無口で甘えん坊な彼女 〜彼女と雑誌〜
いつものように秋葉の部屋で俺達は思い思いに過ごしていた。
二人の間に会話が無いのは別に喧嘩しているからではない。これもいつものことだ。
ここ数年で口数が増えたものの秋葉は無口だし、俺自身も騒ぐのは好きじゃない。
俺は教科書を、秋葉はお気に入りの雑誌『月刊無口っ娘通信♪』を読んで過ごしていた。
「ん、どうした?」
ふと気付くと秋葉が後ろからのぞきこんでいた。
背中から抱きつき俺の肩にあごを乗せている格好だ。真横に秋葉の顔があるとドキドキする。
「………」
柔らかいほっぺたを少しだけ膨らまし、とても小さい声でむーむー唸っていた。
どうやら分からないらしい。無理もない、文系の秋葉には何がなんだかさっぱりのはずだ。
「あの、秋葉。お願いだから今は頬ずりしないでくれないか、もう少しで読み終わるから」
これ以上密着されると勉強どころではなくなる。
不満そうに唸る秋葉を無視し急いで読み終えた。内容が頭に入ったかは不明だが。
そうする間も秋葉は俺の背中にしがみつきながら、首筋に顔を埋め頬ずりしていた。
今日はいつも以上に甘えてくる。普段から甘え上手な秋葉だがいつも以上だ。
「あ、そうか。そんな時期なんだもんな」
「……うん」
秋葉は母親を亡くしている。
だから母親の誕生日など思い出に関わる日が近づくと甘え具合があがるのだ。
前に回ってきた秋葉は胡座をかいた俺の中に収まった。ポニーテールがくすぐったい。
手には例の雑誌。一緒に読もうということらしい。
「…読んで」
「え?いやそんなの」
「だめ……?」
俺は秋葉には勝てない気がする…この時期の超甘えモードなら特に。
「へへ…ありがと」
いつも以上に言動が幼いのは仕方ないのかもしれない。まるで子供に絵本を読み聞かせるようだ。
「…昔、お母さんがやってくれたの」
そんなことを呟きながら俺の胸に頭を倒してきた。
さて、どこを読めばいいかな。確か秋葉の好きな作家さんが書いた小説がどこかに…
「ってこれは………秋葉、本当に読まないとダメか?」
こくこくと頭を縦に振る。
「あのさ…今回内容がエッチなんだけど」
「…嘘つき、変態」
「いやいやほらよく見ろ」
雑誌を読んでいた秋葉だったがしばらくすると顔が真っ赤になった。
「…前は違った」
それは俺も知っている。
少なくともこの雑誌は全年齢が対象のはず。PTAに言われないか心配だ。
「どうする?読む?」
「……後で一人で読む」
たとえ内容がなんであろうと好きな作家さんのだけあってちゃんと読むのか。
パタンと雑誌を閉じた秋葉は俺の腕を自らのお腹に回し、より体を密着させた。
身長は大して変わらないはずなのに腕の中に入ってしまうのは何故だろう。
「…雪春の匂いがする」
心底落ち着いているのは幼き頃の母親との思い出がよぎっているからだろうか。
しっかりもののようで甘えん坊な秋葉。その全てが愛おしい。これからも守ってやりたい。
そんなことを考えていると急に秋葉が振り向く。
「雪春…大好き…」
大好きという言葉は秋葉の口癖。でも言われ慣れることなんて未だになかった。
愛してるとか大人っぽい言葉は使わない。大好きというのは本人の素直な気持ちなんだろう。
「秋葉?」
動かなくなったと思ったらリズムよく寝息を立てていた。
母親を思いだしリラックス仕切ったのだろうか。
時計を一瞥する。まだ帰らなくても大丈夫だ。もう少しこのままでいよう。
一体どんな夢を見ているのか。幸せそうな寝顔はこっちまで幸せな気分になる。
共に俺も眠ることにした。腕に秋葉を抱きながら眠れるなんて贅沢だから。
おやすみ、秋葉。
二人の間に会話が無いのは別に喧嘩しているからではない。これもいつものことだ。
ここ数年で口数が増えたものの秋葉は無口だし、俺自身も騒ぐのは好きじゃない。
俺は教科書を、秋葉はお気に入りの雑誌『月刊無口っ娘通信♪』を読んで過ごしていた。
「ん、どうした?」
ふと気付くと秋葉が後ろからのぞきこんでいた。
背中から抱きつき俺の肩にあごを乗せている格好だ。真横に秋葉の顔があるとドキドキする。
「………」
柔らかいほっぺたを少しだけ膨らまし、とても小さい声でむーむー唸っていた。
どうやら分からないらしい。無理もない、文系の秋葉には何がなんだかさっぱりのはずだ。
「あの、秋葉。お願いだから今は頬ずりしないでくれないか、もう少しで読み終わるから」
これ以上密着されると勉強どころではなくなる。
不満そうに唸る秋葉を無視し急いで読み終えた。内容が頭に入ったかは不明だが。
そうする間も秋葉は俺の背中にしがみつきながら、首筋に顔を埋め頬ずりしていた。
今日はいつも以上に甘えてくる。普段から甘え上手な秋葉だがいつも以上だ。
「あ、そうか。そんな時期なんだもんな」
「……うん」
秋葉は母親を亡くしている。
だから母親の誕生日など思い出に関わる日が近づくと甘え具合があがるのだ。
前に回ってきた秋葉は胡座をかいた俺の中に収まった。ポニーテールがくすぐったい。
手には例の雑誌。一緒に読もうということらしい。
「…読んで」
「え?いやそんなの」
「だめ……?」
俺は秋葉には勝てない気がする…この時期の超甘えモードなら特に。
「へへ…ありがと」
いつも以上に言動が幼いのは仕方ないのかもしれない。まるで子供に絵本を読み聞かせるようだ。
「…昔、お母さんがやってくれたの」
そんなことを呟きながら俺の胸に頭を倒してきた。
さて、どこを読めばいいかな。確か秋葉の好きな作家さんが書いた小説がどこかに…
「ってこれは………秋葉、本当に読まないとダメか?」
こくこくと頭を縦に振る。
「あのさ…今回内容がエッチなんだけど」
「…嘘つき、変態」
「いやいやほらよく見ろ」
雑誌を読んでいた秋葉だったがしばらくすると顔が真っ赤になった。
「…前は違った」
それは俺も知っている。
少なくともこの雑誌は全年齢が対象のはず。PTAに言われないか心配だ。
「どうする?読む?」
「……後で一人で読む」
たとえ内容がなんであろうと好きな作家さんのだけあってちゃんと読むのか。
パタンと雑誌を閉じた秋葉は俺の腕を自らのお腹に回し、より体を密着させた。
身長は大して変わらないはずなのに腕の中に入ってしまうのは何故だろう。
「…雪春の匂いがする」
心底落ち着いているのは幼き頃の母親との思い出がよぎっているからだろうか。
しっかりもののようで甘えん坊な秋葉。その全てが愛おしい。これからも守ってやりたい。
そんなことを考えていると急に秋葉が振り向く。
「雪春…大好き…」
大好きという言葉は秋葉の口癖。でも言われ慣れることなんて未だになかった。
愛してるとか大人っぽい言葉は使わない。大好きというのは本人の素直な気持ちなんだろう。
「秋葉?」
動かなくなったと思ったらリズムよく寝息を立てていた。
母親を思いだしリラックス仕切ったのだろうか。
時計を一瞥する。まだ帰らなくても大丈夫だ。もう少しこのままでいよう。
一体どんな夢を見ているのか。幸せそうな寝顔はこっちまで幸せな気分になる。
共に俺も眠ることにした。腕に秋葉を抱きながら眠れるなんて贅沢だから。
おやすみ、秋葉。
2011年03月28日(月) 22:41:52 Modified by ID:E1Kb05pzbg