徐霞客級宿泊船
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rglc85tj8h 2024年09月01日(日) 22:59:44履歴
徐霞客／向前進一号級宿泊船（ダーグァン型/大観型）は、中国初の大形航洋宿泊・訓練支援船（中国語では生活保障船）。航空母艦の訓練・支援任務に用いられる専用艦として建造され、現在までに二隻が就役。米海軍では「DAGUAN CLASS」の名称が付与されている[5]。
外観から903型補給艦（フーチー型/福池型）をタイプシップとして設計されたと思われる。中国船舶集団有限公司708研究所が設計を担当し、一番艦は広州造船所で建造され、2009年11月に起工、2010年9月に進水、2011年6月28日に就役した[7]。就役直後の2011年7月3日から大連港に停泊を続けており、同港で改装を実施した空母「遼寧」（旧ワリヤーグ）の訓練要員、艤装員の支援に使用されているものと判断された[1][3]。同船の艦番号「88」は中国海軍の艦番号基準では練習艦/船に属することから、本船も訓練任務に使用されるのではないかと推測されている[2]。
船名は明末の著名な旅行家で地理学者の徐霞客（1587〜1641年）にちなんだものとされた[3][4]。中国海軍の命名基準からも、訓練任務艦に人名が付与されることは理が通っているとされた。しかし、2019年になって同艦の艦名は「向前進一号」であるという情報が出てきた[6][7]。訓練艦としての命名基準とは齟齬があるが、公式として出てきた情報でもあるという話もあり、どちらが本当の艦名なのか確証は持てない[6][7]。
二番艦の艦名については、一番艦からの類推で「向前進2号」であるという推測[7]と、「徐霞客」と同じく人名である「酈道元」という二つの情報がある[8]。酈道元（465?〜527年）は、地理書の『水経』に注釈を施した『水経注』の著者であり、中国の地理学上の重要人物とされ、明代の著名な旅行者にして地理学者である徐霞客とコンビを組ませるには適した人選だと言える。
【特徴】
本船はかなり大型の船体を有しており、その排水量は15,000〜20,000トン級と見積もられている[2]。船体は船橋や煙突の位置関係から903型補給艦をタイプシップとしていると推測される。これは同じく広州造船所で建造された920型病院船（アンウェイ型/安衛型）と似通った手法であり、920型病院船と本船には設計方法や船体形状などで類似した点が多く見られる。船首にはブルワークが設けられており、前部船橋直前の水線下にはバウ・スラスターが装備されている。上構を最大限に確保して多数の乗員の搭乗を可能する客船のような船形をしているのが本船の特徴。船橋後部付近までを船首楼として上構は甲板を一層下げて船尾までを上甲板としており、船橋以降はさらに甲板を一層下げている。船橋構造は両舷の通路部分を含めて外舷まで広げた構造で、船橋構造前壁のみが大きく傾斜している。船体中央部には上甲板から4層の上部構造物が形成されており、後部船橋以降は一層減っているが甲板も下がっているので4層の上部構造物は維持されている。船橋から後部のヘリコプター甲板までは甲板室を舷側まで拡大している。後方両舷のレセスにはデリックが配置されており、救命艇2隻とRHIB（Rigid-hulled inflatable boat：複合ボート）2隻が搭載されている。
最上甲板の広いスペースを利用してランニングコースやバスケットボールのコートなどが用意されており、乗員の福利厚生に配慮した設計の一端が窺える。船内には宿泊施設のほか、プールや医療施設などを備えている[3]。船尾にはヘリコプター甲板が用意されているが、格納庫はなく船固有のヘリコプターの搭載は出来ない。船内スペースを最大限に確保する船形を採用していることから、固有の乗員以外に2,000名以上の人員を搭乗させることが可能であると見積もられている[2]。
【建造意図について】
本級の任務については、中国海軍の規模拡大と外洋行動の活発化、特に空母保有に向けた動きの一環であると推測されている[2][3]。空母のテスト要員の生活支援を行うとともに、大型かつ複雑な艦艇である空母の係留試験段階および洋上航試の各段階におけるテストの指揮センター、その他の乗員の宿泊艦として機能する[7]。同艦は、空母建造のために特別に建造された支援船であり、造船所や設計局の人員や技師に生活と作業の場所を提供することが可能となる[7]。本級は、最大2,500人が乗船して、三週間に渡って洋上生活を送るだけの能力を有している。最高速力は18Kts以上であり、連続航行期間は約30日間とされる[6]。
洋上の航空基地である航空母艦の運用は、数千人の乗員を必要とする大規模で複雑なシステムの総合体である。空母の運用経験の無い中国海軍にとっては、これから長い時間を掛けて空母の運用ノウハウを構築し各システムの運用に当たる将兵の養成に努めていかなければならない。この任務に当たることになるのが中国初の空母「遼寧」であるが、同艦の訓練要員、艤装員の支援任務を担当するのが本船の当面の主任務になると見られる[2][3]。
「遼寧」が洋上訓練を実施する際に別の空母要員訓練生を乗船させた本船を随伴させることで、基地に帰港することなく連続的に2組の空母要員の訓練を実施することが可能となる。1つのチームが空母で実地訓練を行う間、もう1つのチームは生活保障船で休息や座学・シミュレータでの訓練を行うことで、訓練期間の短縮、費用の節約、訓練体系の効率化を図ることが出来ると見られる[2][3]。これに陸上基地での訓練を行うチームを加えて、空母での実地訓練、生活保障船での休息や座学、そして陸上基地での訓練というように、3組の空母訓練要員をローテーションさせながら訓練を施していくのではないかと推測されている[2]。本船は上記の空母の訓練支援任務以外にも、アデン湾での船団護衛任務など長期間にわたる外洋での活動を支援するため艦隊に随伴、もしくは任務地域の最寄りの泊地に停泊して艦隊将兵の休息や福利厚生などを支援する宿泊船・支援母艦としての任務に従事することも可能であろう[2]。有事の際にはその充実した宿泊施設を生かした兵員輸送任務、また多数の在外邦人を救出・避難させる任務に投入されることも考えられる。
本船は合計二隻が建造され、航空母艦の停泊試験、洋上公試、就役に向けた各種支援任務に従事している。二番艦は、大連に送られて中国二隻目の航空母艦である002型航空母艦（山東級）の支援任務に従事[6]。2023年になると、中国三隻目の空母である003型航空母艦に並んで本級が停泊しているのが確認されるようになり、003型の試験・就役に向けた支援任務に就いていると推測される[8]。
■性能緒元
| 満載排水量 | 23,000〜30,000トン |
| 全長 | 190m[5]もしくは219m[6] |
| 全幅 | 28m |
| 喫水 | 8m |
| 主機 | ディーゼル2基（7,000馬力）、2軸 |
| 速力 | 17kts |
| 航続距離 | 8,000海里 |
| 乗員 | 最大2,500人 |
| 武装 | なし |
| 搭載機 | なし（ヘリコプターの発着艦は可能） |
■同型艦
| 1番艦 | 徐霞客もしくは向前進1号 | XúXiákèもしくはXiàngqiánjìn Yīhào | 88 | 広州造船廠で建造。2009年11月起工、2010年9月進水、2011年6月28日就役。 |
| 2番艦 | 酈道元もしく/向前進2号 | Lì DàoyuánもしくはXiàngqiánjìn Èrhào | 89 | 広州造船廠で建造。2016年11月進水、就役 |
【参考資料】
[1]HSH上海发烧友论坛「真身露出！强军强国！拆房子7月27日3407坞新图 - 第133页（2011-7-3 15:14:16、2654）」
[2]陈光文「浅析中国海军新型生活保障船」（『军事文摘』2010年第十一期（上）/军事文摘杂志社）15〜17頁
[3]「スクープ! 大連で待機する空母用の航洋宿泊船「徐霞客」」『世界の艦船』2011年10月号（海人社）55頁
[4]魯安��「徐霞客の旅の出発地――寧海」（中国画法公式サイト）
[5]USNI News「Document: Office of Naval Intelligence’s Chinese People’s Liberation Army Navy, Coast Guard Ship Identification Guide」（2024年4月30日/U.S. NAVAL INSTITUTE STAFF）https://news.usni.org/2024/04/30/document-office-o...
[6]MDC軍武狂人夢「中國海軍訓練艦--大觀級綜合生活保障船」http://www.mdc.idv.tw/mdc/navy/china/training-chin...
[7]网易「国产航母项目的功臣—海军向前进一号综合保障船命名公开」（2020年12月3日/来源: 舰闻杂谈）https://www.163.com/dy/article/FSSKP5QR05350U44.ht...
[8]每日頭條「航航母保障船有多大？當它與福建艦停一起才明白，為何叫「保姆」」（2023年3月22日）https://kknews.cc/military/35axzrg.html#google_vig...
903型補給艦（フーチー型/福池型）
中国海軍