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1-527 かおるさとー氏「縁の傷 沈黙の想い」2

『振り回してしまってごめんなさい』
静梨がメモ帳を広げて頭を下げた。
「静梨ちゃんが楽しかったならぼくは満足だから、そんなに謝らないでよ」
「……」
申し訳なさそうに小さくなる静梨。
そういう態度はやめてほしかった。静梨の笑顔を見たいのだから、そんな顔はしないでほしい。
それに、今から聞かなければならないこともある。
「ねえ、静梨ちゃん」
呼び掛けに顔を上げる。
訊きたいことがある、と言うと、小首を傾げた。
「森嶋君という子、知ってるよね」
静梨の顔が、心なしか強張ったような気がした。

観覧車が真上に差し掛かった。
「君は事件の時、彼と会わなかった?」
目が微かに揺れる。
しばらくの間の後、静梨はペンを執った。がりがりと強い音が響く。
『なんでそんなことをきくんですか』
漢字も、句読点も、クエスチョンマークもない冷淡な文だった。まるで、冷徹に心を閉じているような、色のない文面。
何かある。それを敏感に感じとる。
何がある? それを明確に問いただす。
「ぼくは彼が犯人なのかもしれないと疑っている」
自分の考えをはっきりと述べる。静梨は何を思っているのか、悲しそうに目を伏せた。
「彼が君に告白したことを聞いたよ。君は優しいから、彼に負い目を感じているんじゃないかって思っているんだ」
いやいやをするように頭を振る。聞きたくないように頭を抱える。
守はかわいそうに思ったが、覚悟を決めて踏み込んだ。
「君は彼をかばっているんじゃない? 彼が犯人と知っていて、それを誰にも言わないでいるんじゃ」
乾いた音が密室に響いた。
平手打ちが守の左頬に鳴ったのだ。
泣き出しそうな瞳で、静梨は守をにらみつける。
「……ぼくは、君を元に戻したい」
負けないように見つめ返すと、静梨は僅かに怯んだようだった。
「正直、森嶋君をどうこうする気はないよ。ぼくはただ、君の声を聞いてみたいだけなんだ。……でも、そのために何をどうすればいいのか、皆目見当がつかない」
それは紛れもない、守の本心だった。
声を聞きたい。笑顔を見たい。本心を知りたい。その思いは真剣で、真摯なものだ。
頬が熱い。その痛みは彼女の心の痛みのようで。
きっと、今なら理解出来ると思った。
「ぼくに出来ることならなんでもする。君の声を取り戻せるならなんでもやれる。だから、どうかぼくを信じてほしい。お願いだから、頼ってほしい」
傲慢な台詞だとわかっていた。何も出来ないかもしれないのに、何か出来るようなことをほざいている。
それでも構わなかった。はったりで彼女を救えるなら、いくらでも虚勢を張ってやろう。
不意に、静梨の手が伸ばされた。
赤くなった左の頬を、癒すように撫でる。守は座席に座りながら、呆然と静梨を見上げた。
小さな空中密室の中で、少女は静かに佇む。
ゆっくりと観覧車が下へと下りていく。まだ太陽はオレンジに届いておらず、強い光が二人を照らしている。
静梨の右手が離れ、ペンを執った。さらさらと静かな音が流れる。
少し長い文のようだ。ページに何らかの文を書くと、裏のページにも何かを記した。
書き終えた文面を見せられ、守はそれを丁寧に追っていく。
『あなたのことを信じたいです。だから信じます。ちゃんとあの日のことを話したいと思います。守さんになら話せるから』
真心がこもった文章は、とても綺麗だった。
文章はまだ続いていた。
『それと、守さんにお願いがあります。聞いてくれますか?』
視線を僅かに上にずらすと、静梨の真剣な顔があった。まじまじとその顔を見つめ、守はやがてこくりと頷いた。
静梨はその所作を認めると、おもむろにページをめくった。
そこにあった内容に、守は、
『今夜、守さんの部屋に連れていって下さい』
観覧車が下に下り切る。密室が、消える。
二人が過ごす遊園地の時間が終わろうとしていた。

午後八時。
日の光は完全に地の向こうに消えている。窓の外は真っ暗で、仄かに街灯の光が射すだけだ。それさえもカーテンに遮られ、室内を照らすのは真新しく白い蛍光灯だった。
いつもは一人の、守の部屋。
その空間に今、失語の少女が座っている。
イタリア料理店で夕食を済ませた後、守は静梨の要求に応えて自室へと誘った。
タクシーで移動する間、二人は何のやり取りもしなかった。口もメモ帳も開かず、ただ車の揺れに身を任せていた。
そして、今。
静梨はベッドに腰掛けながら、両手でスカートの一片をぎゅっと握り締めている。
守は困惑気味に頭を振る。何でもするとは言ったものの、何を望まれているのかわからない。守にしか出来ないことというのは何なのか。
「静梨ちゃん……?」
名を呼ぶと、少女は文字を綴り始めた。
差し出された紙に、守は息を呑む。
『今日、泊めて下さい』
何を考えているのだろう。あんな事件があった後で、信じられない要望だった。
「……どうして?」
怪訝な表情でつい強く問いかけた。静梨は口を真一文字に結んで動かない。
「……家に連絡入れるよ。どっちにしろ、昌子さんが心配するから」
微かに静梨の体が震えたが、守は構わず電話を入れた。
コール三回で祖母は出た。
『もしもし』
「あ、昌子さん。こんばんは。ぼくです、遠藤です」
『遠藤さん? いつも静梨がお世話になっております』
声質は柔らかく、慇懃だった。しかしその裏には、孫への心配が見え隠れするようで、守は心底申し訳なく思った。
「すみません。こんなに遅くまで」
『いいえ、大方静梨が我が儘を言ったのでしょう? 御迷惑をおかけしてごめんなさい』
「あの、実はそのことなんですが……」
言いかけたところで、横から何かが耳元に迫った。
静梨の右手が携帯電話を引ったくった。守はいきなりのことに反応出来なかった。
そして、
「お……ばあちゃん……」
守は静梨に何かを言おうとして、固まった。
今……喋った……!?
電話の向こう側からも、驚きの気配が伝わってくる。
「わたし……きょうは……かえ、らない……から」
初めて聞いた声は、何かに耐えるように苦しげだった。
守の目は少女の姿に釘付けになる。
「おねがい……この……きかいを、のがし……たく、ないの……」
少女の双眸に涙が浮いている。
「うん……だい、じな……こと……から」
しかし、その目は何かの決意に支えられているようで、強い光を宿している。
「うん……かわ、るね」
筐体が耳元から離れた。その手からそのまま携帯を返される。
「もしもし?」
『遠藤さん。あの静梨を……』
「え?」
『遠藤さんがよろしければ、今夜静梨をお願い出来ますか?』
「な……何をおっしゃってるんですか。そんなこと、」
『一ヶ月ぶりだったんです。あの子の声を聞いたの』
思わず口をつぐんだ。
『このままずっと喋れないままなんじゃないか、何度もそう思いました。でもさっき、あの子の声を聞けて思ったんです。遠藤さんなら、あの子の笑顔を取り戻せるんじゃないかって』
それは盲信なのではないか。口には出さないが、内心で呟く。
『あの子にはあの子なりの考えがあるんだと思います。だから、少しだけあの子の話を聞いてあげてほしいのですが……どうでしょうか』
すぐには答えられなかった。

目を瞑り、しばらく黙考する。
「…………」
まぶたの裏に映るのは、先程の静梨の強い目の光。
「……わかりました」
守は承諾した。
「明日の朝には必ずそちらに送り届けますので、一晩だけ静梨さんをお預かりします」
『ありがとうございます。静梨を……よろしくお願いします』
「はい」
はっきりとした返事を出し、守は通話を切った。
そして、床にへたりこんだ静梨に向き合う。
「静梨ちゃん」
「言いたいことはわかってます……なぜ喋れたのか、ですね?」
静梨の声は先程よりも明瞭になりつつあった。守は頷く。
「あなたがいっしょだからですよ……」
「……え?」
予想外の答えに間の抜けた声が漏れた。
「あの日……私は二人の男に襲われました。目隠しをされて、場所もわからないまま、相手の顔も見えないまま、その……お、犯されて……」
声に苦しさが混じる。静梨は我慢して続ける。
「抵抗したら殴られました。暴れたら蹴られました。痛くて、苦しくて、すごく……怖かったです」
「……」
「私、途中からずっと黙ってました。泣きながら、それでも声を殺してました。どうしようもないくらい汚されましたけど、声を出したらもっと酷いことされるから」
「……」
「気付いたら、声を出せなくなってました。口がいうことを聞かないんです。怖くて、怖くて……」
声が微かに震えている。守は静梨の肩に手をやり、無理しないでと囁いた。大丈夫、と静梨はさらに言葉を紡ぐ。
「でも、守さんがそれを救ってくれました。少しずつですけど、恐怖が薄らいでいったんです」
「……」
「さっき、観覧車の中で言ってくれた言葉、多分あれが一番効きました。あれで完全に、恐怖と向かい合えると思いましたから」
「……」
「あと一つです。声も取り戻せました。笑顔も今なら自然と出ると思います。あとは……温もりです」
「……温もり」
「恋も、愛も、誰だって抱きます。異性に体を許すことだってします。なのにあんな……あんな人達のせいで人の温もりを『怖いもの』だなんて思いたくありません!」
魂からの叫びだった。ずっと奥底に溜めていた思いを、恨みを、憎しみを、悲しみを、全て吐き出すような精一杯の咆哮。
静梨は泣きながら必死で訴える。
「だから、一番大切な人から温もりをもらいたいんです。守さん、あなたから」
零れる涙の雨の中、少女は美しく微笑んだ。
「大好きです、守さん。あなたを誰よりも愛しています。だから、私をどうか抱いて下さい」
少女は自身の心を込めて、愛と願いの告白をした。
守はその真剣な言葉に、ごくりと唾を呑んだ。
重かった。
しかし逃げるわけにはいかなかった。
自分はこの少女に言ったのだ。出来ることならなんでもすると。ならば、受けてやるべきだ。
たとえ、この少女を愛せなくても。
「……わかった」
守は静梨を真正面から見つめる。
「でも、ぼくは……」
「言わないで。わかってますから」
唇に指を当てられ、守は戸惑う。
「え?」
「あなたの目が他の人に向いてることはちゃんとわかってます。わかってて告白したんですから、あなたの本当の答えもわかってます」
少しだけ淋しそうな笑み。
「でも今日は……今日だけは私を愛してくれませんか? 今夜だけ、あなたの心を私に下さい」
ずっと聞きたいと思っていた声が耳を打つ。
ずっと見たいと思っていた笑みが目に映る。
それは恋ではなく、親愛の類だった。それでも青年は青年なりに、少女のことを愛していた。
守はひざまずき、少女の体を優しく抱き締めた。
静梨はとても幸せそうに、青年の胸に体を預けた。

裸になった二人は、互いの体に目をやり、同時に恥ずかしそうに笑った。
「あ、あの、私、初めてではないんですけど、実質初めてというか、その」
「気にしないで。ぼくも初めてだから」
静梨が目を丸くする。
「意外だった?」
「は、はい、少し」
「うまく出来ないかもしれないけど、頑張るから」
「私も、頑張ります」
守は静梨を抱き寄せると、ぎこちなくキスをした。
始めはソフトに唇を合わせる。ついばむように、何度もタッチする。
頬や鼻、額、耳と、頭の至るところにキスをした。くすぐったそうに目を瞑る静梨に、至近で微笑みかける。
今度は長く接吻を続ける。深く押し込むように口唇を合わせると、静梨の腕が強くしがみついてきた。
二人は抱き合ったままベッドに倒れ込む。勢いでスプリングが軋んだ。
唇から舌を伸ばし、静梨の口中に潜り込む。すぐに相手の舌を見つけ、つがいのように絡みつく。
守は上から息を奪うかのように覆い被さる。静梨はそれを受け入れ、震える体を下から密着させるために、抱きつく腕に力を込めた。
「んん……んむぅ……んちゅ、はぁっ──ひゃぁ!」
唇が離れた瞬間奇声が上がった。
「ど、どうしたの? どっか痛かった?」
「い、いえ、その……脚に固いのが、」
言われて下を見る。勃起した逸物が柔らかい太股の肉を押し潰していた。
「あ……あの、これは」
「こ、興奮してるんですよね」
「えっとまあ……うん、そういうことみたい」
顔がほてる。互いに慣れてないのもあるが、女の子相手にこんな直接的な話題は、結構恥ずかしい。
「続き、しましょう」
「……うん」
下半身を気にしながら守はまた唇を重ねる。
柔らかい肉感は頭を揺さぶった。果実のような甘い匂いが鼻孔をくすぐり、若い情欲を昂らせる。
互いの唾液が混じり合い、生々しい温度が伝わってくる。口の中は二人の液でぐちゅぐちゅで、たまらなく意識を陶酔させた。
「また大きく……んむぅ……」
相手の口を塞いで、言葉を途切らす。体を寄せ、逸物を押し付けた。それだけでも十分気持ちいい。
長いディープキスを終えると、今度は彼女の胸に目を向けた。視線に気付き、静梨がうめく。
「あんまり大きくないですけど……」
確かに大きいとは言えなかった。ないとは言わないが、膨らみは控え目で小振りだった。
「……がっかりしました?」
不安な声で下から窺ってくる静梨に、守は行動で返した。
「きゃうっ」
両胸を左右の掌で鷲掴む。それだけで乳房は手の中に収まってしまったが、餅のような弾力感が皮膚に返ってくる。
薄くても柔らかいものは柔らかい。ほくろ一つない綺麗な柔肌の中でも、おとなしい双丘の柔らかさは群を抜いていた。
「ん……あっ」
こそばゆいのか、静梨は体をもじもじさせる。
「柔らかい」
「そう……ですか?」
「ちょっと我慢出来なくなりそう。早く入れたい」
「あう……」
真っ赤になる静梨。
左の乳首に唇を這わせた。
「ふあっ!」
強張る肩を押さえ込み、口の中でちろちろと舐める。舌に固い感触が伝わり、さらに興奮を煽った。
左だけでなく右の方も指先で摘み、押し潰す。柔らかい感触が徐々にこりこりと硬くなる。
「ひ……ふうん……、あっ、うんっ……」
可愛らしい喘ぎ声が口の隙間から漏れ出し、少女の体が悩ましげにくねる。
「気持ちいい?」
「はい……頭がぼうっとしてしまいます」
「じゃあここは?」
守の手が静梨の股間に伸びた。

が、
「やっ!」
大きな悲鳴とともに、守は突き飛ばされた。
無意識だったのだろう。静梨本人がショックを受けた顔で呆然となっていた。
「ち、違うんです。今のは」
「わかってる。……怖い?」
尋ねると、静梨はうなだれた。
「守さんなら大丈夫だと思ったんですけど……やっぱり、ちょっと……」
「じゃあしばらくこっちに集中していて」
え、と上げたその顔の口に、守は唇を寄せた。
急なキスに少女は驚いたようだが、すぐに集中して目を瞑った。
もう一度、股間に手を伸ばす。
触れた瞬間静梨の体に緊張が走ったが、今度は暴れたりしなかった。恐怖感を与えないよう慎重に秘所を探る。
秘唇は既に濡れていた。
唇や胸をさんざんなぶったせいだろうか。愛液が割れ目から漏れ出ている。
急速に繋がりたい衝動に駆られた。しかしそれはまだ早い。せめて局部をいじられても抵抗しないくらいには慣れさせなければ。
表面の割れ目をなぞる。縦に指を往復させると、静梨はびくりと震えた。
唇を離し、守は訊いた。
「どう?」
静梨は顔を上気させ、
「変な……感じです。でも……嫌じゃありません」
「気持ちいいんだ?」
「それは……あっ」
人差し指を中に侵入させた瞬間、短い悲鳴を上げた。しかしその響きに不快の色はない。
内襞を指先で擦り上げる。狭い膣の中に指を入れるだけでもきついが、第一関節を折り曲げて側襞を擦ると強烈な締め付けが生じた。
「あっ、あっ、あっ、ダメ、そんな、ぁっ」
色っぽい叫声が部屋に響く。
それでもやめずに擦り続けると、愛液が次々と溢れ、下のシーツを濡らした。
もう十分ほぐれたようだ。これなら挿入しても問題ないだろう。多分。
守は指を抜くと、耳元に顔を近付けた。
「静梨ちゃん、いいかな?」
静梨は潤んだ瞳を愛しい相手に向けて、小さな声で呟いた。
「どうぞ、来て下さい……」

ゴムに包まれた肉棒を秘所に当てる。
静梨の顔に怯えの色が浮いた。
「大丈夫」
一言だけ囁く。
「……はい」
信頼に満ちた笑顔。
綺麗な笑顔だ。昨日まで知らなかった顔がそこにある。
静梨は言った。守のことが大好きだと。守の目が他の人に向けられていることを知っていて、それでも好きだと。
確かにそうだったが、守は静梨のことも好きなのだ。だから今日だけは優先順位を忘れて、この娘を真剣に愛したい。守はそう思った。
腰を深く突き出す。うまく入らない。
二度失敗して守は焦った。まずい。これ以上待たせたらまた怯えさせてしまう。
「守さん」
その声にどきりとしたが、静梨は微笑んだままだ。
「あなたが目の前にいるだけで、私、怖くないんです。だから、焦らず来て下さい」
「静梨ちゃん……」
息を吐く。焦った気を落ち着かせる。
三度目の挿入。今度は大丈夫だ。ちゃんと入っていく。
入り口が切り裂かれるように開いていく。亀頭を愛液と肉襞の感触が包む。
「ん……くぅ」
静梨の顔が歪む。痛むのか、苦しげな呼気が生まれては消える。
締め付けが、敏感な性器を強烈に刺激する中、守は一息に奥まで突き入れた。

「ふああっ!」
静梨の一際高い悲鳴が虚空へと放たれた。
「い、痛かった?」
涙目で首を振る。
「い、いえ、いきなりだったから……痛くはないです」
「……しばらくこのままで」
「遠慮しないで。おもいっきり、来て」
健気な言葉を守は嬉しく感じた。
腰をゆっくり引いていく。襞々が引っ掛かるように擦れて、体験したことのない気持ちよさが意識を襲った。
次は逆に押し進める。熱い肉の締まりが先端から中ほどまでを圧迫する。
なんと不思議な行為なのだろう。守は陶酔感に満ちた頭で、自らが夢中になっている行為を思う。腰を前後にセンチ単位で動かすだけの単純な動作に、どうしてこれほどの快楽がありうるのか。
「ん……ん、んうっ、あ、あんっ」
抽挿が激しくなるに連れて、静梨の喘ぎが大きくなった。苦痛ではなく、快楽に染まった声。その声が一層守のギアを上げる。
「やっ、はげし……っ、あんっ……あっ、あっ、んっ、んうっ、あっ、あんんっ!」
声が理性の外に飛び出すように乱れる。守は一心不乱に腰を打ち付け、これでもか、これでもかと膣内を蹂躙する。
「静梨ちゃん、好きだ」
行為の中で口をついた台詞に、静梨は掠れた声を返した。
「ありが……とう。でも、んっ、わたしはいち、ばんじゃな、あっ」
「順番なんて関係ないよ」
静梨は呆気に取られる。
「今は、今だけは、ぼくは君のものだし、君は……ぼくのものだ。誰にも渡さない」
「……嬉しいです」
「ぼくも嬉しい。君に想われていることが」
また一段と腰の動きが速くなった。子宮の奥にまで突き入れるかのように逸物をひたすら往復させる。
静梨は守の体にしがみついて、快楽の波にひたすら耐えている。頭の中を巡る脳内麻薬は通常量の遥か上だった。
「まもるさ、わたし、もう──」
「ぼくももう限界だよ……」
ゴム越しに伝わる蠕動が終わりへと導く。射精感が一秒ごとに高まっていく。
そして、
「や、あああ────っっ!!」
絶頂を迎えた静梨が、苦痛にも似た歓喜の声を上げた。
そのすぐ後に、守も果てを迎える。
「ううっ、くっ」
低いうめきとともに、薄い膜の中に白濁液を吐き出す。
次々とぶちまけられる精液。その勢いが衰えるに連れて、虚脱感が全身を包んだ。
静梨は口を半開きにしながら、呆然と虚空を眺めている。
視線が合い、二人はこの世の何よりも近しく笑い合った。
連帯感と満足感がベッドの上を温かく覆うようだった。


「守さん……」
静梨の呼び掛けに守は振り向いた。紅茶を注ぐ手を止め、裸の少女を見つめる。
「何?」
静梨の顔には疲労の色が濃い。今日はゆっくり休んでもらって、明日の朝、家に送ろうと思う。
「事件のことなんですけど……」
「え? ……ああ、もういいよ。静梨ちゃんの声も笑顔も戻ったし、あとは警察に任せて、」
「違うんです。私、まだ誰にも言ってないことがあるんです」
「?」
真剣な口調の静梨に守は首を傾げた。
「森嶋くんのことなんです」
「……彼が、どうしたの?」
静梨は一つ息をつくと、ゆっくりと話し出した。

森嶋佳孝は、休みの間ずっと後悔していた。
彼は休みに入る前、同級生の水本静梨に告白をした。静梨はかなり戸惑った様子だったが、結局告白は失敗に終わった。
だからといって諦められるものでもなかった。
それで彼は、休みに入って静梨に迫った。
その結果、静梨は三週間も入院することになった。
自分のせいだった。あんなことをしてしまって、さらに佳孝はその後何もしていない。様子見にお見舞いに行っただけで、謝ることも出来ていない。
彼女は佳孝のしたことを、誰にも言っていないようだった。
それが逆に、佳孝の罪悪感を強くするのだった。

その日の夕方、外出しようとした佳孝は、マンションの玄関を出たところで呼び止められた。
「森嶋君だね」
佳孝が声の方向を向くと、二つの人影が立っていた。
一人は青年で、人のよさそうな顔をしている。歳は佳孝よりも三つほど上だろうか。どこかで会ったような気もしたが、よくわからない。
もう一人は浮き世離れした美少女だった。歳は佳孝と同じくらいに見える。ポニーに結った髪が、清流のように美しく映える。こちらはどう見ても初対面だった。
佳孝は怪訝に二人を見やる。
「なんですか? 何か用が、」
「水本静梨さんのことについて」
その名前に佳孝の口が固まる。
「静梨ちゃんが襲われた日、君は彼女に会ってたんだね」
「……水本が言ったんですか?」
嫌な感じだった。なんなのだこの男は。
「ぼくは最初、君が犯人だと思っていた。顔見知りの犯行だと思い込んでいたから。でも違った。あれはただの通り魔的犯行で、本当に運が悪かっただけだったんだね」
「……」
「でも、君は最初から彼女を狙っていた。あの日、彼女は二回も襲われていたんだね」

森嶋佳孝は顔面蒼白になっていた。
「俺は……俺のせいで水本は……」
守は小さく首を振る。
静梨に聞いたあの日の出来事は、かなり意外なものだった。
静梨は家を出てから、佳孝に呼び止められた。話があると誘われて、近くの公園に行き、そこで急に抱き締められたという。
唇を奪われ、そのまま押し倒されそうになったが、なんとか跳ね退けた。佳孝は力なくごめんと呟き、座り込んでしまったという。
友達との約束があったのですぐにその場を離れたが、佳孝の様子に動揺していた静梨は、背後に迫ったもう一つの危険に気付かなかった。
結果、見知らぬ男達に簡単に拉致され、そのままレイプされてしまった。
直接的に佳孝の行動が原因になったとは言えないだろう。しかし、まったく影響がなかったわけではない。彼が何もしなければ、静梨は無事に過ごせただろうから。
「俺のせいなんだよ……俺が馬鹿な真似をしなければ、あいつはあんな目に遭わなかったはずなんだ」
その声は後悔に満ちていた。
「そうかもね」
守は意識して冷淡に答えた。佳孝はびくりと体を強張らせる。
「でも、静梨ちゃんは君のことを憎んだり、恨んだりしてなかったよ」
諭すように守は続ける。
「君は自分の行動をちゃんと受け止めて、その上で彼女と向き合うべきだ。一回様子見に行ったみたいだけど、ろくに言葉も交わしてないだろう。閉じこもって自分を責めるだけじゃ何の意味もない」
佳孝は急に顔を上げると、苛立ちをぶつけるように叫んだ。
「なんなんだよあんた達は! 何も知らないくせに、偉そうなこと言うなよ!」
「……確かに君のことはよく知らない。でも君も、静梨ちゃんのことを知ろうとしてないんじゃないかな?」
口ごもる少年。

そのとき後ろに控えていた依子が口を開いた。
「向き合った方がいいと私は思うよ」
明瞭な声が涼やかに響いた。
「静梨ちゃんはあなたのこと嫌ってないし、あなたはとても純粋に静梨ちゃんのことを想ってる。だったらこれからより強く想えるように、向き合った方がいいんじゃない?」
「……」
佳孝は何か言い返そうとしたが、少女の無邪気な顔に毒気を抜かれ、押し黙る。
「決めるのはあなた自身だから、よく考えてみたらいいんじゃないかな。あ、この人の言ったことは無視していいから」
「……ちょっとひどいんじゃない依子ちゃん?」
守のぼやきに依子はぺろりと舌を出した。
佳孝は力が抜けたのか小さな声を漏らした。
「あんたたち、そんなこと言うためだけに来たのかよ」
守はいや、と首を振った。
「君に聞きたいことがあって来たんだ。事件の日、君は現場の近くにいたはず。そのとき、怪しい車を見なかったかな?」
「車……? ……憶えてないよそんなの」
「じゃあ事件の犯人のことをイメージしてみて。どんな奴とかわからなくていい。憎んだりするだけでいい」
「は、はあ?」
佳孝はわけがわからないといった表情になる。
だが、後ろにいた依子が何かに反応した。
「マモルくん、見えたよ」
守は目を見開いた。
「どう? 追える?」
「行けると思うよ。この子の気持ちが予想以上に深いから、縁が強くなってる。」
「そう、わかった。犯人を直接見たとは思えないから、縁が繋がっているのは車の方かな。……急に訪ねてきてごめんね、森嶋君。君のおかげでどうにかなりそうだよ。ありがとう」
守は頭を下げると、依子とともにその場を後にする。
後ろから佳孝の声がかかった。
「あんた、水本とどういう関係なんだ?」
守は振り返り、答えた。
「……友達だよ。大切な」

男達は暇だった。
何か楽しいことはないか。何かスリルがあってワクワクすることはないか。それを適当に模索し、辿り着いたのが女だった。
ナンパとかではなく拉致して楽しもう。相手も選んで狩っていこう。
最初は女子高生だった。上玉で、そそる相手だった。
呆れるほど簡単に成功した。
自由を奪って、ひたすらに犯し、なぶる。殺しさえしなければ何をしてもいいと思った。
たまらない快感だった。
しかし、そう頻繁に実行するわけにもいかないので、一ヶ月おきに犯行を重ねることにした。
メンバーは三人。前と同じように後ろから女を襲い、車に連れこむ。
たむろしているマンションの部屋を出て、三人は駐車場へと向かった。
すると暗がりの中、駐車場に小さな人影があった。
外灯の光の中で見えたのは、息を呑むほどの美少女だった。
三人はほくそ笑んだ。話はすぐにまとまる。あとを尾けて拉致ることに決めた。
一人が車を運び、二人で少女のあとを尾ける。少女は駐車場を出て、うまい具合いに人気のない小道へと入っていく。
夜の闇の中、二人はそろり、そろりと少女へと近付いていく。
そしてあと五メートルという距離に迫ったとき、標的がいきなりこちらを向いた。
立ち止まってぎくりとした二人に向かって、少女は場違いに微笑んだ。
「マモルくん、GO!」
瞬間、少女の背後から何かが飛び出し、二人に襲いかかってきた。

守は暗闇の中、夜目を効かせて右の男の顎に狙いをつけた。下からの掌底アッパーで顎を打ち抜き、意識を刈り取る。
混乱したもう一人の男に左のハイキックをぶちかまし、勢いに乗せて三メートルほど吹っ飛ばした。
当然というべきか、立ち上がれない。完全に失神している。
「ふあー、相変わらず凄いね」
依子が歓声を上げる。
守は気絶した男二人を引きずり、依子に応える。
「術者を守るためにぼくらがいるんだから、これくらいは出来なきゃね」
本家に生まれる術者は人間離れした霊能を有するが、霊能とて万能ではない。
西洋の魔術もそうだが、彼らは物理的手段に非常に弱い。霊能は精神的作用に偏るため、単純な暴力を防げないことが往々にしてあるのだ。
そこで本家を支えるために物理的能力に特化した分家が現れた。
守の家もその一つで、彼はある程度その業を修めている。免許皆伝には遠く及ばないが、素人の暴漢程度なら軽く捻ることが出来る。
「でも、こんなことはもう絶対に駄目だよ。いくらこいつらを捕まえるためとはいえ、囮なんて」
「いいじゃない。うまくいったんだから」
軽口を叩く依子。
だがすぐに真面目な顔になり、
「だって、静梨ちゃんがかわいそうだよ。こんな奴らに弄ばれるなんて。マモルくんだって本当は悔しいでしょ」
「そうだけど、君が囮になる必要なんてないよ」
「大丈夫。マモルくんが守ってくれるから」
その言葉に胸が高鳴る。
「信用してるの?」
「信頼してるの!」
依子は柔らかく微笑んだ。
守も照れ臭そうに笑う。
だがすぐに笑いを収め、後ろの気配に素早く振り返った。
ナイフを持った男が立っていた。仲間だろうか、苦々しい表情で睨みつけてくる。
ナイフと言っても刃渡り四十センチ近くある、ナタのような軍用ナイフだ。通販か何かで手に入れたのだろうか。いずれにせよ完全に銃刀法違反だ。
「依子ちゃん、警察に連絡して」
「うん」
男が中腰にナイフを構えて突っ込んできた。理性が飛んでいるのか、考えなしの殺意がこもっている。
守は呼吸なしで飛び込んだ。間合いに自ら入る。ナイフが守の胴を、
「ふっ!」
ずっと溜めていた呼気を刹那で吐き出し、ほどよく弛緩した体の横を、熊手で捌いたナイフが抜けた。かわすのではなく、脱力やタイミングなど諸々の動きを併せて『反動なく』捌く、一門の業。
相手は何が起こったのかまるで認識していなかった。守は密着状態から男の喉に頂肘を放ち、その肘で一挙動に顎を打ち抜いた。
三十センチくらいは浮いたかもしれない。確かな手応えを覚えると同時に、男がその場に大の字になる。
後ろでお見事、という声が響いた。
守は高揚した気持ちを抑えるために、深く息を吐いた。


始業式の日、静梨は夏休み前と同じ笑顔で登校した。
一部の事情を知っている友達は明るい様子に唖然としたが、立ち直った静梨に気を遣うことなく触れ合った。
いとも簡単に、静梨は日常へと戻ることが出来た。
午前中だけの式も終わり、静梨は帰宅の途に着く。
校門を抜けようとしたところで呼び止められた。
「水本」
振り返ると、同級生の森嶋佳孝が小さく手を上げていた。
少しだけ、心拍が上がった気がした。
「森嶋くん」
声は普通に出た。
佳孝は少し緊張しているようだった。
「あの……」
「ここじゃ目立つから、隅に行かない?」

人気のない校舎裏で二人は向き合う。
「ごめん、水本」
最初の言葉は謝罪だった。
「……何が?」
なんとなくわかっていたが、一応尋ねる。
「事件のことだよ」
「やめて」
予想通りの答えに静梨は言葉を遮る。
「あれはあなたのせいじゃない。あなたに謝ってほしいのはもっと別のこと」
「え?」
瞬間、静梨は右手を振りかぶり、無防備な佳孝の左頬にたたらを踏むほどのビンタを叩きつけた。
女の子らしからぬと自分でも思う一発に、佳孝は反射的に打たれた箇所を押さえる。
佳孝は絶句したまま固まっている。
「はい、これでおあいこ」
静梨はにっこり笑って言った。
「おあいこ……?」
「そう。これ以降あの日のことを蒸し返したら、二度と口利かないから」
「……わかった」
静梨は楽しそうに笑む。
「なんで叩いたかわかる?」
「え? ……いや」
「森嶋くんが私の大切なものを奪ったからだよ」
「……?」
人差し指を立てて静梨はゆっくりと答えを教えた。
「ファーストキスだったんだ、あれ」
「!」
「だから私は怒った。おもいっきりひっぱたいた」
「……」
呆然となっている佳孝に、静梨はまた笑う。
「なんてね」
あんまり深刻に考えない方がいいこともある。
「そういうことにしとこ? 私は森嶋くんにファーストキスを奪われたから怒った。それでいいじゃない」
佳孝は目をしばたたかせていたが、やがて小さく微笑した。
「うん。そういうことにしとこうか。でも、俺は諦めないよ」
「何を?」
「これからも水本を好きでいるってこと」
いとも簡単に二度目の告白をしてくる同級生を、静梨はまじまじと見つめる。
守は静梨の想いを認めてくれた。一番じゃなくても、想いを寄せたり寄せられたり、それは決して悪いことじゃない。
そんなたくさんの想いが、その人を支えてくれると思うから。
だから私も認めてやろう。静梨は胸の裡で呟く。佳孝の想いも守の想いも、それぞれで認めてやろう。守がそうして見せたように。
だからといって、
「私には他に好きな人がいるんだけどなぁ……」
困ったように静梨は一人ごちる。簡単には割り切れないのも確かだ。
「でもその人も他に好きな子がいるし……片想いって切ないね」
片想いの相手からそんなことを言われて、佳孝は小さく苦笑した。
「まったくだ」
その同意に、静梨はおかしそうに笑った。

おまけ



「マモルくん」
スーパーを出たところで守は依子と出くわした。学校帰りなのか制服姿だ。
「……またカレー?」
買い物袋の中身を見て、依子は呆れた声を出す。
「作ってくれる?」
「いいけど……今から?」
「学校終わったんでしょ」
依子が頷き、守は嬉しそうに微笑む。そのまま並んで歩き出す。
長い八月はもう終わってしまった。これから長い冬へ向けて、季節は移ろいゆく。まだまだ残暑は厳しいが。
「今度さ、実家に帰ろうと思うんだ」
「実家……緋水の家に?」
「うん。一応跡取りだから、色々話し合っておく必要があるんだ」
「そうなんだ。いつ?」
「冬」
「なんだ。まだ先だね」
「一緒に行かない?」
依子は目を見開く。
守は微笑み、
「依子ちゃんはさ、将来どうするの?」
「……まだわからない。私は本家にいられなくなったから、でも……」
「結婚とかは?」
依子はおかしそうに笑った。
「いきなりどうしたの?」
「興味あるから」
「相手がいないよ。……でも、それもいいかもね。私をもらってくれる人いないかなー」
「じゃあ尚更実家に来てもらわないと」
「? どういう意味?」
「うちの親に挨拶してもらいたいから」
「何それ? マモルくんと私が結婚するみたいじゃない」
「イヤ?」

「…………え?」

守が笑って何かを囁いた。それを受けて依子が珍しく慌てふためいている。
夏の終わりを告げる風が、空を駆け抜けていった。
季節はもうすぐ秋を迎えようとしている。
草むらでバッタが一匹、キチキチと音を立てた。



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作者 かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
2008年01月20日(日) 10:10:55 Modified by n18_168




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