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君の匂いを 前編

「君達、止まりなさい」
休日の白昼、町の商店街を歩いていた僕達は、突然呼び止められた。
振り返ると、そこに立っていたのは警官の制服と制帽を身につけた若い男。
きちんとした身なりと、倣岸とまでは行かずとも他人に命令し馴れているその態度は、どこからみても警察官らしい。
腰にこれ見よがしに下げた一丁がモデルガンであることを除けば。
別に僕はグリップ部分を見ただけで拳銃の真贋を見分ける事ができるようなミリタリーマニアと言う訳ではない。
ただ金属の匂いも火薬の匂いもしなかったから。
「保護者の方は居るかな?」
「……」
「いえ、僕達二人で買い物です」
黙っている連れの少女に代わって正直に答える。
警官の格好をした男、まだ偽と決め付けるには証拠不足だが、はそれを聞いてとても嫌な匂いを放った。
焦げた髪の毛のような臭気が漂う。
サディストが獲物を捕らえ、これからいたぶると言う時に発する嗜虐心の匂い。
「実は……君達に似た中学生二人が家出してここ周辺を徘徊していると言う情報があってね。
いや、君達を疑っている訳じゃないが、これも仕事なんだ。一緒に署の方に来てもらえるかな」
失礼な、これでも二人とも高校生だ。
しかし、どうしたものだろうか。
この男、匂い云々は置いておくとしても、警察手帳は見せないは、同僚と連絡を取っている気配も無いはで、警官を名乗るには怪しい所がありすぎる。
このまま付いていっても、人気の無い路地裏かどこかに連れ込まれて、身包みはがれる可能性は非常に高い。
周りを見回すが、通行人は時折好奇の目線を向ける程度で、関わろうとする酔狂な人間は居ないようだ。
連れの方はと言うと、ボーっと立ち尽くしたまま何の反応も返してこない。
僕は意を決すると、息を思いっきり吸い込んだ。


「お巡りさ――ん! 偽警官が居ます! 助けてください!」
警官の格好をしたその男は、恐怖の匂いを放ちながら僕達を置き去りにしてその場から走り去ろうとする。
十メートルほど離れた所で周りの様子を伺い、悔しそうな顔をした。
本物の警官なんて、勿論いない。
あの男が本物なら、勿論逃げる必要なんてない訳で。
そして正体を明かされた以上、衆人の目があるここでは僕達をどうすることもできない。
偽警官は訳の判らない罵声を浴びせると、足早に立ち去っていった。
溜息をつく僕。
「やれやれ、災難だったね。案内の途中だけど、もう帰ろうか?」
無関心げに立ち尽くしていた彼女は、こくんと一つ頷いた。
帰路に付く僕の数歩後ろを、彼女は黙って付いてくる。
僕は無い頭で必死に話題を探ったが、その殆どは行きで既に喋り尽くしていた。
「どうして」
ぽつりと彼女が呟く。
彼女の方から話題を振ってくるなんて、ここ二日間で無かったことだ。
僕は少し嬉しくなった。
「どうして、偽警官だって判ったんですか」
これまた話し辛い話題を。
僕は取り合えず誤魔化しておく。
「なんとなく、勘だよ。勘。
ここら辺を偽警官がうろついてるって噂もあったしね」
嘘をつくことに対し、若干心が痛む。
彼女は目を伏せ、
「変なことを訊いてごめんなさい」
と、一言。
会話が続かない。
気まずい。
余り経験したことの無い雰囲気に、僕は戸惑っていた。




僕は生まれつき鼻が利く。
お医者の話によると、どうやら通常の人間の三倍の種類の匂いを嗅ぎ分けられるようだ。
感度も非常に高く、種類によれば犬やネズミを遥かに超えているらしい。
特に敏感なのが、ヒトの感情が発する匂いに対してだ。
人間は嬉しい時、怒っている時、悲しい時、いくらその感情を押し隠していても特有の臭気を発する。
さすがにテレパシーみたいに思考が筒抜けなんていうことは無い。
けれど周囲の人間の喜怒哀楽くらいならば手に取るように判る。
将来警察官になれば警察犬と嘘発見器の代わりになれるだなんて、父さんと母さんは笑っていた。
けれど、普通の人は自分の感情を他人に知られるなんて御免だろう。
特に女の人ならば体臭を嗅がれるなんて屈辱でしかない。
だから、僕はこの体質のことを隠している。
知っているのは両親を除けば、かかり付けのお医者とその知り合いの信用できる学者数名くらいだ。

悪い体質ではないとは思う。
色々な制約はあるが、他人の感情に気をつけていれば大抵のいざこざには巻き込まれずに済むし、労せずして場の空気を読むことが出来る。
友達の感情を嗅ぎ分け、"気が利く良い奴"との評価を得るのも悪い気はしない。
今回のような厄介事にも巧く対処することができる。
だけど、この能力はけして万能じゃない。
たまに、居るのだ。僕でも全く感情を読み取ることのできない人間が。
笹川袖もそんな例外の一人である。


彼女が家に来たのは、つい昨日のこと。
出張中の両親から「親戚の子を預かることになった」との電話がかかってきたのが夕方の六時だった。
昔、正月の時何回か顔を合わせた事がある。その程度の関係の娘。
親戚とは言え歳の近い男女を一つ屋根の下に住まわせるなんて、どうかしている。
勿論、理由は訊いた。
父さんは「詳しい話は帰ってから話す」
母さんは「わが息子を信用している」
訳が判らなかった。
自慢の鼻も、相手が受話器の向こうでは通用しない。
それでも、向こうで何かゴタゴタが起こっているのは感じ取れたので、それ以上は訊かず電話を切った。
彼女が家に着いたのがその十分後、丁度僕が出迎えに行こうと服を着替えていた時だ。
その時から、僕と彼女の奇妙な共同生活が始まったのだが。


「えーっと。さ、笹川さん」
「はい」
椅子に座ってじっと俯いている彼女に、意を決した僕は声をかけた。
「お茶が入ったんだけど……」
「お手伝いしますか」
いや、そうじゃなくて。
早速意思が挫けそうになる。
「飲む?」
「ありがとうございます。いただきます」
湯呑みを受け取ると彼女はゆっくりと音を立てず傾ける。
僕は暫し、その人形めいた美貌に見惚れていた。
きらきらと光を反射する長い髪。
唯一の飾り気である黒い鼈甲の髪飾りに映える。
物憂げに伏せられた長い睫毛。
そして、漂ってくる瑞々しい香草の様な香り。
ただ、その表情から、行動から、体臭から、感情がごっそりと抜け落ちている。
彼女の意思そのものが感じられない。
問いかければ返事はしてくれる。
当たり障りの無い、無難な返事を。
彼女から話しかけてることは滅多に無く、自分の要望を表に出すことは決してない。
かすかに記憶に残る、もっと小さかった頃の彼女は、ここまで極端ではなかった。
(どうにかして、喜ばせてあげたいんだけどな)
そうしたら、きっと彼女は素晴らしい香りを放ってくれるんじゃないだろうか。
そこまで考えて、自分の変態的な思考に唖然とする。
どうやら僕は相当自分の鼻に振り回されているようだ。
頭を振って、思考を切り替える。
彼女はお茶を飲み終えていた。
「ごちそうさま。おいしかったです」
全然美味しいと感じてる人の匂いがしてこないのは残念だ。
「お粗末様、お風呂もう沸いてるだろうから先に入っちゃって」
「はい」
着替えを取ると風呂場のほうへと歩み去る彼女を見送る。


扉が閉まると、僕は緊張感から解放されて溜息をついた。
正直、彼女とどう接してよいのかわからない。
鼻が通用しなくなるだけで、人との距離の取り方がわからなくなってしまう。
それでも、彼女のことが気になるのは、ほんの僅かに漂ってくる独特な匂いのせいだろうか。
何かを我慢しているような匂い。
僕には、彼女が自分と言うものを無理矢理押さえ付けているように感じられる。
あんな小さな体で、一体何を堪えていてると言うのか。
(ひょっとすると、僕?)
年頃の女の子にとって、若い男と二人っきりで同じ住環境に放り込まれるなんて状況は、普通に考えると耐え難いことだ。
僕の事を嫌がってるのに、気付いてやれていないと言う可能性。
十分有り得る。
僕は更に気が重くなって気を紛らわすために湯呑み二つを洗ってしまおうと腰を上げた。
ふと、視線が壁に付いているガス計に向く。
点灯していない。
つまり、今熱湯の蛇口を捻っても、湯が出ない。
彼女が風呂場に向かってから、もうとっくに十分過ぎている。
「いや、そんな馬鹿な」
僕は恐る恐る風呂場の方へ向かった。
電気はついている。
誰かが向こう居るのは気配で判る。
だが、曇りガラスの反対側が結露しているようには見えない。
「笹川さん」
呼びかけてみる。
返事は無い
「笹川さん!」
声を張り上げるが、それでも返事は聞こえない。
彼女は無口で声が小さいから聞こえないだけだろう。
僕の中の臆病な部分がそう囁くが、最悪の可能性への恐れがそれを打ち消した。
「笹川さん、入るよ。嫌ならきちんとそう答えて」
僕は心の中で更に十秒数えると意を決し引き戸に手をかけた。
冷気を頬に感じる。
湯気が全く立ち上っていない。
苦痛の、匂い。
手足を折り曲げ小さく縮んだ彼女は、唇を真っ青に変色させて、冷水が満たされた風呂桶に浸かっていた。




ヒーターとエアコンをガンガンに回し、ブレーカーを落とさない様コンロで牛乳を温める。
砂糖を入れて飲み易くし、毛布に包まっている彼女に渡す。
「熱いから気をつけて。ゆっくり飲むんだよ」
伸ばされた腕に浮かぶ黒く変色した痣には気付かない振りをする。
腕だけではない。
風呂桶から引き上げる際、彼女の手足の所々に青痣が浮かんでいるのを見てしまった。
恐らくは、虐待。
彼女が家に来た理由の一つが、ようやく判った。
しかし、預けるなら僕よりももっと相応しい人間の所に預けるべきだろう。
そこだけは未だに判らないが、僕の成すべきことに変わりは無い。
僕はまず、彼女を知らなければならない。
「笹川さん」
びくりと彼女は震えた。
「水風呂に入ったのは、僕に風呂に入って来いって言われたから?」
彼女は静かに首を左右に振った。
彼女が嘘をつくのは、これが初めてかもしれない。
「僕はそんなこと、君に望んじゃいない」
彼女はびくりと震えた。
かすかに漂う恐怖の匂い。
それすらも一瞬、すぐに匂いは消え無表情を取り戻す。
最初、彼女は僕の注意を引くためにこんな自傷じみた行為をしたのかとも考えた。
でも、きっとそれは違う。
他人の言うことには、一切疑問を差し挟まず、一字一句馬鹿正直に従う。
そして、ひたすら自分を殺し、耐える。
それが彼女の処世術なのだろう。
まるで人形じゃないか。
僕は首を振って悲しみと苛立ちを振り払った。
「別に怒っちゃいないよ。けど、君が不必要に傷つくのは悲しい」
彼女が目を上げる。
「どうして、ですか」
「友達のことを思い遣るのは、可笑しい?」
少し図々しかっただろうか、まだ碌にコミュニケーションを取れていないのに、友達だ、なんて。
すっと彼女はソファから腰を上げた。
牛乳が入っているマグカップを床に置き、僕の方へと近付く。


「な、なに?」
すっと伸びてくる彼女の細い腕。
なんとなく、僕はその手を取ってしまう。
彼女は弱々しくそれを握り返してくる
彼女の掌は、冷たい。
暫くすると、突然彼女の目から涙が零れ出た。
溢れ出る悲しみの匂い。
声も無く、ただぽろぽろと涙を零す彼女を見て、僕は大いに慌てふためく。
何か泣かせるような事をしてしまったのだろうか。
嫌悪の匂いはしなかったので、握った手を離す様な事はしなかったが、どうしたら良いかは全く判らなかった。
「ごめんなさい」
彼女は静かに呟いた。
「馬鹿なことをしてしまって、ごめんなさい」
その時、僕は漸く気が付いた。
彼女は人形なんかじゃない。
他人の感情を理解できる、人の悲しみに共感して泣く事ができる優しさをちゃんと備えていて。
けれど自分のそれをどう表現したら良いか知らない。
きっとそれが許されなかったのだろう。
だから、ただ他人の言われるがままに行動する。
そんな状態が正しいとは、思えない。
僕はもっと彼女のことを知りたい。
彼女の魂の匂いを感じたい。
僕はそっと、袖を抱きしめた。

その晩。
風呂桶から運ぶ際覗き見てしまった彼女の肢体や、抱きしめた時の彼女の感触。
そして彼女の素肌から直接嗅いでしまったハーブみたいな体臭を思い出し、一人ベッドの上で悶々としてしまったのは、又別の話。

◆MZ/3G8QnIE
2008年09月27日(土) 00:53:02 Modified by n18_168




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