑いを乗せた言葉に頷いてみせる。
「うん……、ずっと好きだったから。……もう、止まらないから」
決心を込めて来たんだから。受け止めて欲しいから。
……好きな人が好きでいてくれるって解って、もうこの想いは止まらなくて、止めようとも思えなくて。
「それとも、私って、魅力ない……かな?」
「そんなこと無いっ!」
思わず呟いた卑下の言葉に、彼が慌てて否定してくれる。
……ソレを望んでいた自分に、っていうより女の性にすこしだけ嫌気がさすけど、彼は受け止めてくれた。
今はそれだけが真実で、私は彼の返事を待たずにブラウスのボタンを一つ一つ外しはじめた。




〜his side〜
もう、止められなかった。
彼女が、あの引っ込み思案で恥ずかしがり屋だった彼女が、自分から俺のために服を脱いでいく。
その光景は生唾物だった。
図書館の司書をしているだけあって、日焼けとは全く縁がなさそうな抜けるような白い肌が、露わになる。
……黒いレースの下着がやけに扇情的で、掌に少し余るくらいの胸は、きっと平均より少し大きいものだと思う。
「……333君も、脱いで欲しい……な」
伏し目がちになりながら彼女が呟く。
「あ、ああ」
慌てて服を脱ぎながら、俺は、少しだけ不埒な想像をしてしまった。
自分から求めてくる彼女。
眼鏡で解りづらいけど、きっと誰よりも綺麗な彼女の事だから、今までに誰かと付き合ったことがあるかも知れない。
ホックの外れたスカートが、ぱさりと彼女の足下に落ちた。
ごくんっと大きな音と共に、思わず唾を飲み込んでしまう。
……黒い下着だから解りづらいけど、彼女の中心部分が色ずんで、……きっと濡れてるって解ってしまったから。
俺も慌てて服を脱いで、下着になった時点で動きが止まってしまう。
もう上を向いて固まっていたから。
それが恥ずかしくて、だけど隠すことは出来なくて。
俺は彼女と向き合う。
「……その、私、ハジメテだから……」
頬を赤らめる彼女に、どくんって体の奥から音が響く。
ハジメテなのに、自分から求めてきた彼女。
それがどれだけ恥ずかしくて、勇気がいることなのか解ったから。
「俺も、はじめてなんだ。だから、変なことしたら、ごめん」
呟きながら手を伸ばして、彼女を引き寄せた。
そのまま背中と膝裏に腕を回して抱き上げる。
「いいよ……貴方になら、なにをされても、いい」
胸が震えるってこんな時のことを言うんだろうなって、そう思える。
けど、その気持ちを言葉に代えることが出来なくて、俺はただ彼女に口づけて、そのままベッドまで移動する。
優しく彼女をベッドに寝かせて、笑いかける。
すこしでも彼女が安心するように。
そして、俺は彼女に覆い被さった。




〜her side〜
月明かりの差し込む部屋の中。
私は彼の腕を枕にして、一人顔を赤らめていた。
思い出すだけで、恥ずかしくなってくる。
彼の手の動き一つ一つに自分でも思っても見なかったくらいに気持ちよくなって、はしたない喘ぎ声を上げてしまった。
彼が入ってきたとき、あまりの痛さに涙を見せて彼に心配させた。
必死で彼にしがみついたときに、彼の背中に爪を立ててしまった。
……なのに、少しの間彼に小突かれただけで、痛みより快感を覚えてしまった。
最後に、彼が達するときに、後先考えずに中に出してとねだってしまった。
全部、恥ずかしすぎて、穴があったら入るんじゃなくてそのまま埋められてしまいたい。
そう思うくらいに恥ずかしい。
「……好きだよ」
彼の寝顔を見ながら、私はそっと舌の上に言葉を載せる。
彼の事が何よりも愛おしい。
彼が側にいてくれると思うと、叫び出したいくらいの嬉しさが込み上げてくる。
きっと、人を好きなるって、こういう事なんだと思う。
側にいてくれるのが嬉しい。
側にいられるのが嬉しい。
お互いを必要と思いあえることが、何よりも嬉しいから、誰かを好きなるんだって。
「……最期まで、いっしょにいようね」
小さく呟いて。
私は彼の頬にそっと口づけた。




〜his side〜
「ん……」
なんだか、くすぐったさを覚えて俺は目を覚ます。
窓から見える白々あけの空に、そんなに寝てたのかと思って首を傾げた。
なんだか寝過ぎで余計眠くなってる気がして。
ついでに昨夜は結局晩飯を食ってなかったような気がしたから。
「す〜す〜」
いきなり隣から寝息が聞こえて。一瞬口から心臓が飛び出しそうになった。
慌てて視線をそちらに向けて。
昨夜の彼女との甘い一時が一気に蘇る。
「……俺」
気持ちよさとかは、基本的にどうでも良かった。
体だけの気持ちよさを言うなら、自分の手でこすってる方が気持ちいいとかって気がしたから。
けど、痛みに耐えて必死にしがみついてくる彼女の様子が。
幾度か動いていると痛みよりも快感を覚えているらしい彼女の様子が。
なにより、大好きな、……愛しい人と快楽を分かち合えたと言う事実が。
体だけの快感の幾数倍もの気持ちよさを感じたから。
愛らしい寝息を立てる彼女をみながら思う。
これからも、ずっと彼女といられるだろうかと。
「何、大丈夫さ」
そんな僅かな不安とも呼べない想いに、苦笑を浮かべる。
だって、俺は彼女に二度も恋をしたんだ。
幼くて諦めただけの初恋と、ソレよりも遙かに強い二度目の恋。
きっと、これからすれ違いはきっとある。
俺も彼女も、生きているんだ。
想いがずれるときもあるし、好きだから余計にお互いの些細なことが許せなくなるときが来るかも知れない。
だけど、きっと大丈夫。
もしその時、二度目の恋が終わっても、きっと俺は彼女にまた恋をするに決まってる。
言葉が足りなくて傷つけるかも知れない。
彼女を想うからこそ、傷つくことがあるかも知れない。
けれど、俺は彼女を大切に想う。
思い続ける。
きっと、そんな想いが、恋情よりもずっとつよくて大きな愛情なんだ。
「……××、愛してる」
呟きながら、俺は彼女の頬にそっとキスをした。






 We hope that 333 are happy

 The End

前話
作者 無口スレ住人
2008年01月20日(日) 20:56:35 Modified by n18_168




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