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調子に乗ってみますた

 俺の目の前で、従姉妹殿が苦悩している。
 眉根を寄せて、握りこぶしを震わせて、そのつぶらな瞳を今は険しくして、問題を見据えて動かない。
 俺も、少しだけ後悔する。
 悪気は無かった。むしろ善意のつもりだった。それが、この子をこんなにも苦しめるなんて……。
 ああ、できうることなら俺は時間を遡り、この子を苦しめる原因を取り去ってしまいたい……!
 ……などと気分を盛り上げてモノロってみたが、まぁいつまでも従姉妹殿にむーむー唸らせておくわけ
にも行かないので、こちらか水を向けてみる。
「なぁ……ショートケーキとレアチーズケーキ、どっちがいいか決まったか?」
 ……従姉妹殿はじっと見詰めていた二種類のケーキから顔上げると、泣きそうな顔でふるふると首を
振るのだった。
 こんなに悩まれるなら、どっちか片方にしておくんだったなぁ。

 叔父貴に留守番を命じられるに当たり、俺が思ったのは従姉妹殿のことだった。何がいいかは知らないが、
どうやら俺はあの子に懐かれたらしい。らしい、と曖昧なのはどうにも無口な従姉妹殿の口から、その
あたりを明言されてないからであるが、まぁ間違いはないだろう。
 で、懐かれて悪い気もしないし、たまには手土産の一つもぶら下げていくかとケーキ屋に立ち寄ったのは
いいが……あの子の好みを知らないのでと、安全策に走って二種類のケーキを注文してしまったのが
この無間地獄の入り口であった。

 結局、大人の知恵を駆使することにした。要するに「半分こ」である。もちろん、ショートケーキの
イチゴ搭載部分は従姉妹殿に進呈した。
 そして従姉妹殿は、両方のケーキを代わりばんこに食べて、ご満悦だ。
 どちらも半分以上残してる彼女に対し、俺の方はといえばすでに平らげている。
 食後の一服が欲しいところだが、まぁ従姉妹殿の手前、コーヒーで我慢することとする。
 口の中に残る甘ったるさを苦味で洗い流しながら、俺は見るとはなしにテーブル向かいの従姉妹殿の
奮闘を見物した。
 どこか危なっかしい手つきでフォークを駆使し、口の周りを派手に白くしながら、しかし幸せそうにケーキを
頬張っている。 まぁここまでおいしそうに食べてもらえるなら、ケーキも本望と言うものであろう。
 そのまま俺が、おいしく召し上がられて天国にいけたケーキに対し、粗末に扱われて闇の世界に堕ちた
ケーキたちが宣戦布告する大河ドラマを妄想していると、ハタを顔を上げた従姉妹殿と目があった。
 俺の方は、闇の反逆ケーキ軍に王都を包囲された光の神聖ケーキ軍の、その最後の力を振り絞った
無謀な反抗作戦そのものを囮とした、王族脱出作戦の顛末を妄想しながらぼーっと従姉妹殿を眺めて
いたが、従姉妹殿の方は急に挙動不審になった。
 さっきまでの彼女のように眉根を寄せながら、俺の顔とケーキを何度も見比べている。

「……?」
 そして俺の脳内で、主人公が母と思っていた人物の死に際に、彼女は王妃の侍女であり自分は神聖
ケーキ軍の王族の血を引く最後の一人であると打ち明けられ祖国復興のための旅立ちを決意する所まで
妄想が進んだあたりで、ようやく従姉妹殿に動きがあった。
 意を決したような表情でケーキをひとかけらフォークに刺すと、
「……ん!」
 それを俺に差し出してきた。
 ……どうやら、そちらをぼんやり見ていたのを、「ははん自分のケーキは食い終わっちまったぜでも
そっちにはケーキまだ残ってるなぁいいなぁいいなぁ欲しいなぁ分けてくんねーかなー」とでも思っていた
モノと考えられたようだ。
 とんでもない誤解である。俺が今考えていたのは、王子の旅立ちに同行を申し出た幼馴染兄妹の、
妹の方のツンデレ台詞だ。
 いやそうでなくて。
「いや、そりゃお前の分だ。気を使わなくていいから食え」
 俺は努めて寛容な大人の態度を装って丁重にお断りしたのだが。
「……んっ!」
 従姉妹殿はテーブルの上に身を乗り出し、ますます強い調子でフォークを突き出すばかりだ。
「……あー」
 これは、断れんか。
 仕方なく俺は身を乗り出し、従姉妹殿の手ずからのケーキを頂戴する。
「うまかったよ、ごっそさん」
 口の中の甘みを我慢しながら笑顔でこう言えた俺を、自分で褒めてやりたい。
 しかしまぁその甲斐はあったようで。
「…………♪」
 従姉妹殿は、にぱっと明るい笑顔を浮かべてくれたのである。


 まぁ、そんな俺の献身に対し、叔父貴夫妻の帰宅後「不規則な時間に余計なおやつは与えないように」
と遠回しに叱られる、と言う形で報われたのは、まぁいいオチがついたというべきだろう。

 そうそう、余談だが。



 王子はその後、救援を求めて和菓子の国に向かうそうだが、まぁ関係ない話だよな。
2011年08月24日(水) 10:39:52 Modified by ID:uSfNTvF4uw




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