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泉水(仮題)続き

春休みになって何が変わったかといえば、泉水の行動パターンが変わった。
朝の九時半ころになると、からからと音を立てて窓が開き、カタツムリのように緩慢に動く物体が入ってきて、ひとのベッドに勝手に潜り込むのだ。
言うまでもなく、この偽カタツムリは泉水だ。俺がまだ寝ていてもお構いなしに同衾してきやがるのである。
そんな日は、目覚めて最初に目に入るのが泉水の寝顔ということになるわけだ。
もちろん悪い気はしない。いとしい彼女の眠りこむ姿は、なかなか愛らしくて朝から心が和む。
ただ――そういうことが続くと、俺の中のケダモノが餌を欲して荒れるわけで。
かといって、世界に悩み苦しみが存在するのが信じられなくなるほど安らかに熟睡する泉水を、性欲のために起こすのは忍びない。
ていうか多分、起こそうとしても起きない。
近所でトラックと乗用車の事故があって、俺なんかはその音で飛び起きたというのに、泉水の眠りはまるで妨げられていなかったから。
そして正午ごろになると、自然と目覚めて自分の家に昼食を作りに帰る。
それが済むとまた泉水は戻ってきて、三度寝を決め込むなり、ひとのマンガを読むなり、ひとのゲームをするなり、適当に行動する。
自堕落という概念を極めるのに挑戦しているのだろうか。たまに俺はそう思う。
まあ、長期休暇の時は、昔からこんなだったが。
だから俺は春休み中、泉水はずっと同じように生活するんだろう――そんな風に思っていた。
昨日の夜までは。


それは、俺が朝食をとって部屋に戻ってきた際のことだった。
ドアを開けて真っ直ぐ前の窓が泉水の家に面しているのだが、ちょうど泉水が部屋の窓を開け、のそのそと外に出てくるところだったのだ。
空気抵抗に負けそうなくらいのスローペースで泉水は歩き、屋根と屋根の間のわずかな隔たりも、ごく慎重にまたぎ越える。
それだけなら、いつもどおりの泉水だ。服装もいつもの色気無いだふだぶパジャマであるし。
だが、まとう空気と、抱きしめたウサギのぬいぐるみが、普段との相違点だった。
泉水は俺の部屋の窓の前に立つと、なぜか動きを止めた。
ぬいぐるみを最後の寄る辺のように強く抱きしめて、その場でただ俯いている。
……窓を自分で開けるつもりさえ、ないようだ。
そんくらい自分でやれやァ! という突っ込みも、今日ばかりは湧いてこない。
俺は歯噛みする。怒りが向くのは泉水にではない。家族というものの価値を理解しない、愚昧な連中に対してだ。
窓を開けてやると、今度は右手を差し出してきた。
このひどく小柄な幼馴染は、造作もなく引っ張り込むことが出来た。
「おはよう、泉水」
「…………」
返事はない。いつものことと言えばその通りだが、沈黙のニュアンスが違うのだ。
無言で俺の横をすり抜け、泉水はベッドにもぐり込んだ。
ぬいぐるみを抱きしめたままにふとんをすっぽり被り、幼子のように体を丸める。
「…………ごめんなさい、ゆーや……眠らせて」
何言ってやがる。いつも勝手に寝てるくせに。断る必要なんてないんだよ、ばかたれ。
俺はベッド脇に膝をついて、泉水の頭をそっと撫でた。
「存分に寝ろよ。満足するまで使っていいから。……おやすみな」
泉水はゆっくりと頷いた。目を閉じて、まるで落下するみたいに一瞬で眠りこむ。
目のまわりには薄いクマができている。本当に、これが古根泉水だなんて誰が思う? いつも眠ってばっかりいるくせに。
いや、眠ってばかりいるからこそ、一夜眠れないだけでここまでダメージが出るのかもしれない。
椅子に座る。軋む音さえ出さないように用心しながら。
「……昨日、うるさかったもんな」
こっそりと独りごちる。
そう、昨日の夜は実に騒々しかった。田舎名物の暴走族がいたわけじゃない。
醜い醜い夫婦喧嘩が、繰り広げられただけのことだ。
……夫の浮気に端を発した古根家の崩壊は、ひどくスムースに進行したらしい。
泉水が小学校を卒業する少し前にはすでに、両親は外に新しい恋人を作って、滅多に自宅に寄り付かなくなっていたのだ。
それだけなら……どこにでもある、悲劇の一つでしかなかったのかもしれない。
けれど泉水の親は真性のカスだった。どちらも一人娘の面倒を見ようともせず、打ち捨てるように放置しやがった。

自分が事実上捨てられたのだと悟った辺りから、泉水は圧倒的に無気力になっていった。
生きるために必要な最低限の家事だけをこなし、あとは逃避するように眠り続けるか、俺の家でだらだらするだけ。
こいつの高校の同級生に、小学生のときのこいつが、いつも昼休みには男子に混じってサッカーに興じてたなんて明かして、何人が信じることか。
それでも、自分ひとりきりという状況に慣れてしまったんだろう、ここ数年は彼女なりに安定していた。
時折、気まぐれで両親のどちらかが帰宅した翌日は精神的に不安定だったが、それも一日限りのことだった。
だが昨日。
忌々しいことに、運命のサイコロはクソしょうもない目を出した。
泉水の両親の帰宅日が、かぶったのだ。
結果が昨日の騒音だ。近所迷惑という言葉を脳内から紛失してしまったのか、両親は日付が変わってもなお、罵詈雑言の応酬を続けていた。
収まったのは――2時ごろ、だろうか?
それまで泉水に何度かメールを入れたが、返事が来ることはなかった。
何をしていたのだろう。あの戦場みたいな家で。
こういうとき、まだ自分がガキに過ぎないことがもどかしくなる。
あの家に飛び込んで、泉水の親父をボコって、母親をねじ伏せて、泉水を奪還できたらと思う。
いや、それこそ子供の発想か。簡単に解決できるような類の問題でもない。
……はぁ。
俺が深く嘆息した時だ。
部屋のドアが、前触れなくバタンと開けられた。
「友哉いる? ……お、泉水ちゃん来てたのかい」
突然のことで心臓を躍らせる俺に目をやって、母は怪訝そうにする。
「何してるの、アンタ」
とにかく俺は口の前に人差し指を立てて静寂を要求。母の声はでかすぎるのだ。
ややボリュームを落として、母は再び口を開いた。
「……まあいいけど。昔の友達から連絡来てね、ちょっと会いに行ってくるから。晩御飯までに帰れないようだったら連絡するから。あと昼は自分で何とかしなさい」
「ああ、はいはい。わかったよ」
「こりゃラッキーとか思って泉水ちゃんに変なことするんじゃないよ、彼氏だからって」
「しねえよ!」
俺は小声で叫ぶというハイテクニックを披露することになった。
息子の反応を信用していないのは顔から明らかだったが、すぐ母は関心の対象を変えた。
「あら、泉水ちゃん、なんか生えてない?」
何言ってるんだコイツは。
そう思って泉水を見ると、なるほど、掛け布団から白くてフワフワしたものが二本突き出ている。
それで「生えてる」という表現はいかがなものかと思ったが、俺は件の物体の正体を告げた。
「うさぎのぬいぐるみの、耳だろ。えらく古い感じのものだったけど、今日は持ってきたんだよ」
「ぬいぐるみ? へえ」
興味をそそられたか、母はそっとベッドに近づいて、掛け布団を少しだけまくった。
中身を見ると、呆れた様子で俺に向く。
「なぁにが『えらく古い感じの』だか。アンタが昔プレゼントしたものでしょうが」
「……俺が?」
母にならって布団をめくってみた。
――本当だ。
日焼けしてるし年季を感じる汚れ方をしているしで見逃していたが、これはまだ小さい時、なけなしの小遣いをはたいて買ってやった……。
「こんなものまだ持っててくれてるなんて、ほんと泉水ちゃんはアンタに過ぎた彼女だわ」
頬に手を当てて、母は溜息。俺より相応しい彼氏のビジョンでも考えているのかもしれない。
「……わかってるよ」
「ならいいわよ。ちゃんと支えてあげな。あたしゃ出るからね」
へいへい、とぞんざいに返事する俺に含み笑いして、母は出て行った。
一人残され、夢の世界に滞在し続ける眠り姫を見やる。穏やかな顔。規則正しい寝息。深い睡眠のサインだ。
目覚めた時のために、昼飯でも用意しておこう。そう思い立ち、俺は立ち上がった。

などと言ったところで、俺の調理能力なんてたかが知れている。
メニューはチャーハンである。漢らしく単品勝負。いや、望むならインスタントのスープをつけてもいい。
そんな程度である。しかも多少てこずった。一人暮らしになる未来が心配だ。
手間取ったせいか、気付くと時計の針は12時を回っている。
非常にハイレベルな億劫屋である泉水も、さすがに食事の面倒は自分で見ているが、あの調子だと朝を食べてはこなかっただろうな。
様子をうかがって、起こせそうだったら食事に誘うか。
そう判断したとき、俺の耳は階段の軋みを聞きつけた。
きぃ、きぃ、と、幽霊が歩いているようなわずかな音だったが、果たして台所にやってきたのは泉水であった。
ぬいぐるみを抱いたまま、のたのたと現れた泉水は、無言で食卓の椅子にぽすんと腰掛けた。
隣の席にぬいぐるみを座らせて、いつも以上に生気のない、濁りきった視線をこちらに向けてくる。
「……………………」
目は口ほどにモノを言うと聞くが、この目から情報を読み取るのは不可能だった。
とはいえ、わざわざ食卓に自分からやってきたのだ、匂いでも嗅ぎつけたのだろう。空腹なのはまず間違いない。
「スープいるか? インスタントのわかめスープだけど」
「……………………」
こくこく。
「大盛り小盛り、どっちがいい?」
「……………………おおもり」
リクエストに答えて皿に盛り付け、スプーンと一緒に目の前に置いてやる。
「召し上がれ」
「いただきます……」
風前の灯という形容を思いつかせる、そんな声で応え、泉水はスプーンを手に取った。
さて、俺もいただこう。


「…………ごちそう、さま」
「お粗末さん」
言って、玄米茶をなみなみと湛えた湯呑みを置いてやる。
泉水は湯呑みを両手で包むようにして、俯き加減にちびちびとすすり始めた。
食器を流しに片付けて、俺も泉水の対面に座り、茶を飲みだす。
「…………」
「…………」
昨日の出来事には触れない。昔から泉水は自分の家庭の話題を好まないからだ。
古根家で何が起ころうと、寺原友哉はいつも通りに古根泉水に接する――いつしか成立した、確たる不文律だ。
例外があるとするならば、それは古根泉水から自分の家について語るときのみ。
そして今が、その瞬間だった。
「お父さんと……お母さんは、さ………………」
湯呑みに目を落としながら、泉水は訥々と話し出した。
「…………お互い好きだから、結婚したんだよね………………?」
「……そうだったんだろうな」
返事を間違えてはならない場面だ。なんとなく直感する。
「好きで、だいすきで…………わたしがゆーやに対して持つような気持ちで、結婚したんだよね……?」
「たぶん、そうなんだろうな」
「――じゃあ!」
大声。一瞬誰が言ったのか分からなかった。それくらい、泉水の大きな声には馴染みがない。
「…………ゆーやは、いつか、お父さんみたいに……わたしを嫌いになるの?」
ばかな。
何を言い出すんだ。
「そんなわけ……」
あるか――と続けようとしたのに、言葉は最後まで出てくれなかった。

顔を上げた泉水が、ぽろぽろと涙をこぼすのを見たら、喉が機能を止めてしまったのだ。
「わた、しも、いつかっ、…………ゆーや、を、嫌いに、なっちゃうのかなぁっ…………」
小さな子供みたいに、ひっく、としゃくり上げる泉水。
「ヤダよぉ…………ゆーやのこと、好きでいたいよ…………」
「……泉水」
「おとうさんとおかあさんみたいに、なりたく……ないよぅ」
席を立つ。泉水は泣き止まない。昨日の我が家の惨状を思い出しているのだろう。
強く愛してあっていたはずの二人が醜悪な闘争を繰り広げる、悪夢じみた光景を。
俺は泉水の後ろに回って、そっと背後から抱きしめた。
「なぁ、耳の穴かっぽじってよく聞け泉水。確かに未来のことはわからんよ。俺たちがお互い嫌いあうようなことだって、そりゃありえる」
腕の中で、泉水が身を固めた。だから俺はなおのこと優しく抱きしめる。
「でもな、俺たちはお前の親御さんから学べただろ? たぶん――好きでいるっていうだけじゃ、不足なんだって」
「…………?」
首をねじって見上げてくる視線を俺は見返す。
「きっと努力が必要なんだよ。好きであり続けるための。抽象的で悪いけどな」
「どりょ、く…………?」
「そう。直してほしいところはきちんと言うとか。下手な秘密を作らないとか。まだ俺にはこの程度しか思いつかねえけど、これから考えていこうぜ」
恋愛というのは、まるで何の関わりもなかった他人同士が一緒になることなんだ。
軋轢が生じるのは当然のこと。
だから、それを解決していかなくちゃならない。
もちろん、それは……
「……二人で一緒に、考えていこうぜ。まだこの先、長いんだからさ」
泉水はぱちぱちと瞬きをする。パジャマの袖で涙をぬぐって、ようやく俺に笑顔を見せてくれた。
「…………うん」
おなじみ、薄明の笑み。けれど何故かいつもより確かなその笑顔は、山の端から太陽が昇りくる気配を感じさせるものだった。


とまあ、ここまでなら『ちょっといい話』で幕が下りるのだが、そうは問屋が卸さなかった。
問屋というか、泉水が。
あれから抱きしめた姿勢のまましばらくいたのだが、おもむろに泉水が、
「…………しよ」
とお誘いをかけてきたのだ。健康的な男子高校生である俺に、それを拒むことができるだろうか?
彼女からお誘いがきて、それを断る十代男子……そんな存在は非科学的である。正体はプラズマだ。
俺は物理法則に従う一般人なので当然、一も二もなく快諾した。
結果、いまこのシチュエーションが生まれたわけである。
ベッドの上に足を開いて座った俺の膝の間には、泉水の小柄な肢体が収まっている。
さっきと同じように俺が後ろから抱きしめた格好で、俺は問う。
「お前から誘うなんて珍しいなあ」
「…………」
リアクションなし。俺は泉水の肩にあごを載せて、横目で表情をうかがった。
「…………」
泉水は首を動かし、ほんのりと赤く染まった顔をこちらに向けた。視線が絡む。
「……ゆーやが慰めてくれて、うれしかったから、お礼」
言うとすぐに泉水は視線を外した。うつむき、ベッドに目を逃がして、ためらうように続きを口にする。
「それに、……しばらくしてなかったし。からだも慰めてほしいなぁ――って」
か、かわいい。
マジで可愛い。こんな娘が彼女でいいのかと馬鹿丸出しなことを思わせるくらいに。
「泉水、こっち向いて」
幼馴染の呼吸で、言外のニュアンスを汲んだらしい。泉水は俺の言葉に従い、そっと目を閉じた。
唇が重なる。

最初は子供が戯れにするような、軽いキス。それを何回か繰り返す。
薄く目を開けて、泉水が言う。
「……いいよ」
それを合図にして、俺は再び唇を重ねた。今度は深い、恋人のものだ。
俺が舌を伸ばすと、泉水は受け入れる。
口内を歯ぐきの裏側まで遠慮なく舐めまわす。
唾液のにちゃにちゃという音と、互いの荒くなりつつある息だけが部屋に満ちていく。
「…………ぷぁ、……んっ、ふぅ」
そんな吐息にリビドーをさらに強く刺激され、俺はほとんど犯すように口内を貪った。
……やがて、おずおずと泉の舌が俺のそれに絡む。
熱をはらんだその器官は、ヘビみたいに俺の舌に絡みつく。
口の中でセックスの縮小版を演じるように、俺たちは舌で交合をおこなった。
互いの唾液が互いの口内を行き交い、もともとどちらのものだったか判別できなくなっていく。
そんな時間が経ち、俺たちはどちらともなく唇を離した。
透明な粘液の橋が口の間にかかり、そして切れた。
泉水はすでに陶酔しつつあるようで、もともと明瞭ではない瞳が、官能でさらに曇っている。
「……ゆーや、すき」
「俺も好きだよ、泉水」
もう一度、触れるだけのキスを交わして、俺は泉水を抱きしめていた手を胸に這わせた。
やや小ぶりだけに、サイズの大きなパジャマを着ていると見た目には分からなくなってしまう胸だが、手で触れるときちんと感触が返る。
「ふぅ……」
「ボタン、外して」
小さく息を漏らす泉水に求めると、泉水はおとなしくボタンをひとつひとつ外していった。
前だけをはだけた状態になる泉水。俺はブラジャーの上から、ゆっくりと柔らかな膨らみを揉みほぐしていく。
「やぁ、はふ、……ふぅぅ……あ、あ…………」
すぐに欲情で熱された喘ぎがもれだす。
「気持ちいい?」
聞くと、耳まで真っ赤になった顔をこくんと動かす。では次は……
俺は胸を捏ねていた手を片方離脱させて、ブラのホックを外した。ブラジャーが抵抗なく落ちる。
真っ白な乳房と、桜色の突起が同時にあらわになる。先端はすでに、ぴん、と尖っていた。
指で両方をむにむにと挟む。適度な弾力が心地よい。
「ゆっ、やぁ、き、きもちいい……」
細い肢体がぴくぴくと悦楽にふるえる。調子に乗って俺は指で頂点をこしこしと扱いた。
「あ、あ、そ、それいいっ……ゆーや、あ、あんまりされるとっ……」
「イッちゃう?」
勢いよく、何度も頷く泉水。
「じゃ、遠慮なくどうぞ」
ぎゅっ――と少し強めに乳首を挟み潰す。瞬間、
「きゃはぁっ!」
――びくびくっ、と泉水が跳ねた。
荒い息を繰り返す泉水のうなじに舌を這わせながら、俺は根性の曲がった問いを発する。
「イッた?」
「…………こう、いう時のゆーやって……ちょっと、サド」
「サドい俺は嫌いか?」
泉水はぷい、と顔をそむけた。本気でないのは、露骨にふくらませてみせた頬が教えてくれる。
俺は笑う。そしてうっすらと汗をかいた肌の上をすべらせて、手をへその下に導いた。
泉水がすぐにパジャマのズボンを膝まで下げる。無駄に阿吽の呼吸。
右手の触れるそこは、すでに白いショーツまで濡れている。湿っている、ではなく濡れている。
「スケベ」
「……ゆーやには、言われたくない……………………」
ぷいと泉水はそっぽを向く。ちょっと唇の端からよだれが垂れているのにも気付かないやつが言うかい、それを。

「ふぅん。泉水さんはスケベではありませんか」
指をショーツ越しに、スリットに触れさせ、上下になぞる。温かくて、そしてねちょついた感覚。
俺に対抗するつもりか、泉水は指の腹をくわえた。声を出さないつもりらしい。
無駄な抵抗だ。指で膣口を探り当て、ぐりっと布越しに押し込んだ。指先が熱い肉に包まれる。
「! …………ふぁ」
「声出てるぞ?」
指摘すると泉水は肩を震わせ、さらに指を強くくわえる。
だが、蜜壺をひと押しするたびに、泉水の眼は潤みをまし、下の口はとろとろと愛液を吐き出していく。
時に強く押し込み、時に優しく膣口を撫でる……そんなことを繰り返しに、声こそ上げなかったが、肢体をくねらせて反応する。
「ふぁ、は、あ、あ、あ……」
もう指がほとんど口から外れているのにも気付かないようで、泉水はすっかり「女」になった声をあげ、涎をたらたらと零す。
「いいだろ?」
「あはぁ、ゆーやの指っ、きもちいぃのぅ……」
「へえ。やっぱり泉水はスケベなんだな?」
「…………」
あれ、もう少し良くしてやってから訊くべきだったかな――と俺が思った時、泉水は言った。
「………うん、わたしはすけべな子なの。ゆーやに指でされただけで……とろとろにしちゃうくらい。くりとりすで、イカされたくなっちゃうくらい……」
そして、こっちを向いて、快楽への期待で潤みきった上目遣い。
おねだりされて無碍にしては男が廃る。俺はショーツに手を差し入れた。淡い茂みを通過して、その下の、神経の集中点をそっと撫でる。
「う、うん、そこ、そこ好きなのっ」
これまでの刺激で陰核は固くなっていた。わずかに包皮から露出したところを指の腹で揉むたび、泉水の腰はぴくぴくと震えた。
「い、いきたいっ、ゆーや、いきたいよおっ」
蕩けきった声の懇願。俺は包皮を剥いて肉色の真珠を親指の爪でひっかき、中指を熟した秘所にねじり込んだ。
瞬間。柔肉に差し込まれた指が、強烈な膣襞の締め付けを受けた。それこそ食べられるかのように。
「いっ――ああああぁああぁぁぁっ!」
泉水の全身がびくん! と跳ねた。一度の大きな痙攣だけでは終わらず、その後も陸に打ち上げられた魚のように全身が痙攣する。
後ろから抱きしめて、泉水の絶頂が収まるのを待ち、そっと囁きかけた。
「気持ちよかった?」
「……」
熱っぽく吐息する泉水の応えはない。がっくりと垂れたこうべだけが、気だるげに縦に振られた。
なんか、こうしてる泉水はまるっきり大人の女って風情だな。それもかなり経験豊富な。
行為の時以外の無気力で甘えん坊な泉水とのギャップが、またそそる。
そんなことをぼんやり考えてると、
「…………あたってるよ」
ぼそりと呟かれた。
「まあな」
ご指摘の通り。俺の分身はさっきから臨戦態勢で、がちがちに硬直している。泉水はさぞ背中に熱いモノの感触を感じているだろう。
「泉水が、えろ可愛いから」
泉水はそれを聞くとベッドに仰向けに転がり、
「……じゃあ、そんなゆーやさんに、わたしをあげましょう」
いつもの淡い笑みで、悪戯っぽく告げた。
願ってもない申し出だ。すぐさまズボンとトランクスを脱ぎ捨てて、覆いかぶさり……
「そういえば今日は、口でしてくれないんだな?」
と、ふと頭に浮かんだ疑問をそのまま言葉にした。だいたい本番の前には、泉水から口淫してくれるのが俺たちの間での定番になっている。
逡巡するように視線をさまよわせるが、最後には何か決心を固めたらしい。手を伸ばして、枕元に配備されたゴムを、泉水は床に放り出した。
「――あの、泉水さん? 避妊が出来ませんが」
「…………」
「挿れちまうよ? 生でさ」
「……………………」
「おーい、泉水?」
「………………………………いいよ」

かすれた声。極限までひそめられた声はしかし、俺の鼓膜をたしかに振動させた。
「……ゆーやに全部あげたい。なかに最初に出すのは、ゆーやじゃなきやヤダ」
脳の奥がしびれる。言葉なんてただの音なのに、どうしてこうも俺の本能を激しく揺さぶるのか。
泉水の言葉が続く。
「ほしいなら、おしりの初めてもあげるよ。…………わたし、ゆーやにそれくらいしかあげられないもの」
そして、わずかに外していた眼を、俺のそれとしっかり合わせた。
「……いいの? 彼女がゴムもなしで…………ずぽずぽしていいって言ってるのに、ゆーやはしないの? 大丈夫な日なんだから、遠慮しなくていいんだよ?」
泉水はほほえむ。
女としての媚と、少女としての愛らしさの入り混じった、矛盾の笑顔。
……我慢できない。できるわけない。屹立した分身を粘膜の入り口に押し当てる。
それだけで泉水は恍惚に身を震わせる――が、言っておかなくちゃいけないことだけは、きちんと言うことにする。
「泉水。俺、お前から沢山もらってるよ。体だけじゃなくて。泉水が好きでいてくれるってことだけで、すげえ満たされるんだから」
「……ゆー、や」
「それと!」
互いの吐息がかかる距離まで顔を近づける。ぱちぱちと瞬きする泉水に、告げる。
「俺は泉水の最初の男だ。そんで、……絶対、最後の男だからな」
「…………」
何かを言うように、口を開き――また閉ざす。
代わりというように、泉水はゆっくりと頷いた。ひと粒の涙をこぼして。
「いくぞ」
行為の開始を告げる。
言葉はなく、俺の背に回された細い腕が返答だった。
――突き入れる。
熱く、にゅるにゅる絡みつく孔を削り込むように突き進み、最後にこつんとやや硬い感触を先端で味わう。
奥の奥まで、届いた。
きゅうううう、と吸い込むような締め付けが襲ってきて、気を抜くと出してしまいそうだ。
俺を思い切り抱きしめながら、目をぎゅっとつむって身体をがくがくさせているところを見ると、泉水は一突きでイッてしまったらしい。
奥を小突かれるの好きだもんな。
そう思って、俺は腰を使う。時に子宮の入り口をつつき、時に天井側にこすりつけるように。
その度、泉水は可愛らしく鳴いた。
「ゆーやぁっ、ゆっ、やぁ、すきぃ、すきなのぉっ」
快楽に蕩けきった声が俺の名前を呼ばう。愛情を訴え、同時に求める言葉がつむがれていく。抱きしめる腕の力は強くなっていく一方だ。
「俺、も、好き、だっ……」
切れ切れの声しか出ない。さらに強く腰を打ちつけていく。
ずん。
「あぁああっ!」
ずん。
「ひううっ!」
ずん。
「う゛、ああぁ! き……きちゃうよぉっ! ゆーやぁっ、わたしっ、……もうぅっ!」
泉水の高みが近づいているようだ。現に、温かい泥濘のような膣は一突きごとにどろどろと愛液を吐き出し、締め付けは強まり続けている。
こちらも限界も近づいている。俺は突くピッチを上げた。
ぱん、ぱん、という肉のぶつかる音が間断なく部屋に響く。
「……いずみ、俺、もう限界だわ……」
ゴムの皮膜一枚。それがないだけで、ここまで受ける快感は違うものなのか。射精感の高まりは、もう我慢できるレベルではない。
「きて、ゆーやっ、きてぇ! わたしのなかで、だしてぇっ!」
淫猥な請願。俺はほとんど抜ける寸前まで腰を引き、余力を総動員して打ちつけた。
こりっ、という最奥の感触がトドメとなった。子宮口に思い切り男根を押し付けて、俺は射精した。
「は、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

弾けるような嬌声。同時に達した泉水の膣は、一滴たりとも精液を無駄にしないというかのように、きゅうきゅうと締まって俺の分身を吸い上げた。
「すご、こんなぁ、すごいのぉ、はじめてっ……」
泉水は熱に浮かされたような調子でつぶやく。虚ろな瞳が虚空をさまよう。
俺は泉水の締め付けが弱まるのを待って、ずるずると息子を抜き出す。
それすら快楽を与えたか、「ふぁあぁぁ……♪」と泉水は口から唾液をこぼしながら甘く吐息した。
抜き終え、俺はようやく自分が汗まみれになっていることに気づく。顎まで垂れてきていた汗の滴を手の甲でぬぐう。
対して泉水はといえば、陶酔しきった表情でお腹をさすっている。まるで母親のようだった。
「……おなか、あつい………………しぁわせぇぇ…………」
ほとんど意識が飛んでいるようだった。
けれど、拡げられた膣口から白濁液をとろとろとこぼす泉水の淫靡な姿に、俺の劣情は即座に蘇生する。
泉水、と耳元に口を近づけ、2回戦をしたいと申し出ようとする。
が、その前に、弛緩しきった姿からは想像できないくらい素早く、泉水が唇に吸い付いてきた。
舌が割り入ってくる。ぴちゃぴちゃという唾液の音を耳にしつつ、俺も負けじと舌を絡める。
暫時過ぎて、ようやく泉水が離れてくれた――かと思うと、俺の首にしがみつき、再び頬や額に口づけの雨を降らしてくる。
「ゆーや、ひゅき、しゅきぃ……♪」
……どうも、理性の光をどっかに落っことしてしまったのらしい。泉水の眼は快楽と淫欲で曇りきっていた。
今なら、普段ちょっと頼みづらかったこともいけるかな、と俺は打算を働かせた。
耳孔に唇を寄せ、ささやく。
「泉水、もう一回していいか?」
まったく間を置かず、泉水は受け入れる。
「……いいよぉ? もっと、いかせてほしい…………なかに出してほしいもん」
「じゃあ、上に乗ってもらってもいいか?」
こくん、と頷かれる。
即答だよ、おい。こんなことならもっと前に頼むんだったな。今だからこそ、かもしれないが。
俺はベッドに仰臥する。泉水は怒張をいとおしげに撫でさすり、それから跨り、自分の中へとゆっくり導いていった。
やわらかな肉に、先端から徐々に包まれていく感覚。射精直後でなければヤバかったかもしれない。
とはいえ快楽に酔っているのは俺だけではなかった。
俺自身が泉水に沈みきり、先端にやや固い感触が突き当たった瞬間、粘膜が激しく蠕動したのだ。
見れば、俺の上で泉水が声もなく悶えていた。ゆるみきった顔が、絶頂したことを雄弁に知らせている。
俺は少々根性のひねた心持ちになり、腰を軽く揺すった。
途端、堪えられなくなったか、泉水の鳴き声が部屋に響いた。
「だ……だめ、なの、ゆーやっ、こ、腰……とけちゃうよぉ」
「そうは言ってもなあ」
俺は結合部へと手を伸ばし、薄い茂みを指でかきわけ、充血した芽を指でつまんだ。ひっぱると、ぷしゅ、と透明な液体が飛ぶ。
「……かっ」
声にならない声を発して仰け反る泉水。再び柔肉がうねうねと動く。
「動いてもらわないと気持ちよくなれないんだが」
「…………」
軽く睨まれた。ぼそっと「……ドS」と呟いたのも聞こえた気がする。
まあ、もうすっかり愉楽の虜になった泉水のこと、すぐに言うとおり、腰を動かしだしてくれた。
部屋に、嬌声と粘膜の擦れあう音だけが満ちていく――――。

……結局、4回した。
若いって良いよなあと当事者のくせに他人事っぽく思考して、俺は横でぐっすりと眠る泉水に目をやった。
すやすやと童女のように無垢な表情で安逸をむさぼる顔を見ていると、この世の悩み苦しみの存在がフィクションのように思えてくる。
ここでタバコでも吸って静かに煙を吐き出せば、それらしいシーンになるのだが、生憎俺はタバコを嗜まない。未成年だし。
なので――ひたすら、寝転んだまま恋人の寝顔鑑賞にいそしむことにした。
そうして、空の陽光の勢いが弱まるころ、泉水の双眸がゆっくりと開いた。
「おはよう」
「…………」
焦点の合わない瞳が、ぼうっと俺の顔を見つめる。
「あんなに泉水がえろいとは知らなかった」
「……………………………………。――――!」
聴覚情報を脳が処理したか、両目がいつもより大きく開かれ――すぐに、いつもの眠たげな目に戻る。
泉水は無言で、ちょいちょいと手招き。
何かと思って起き上がらないままに身体を泉水側にずらすと、わが幼馴染は俺の首筋に頬をすりよせ、抱きついてきた。
なんか嬉しい。俺も抱きかえす……って泉水さん。背中に回った手の指が、肩甲骨のあたりに「S」と書き続けるのは何のアピールですか?
どんな顔をしてるかと思って見てみれば、そこにはいつもの薄明めいた笑みがある。
少しばかり、からかうようなテイストが混入されてはいるが。
そのまま、泉水はくちびるを動かした。
声なきコミュニケーション。
動きを読むなら――ゆ・う・や・だ・い・す・き……といったところ。恐らく正確。
「俺も大好きだよ、泉水。ずっとそばに居てくれな」
――ゆーやこそ。
声なき声でそう告げて、泉水は首筋にひとつ、軽いキスをしてくる。
「……でもお前、急にいつも以上に話さなくなってないか。なんで?」
くちびるが動く。無表情に。
――今日だけで5日分くらい喋ったから、もう声を出したくない。
ありえない理由だった。
こんな理由で話さないやつは日本に3人もいないだろう。
というか泉水しかいないはずだ。他にいたりしたら嫌過ぎる。
「泉水……お前ってやっぱ色々極まってると思う」
指摘すると、くく、とネコみたいに喉を鳴らして笑い、もう一度くちびるが動く。
――そんなやつを好きになっちゃうなんて、ゆーやは変わり者だね。
「ホント、惚れた弱味だ」
俺は苦笑して、泉水のくちびるをそっとふさいだ。



前話
作者 1-379
2007年12月13日(木) 09:58:03 Modified by ID:Lz95Wvy+ew




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