獅子舞(仮題)
正月早々獅子舞が俺の部屋にやってきた。
嘘ではない。ガチッ、ガチッと歯を鳴らして、今現在俺の部屋の真ん中で佇んでいる。
ベッドの上にいた俺は、手元の漫画本を取り落とした。
何事か、と目をしばたく。獅子舞はゆっくりと近付いてきた。
かぷり。
頭を噛みつかれて、俺はようやく声を出した。呆れた声を。
「……お前なにやってんの?」
噛みつかれたときに中の人間が一瞬見えた。隣に住んでる幼馴染みの女の子だった。
「普通に入ってこいよ。びっくりしたぞ」
反応はなく、代わりに歯がガチガチと鳴った。
「わかんねーよ。ちゃんと喋れ……っていつもと同じか」
普段から口下手なので、ジェスチャーでコミュニケーションを取る彼女。
しかし今回のはあまりに変化球すぎだ。
だがまあ、とりあえず、
「あけましておめでとう。今年もよろしく」
ガチッ、ガチッ。
音であいさつを返された。
「それ取ってくれよ」
首を振る獅子。
「顔見れないだろ。お前の顔、ちゃんと見たい」
動きを停める獅子。
「無理矢理取っちまうぞ。ついでに押し倒してやる」
焦ったように回れ右をする獅子。
俺はそんなかわいい獅子を、後ろから抱きかかえた。
暴れる獅子の体から唐草模様の布を剥ぎ、獅子頭を取ると、よく知る小さな女の子が現れた。
「ようやく会えたな」
「……」
少女は顔を伏せて目を合わせない。
俺は実力行使に出た。
彼女を抱えこむと、そのままベッドに押し倒した。
やっと正面から顔を合わせる俺たち二人。
恥ずかしそうに目を瞑ろうとする彼女に、俺は顔を近付け囁いた。
「獅子舞の獅子にガジガジされると縁起がいいらしい。というわけで、いいかな?」
何が? と眉を寄せる彼女に俺は優しくキスをした。
体を強張らせた少女は、しかし次第に全身から余計な力を抜いていく。
噛むことはなかったが、代わりに伸ばされた彼女の舌の先が、俺の口内を甘く溶かした。俺も舌先で彼女の口内を深く深く味わった。
このかわいい獅子がいれば、今年もいい年になりそうだった。
作者 4-119
嘘ではない。ガチッ、ガチッと歯を鳴らして、今現在俺の部屋の真ん中で佇んでいる。
ベッドの上にいた俺は、手元の漫画本を取り落とした。
何事か、と目をしばたく。獅子舞はゆっくりと近付いてきた。
かぷり。
頭を噛みつかれて、俺はようやく声を出した。呆れた声を。
「……お前なにやってんの?」
噛みつかれたときに中の人間が一瞬見えた。隣に住んでる幼馴染みの女の子だった。
「普通に入ってこいよ。びっくりしたぞ」
反応はなく、代わりに歯がガチガチと鳴った。
「わかんねーよ。ちゃんと喋れ……っていつもと同じか」
普段から口下手なので、ジェスチャーでコミュニケーションを取る彼女。
しかし今回のはあまりに変化球すぎだ。
だがまあ、とりあえず、
「あけましておめでとう。今年もよろしく」
ガチッ、ガチッ。
音であいさつを返された。
「それ取ってくれよ」
首を振る獅子。
「顔見れないだろ。お前の顔、ちゃんと見たい」
動きを停める獅子。
「無理矢理取っちまうぞ。ついでに押し倒してやる」
焦ったように回れ右をする獅子。
俺はそんなかわいい獅子を、後ろから抱きかかえた。
暴れる獅子の体から唐草模様の布を剥ぎ、獅子頭を取ると、よく知る小さな女の子が現れた。
「ようやく会えたな」
「……」
少女は顔を伏せて目を合わせない。
俺は実力行使に出た。
彼女を抱えこむと、そのままベッドに押し倒した。
やっと正面から顔を合わせる俺たち二人。
恥ずかしそうに目を瞑ろうとする彼女に、俺は顔を近付け囁いた。
「獅子舞の獅子にガジガジされると縁起がいいらしい。というわけで、いいかな?」
何が? と眉を寄せる彼女に俺は優しくキスをした。
体を強張らせた少女は、しかし次第に全身から余計な力を抜いていく。
噛むことはなかったが、代わりに伸ばされた彼女の舌の先が、俺の口内を甘く溶かした。俺も舌先で彼女の口内を深く深く味わった。
このかわいい獅子がいれば、今年もいい年になりそうだった。
作者 4-119
2008年01月20日(日) 08:39:08 Modified by n18_168