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縁の切れ目 言霊の約束(完)

「……何が?」
「……だから、……その」
 言い淀む依子の様子に守は訝しむ。しかし、
「…………え!?」
「察してよすぐに……」
「いや、だって、それって」
 守がその意味に気付かなかったのは、そういうこととは無縁なイメージを依子に抱いていたからだ。だからその言葉に、守は驚くしかなかった。
「いや、まあ、その」
「私は、別にいいよ……好き合った人同士なら、普通……だよね?」
「それは……そうだけど、でも」
「しないの?」
「あ、だって、まだ早いかもわからない、ていうか」
「……お姉ちゃんとはしたくせに」
 驚きのあまり、思わず守は依子から体を離した。
 上目遣いに守を見やる依子。
「……私とはダメなの?」
「いや、そんなことは……って、なんでそのこと」
「……お姉ちゃんに聞いた」
「…………」
 秘密にしておこうと言ったのは依澄さんの方なのに。守は心の中でぼやく。
「……」
 また静かな空間が出来上がる。
 一言で言えば嬉しい。だがあまりに唐突すぎて、どう反応したものか戸惑いがあるのも事実だった。
 前にも同じような場面に出くわしたことがあるが、今回は自分の想い人である。より強い緊張が心を縛るようだった。
 依子が、今度は幾分はっきりと言った。
「……『別に』なんて言い方は、ダメだよね。……訂正。してくれる?」
「いや、無理しなくても」
「無理じゃないよ。本当に……してほしい」
 頬をうっすらと染めながら、依子はゆっくりと、はっきりと言った。
「……」
 守はしばらく黙っていたが、やがて盛大にため息をついた。
 自分のへたれ加減に呆れた。好きな相手からの申し出なのだ。躊躇なんていらない。
 守のため息に依子がつらそうに目を細めた。
「……ごめん。急に何言ってるんだろうね、私。マモルくんも困るよね、いきなりこんな」
「いいよ」
 守が短く答えた。
「え?」
「……好きな人にそんなこと言われて、断ると思う?」
「……マモルくんならあるいは」
「いやいやいやいや」
 どんなイメージですか依子さん。
「言っとくけどぼくも男だからね。君の脳内の遠藤守像を根底から覆すくらいに激しくするかもわかんないよ」
「う……」
 たじろぐ依子。目元に若干不安の陰が浮いた。
「……どサド」
「大丈夫、優しくするから」
「いらない」
「いや、なんでそこで意地張るの」
「したいようにしてよ。私もそうするから」
 依子はどこかふっきるように言うと、おもむろに身を寄せてきた。
 守はもうためらわなかった。小さな体を抱き寄せると、その唇に自身のそれを重ねた。
 抵抗はなかった。驚くような反応もなく、柔らかく受け止めてくれた。お風呂上がりのしっとりした髪から、優しい匂いがした。
「ん……」
 みずみずしい感触に、守はたまらない気持ちになった。髪の香りが、体の温もりが、唇の感触が、こちらの興奮をあっという間に高めてくる。

 体を離し、二人はしばし見つめ合った。
「脱ぐね……」
 依子の小さな手がパジャマのボタンを一つ一つ外していく。守はそれをぼんやりと眺めていた。
 シャツの下には何も着けていなかった。前立ての間から覗く胸の膨らみが際どく映える。
 ボタンを外し終えると、依子はそこで手を止めた。
「マモルくんも脱いでよ……私だけなんて、恥ずかしい……」
「あ……うん」
 慌てて守も自分の服に手をかける。黒のトレーナーを脱ぎ去ると、鍛えられた体が露になった。
「……それは?」
 右脇腹に貼られた湿布に依子が眉をひそめた。守は肩をすくめて、
「昭宗さんに肘もらっちゃったからね。ちょっと痣になってて。でも大丈夫。折れてないし、すぐに治るよ」
「朝のやつ? 痛くないの」
「多少は。まあたいしたことないよ」
 しかし依子の目から不安の色は消えない。
「……やっぱりやめる?」
「そんなこと、できると思う?」
「……」
「正直、早く君を抱きたい。脱がすよ?」
 守が手を伸ばす。前立てに触れようとすると、依子の顔が強張った。
 守はあえて無視して、そのままパジャマを剥いだ。
「……!」
 上の裸身が完全に現れた瞬間、依子が両腕で胸を隠そうとした。しかし守はその手を掴んで赦さない。
 発育のよい胸が目に飛び込んできた。巨乳という程ではないが、思わず掴みたくなってしまいそうな綺麗な形をしていた。
 羞恥心に真っ赤になる少女。
 守は依子をゆっくりと布団の上に押し倒す。胸を凝視すると、依子は恥ずかしさからか目を逸らす。
 腕を離し、守は白い双房に触れてみた。
「……!」
 反射的に力の入る体の中で、二つの膨らみの柔らかさは別格だった。まるで生クリームみたいにねっとりと柔らかい。
 最初こそ抵抗の動きを見せたが、優しく揉み込んでいくうちに、依子は受け入れるように身じろぐのをやめた。
 守は美しい胸を丁寧に揉み回す。乳肌はしっとりと吸い付くようで、手の平に驚く程フィットした。
(ちょっと信じられないな……)
 今こうして触れていることは夢なのではないか。そんな疑いさえ抱いてしまう。
 桃色の先端が固さを帯び始めてきた。少しは緊張も解けてきたのだろうか。
「依子ちゃん、気持ちいい?」
 耳に触れそうな距離まで唇を近付けて囁く。形のいいその小さな耳に触りたいと思ったが、守は一旦抑える。
「……」
 返事は返ってこなかった。ただ、震える顎を微かに上下させる。弱々しい頷きだった。
 たまらない嗜虐心にとらわれて、守は喉をぐびりと鳴らした。
 真っ赤になっている右の耳たぶを甘く噛む。不意打ち過ぎたか、依子は反射的に首をすくめた。
 唇で挟むようにくわえ込み、舌で感触を味わう。柔らかい耳たぶを唾液で濡らしていくと、よりいっそう震えが強くなった。
 耳を舐めながら右手で胸を愛撫する。乳首に指を這わせると、依子は小さく喘いだ。
「かわいいよ、依子ちゃん」
「……」
 依子は答えない。
「下も脱がすよ」
 ぼんやりとした目を何度かぱちくりさせる。しばらくして無言で頷くと、ズボンをゆっくり下げようとした。
 守はそれを最後まで待てなかった。おずおずと下ろしていく依子の手を掴むと、自身の手でズボンをずり下ろした。
 下着ごと一気に脱がすと、少女の隠された下半身が明かりの下にさらされた。
「――」
 依子は困惑と羞恥で固まり、次の瞬間左手で股の部分を隠した。
 何かに耐えるようにぎゅっ、と目をつぶっているその姿に、守は心臓が壊れるかと思った。
 普段見られない幼馴染みの様子は、気が狂いそうなくらい新鮮でかわいい。
 守は正直に言った。
「ごめん。ひょっとしたら優しくできないかも」
「……」
「できるだけ痛くないようにするけど、抑え効かないかもしれない。すごく……興奮してるから」
 依子は無言だった。
 それでも左手をゆっくりとずらし、下腹部がよく見えるように腰を気持ち程度浮かせた。続ける意思はあるらしい。

 現れた陰部は、随分と小さく控え目に見えた。静梨や依澄のものとも違う、薄く綺麗な肉質だった。
 守は股間に右手を差し入れると、秘部に指を這わせた。割れ目に沿って上下になぞると、ぴくぴく腰が動いた。
 人差し指と中指で秘唇を撫であげる。誰も触ったことのないそこは、淡い綺麗な桃色を保っており、ここを今から征服するのかと思うと下半身が激しくうずいた。
 割れ目を執拗になぞり続ける。依子は抵抗しない。こちらに気を遣っているのかおとなしくしている。それとは正反対に、指を縦に動かすたびに体だけが小刻みに反応した。
 柔らかい感触をひたすら楽しんでいると、徐々に割れ目から液が漏れ出てきた。
 感じてるかどうかはともかく、体は反応している。これなら多少大胆に攻めてもいいかもしれない。
 指を、中に侵入させた。
「!」
 瞬間、依子の体が一際大きく震えた。
 守は耳元で、ためらい気味に囁く。
「依子ちゃんの体、触ってるだけで気持ちいいよ。だから……もっと触りたい。いいかな?」
 返事はなかなか返ってこなかった。
 十秒以上経過してから、ようやく微かな声で「ん……」と呟かれる。
 頷きがなければ拒絶の声とも取れる声。
 中指を膣の入り口に入れて、小さく抜き差しを繰り返す。始めは慣らすようにゆっくりと動かし、徐々に大きくかき回していく。
 処女の秘壺は狭かった。だが中のぬめりは確実に増しており、指に淫水の熱さが伝わってくる。
「……、……っ」
 依子は口をぎゅっ、と結んだまま懸命に耐えている。
「……ん……っ、……ッ!」
 まともな声ではなく、唇の隙間から漏れ出る空気の塊のような声だった。意識的な言葉はなく、それはまるで依澄のようだと守は思った。
「依子ちゃん、ひょっとして緊張すると声出なくなるタイプ?」
「……」
 図星らしい。依子は赤面したまま何も答えなかった。
 締め付けが強くなった。中の肉が指に絡み付くように、ぎゅうぎゅうと締めてくる。
 そんな膣中を守は容赦なくかき回した。まとわりつく愛液が小さく音を立てる。淫らな刺激音が耳に誘惑の歌を聴かせた。
 依子はもはやろくに抵抗できない状態だった。いやいやをするように首を振っていたが、女唇をいじられていくうちにその動きはかき消されていった。
 守は開きっぱなしの少女の口を自らのそれで塞いだ。
 舌を絡め、唾液を塗り込み、口内をねっとりと犯す。丁寧なキスを送り込むと、依子の体はみるみるうちに弛緩していった。
 呼吸が困難になる程濃厚なキスを続ける。右手は秘部をひたすらにかき混ぜ、左手は少女の背中を通って左胸を、ときに右胸を、執拗に揉みほぐした。
「ひぅ……っ、んっ……はぁ……っ、ん……」
 処女とは思えない程、依子は淫らに乱れた。
「んんっ……う……ん……あ…………んっ」
 きっと意識しての喘ぎではないだろう。声自体は小さく、部屋の外に洩れるかどうかも微妙なくらいだ。
 だがその声は、青年の情欲の波を高々と煽るのには充分すぎる効果を持っていた。
 依子の目に快楽の昂りが、薄く涙となって滲む。
 このまま指でいじり続ければ絶頂を迎えるだろう。だがそれは少し寂しい気がした。やはり、一緒になりたい。繋がりたい。
 守は膣穴から指を抜いた。愛液が指先にまとわりつき、秘部と透明な橋を作る。
 依子が不思議そうに守を見やった。潤んだ瞳は切なげで、困ったような、苦しそうな顔だ。
「……イキそう?」
「……?」
 恥ずかしがるかと思ったが、依子は表情をあまり大きく変えなかった。
 怪訝に思い、守は尋ねた。
「ひょっとして、依子ちゃん何もしたことない?」
「……?」
 いまいち伝わってないようで、守は言葉を選び、訊く。
「いや、だから、その……自分でいじったり、とか」
「!?」
 ようやく理解できたようで、依子は驚いた後、みるみるうちに真っ赤になった。
 慌てて首を振って否定する。顔はりんごみたいに赤い。
「じゃあイったこともないよね」
「……」

 知識としては知っているかもしれない。だがその感覚は経験しないとわからないだろう。
「さっきぼくに触られてるとき、変な気分にならなかった? 意識が飛びそうになったりとか」
 おずおずと頷く依子。
「その先に絶頂があるんだけど……一回指でイっとく?」
 気を抜く意味でもそれがいいかもしれないと思う。本番できちんと感じられるかどうかはわからないし、痛いだけで終わったりしたら依子に悪い。
 依子は首を振った。
「痛いかもよ?」
「……大丈夫……だよ」
 かすれた声で微笑む。
「マモルくんも……気持ちよくなって……」
「……」
 健気な言葉に守は背筋がぞくぞく、と震えるのを感じた。
 嬉しさと愛しさが入り混じり、元々高まっていた興奮がさらに高まる。
「ありがとう。ぼくも頑張るから」
 依子が微笑と共に頷いた。


 守はジーンズを脱ぎ、その下のトランクスも脱いだ。
 薄いポリエステル製の下着を取り払い、現れた逸物は、豪儀に硬直していた。
 仰向けに横たわったまま、依子が不安げに見つめてくる。
 ――ああ、見られてる。
 守は少し恥ずかしくなった。依子に見られるのはなんだか特別な気がした。
 ジーンズのポケットから財布を取り出す。その中から抜き出したのは、袋に入った薄いピンクの避妊具。
 依子がそれを見て、眉を上げる。
「一応きちんとしとかないとね、こういうことは」
 すると依子はなぜか苦笑いを浮かべた。複雑な面持ちと言えるだろうか。
 そのまま体を起こす。脇に脱ぎ捨てられたパジャマに手を伸ばすと、普段ほとんど使うことのないだろうポケットを探った。
 守が尋ねるのを制するように、依子は探り当てたものを突き出して見せた。
「……あれ?」
 種類は違うが、守が財布から取り出したのと同じ物品だった。バラではなく箱だったが。
「……依澄さんが?」
 依子が用意したとは思えなかった。少女はこくこくと頷く。
 普段から常に用意しているわけじゃないだろう。昼間出かけているときに先を見越して購入してきたのだろうか。
 もちろん依澄といえども未来予知ができるわけじゃないので、これもたまたまなのだろう。だが依澄にしては下世話な『お遊び』でも、きちんと後で意味を持ってくる辺りがさすがというかなんというか。
「神守に帰ったら、これでたくさん愛してあげるから」
「っ」
 依子が微かに怯んだ。耳を真っ赤にしてうつむき、やがて小さく頷いた。
 守は微笑むと、袋から避妊具を抜き取り、屹立した自分の逸物に装着した。
 依子は自分から仰向けになった。生まれたままの姿の少女は、右手で胸を、左手で股間を隠して守をじっ、と見つめてくる。
 守は膝立ちのまま、赤子のように這って近付く。
「依子ちゃん……」
 白い両脚に手をかけ、横に開いた。軽い抵抗をあっさり押し退け、大事な箇所を目前に捉える。依子ももう目立った抵抗を見せなかった。
 体を股の間に割り込ませ、怒張した肉棒を近付ける。繋がる直前というのは何度やっても緊張してしまう。
「ん……」
 濡れた入り口を焦らすように肉棒で撫でると、依子が耐えきれないような喘ぎを洩らした。
 今度こそ進入する。粘膜を擦り合わせて早く気持ちよくなりたいという欲望をこらえながら、ゆっくりと、ゆっくりと、亀頭を秘部の肉へと埋め込んでいく。
「んっ……」
 苦しげな声が短く発された。守はそこで挿入を止める。
「大丈夫?」
「……」
 返事はない。だが息を止めて歯を食い縛っている様子から、痛いであろうことは充分伝わってくる。
「力抜いて。入らないよ」
「……」
 真上から声を落とすと、依子は駄々をこねるように首を振った。
「じゃあそれでいいよ。ちょっと乱暴になるけど、我慢してね」
 下腹部をさらに押し込む。亀頭が未開拓の秘奥を切り開くように進んでいく。
 依子の顔が苦痛の色を濃くした。声は抑えているが、どう見ても苦しそうだ。

 徐々に肉棒全体が依子の中に埋まっていく。カタツムリが殻の中に閉じこもるように、ゆっくりと深く。
「…………」
 涙目の依子が荒い呼吸と共にこちらを見上げた。まだだろうかと、もう限界のように瞳がぶれる。
「入ったよ」
「…………んっ」
 必死で耐えるその様子は健気で、とても愛しく思った。
「今日は痛いだけかもしれないけど、何度も抱いて必ず気持ちよくさせてあげるからね」
 耳元で囁くと、依子はぼんやりと口を開いた。
「……あ……これからも、するの……?」
「当たり前だよ。……言っとくけど、今すごく嬉しいんだからね。好きな娘を自分だけが独り占めしているんだから」
「……」
 自分だけの、よりどころ。
「ずっとこうしたかったんだ。一回で済むわけがないよ。恋人として、これから君を何度も抱くから」
 真剣に守は言った。
「こい……びと……」
 かすれた声で虚空に呟く少女。
 やがて嬉しそうに、とても嬉しそうに、依子は笑った。
「わたしも……いっしょかも」
「……その言葉、忘れないから」
 守は微笑むと、腰を動かし始めた。
 処女の膣は狭かった。先程あれだけ指でいじり回したにもかかわらず、棒を押し潰さんばかりに強い肉圧だった。
 愛液で中はとろとろだが、その潤滑油が意味をなさないくらいにきつい。
 見ると、何度か往復する中で血が滲み出してきていた。
 痛いのも当然だった。今の依子に快楽は欠片もないだろう。ただ早く終わってほしいと願うだけかもしれない。
 実際、依子は苦悶の表情で行為に耐えるだけだった。白い歯を噛みしめ、体を委ねて喘ぎ続ける。
 だからといって、守は行為を早く終わらせたくはなかった。
 力強い締め付けが射精を激しく促してくるが、恋人の肉壺を堪能し続けたいという思いがそれを拒んだ。
 果てれば気持ちいいのはわかっている。しかしそこに到る過程をいつまでも味わっていたいという思いも同時にあり、往復をひたすら繰り返す。
「あ……んっ」
 色っぽくも聞こえる依子の喘ぎ。たとえ苦痛の声でも、それは守の聴覚を簡単にとろかす。
 ……色っぽい?
「ん……あ……んっ、んんっ……あっ」
 声に色が混じっている。締め付けは依然としてきついが、拒絶するような抵抗感はない。むしろ締め付けて離さないような。
(……感じてるのかな……?)
 守は腰の動きを少しだけ速めた。
「ふあっ!」
 それまでどこか抑え気味の声を洩らすばかりだった依子が、初めて大きな悲鳴を上げた。
「ごめんっ、痛かった?」
「……」
 返事はなく、依子は落ち着きない呼吸を続けている。
 はやとちりだったのだろう。守は乱暴にならないように腰の動きを再び抑えて、
「マモル……くん」
「……なに? どうかした?」
「……なにかヘンなの……」
「は?」
「痛いのに、痛くないの……頭がおかしくなりそうだよ……」
「…………」
 守は一瞬呆気に取られて、思わず腰の動きを止めてしまった。
 だがすぐに我に返ると、これまでよりも激しいピストンを打ち込み始めた。
「ひゃあ!? あんっ!」
 間を置いた不意打ちに、依子は甲高い叫びを上げた。
「やっ、あんっ、……マモル、くんっ、激し……あっ、あんっ!」
 もう無言ではいられないようで、最初よりもずっと大きく喘いだ。
 守は抑えていた衝動を一気に緩めた。汗と液でまみれた色白の太股に、体当たりをするように腰をぶつけた。
 ゴムに包まれた肉棒が奥まで突進する。根本まで完全に突き入れると、内側の肉がまとわり付くように蠕動した。
 腰を引く。亀頭が出る寸前まで引き抜くと、襞々が引っ掛かって堪らない刺激を与えてくる。
 再び奥まで貫く。すぐにまた引く。出し入れを重ね、互いの性器をゴム越しにひたすら擦り合わせた。摩擦でヒートしていく逸物は、まるで稼働中の電池のように熱かった。
 目に映るのは必死に耐える恋人の姿。しかし、苦痛よりも快楽の色が強く見えるのは、守の錯覚ではないと思う。

 守は腰の動きをさらに速めつつ、二つの胸の膨らみを鷲掴んだ。
「やっ……ダメっ」
 乳首を人差し指の腹で撫で潰すと、依子は一際高く喘いだ。
 執拗に柔らかい乳房を揉み回し、先っぽを刺激する。こねるたびにぴくぴく体が震えた。
 守はもう全力だった。依子の体と声と匂いしか知覚できないくらい、行為に陶酔し、没頭した。
 顔を近付け、胸から首筋に舌を這わせる。汗ばんだ肌の味はどこか背徳的な甘さがあった。
 下から順にキスを贈る。胸、鎖骨、首筋、顎、頬、目元、鼻、額。とにかくあらゆるところに守は唇を添えた。
 依子は揺れっぱなしの瞳を細めると、とても嬉しげな笑みを浮かべた。
「すき……だいすき……」
 喘ぎと暖房の音に掻き消されてしまいそうな、そんなか細い声だった。
 心どころか魂が締め付けられそうな程にゾクゾクした。愛しさが性欲を無茶苦茶に肥大させた。
 守は依子の背中に両腕を回すと、ぐい、と抱き寄せるように持ち上げた。急に対面座位の体勢にさせられて、依子はひゃっ、と驚きの声を上げた。
「マ、マモルくん……?」
 守は答えずに腰を突き上げた。
「あっ、いっ、」
 これ以上入らないくらい深々と肉棒が突き刺さる。さすがに痛みが走ったか、依子は顔を苦くしかめる。
 だが守は動くのをやめない。こんなに気持ちのいいこと、抑えられるわけがない。
「ふあっ、あんっ、やっ、やんっ、あ、あぁっ」
 最奥に亀頭の先が当たる。粘液が割れ目から染み出て、桃色のゴムの根本まで垂れてきた。陰毛と蜜が絡み合い、部屋の明かりを受けて淫猥に光る。
 守は歓喜する男性器の根本から先端まで、圧倒的な快感をむさぼるために意識をひたすらそれに傾けた。
 避妊具を着けていてもまったく快感は阻害されない。依子の膣内の熱と感触はめまいがしそうな程に気持ちよく、もういつ射精してもおかしくなかった。
「マモルくん……マモルくん……」
 うわ言のように依子は守の名を呟き続けた。守の首筋に両腕を回し、もたれかかるように上体を密着させてくる。
「あう……ダメ……」
 力なく体を預ける依子。もう何も考えられないに違いない。突き上げられる肉柱に合わせて反射的に腰を動かすだけだった。
 守はもう限界寸前だった。
 守は高まってきた射精感を、ギリギリまで溜め込み我慢する。
 この至福の時間はもう長くない。一秒でも長く、恍惚に浸っていたかった。
「あっ、んっ、あ、ひぅんっ、やあ……あんっ、ああっ……」
「依子ちゃん……もう……」
 二人は至近で見つめ合い、互いに嬉しさと気持ちよさの入り混じった笑みを浮かべ合った。
 欲望に覆い尽くされた男性器が激しく秘壺を掻き回す。女陰から愛液が飛沫となって散りそうな程に、二つの陰部は淫らに呼応した。
 やがて、頭の中が白い閃光に埋め尽くされるような感覚と共に、守は絶頂を迎えた。
「んん――――――っっ!!」
 ゴムの中に精液が吐き出されると同時に、依子の体が感電したように揺れた。
 震えはしばらくの間止まらず、依子は目を瞑って懸命に耐えていた。
 徐々に互いの体から力が抜けていく。しなだれる少女の体を優しく抱きとめながら、守は萎れた肉棒を引き抜いた。表面を粘液が伝い、避妊具が微かに光を反射させて輝いていた。
 二人は脱力した体を密着させたまま動かなかった。
 ぼんやりと目線を交差させた状態で何も言わず、ただ抱き合うだけだった。直接肌の温もりを、目の前の息遣いを、心臓の鼓動を、たくさんの汗と一緒に感じ合っていた。
 依子がにっこりと嬉しげな笑みを浮かべた。
 守もつられて笑った。そしておもむろに顔を近付けて、優しいキスをした。
 二人は抱き合ったまま、愛情を確かめるように唇を重ね続けていた。


「結婚?」
 翌日、朱音が言った一言に、依子は荷物をまとめる手を止めた。
「誰が?」
「りこちゃんが」
「……誰と?」
「まーくんと」
「…………」
 依子は目を細めて実の母親を見やった。
「……なんで?」
「え? だってりこちゃん、まーくんのこと好きなんでしょ?」
「いや、それはそうだけど……」一瞬の間。「……なんで知ってるの?」
「かわいい声だったからね」
 顔が刹那で真っ赤になった。昨夜の情事が脳裏に走り、依子はうつむいてしまう。

「かわいいわーりこちゃん。あっくん泣いてたわよ」
「……」
 そんなに大きな声を出していたという意識はなかった。出していたとしても広い屋敷の一隅でのこと、気付かれていないと思っていたのに。
 いや、まあそれはともかく、
「……だ、だからって、なんで……結婚……なんて」
 うまく声が出なかった。恥ずかしさが顔を真っ赤に覆っているようだ。
「愛し合った二人の行く末なんて、ハッピーエンドなら一つに決まってるじゃない。王子さまがニューヨークで花嫁を見つけることだってあるんだから」
 全然関係ないし、そもそもそれ映画だし。依子はため息をつく。
 少し落ち着きを取り戻すと、小さく首を振った。
「……ダメだよそんなの」
「どうして? 日本じゃ十六歳で結婚できるわよ」
「まだ高校生だもん。それに……」
 依子は昨日友達に言われたことを思い出す。
「……結婚もいいけど、簡単に道を決めてしまうのももったいない気がするの。まだまだ先は長いし、たくさん考えて決めたい。だって……楽しみたいもの」
「……」
 朱音は微かに眉を上げると、それからにっこり笑った。
「そっか。先は長いものね。結婚はちょっと早すぎたかな。お母さん先走りすぎちゃった」
「うん」
 依子は小さく笑う。
 荷物は少ないので整理はすぐに終わった。旅行鞄のジッパーを閉め、依子は軽い息を吐く。
 朱音が笑顔のまま言った。
「まあでも、婚約くらいは交わしてもいいんじゃないかしら」
「……婚約って」
 大袈裟なことだと依子は苦笑を浮かべる。
「……将来、マモルくんよりもっといい人が現れるかもしれないよ? そのときはどうするの?」
「それは絶対にありえないわね」
 断言された。
 依子は思わず口ごもった。正直自分でもありえないなと思っていたから。
 数日前まであんなにも態度を決めかねていたのに、今は体の内側に根を張るように、心はぶれない。
 縁が見えていたときとは違う安定感が、内面にあった。
「結婚なんてまだわからないけど……そうなれたらいいね」
「そのときは遠藤依子になるのかしら」
「……ん?」
 そのとき、唐突に思い出した。
 前に依子は自分の苗字を言いたくなくて、遠藤姓を名乗ったことがあったのだ。
 あのときは咄嗟に口から出ただけだったが、今になってそれが思い出されるなんて。
「……どうしたの?」
「ううん。言霊って、本当にあるんだなぁ、って思っただけ」
「? すみちゃんのこと?」
「違う。お姉ちゃんのじゃなくて……ううん、なんでもない」
 朱音は軽く首を傾げたが、すぐに微笑んだ。
「まあいつどこにいようと、りこちゃんはりこちゃんだもんね。苗字なんて関係ないか」
「……ありがとう、お母さん」
 依子は神守を名乗れなかった。緋水の名も、今は持っていない。
 それでも依子は依子だ。どんな姓を持とうと、それだけは変わらない。
 今なら百合原姓を名乗れそうな気がした。
 帰ったら友美になんて言おう。やっぱりただいまって言いたいかな。依子は義母の優しい顔を思い浮かべる。
「何時の電車に乗ればいいかな?」
「三時くらいのに乗ればちょうどいい時間じゃないかしら。それまでにまーくんちにも挨拶に行ってらっしゃい」
「うん」

 外は数センチ程積もった雪が地面を白く覆っていた。
 ぐしゃ、とした感触を足の裏に受けながら遠藤家に行くと、ちょうど火梁が道場を開けようとしていた。
「おばさん」
「ああ、依子ちゃん。今日守と帰るんだろう?」
「はい。だから挨拶に」
「またちょくちょく帰って来なよ。今回は守がそっちでお世話になったから、次はうちでごちそうしてあげるよ」
 男勝りの彼女だが、実は優しい人柄である。実の息子や兄には容赦ないが、それも一種の愛情表現なのだろう。
 依子が微笑で応えると、火梁も小さく笑った。
「悩みごとは解決したようだね」
「え?」
「昨日は元気なかったから。でも一晩で整理がついたのなら大したものだよ」
 見透かされるほど、昨日は元気がなかっただろうか。
 そもそも昨日はこの家を出た後の方が憂鬱で、火梁の前ではそんな素振りは見せていなかったはずなのに。
「……誰だって悩みはありますよ」
「そりゃそうだ。うちの愚息にさえ生意気にも悩みがある。だからあんたが悩んでいても大したことじゃない」
「……」
「でもなかなか解決しないから悩むんだろう? じゃあやっぱりあんたは大したものだよ」
「……マモルくんのおかげですよ」
「あれが役に立ったのなら功名だ。あいつにも意味ができる」
 よくわからない言い草に首を傾げると、火梁は言った。
「あいつはあんたに必要な奴かい?」
「……はい。とても」
「そっか」
 火梁は一つ頷くと道場の鍵を外しだ。最近は門下生も減ってきててね、とぼやきながら扉を開ける。
 そして、
「あれはあんたの『盾』だ。望むなら、ずっと側にいてもらいな。未熟だが、きっとこれからは守ってくれる」
「え?」
 依子はまた疑問の声を上げた。
 マモルくんが、私の『盾』?
 火梁はもう何も言わなかった。ただ親指で家の方を指しただけで、そのまま道場の中へと消える。
 多分守は奥にいるという意味だろう。依子は釈然としないまま家の玄関へと向かった。


 守の部屋は家の一番奥にある。
 依子はドアの前で何度か深呼吸を繰り返し、二回ノックを重ねた。
「んー?」
 がさがさと騒がしかった物音が止まり、中から間伸びした声が聞こえた。
 入るね、と言ってドアを開けると、守が荷物整理をしていた。
「あ……」
 守の顔がりんごのように真っ赤になった。
 それを見て依子も急に恥ずかしくなったが、深呼吸が効いたのかすぐに落ち着けた。
「おはよ」
 いつもと同じく挨拶をすると、守は照れ隠しの笑みを浮かべ、もうすぐ正午だよと言った。
「……ちょっと不思議だな」
「何が?」
「たった一晩で、依子ちゃんが違って見える」
「……そ、そうかな」
 落ち着きが一言で掻き消された。赤面しながらよくそんな台詞を言えるものだ。
「三時の電車がちょうどいい時間だって」
「そうなの? じゃあちょっと急ぐかな」
 守は再び手を動かす。何やら部屋中引っくり返しているようだが。
「何やってるの?」
「母さんに後で送ってもらう荷物を整理してる」
「手伝おっか?」
「じゃあそっちの服なんかをお願い」
 依子は言われるままに、脇に追いやられた衣類を畳み始めた。
 しばらく無言で作業を進める。衣服は畳んだ先から段ボール箱に詰め込んでいった。

 不意に守がぽつりと言った。
「ぼくは昭宗さんの後を継げないみたいだ」
「……?」
 依子は怪訝な顔でいとこを見やった。
「母さんに言われたんだ。一つの盾で二人の人間を守れるのか、って」
「それは、」
「依澄さんの『盾』になるには、彼女を最優先に守れる人間じゃないと駄目なんだ。でも、ぼくは依澄さんを選ばなかった」
「……」
 心がズキリと痛んだ。
 だが後悔はしない。守に対する気持ちは本物だから。
「後継者の立場を外された、ってこと?」
「うん、そうなる。まあ後継候補は他にもいるからそれは大丈夫だけど」
 守は口を引き締めると、依子に向かって言った。
「だから、ぼくは君の『盾』になる」
「……え?」
 いきなりの宣言に依子は呆然となった。
「この前は君を守れなかったけど、もう二度とそんなことにならないようにする。ずっと側にいたいから」
「…………」
 これは――改めて、ということなのだろうか。
「プロポーズ?」
「え!?」
「違うの?」
「い、いや、その、……うん。まあ、そういうこと」
「すぐ結婚したいって思う?」
「……ちょっと早いかな。あと何年か待ってほしい」
「じゃあ婚約だけね」
 依子は守に近付くと、唇に軽くキスをした。
 驚きの顔を見せる恋人に、少女ははにかむ。
「約束」
「……うん」
 二人は照れくさそうに微笑み合った。


 依澄の運転する車で駅まで送り届けてもらうと、二人は無人の駅構内へと入った。
 後ろから見送りのために依澄もついてくる。昭宗と朱音は町の集会があるため来れなかった。
「依子」
 姉の声に依子は振り向く。
「なに?」
「……」
 依澄は何も言わず、ただ妹の頭を撫でた。
「……どうしたの? 急に」
 笑って返すと、依澄も微笑んだ。
 何も言わない。
 昨日の饒舌ぶりが夢だったかのように、元の無口に戻っていた。
 だが依子は気にしない。言葉がなくても、姉の心は充分伝わってきた。
 だから、依子は最高の笑みを返した。
「ありがとう、お姉ちゃん」
 依澄は微笑み、そして頷いた。

 踏み切りの音が聞こえる。電車がやって来る。
「いつか……」
「?」
「いつかお姉ちゃんを助けてあげられるような、そんな人間になるから」
 依澄は首を傾げた。どうやって、と動作で尋ねる。
「例えばお姉ちゃんの仕事の手伝いで、喋れないお姉ちゃんの代わりに商談をするとか」
「――」
 自分の欠点を突かれて、依澄は微かに動揺の色を見せた。
「例えばお母さんに任せっきりな会計を請け負うとか」
「……」
「例えばデジタルに弱いお姉ちゃんに代わって、ホームページを開いて管理・運営するとか」
「……」
「法曹になって緋水専属で雇ってもらうのもいいかもね。田舎だとそういうのにも困るでしょ」
「……」
 依澄は困ったように顔を曇らせた。
 依子はそんな姉の珍しい顔を面白そうに眺める。
「あは、何でも出来そうなお姉ちゃんだけど、結構弱点あるね」
「……」
 依澄はからかう妹の額を猫手でこつんと叩いた。依子はごまかすように笑う。
 大きな音を立てて、電車がホームに入ってきた。
「行こ、マモルくんっ」
「あ、うん。それじゃ、依澄さん」
 依子と守は停車を待って、開いたドアをくぐる。
 振り返って、依子は姉に手を振った。
「私本気だからね。絶対お姉ちゃん助けるからっ」
 依澄も微笑のまま手を振った。
 ドアが閉まる。外から姉が何か言ったような気がした。待ってますと聞こえた気がした。
 電車が動き出す。真横に流れていく駅のホームを、依子はじっと見つめた。
 しばらくして視界から姉の姿が消え、駅も消えた。そして牧村町の景色が現れた。
 依子は座りもせずに、ただそれを眺めていた。楽しそうに眺めていた。
 トンネルに入って何も見えなくなってしまうまで、依子はそうしていた。
 やがておもむろに守に向き直ると、満面の笑顔で言った。
「また一緒に帰ってこようね」
「うん」
 そのときカーブに差し掛かり、電車が大きく傾いて揺れた。
 二人は慌てて吊り革を掴み、難を逃れる。
 冷や汗混じりに顔を見合わせた。
「……座ろっか」
「そうだね」
 恋人たちは小さく笑い合った。

前話
作者 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
2008年01月20日(日) 11:12:44 Modified by n18_168




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