日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼発射直後の雄風1型

▼ミサイルと発射機


▼雄風1の断面図 (C)『艦船知識』


龍江型ミサイル艇(アシュビル型)2番艇PG-602「綏江」。雄風1の単装発射機を4基搭載している


▼イスラエルのガブリエルMkII対艦ミサイル


性能緒元
全長3.35m
直径350mm
重量522kg
弾頭重量75kg(HE)
最大速度マッハ0.6
射程36〜40km
誘導方式レーダー・ビーム・ライディング/無線指令誘導
 セミアクティブ・レーダー誘導(終末段階)
発射機単装/連装/3連装

1967年10月21日、第三次中東戦争でイスラエルの駆逐艦エイラートが、エジプト海軍のコマール型ミサイル艇から発射されたP-15 Termit艦対艦ミサイル(SS-N-2 Styx)によって撃沈された。これは艦対艦ミサイルが実戦で艦艇を撃沈した初のケースであった。小型のミサイル艇が自艦よりも何倍も大きい駆逐艦を撃沈したこの事件は、艦対艦ミサイルの威力を示すものであり、世界の海軍関係者に衝撃を与えるものであった。それは台湾海軍においても例外ではなかった。中国海軍は既にP-15の国産化(SY-1艦対艦ミサイル(上游1/FL-1))に成功しており、これを搭載したミサイル艇の大量建造を実施していた。台湾海軍は、既存の防空能力では中国の対艦ミサイルへの対応は困難であること、中国の対艦ミサイルに対抗するためには、自らも艦対艦ミサイルを保有する必要があることを認識していた。しかし、台湾に対する主要な武器供給国のアメリカは、当時台湾に供給できる艦対艦ミサイルを保有していなかった。そして、台湾自身で対艦ミサイルを開発するのは、当時の台湾の技術水準では困難であった。

このような状況の中で、台湾は対艦ミサイルを海外から調達すべく各国への接触を開始した。スイスのコントラヴェス社が開発したシーキラーMkI対艦ミサイルが最初の候補に挙がり、1968年8月にはコントラヴェス社の関係者が台湾を訪問した。しかしシーキラーは小型短射程のミサイル(射程10数キロ、弾頭重量32kg)であり、台湾海軍は充分な能力を保持していないと判断してシーキラーの購入は見送られることになった。台湾はこれと同時期、イスラエルにも接近を図っていた。イスラエルは1960年代後半からLUZ計画の名称で対艦ミサイルの開発に着手していた。研究開発はイスラエルのイスラエル航空機産業(IAI)で行われた。当初の開発ペースはゆっくりしたものだったが、エイラート撃沈を受けて開発体制が強化され、1968年には実用化の目処が付き、ガブリエルMkI対艦ミサイルの名称が与えられた。ガブリエルMkIの性能は、射程20km強で、弾頭には90〜100kgの高性能炸薬が搭載されている。誘導方式はレーダー・ビーム・ライディングまたは無線指令誘導方式で誘導され、終末誘導にはセミアクティブ・レーダー・ホーミング方式を使用する。ガブリエルの部隊配備は1972年であった。その直後に発生した第四次中東戦争では、イスラエル海軍のガブリエルがエジプト海軍のミサイル艇を撃沈する戦果を上げ兵器としての有効性を証明した。

台湾とイスラエルは1968年にガブリエルMkIの技術供与に関して合意し、1968年12月にはガブリエルをベースに国産対艦ミサイルを開発する「雄蜂計画」が開始された。「雄蜂計画」は、最初にガブリエルMKIの購入を行い、次にガブリエルMKIの国産化を達成し、最後に台湾独自の改良を加えるという三つの段階から成っていた。開発は中山科学研究院が担当した。1971年6月、イスラエルから50発のガブリエルMkIミサイルと18基の発射機を購入し、台湾海軍の旧アレン・M・サムナー級駆逐艦、衡陽(DDG902。3連想発射機×2)、華陽(DDG903。3連装発射機×1)、岳陽(DDG905。3連装発射機×2)に搭載された。ガブリエルMKIの誘導装置は、OG.R-7射撃統制装置とEL/M-221誘導レーダーが搭載された。OG/R-7は兵員1名で操作されたが、イスラエル本国ではOG.R-7は使用されず誘導要員2名のOG.R-20射撃統制装置が運用されていた。台湾海軍は1977年にガブリエルMkIの試射を実施し、台湾海軍が対艦ミサイル運用能力を入手したことを公表した。なお、台湾海軍ではイスラエルから輸入したガブリエルを「天使」と呼称した。イスラエルから購入したガブリエルMkI=「天使」は、ガブリエルを元に台湾が国産化した「雄風1型」によって次第に代替されていくことになる。

ガブリエルMKIの調達後、これを国産化するための研究が開始された。国産化に当って問題になったのはガブリエルMkIの射程の短さであった。ガブリエルMkIの射程は20km強で、中国海軍の保有する海鷹1(射程40km)の半分に留まっており、アウトレンジされる危険性が指摘された。中山科学研究院ではガブリエル(国産化にあたり「雄蜂対艦ミサイル」の名称が与えられた)の射程延伸に関する研究を開始したが、ロケットモーターや誘導装置の改良作業は困難を極め、開発は遅遅として進まなかった。1977年、台湾はイスラエルから射程延長型のガブリエルMk2とその開発データの引渡しを受けた。この技術を元に雄蜂ミサイルの改良が行われた。改良型の発射実験では、空力学設計上の問題からミサイル表面に空気があまり触れない部分が生じて、その箇所にロケッモーターの燃料熱や大気との摩擦熱が貯まり内部回路に異常が発生して命中精度が低下したり、ミサイルの空中爆発を引き起こす原因となった。これはイスラエルが幾つかの重要技術の移転を拒否したことに起因するものだった。中山科学研究院では、爆発原因の特定とロケットモーターの改良や各部の熱対策などの改修を行い1984年までに問題を解決した。台湾が開発したガブリエルの射程延伸型は雄蜂A型として制式化されたが、後に同じ発音の雄風1型に改称された。

雄風1型は最大射程40km、飛行速度はマッハ0.6、発射直後は飛行高度100m、中間高度20m、終末高度はシーステイトにあわせて4m、2.5m、1.5mから選択可能である。ミサイルの全長は3.35m、直径は350mm、発射時の重量は522kg、弾頭重量75kgとなっている。ミサイルにはX字型の主翼と尾翼が装備されている。ロケットモーターは固形燃料を使用しており、モーターの作動時間は200秒。雄風1型の誘導には、RTN-10XやHP-76C、AN/SPG-21A(海鴎二型/RCAR76C5)等の誘導レーダーが用いられ、命中精度は95%に達するとされる。雄風1型は単装/連装/3連装のミサイル発射機に搭載される。発射機はグラスファイバー製でミサイルはメンテナンスフリーになっている。

台湾海軍は1981年に雄風1型の制式採用を行い、海鴎型ミサイル艇(ドヴォラ型)龍江型ミサイル艇(アシュビル型)錦江型ミサイル艇(一番艇のみ)などのミサイル艇、武進一型/武進二型の近代化改装を受けた旧フレッチャー級、旧アレン・M・サムナー級、旧ギアリング級など14隻の駆逐艦(現在では全て退役)に搭載が行われた。特に海鴎型ミサイル艇は1980年から84年にかけて50隻の大量建造が行われ、台湾海軍は強力なミサイル艇戦力を構築することに成功した。また、沿岸防衛用に雄風1型の陸上発射型も開発され、淡水、屏東、高雄等に配備された。雄風1型は後継の「雄風2型」艦対艦ミサイルが開発されたこともあって、改良型の開発は行われなかった。雄風1型は438発が製造され、現在では生産は終了している。

雄風1型は、海鴎型ミサイル艇(ドヴォラ型)の完全退役に伴い、2012年末までに運用を終了した[6]。用廃となった雄風1型は海軍の廃棄規定に基づいて、中山科学研究院により廃棄される。

【参考資料】
[1]世界の艦船別冊「艦載兵器ハンドブック 改訂第2版」 (海人社)
[2]艦船知識 2006年7月号「以色列血統的”雄風-1”反艦導弾」(呉新宏/艦船知識雑誌社)
[3]椰林風情 「中華民国反艦飛弾與戦闘系統開発的過程」
[4]軍武狂人夢
[5]軍事・兵器大事典 (青葉山軍事図書館)
[6]聯合新聞網「雄風1型反艦飛彈除役 難忘以色列」(洪哲政/2013年4月9日)

台湾海軍

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