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rglc85tj8h 2013年11月06日(水) 00:24:56履歴


▼ネームシップの錦江(PG-603)。本艦のみ雄風1型SSMを搭載している。


▼「武進三化」近代化改装により、雄風2型連装発射機×2、OTOメララ76mm単装砲×1を搭載した3番艇新江(PG-606)。艦後部には新しい構造物とW-160火器管制レーダーが搭載されている。

▼停泊中の錦江級。左から雄風1型SSMを搭載した錦江(PG-603)、SSM未搭載型、「武進三化」近代化改装型(雄風2型SSM搭載)、「追風計画」雄風3型SSM搭載型。

■性能緒元
基準排水量 | 500t |
満載排水量 | 580/610t(就役時/改装後) |
全長 | 61.4m |
全幅 | 9.5m |
喫水 | 5m |
主機 | ディーゼル2基 2軸 |
MTU 20V-1163-TB93(6,505馬力)2基 | |
速力 | 25kts |
航続距離 | 3,600nm/20kts |
乗員 | 50名(将来的に32名に変更の可能性) |
【兵装】
対艦ミサイル | 雄風1型 / 単装発射機 | 4基*(PG-603のみ) |
近接防御 | ボフォース 350PX L-70 40mm単装機関砲 | 1基(PG-603、605、610〜617) |
ASO製600PX L-70 40mm単装機関砲 | 1基(PG-607〜609) | |
T75S 20mm機関砲 | 1門 | |
T-74 7.62mm機関銃もしくはM2 12.7mm重機関銃 | 最大4門 | |
爆雷 | 爆雷投下軌条 | 2条(爆雷50個) |
機雷 | Mk6機雷投下軌条 | 2発(機雷2発) |
【兵装】「武進三化」近代化改装型(PG-605、606、607、608)
対艦ミサイル | 雄風2型 / 連装発射機 | 2基 |
砲 | オットー・メララ Mk75 62口径76mm単装砲 | 1基 |
近接防御 | M2 12.7mm重機関銃 | 4門 |
爆雷 | 爆雷投下軌条 | 2条(爆雷50個) |
機雷 | Mk6機雷投下軌条 | 2発(機雷2発) |
【兵装】「追風計画」近代化改装型(PG-612、さらに7隻が改修)
雄風3型 / 連装発射機 | 2基 | |
砲 | オットー・メララ Mk75 62口径76mm単装砲 | 1基 |
近接防御 | M2 12.7mm重機関銃 | 4門 |
爆雷 | 爆雷投下軌条 | 2条(爆雷50個) |
機雷 | Mk6機雷投下軌条 | 2発(機雷2発) |
【電子装備】就役時
対空・対水上レーダー | CS/UPS-60X | 1基(PG-603) |
Scanter | 1基(PG-605〜617) | |
航海レーダー | Decca251/6 | 1基(PG-605〜617) |
火器管制レーダー | AN/SPG-21A | 1基(PG-603) |
光学/赤外線照準装置 | ラファエル Sea Eye FLIR赤外線暗視装置 | 1基(PG-603)現在は撤去済み |
LSEOS MK-2A光学電子センサー | 1基(PG-605〜617) | |
バウ・ソナー | Simrad SS-24 | 1基 |
ECMシステム | WD-2A | 1基 |
【電子兵装】近代化改装型で装備された物
火器管制レーダー | W-160 | 1基(PG-605、606、607、608) |
火器管制レーダー/光学電子統合型センサー | 1基(PG-612) | |
ECMシステム | 「衛江」ECMシステム | 1基(PG-614) |
デゴイ発射装置 | 2基(PG-614) 注:「衛江」ECMシステムの構成要素の一つ |
錦江級哨戒艇(台湾海軍では「錦江級巡邏艦」)は2隻の調達に終わった龍江型ミサイル艇(アシュビル型)に続いて建造された沿岸哨戒艇[1][2]。開発計画の名称は「光華3号」計画[3]。
錦江級哨戒艇の設計は国営企業から民営化された聯合船舶設計發展中心が担当した[3]。なお、同級は台湾独力で設計・開発された初の海軍戦闘艦艇という地位を得ている。建造は民間造船所である聯合造船公司により実施されたが、民間造船所による海軍戦闘艦艇の建造というのも台湾初であった[3]。テストベッドとしての要素が強いネームシップ「錦江」(PG-603)は1994年に就工したが、開発陣や造船所の経験不足もあって各種の不具合が発生、その解決に数年を要している[1][3]。量産型は、ネームシップの運用実績を踏まえ、かなりの設計変更を施した上で建造を開始し2000年7月までに計11隻が就役している[3]。ただし、射撃統制システムのトラブル解決に時間を要したため海軍への引渡しが当初計画より遅れたことを受けて、海軍は造船所に対して8,600万台湾圓の罰金を科している[3]。
同級の最高速力は25ktsとこの種の小型戦闘艇としては低速の部類に入るが、航続距離は15ノットで3,600浬と比較的長く、領海警備などの哨戒活動を重視した設計といえる[1][3]。ネームシップのPG-603「錦江」のみ「雄風1型」艦対艦ミサイルを搭載した[1]。しかし、領海警備を主任務とする同級にとって対艦ミサイル搭載の必要性は低いとされ、量産型では対艦ミサイルと管制システムは搭載せずに就役することになった[3]。淡江(PG-605)、新江(PG-606)、曾江(PG-608)、高江(PG-609)の4隻は、ボフォース350PX L-70 40mm機関砲に換えて、シンガポールASO製600PX L-70 40mm機関砲を搭載したが、同機関砲の評価はボフォースよりも低く後続艇への搭載は見送られ、淡江(PG-605)は後に600PXを350PXに換装してしまった[3]。
本来、錦江級は沿岸部の領海警備任務が主任務とする予定であったが、外洋警備艦艇として調達を計画していた1,400t級コルベットの建造が中止されたため、外洋での哨戒任務についても錦江級を当てることになった[3]。しかし、沿岸哨戒艇である同級には外洋航海は負担が大きく、多くの乗員が船酔いに苦しめられるだけでなく、船体の老朽化が急速に進む事態を引き起こした[3]。最終的に台湾海軍では、錦江級を外洋哨戒任務から外す決定を下さざるを得ず、同級が行っていた外洋警備任務はコーストガードである海岸巡防署の巡視船が引き継ぐことになった[3]。
海軍内部では錦江級について、25ktsの最高速力では中国の快速艇やミサイル艇に対処する事が難しく、対艦ミサイルによりアウトレンジ攻撃を受けることを懸念する向きもあった[3]。この問題に対処するため、同級に対して対艦ミサイルの運用能力の付与を初めとする大規模な近代化改装を実施することが決定され、2005年末から3番艇「新江」(PG-606)をテストベッドとして改装作業が開始された[3]。近代化改装では、「雄風2型」艦対艦ミサイル用連装発射筒2基と火器管制システム、W-160火器管制レーダーが搭載。艦首部の40mm機関砲は撤去され、換わりにOTOメララ76mm単装砲が装備された。これらの兵装は全て退役した旧ギアリング級(武進3型改装型)が搭載していたのを再利用したものであった[3]。艦後部には追加装備を搭載するための上部構造物が増設され、その上部にはW-160火器管制レーダーを登載するラティスマストが配置されている。「大成」データリンクシステムも追加装備され、外部からの目標情報を利用することで、雄風2型の100km超の射程をフルに発揮させることが可能となった[3]。これらの改装により、新江の満載排水量は600tを越えることになった。台湾海軍によると、錦江級は改良による30t程度の排水量増加を想定した設計が施されており、この改装が航行性能に悪影響を与えることは無いとの事[3]。
「武進三化」工程と命名されたこの改装は、同型艇にも順次実施される予定であるが、予算の制約もあって2010年11月時点では改装を受けたのは4隻(PG-605、606、607、608)に留まっている[3]。
「資江」(PG-612)は、上記4隻とは異なり新型の超音速対艦ミサイル「雄風3型」連装発射機2基が搭載された。これに合わせて火器管制レーダーもW-160から新開発の火器管制レーダー/光学電子統合型センサーに変更されている[3]。「雄風3型」ミサイルの搭載は、現在開発中の1,000t級のミサイルコルベット計画(迅海計画)のテストベッド、そして錦江級の対艦攻撃能力向上を目的とした試験的改装であると見られている[6]。「資江」での雄風3型の運用試験が良好であれば、他の錦江級にも同様の改装が施されるであろう[6]。ただし、大型の「雄風3型」を装備したことで「資江」の排水量は700tを越えたと見られており、トップヘビー化による水上航行性能や凌波性への悪影響が懸念されている[3]。
「資江」(PG-612)の改装は2010年に完了した。2011年5月には、立法院での質疑において台湾国防部が7隻の錦江級に対して「雄風3型」を搭載するなど「資江」に準じた改装を施すことを計画していると明らかにした[3]。この近代化改修は、「追風計画」と命名されている[7]。
「武進化」工程とは別に、台湾海軍では2010年3月に「衛江計画」の名称で錦江級に新型の電子戦システムを搭載する改修計画が存在していることを明らかにした[3]。最初に「衛江」電子戦システムを搭載したのは10番艇の「鄱江(PG-614)であった。「衛江」電子戦システムは、アンテナ一基、デゴイ発射装置二基と管制装置から構成されている。アンテナは中山科学院が、デゴイ発射装置は西側某国より調達した[3]。デゴイ発射装置については、[3]ではドイツのRheinmentall Defence社のMASS(Multi Ammunition Softkill System)に似ていると指摘している。「衛江」電子戦システムは、錦江級に標準装備されるだけではなく、今後、台湾海軍の小型艦艇や補助艦艇の多くに登載されると見られている[3]。
【派生型について】
錦江級は12隻の追加建造も計画されていたが、2001年10月に発注は取り消されている[3]。
ただし、同級をベースにした巡視艇2隻が水上警察局向けに建造されており、2000年に成立した行政部所轄のコーストガード機関である海岸巡防署向けに建造された各種巡視艇も設計の原点は錦江級に遡るものが多いとされる[3]。
【2013年8月3日追記】
錦江級の8番艦「金江」(PG-611)が搭載している76mm艦砲をステルスシールドに変更した事が明らかになった[3]。このシールドはOTOメララ社のステルスシールドとは一部形状が異なるとされる[3]。
1番艇 | 錦江(Jing Chiang) | PG-603 | 1994年12月1日就工 |
2番艇 | 淡江(Dang Chiang) | PG-605 | 1998年6月18日進水、1999年9月23日就役 |
3番艇 | 新江(Sing Chiang) | PG-606 | 1998年6月18日進水、1999年9月23日就役 |
4番艇 | 鳳江(Feng Chiang) | PG-607 | 1998年8月14日進水、1999年10月29日就役 |
5番艇 | 曾江(Tzeng Chiang) | PG-608 | 1998年10月16日進水、1999年10月29日就役 |
6番艇 | 高江(Kao Chiang) | PG-609 | 1998年12月15日進水、1999年10月29日就役 |
7番艇 | 湘江(Hsiang Chiang) | PG-610 | 199年3月25日進水、1999年12月30日就役 |
8番艇 | 金江(Jin Chiang) | PG-611 | 1999年7月16日進水、2000年2月15日就役 |
9番艇 | 資江(Tze Chiang) | PG-612 | 1999年5月14日進水、2000年2月15日就役 |
10番艇 | 鄱江(Po Chiang) | PG-614 | 1999年9月23日進水、2000年3月10日就役 |
11番艇 | 昌江(Chang Chiang) | PG-615 | 1999年12月22日進水、2000年7月21日就役 |
12番艇 | 珠江(Chu Chian) | PG-617 | 2000年1月21日進水、2000年7月21日就役 |
【参考資料】
[1]世界の艦船別冊 中国/台湾海軍ハンドブック 改定第2版(2003年4月/海人社)130頁
[2]中国軍艦博物館
[3]MDC軍武狂人夢「錦江級巡邏艦」
[4]欧貝泰「新型錦江級巡艦曝光-武進三系統的復活-The New Missile Cutter-PG 606」
[5]Jane's Fighting Ships 2009-2010(Stephen Saunders (編) /2009年6月23日 /Janes Information Group)791頁。
[6]Yahoo!奇摩部落格 中華台湾福爾摩沙国防軍「謠指部消息:資江艦裝備雄三飛彈-制海戰力展新局」(2010年10月24日)
[7]Yahoo!奇摩部落格 中華台湾福爾摩沙国防軍「錦江艦 部署「航母剋星」雄三飛彈」(吳明杰/中國時報/2012年5月14日)
台湾海軍